箱根駅伝の表彰シーンで、選手たちの栄光とともに注目したいのが、箱根の伝統工芸を生かした寄木細工の優勝トロフィーだ。一般的なスポーツ大会の金属製カップとは異なり、木材の自然な色や模様を組み合わせて作られるこの記念品には、箱根の職人文化と、その年の社会を映すデザインが込められている。
このトロフィーは、箱根町が1997年の第73回大会から往路優勝校に贈呈しているもの。制作を担ってきたのは、箱根町畑宿の金指ウッドクラフトと、箱根寄木細工の伝統工芸士・金指勝悦さんだ。2024年の第100回大会では金指さんが生前に完成させた最後の作品が節目を飾り、2026年の第102回大会では青山学院大学が往路優勝を果たした。さらに2026年大会向けの記念杯には、大谷翔平選手に着想を得た野球のデザインが採用されている。
【まず知りたい】箱根駅伝トロフィーとは?往路優勝校だけに贈られる特別な記念品

箱根駅伝トロフィーとは、箱根町が東京箱根間往復大学駅伝競走の往路優勝校に贈呈する、箱根寄木細工の優勝記念品である。大会の総合優勝に対する表彰とは異なり、箱根町が地域の伝統工芸を通じて往路優勝をたたえる独自の贈呈品という位置づけを持つ。
贈呈が始まったのは1997年の第73回大会。箱根町の公式発表によると、2023年12月時点で次回大会が28回目の制作・贈呈に当たり、2024年の第101回大会向けには29作目、2026年の第102回大会向けには通算30作目が完成している。
往路優勝と総合優勝は何が違う?箱根駅伝は、往路と復路の合計10区間、総距離217.1キロを競う大会だ。往路は1月2日に東京から箱根・芦ノ湖までを走る5区間、復路は翌3日に芦ノ湖から東京へ戻る5区間で構成される。
往路優勝は、1月2日の往路5区間を最も速いタイムで走り終えた大学に与えられる。一方、総合優勝は往路と復路の合計タイムで決まる。したがって、往路優勝校と総合優勝校が異なる大会もある。
寄木細工のトロフィーは、このうち往路優勝校への贈呈品だ。総合優勝の表彰と混同されやすいが、対象となる競技結果が違う。往路の山場である5区を含め、箱根までの道のりを制した大学に贈られる、地域ならではの栄誉なのである。
箱根町が往路優勝杯を贈る背景には、競技の舞台となる地域の文化を全国に伝える役割もある。箱根駅伝を通じて箱根の名前が全国に広がるだけでなく、優勝の象徴として伝統工芸品が大学に残される。その点で、スポーツと地域文化を結ぶ記念品になっている。
【1997年からの制作史】金指ウッドクラフトと金指勝悦さんが築いた伝統
トロフィーの制作を担ってきたのは、箱根町畑宿に工房を構える株式会社金指ウッドクラフトだ。箱根町の公式資料と工房の紹介によれば、1997年から往路優勝トロフィーを毎年制作し、木材を組み合わせた無垢の寄木細工で仕上げてきた。
中心的な制作者だった金指勝悦さんは、1940年生まれの箱根寄木細工伝統工芸士。無垢の寄木ブロックそのものを加工し、立体作品を作り出す独自の技法を確立した職人として知られている。
金指勝悦さんが切り開いた無垢づくり箱根寄木細工には、木材を組み合わせて模様を作り、その模様を薄く削って箱などの表面に貼る方法がある。一方、金指さんが力を注いだのは、模様を作った木の塊そのものを加工して立体作品にする無垢づくりだった。
箱根町が公開する職人インタビューによると、金指さんは箱根寄木細工の継承者が減っていた時期に、無垢の寄木の可能性に着目。木の塊をろくろで削り出す独自の技法を発展させ、曲線や立体的な形を表現できる作品づくりに取り組んだ。
この技術が、箱根駅伝のトロフィー制作につながった。箱根町から往路優勝杯の制作を依頼されたのは平成8年(1996年)。翌1997年の第73回大会から、毎年異なるデザインのトロフィーを制作する取り組みが始まった。
第99回から第100回大会にかけて起きた継承の転換点金指勝悦さんは2022年7月に82歳で亡くなった。第99回大会向けのトロフィーは、金指さんが亡くなる直前まで制作していた作品を、妻であり金指ウッドクラフト代表の金指ナナさんと3人の弟子が完成させたものだった。
この作品のテーマは「平和」。長期化するウクライナ情勢や新型コロナウイルスなど、世界がさまざまな問題に直面していたことを背景に、世界中の人々が手を取り合う願いが込められた。
加えて、2024年の第100回大会向けのトロフィーは、金指さんが生前の2022年1月に完成させていた最後の作品だった。箱根町の2023年12月の記者発表資料によると、金指さんは第100回大会を非常に楽しみにしていたという。
この節目を境に、制作は次の世代へと移った。2025年の第101回大会向け作品は、金指さんの甥に当たる金指雲流さんが中心となって制作。金指ナナさんも、夫の手が一切入らない新しい体制で制作したことを地元紙の取材で語っている。
職人一人の技術で成り立っていたように見える伝統が、家族と後進の手によって次の段階へ移ったことは、箱根寄木細工の歴史における大きな転換点だ。
【歴代デザインを比較】毎年変わる意匠には、その時代の世相が映る
箱根駅伝トロフィーの大きな特徴は、同じ形を毎年繰り返すのではなく、その年の出来事や社会の空気をデザインに取り込んでいることだ。金指ウッドクラフトの公式作品紹介でも、1997年以降の歴代作品が年ごとに掲載され、毎年デザインを変えていることが説明されている。
2021年大会向けは『鬼滅の刃』がモチーフ箱根町が紹介した2021年大会向けのトロフィーでは、映画も大きな話題になった『鬼滅の刃』をモチーフに採用した。主人公たちの羽織や着物に見られる模様を取り入れ、市松模様、麻の葉、三角の鱗模様などを表現している。
特に、市松模様には繁栄、麻の葉模様には厄除け、鱗模様には厄落としの意味がある。作品の世界観を寄木細工の伝統模様に重ねた意匠だった。
2022年大会向けは東京2020オリンピック・パラリンピック2022年大会向けの作品では、東京2020オリンピック・パラリンピックがテーマになった。五輪マークやパラリンピックのシンボルであるスリー・アギトス、大会エンブレムに使われた市松模様を採用。台座には、セーリング競技会場となった湘南の海をイメージしたデザインが取り入れられた。
2023年大会向けは世界平和への願い第99回大会向けの作品では、ウクライナ情勢や感染症などを背景に「平和」がテーマとなった。地球を表す球体に、大地・海・空を象徴する模様を配置。台座には選手たちが走る山を表現した山路模様を採用している。
加えて、さまざまな人々が手を取り合う姿を、金指さんが残した寄木の端材を使って表現した。通常は寄木に使わない黒ずみのある木材も活用するなど、素材を無駄にしない工夫も盛り込まれている。
2025年大会向けはパリのイメージ第101回大会向けの作品は、2024年12月18日に箱根町へ納品された。パリ五輪開催年だったことから、フランス・パリのイメージを取り入れたデザインとなった。
特徴的なのは、直線で構成されながら視点によって円が連なって見える「切りちがえ桝」を応用した模様だ。台座の五輪マークは、異なる木材の色を使って5色で表現された。制作を担ったのは金指雲流さんで、先代の技術を受け継いだ新体制の作品としても注目された。
2026年大会向けは大谷翔平選手に着想を得た野球モチーフ第102回大会向けのトロフィーは、2025年12月18日に公開され、2026年1月1日付のタウンニュースでも詳しく紹介された。1997年から数えて通算30作目となる記念作品だ。
今回のテーマは野球。ロサンゼルス・ドジャースの大谷翔平選手が投打の二刀流で活躍したことに着想を得て、無垢づくりと木象嵌を組み合わせた作品に仕上げられた。
ミズキやクルミなどの木材を使い分け、自然な色の違いで模様を表現。先端のカップ内部には野球ボールの縫い目を思わせるデザインが施され、台座の側面には木象嵌によって大谷選手の愛犬や縁起の良い七宝柄があしらわれている。
「野球と駅伝で競技は違うけれど、目標に向かって努力するスポーツの素晴らしさを感じてほしい」
— 金指ナナさん(タウンニュース、2026年1月1日付)
野球と駅伝という異なる競技を結び付けたのは、目標に向かって努力するスポーツの共通性だった。優勝する大学を記念する作品に、別の競技で活躍する選手の姿を重ねる発想も、このトロフィーならではの面白さだ。
| 大会・制作時期 | デザイン・出来事 | 制作史における意味 |
|---|---|---|
| 1997年・第73回 | 寄木トロフィーの贈呈開始 | 箱根町による制作制度の出発点 |
| 2021年・第97回向け | 『鬼滅の刃』の模様を採用 | 伝統文様と現代の人気作品を融合 |
| 2022年・第98回向け | 東京2020五輪・パラリンピック | 五輪マークや湘南の海を表現 |
| 2023年・第99回向け | 平和への願い | 金指勝悦さんの制作を妻と弟子が完成 |
| 2024年・第100回向け | 金指勝悦さんの最後の作品 | 生前に完成させていた節目の記念杯 |
| 2025年・第101回向け | パリをイメージした五輪デザイン | 金指雲流さんらによる継承後の作品 |
| 2026年・第102回向け | 大谷翔平選手に着想を得た野球モチーフ | 無垢づくりと木象嵌を融合した通算30作目 |
歴代デザインを比較すると、人気作品、国際的なスポーツイベント、世界平和、著名アスリートと、テーマが時代に合わせて移り変わっていることが分かる。単に見た目を変えるだけではなく、その年に人々が関心を寄せた出来事を木工芸に落とし込んでいる点が、このトロフィーの独自性だ。
【職人技の秘密】箱根寄木細工の無垢づくりとトロフィーの制作工程
寄木細工は、色や木目の異なる木材を組み合わせ、幾何学模様などを作り出す箱根の伝統工芸だ。箱根山系には多様な樹種があり、それぞれの木が持つ自然な色を生かすことで、着色に頼らず多彩な模様を生み出せる。
箱根町や伝統工芸の紹介資料によると、箱根寄木細工は江戸時代後期に箱根町畑宿で始まった。畑宿は箱根寄木細工発祥の地として知られ、現在も職人や工房が技術を受け継いでいる。
無垢づくりとヅク貼りの違い箱根寄木細工には、大きく分けて「ヅク貼り」と「ムクづくり」の2つの技法がある。
ヅク貼りは、異なる木材を組み合わせて作った模様の板を鉋で薄く削り、シート状にして小箱などの表面に貼る方法だ。細かな模様を表現しやすく、箱根寄木細工を代表する伝統技法として知られている。
一方、ムクづくりは、模様を作った種板そのものを厚い状態で加工する技法だ。木の塊をろくろで削り出したり、くり抜いたりすることで、曲線を持つ立体作品を作ることができる。
箱根駅伝の往路優勝トロフィーに採用されているのは、このムクづくり。金指勝悦さんがこだわってきた技法であり、カップのような立体的な形状を寄木の模様で表現できる理由でもある。
寄木細工が完成するまでの基本工程箱根寄木細工の基本的な制作では、まず異なる木材の色や木目を見極め、必要な形に切り出す。続いて、それぞれの木片を正確に削り、同じ形の部材を組み合わせて模様の小さなブロックを作る。
それらを接着して大きな模様の板である「種板」を作り、作品の用途に応じて加工する。ヅク貼りなら種板を薄く削って化粧材にするのに対し、無垢づくりでは種板自体を立体的に削り出して作品に仕上げる。
トロフィーのような作品では、木材の色の組み合わせだけでなく、全体の形状、模様の配置、曲線の表現などを考える必要がある。毎年異なるテーマを実現するには、素材選びと加工技術の両方が問われる。
2026年作品に加わった木象嵌の技術第102回大会向けのトロフィーが特に興味深いのは、無垢づくりだけでなく木象嵌も使われている点だ。
木象嵌は、異なる色の木材を絵や模様の形に加工し、別の木材にはめ込む技法。今回の作品では、台座側面に大谷翔平選手の愛犬や七宝柄を表現するために使われた。
つまり2026年の記念杯は、木材を塊のまま削り出す無垢づくりと、異なる木材をはめ込んで図柄を表す象嵌の二つの技術を組み合わせた作品なのである。野球のボールを思わせるカップ内部の模様と合わせ、技術面でも見どころの多い仕上がりとなった。
なお、個々のトロフィーについて木材の全種類や各工程の所要時間まで一律に公表されているわけではない。一般的な寄木細工の工程と、各年の作品で実際に採用された技法を分けて理解することが大切だ。
【どこで見られる?】箱根駅伝ミュージアムとトロフィーの展示場所
歴代トロフィーに関心を持った人が訪れたい施設の一つが、芦ノ湖畔にある箱根駅伝ミュージアムだ。箱根町港の往路フィニッシュ・復路スタート地点のすぐそばにあり、箱根駅伝の歴史を写真や資料、展示品を通じて紹介している。
公式案内では、館内の「エピソードゾーン」で箱根寄木細工の往路優勝杯など、地元・箱根に関係する展示を紹介している。箱根ナビの施設紹介では、寄木細工で作られた往路優勝記念トロフィーのレプリカが展示され、歴代優勝トロフィーの移り変わりが分かる資料も見られると説明されている。
実物とレプリカは区別して確認したい箱根駅伝ミュージアムで紹介されているトロフィーは、レプリカとして展示されているものもある。歴代作品の実物を見たい場合は、特別展示の開催情報にも注目したい。
箱根町役場では、過去に完成したトロフィーを選手に贈られる寄木のメダルとともに期間限定で展示した例がある。2021年大会向けの作品は役場庁舎1階の展示ケースに、2025年大会向けの作品は箱根町役場の箱根物産コーナーに、それぞれ期間を区切って展示された。
そのため、ミュージアムへ行けば必ず特定年度の実物を見られる、あるいは役場に常設展示されていると考えるのは早計だ。訪問前に施設の最新展示案内や箱根町の告知を確認することが、見学の確実性を高める。
往路優勝校に贈られる寄木のメダルにも注目トロフィーとあわせて注目したいのが、選手に贈られる寄木のメダルだ。箱根町の過去の告知では、トロフィーとメダルを一緒に展示した事例が紹介されている。
トロフィーが大学の往路優勝を記念する象徴的な作品であるのに対し、メダルは選手たちの活躍を記念する品として位置づけられる。同じ寄木細工でも、大学に贈る作品と選手に贈る記念品では役割が異なる。箱根駅伝の表彰文化を、競技記録だけでなく工芸の視点から理解できるポイントだ。
【2026年最新】第102回大会は青山学院大学が往路優勝・総合優勝
2026年1月2日・3日に開催された第102回箱根駅伝では、青山学院大学が往路・復路ともにトップとなり、総合優勝を果たした。東京箱根間往復大学駅伝競走の公式記録によると、青山学院大学の総合タイムは10時間37分34秒、往路タイムは5時間18分8秒、復路タイムは5時間19分26秒だった。
青山学院大学の公式発表では、往路は3年連続8回目の優勝で、5時間18分8秒の往路新記録。総合では3年連続9回目の優勝となり、大会新記録を樹立した。
この結果により、青山学院大学は第102回大会の往路優勝校として、箱根町から寄木細工の記念トロフィーを贈られる対象となった。
注目したいのは、優勝した大学と、トロフィーのデザインに採用されたモチーフが異なることだ。2026年大会向けの作品は、大会開催前の2025年12月に公開されており、デザインのテーマは大谷翔平選手と野球だった。つまり、青山学院大学の優勝を受けて大谷選手の意匠が決まったのではなく、あらかじめ制作されていた記念杯が、往路優勝校に贈られたのである。
競技結果と工芸作品の制作時期を分けて見ると、このトロフィーの仕組みがよく分かる。職人は大会前からその年の社会や文化を反映した作品を準備し、レースの結果によって贈呈先が決まる。これが1997年から続く制作の基本的な流れだ。
【プロの結論】箱根駅伝トロフィーの価値は記録と工芸の二つにある
箱根駅伝トロフィーを理解するうえで重要なのは、これを単なる優勝カップとして見ないことだ。第一に、往路を制した大学の競技的成果を記念する。第二に、箱根町の伝統工芸である寄木細工を全国に伝える。第三に、その年の世相や文化をデザインに反映し、時代の記録を作品として残す。この三つの役割が重なっている。
また、金指勝悦さんの最後の作品と、その後の制作継承は、伝統工芸の価値が個人の技術だけでは保たれないことも示している。素材を選ぶ目、模様を組み立てる技術、作品に込める意味を次の世代へ伝えることが、継続には欠かせない。
歴代デザインを調べる際の判断基準は、次の3点だ。
- 箱根町の公式資料に、制作年やテーマが記載されているか。
- 金指ウッドクラフトの歴代作品紹介に、該当年のトロフィー写真が掲載されているか。
- 展示場所と期間が施設や自治体から案内されているか。
写真だけでテーマを断定したり、往路優勝杯を総合優勝カップと紹介したりすると、トロフィーの実態を取り違えることになる。とりわけ2026年は、青山学院大学の優勝結果と大谷翔平選手をモチーフにした記念杯の制作背景を分けて理解したい。
競技の記録と地域の工芸が一つの作品に結び付いていることこそ、箱根駅伝トロフィーの最大の魅力だ。
【箱根駅伝トロフィーに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:箱根駅伝の寄木細工トロフィーは誰に贈られる?
A1:箱根町から往路優勝校に贈られる。総合優勝校への表彰とは別の記念品である。
Q2:箱根駅伝トロフィーの制作はいつ始まった?
A2:1997年の第73回大会から始まった。制作は箱根町畑宿の金指ウッドクラフトが担っている。
Q3:金指勝悦さんは現在もトロフィーを制作している?
A3:金指勝悦さんは2022年7月に82歳で亡くなっている。第100回大会向けの作品が生前に完成させた最後の作品となり、以降の制作は家族や弟子たちに引き継がれている。
Q4:歴代トロフィーのデザインは毎年同じ?
A4:毎年異なる。その年の出来事や世相を反映したデザインが採用され、2026年大会向けには大谷翔平選手に着想を得た野球モチーフが採用された。
Q5:箱根駅伝トロフィーはどこで見られる?
A5:箱根駅伝ミュージアムでは往路優勝記念トロフィーのレプリカなどが展示されている。また、箱根町役場で実物が期間限定展示された例もある。特定年度の実物を見たい場合は最新の展示情報を確認したい。
Q6:2026年の第102回大会で往路優勝した大学は?
A6:青山学院大学。往路タイムは5時間18分8秒で、3年連続8回目の往路優勝を果たした。総合でも3年連続9回目の優勝を達成している。
Q7:寄木細工のトロフィーとメダルは何が違う?
A7:トロフィーは往路優勝校に贈られる大学単位の記念品で、寄木のメダルは選手に贈られる記念品。どちらも箱根の伝統工芸を生かして作られている。
箱根駅伝の寄木細工トロフィーは、1997年の第73回大会から箱根町が往路優勝校に贈ってきた、地域文化と大学駅伝を結ぶ記念品だ。金指ウッドクラフトと金指勝悦さんが築いた制作の歴史は、第100回大会向けの最後の作品を経て、家族や弟子たちによる継承の段階に入った。
毎年変わるデザインには、その時代の文化や社会の出来事が映し出される。2026年の第102回大会向けの記念杯には、大谷翔平選手に着想を得た野球の意匠が採用され、無垢づくりと木象嵌という二つの技術が組み合わされた。大会では青山学院大学が往路を大会新記録で制し、総合優勝も達成した。
箱根駅伝の魅力は、選手たちの走りや大学同士の競争だけではない。ゴール後に贈られる寄木のトロフィーにも、職人の人生、伝統工芸の継承、そして時代の記憶が刻まれている。
次に箱根駅伝を観戦するときは、往路優勝校の名前だけでなく、記念杯の模様や素材、そこに込められたテーマにも注目したい。ひとつのトロフィーを知ることが、箱根駅伝と箱根という地域をより深く楽しむきっかけになる。