2026年11月現在、「矢沢永吉バンド」を調べると、伝説のロックバンド・キャロル、ソロ転向後の歴代バックバンド、2014年に結成されたZ’sという複数の存在が浮かび上がる。実は、この3つは同じものではない。キャロルは矢沢永吉がリーダーを務めた4人組のロックバンドであり、ソロ時代は矢沢自身を中心に国内外の一流ミュージシャンがツアーごとに演奏を支えてきた。
そして2026年、矢沢永吉は「Just keep going ~ロックの軌跡~」と題した全国ツアーに挑む。キャリア初の360度全方位ステージ、日本武道館6公演を含む全9公演という大規模な企画だ。キャロルのメンバーは誰だったのか、ジョニー大倉や内海利勝、ユウ岡崎はどんな役割を担ったのか。なぜ矢沢はキャロルの再結成を選ばず、ソロの道を歩み続けたのか。公式資料と音楽報道をもとに、その歴史と現在の活動を整理する。
【基礎知識】矢沢永吉のバンドはキャロルとソロ時代で何が違う?
矢沢永吉の音楽活動を理解するには、まず「バンドのメンバー」と「ソロアーティストを支えるサポートメンバー」を区別する必要がある。
1972年、矢沢永吉はジョニー大倉、内海利勝、ユウ岡崎らとキャロルを結成した。4人それぞれが演奏と歌唱を担うロックバンドであり、メンバー同士の個性や関係性そのものがグループの魅力だった。
一方、1975年のキャロル解散後、矢沢はソロアーティストとして活動を開始する。以降のコンサートでは、ギター、ベース、ドラム、キーボード、サックス、コーラスなどの担当者を組み合わせ、矢沢の音楽を表現する演奏陣を構築してきた。
この違いは単なる呼び方の問題ではない。
キャロルはメンバー全員で一つのバンドを形成する存在だったのに対し、ソロ時代の矢沢は本人が音楽活動の中心となり、必要な演奏陣を編成するスタイルを確立したのである。
ユニバーサルミュージックの公式プロフィールでも、1972年のキャロルでのデビューと、1975年秋のソロデビューは明確に区別されている。
【キャロルの全貌】矢沢永吉・ジョニー大倉・内海利勝・ユウ岡崎の4人
キャロルは1972年に結成された日本のロックンロールバンドだ。
革ジャンとリーゼントという印象的なスタイル、英語のロックンロールを日本語の歌詞に乗せたサウンドで、当時の音楽シーンに強烈なインパクトを残した。
代表曲には「ルイジアンナ」「ファンキー・モンキー・ベイビー」「憎いあの娘」などがある。
キャロルの主要メンバーと担当パート1.矢沢永吉:ベース・ボーカル
キャロルのリーダーであり、楽曲の作曲面でも中心的な役割を果たした人物。
力強いボーカルとベース演奏でバンドのサウンドを支えた。キャロル解散後はソロアーティストとして活動し、日本を代表するロックシンガーへと成長していく。
2.ジョニー大倉:ギター・ボーカル・作詞
キャロルの音楽性を語るうえで欠かせない存在。
ユニバーサルミュージックの公式プロフィールによると、ジョニー大倉はボーカルとギターを担当し、主に作詞を手掛けた。
特に、日本語を英語のように聞かせる独特の「巻き舌歌法」は、キャロルらしさを形作った重要な要素だった。
解散後はソロミュージシャンとして活動する一方、俳優としても活躍。映画『遠雷』や『戦場のメリークリスマス』などに出演した。
3.内海利勝:リードギター・ボーカル
キャロルのギターサウンドを支えたミュージシャン。
日本コロムビアの公式プロフィールによると、1972年に矢沢永吉、ジョニー大倉、ユウ岡崎とともにキャロルでデビューした。
解散後はソロ活動を展開し、内田裕也、宇崎竜童、原田芳雄らのバックバンドにも参加。さらにPeach Blue、Blues File No.1、BACA BACCAなどの音楽活動を続けてきた。
4.ユウ岡崎:ドラムス
キャロルのリズムを支えたドラマー。
ギターとボーカルが前面に出るキャロルのサウンドにおいて、ドラムは疾走感を生み出す重要な役割を担った。
一般にキャロルの代表的な4人組として紹介されるのが、この矢沢、ジョニー、内海、ユウの編成である。
ジョニー大倉と内海利勝は解散後どうなった?キャロルの解散は、それぞれのメンバーに異なる音楽人生をもたらした。
ジョニー大倉は音楽と俳優の両方で活動し、独自の表現を追求した。2003年にはキャロル時代の思い出をまとめた著書『キャロル夜明け前』を出版している。
内海利勝はギタリストとしての活動を継続し、ブルースを軸にソロ作品やバンド活動を展開した。
ここで注目したいのは、キャロルの解散がメンバー全員の音楽人生の終わりではなかったという点だ。それぞれが別の場所で音楽を続け、キャロルとは異なるキャリアを築いていった。
【1975年の転換点】矢沢永吉がソロ転向した経緯と再結成しない理由
1975年は矢沢永吉の音楽人生を大きく変えた年だった。
約2年半にわたって活動したキャロルは、1975年春に解散。4月13日には日比谷野外音楽堂でラストライブを開催した。
その後、矢沢は同年9月21日にファーストソロアルバム『I LOVE YOU,OK』を発売。キャロル解散から間を置かず、ソロアーティストとしての活動を本格化させた。
ソロ転向で目指したのはキャロルとは違う音楽世界矢沢永吉公式サイトの作品解説では、『I LOVE YOU,OK』でのソロ活動について、キャロルとは異なるエンターテイナーとしての方向性を目指したと紹介されている。
つまり、キャロルの音楽をそのまま一人で継続するのではなく、新しい表現を自分自身の名前で打ち出すことが重要だった。
その後の実績は大きい。
- 1977年:日本人ソロロックアーティストとして初の日本武道館公演。
- 1978年:後楽園球場公演を開催。
- 1981年:アルバム『YAZAWA』を世界発売。
- 1982年:ドゥービー・ブラザーズのメンバーをバックに迎えた公演を実施。
- 2007年:日本武道館通算100回公演を達成。
キャロル時代のグループ活動から、世界を視野に入れたソロ活動へ。矢沢のキャリアはこの時期に大きく広がった。
矢沢本人が語った「もうバンドをつくらない」と決めた理由2025年9月26日放送のニッポン放送『矢沢永吉のオールナイトニッポンGOLD』で、矢沢本人がキャロル解散後の心境を語った。
日刊スポーツの2025年9月27日付報道によると、矢沢はキャロル解散時に「もう2度とバンドをつくらない」と考えたと振り返っている。
その理由として挙げたのが、メンバー同士の熱量や個性の衝突だった。
もう十分味わった。
矢沢は、青春と青春、わがままとわがままがぶつかり合うようなキャロル時代の人間関係を振り返り、今度はソロで行けるところまで進むという考えを語った。
加えて、解散が決まった後の2、3週間は眠れなかったとも明かしている。
この発言から読み取れるのは、キャロルに対する否定ではない。むしろ、あの時代の熱量を十分に経験したからこそ、次は一人のアーティストとして自分の限界に挑戦したいという決意だ。
なお、このラジオ発言は解散後に新しいバンドを組まないと決めた理由についての回顧であり、キャロルの再結成を直接拒否したという発言と同一視するのは正確ではない。
また、2014年には後述するZ’sを結成している。ソロ活動を基本としながらも、特別なバンドプロジェクトに取り組むことはあったという点も押さえておきたい。
【2014年結成】矢沢永吉のZ’sとは?オーディションで選ばれたメンバー
矢沢永吉のバンド活動を調べると、必ず登場するのがZ’s(ゼッツ)だ。
Z’sは2014年、矢沢自身がメンバーを選ぶオーディションを実施して結成したバンドである。
ユニバーサルミュージックの公式プロフィールにも、2014年にオーディションでメンバーを選抜し、Z’sを結成したことが記録されている。
Z’sのメンバー一覧矢沢永吉公式サイトの2014年ツアーアーカイブには、Z’sのメンバーとサポート演奏陣が掲載されている。
| 名前 | 担当 | 位置づけ |
|---|---|---|
| 矢沢永吉 | ボーカル | バンドの中心 |
| 椿本匡賜 | ギター | Z’sメンバー |
| 田浪真悟 | ベース | Z’sメンバー |
| 中村優規 | ドラム | Z’sメンバー |
| ICHIRO | ギター | サポート |
| 阿部雅宏 | キーボード | サポート |
| 古村敏比古 | サックス | サポート |
この編成で2014年5月8日から6月3日まで「Z's START ON TOUR」を開催。苫小牧、函館、帯広、釧路、青森、盛岡、長崎、佐賀、鹿児島、宮崎、沖縄、東京など、全国13会場を巡った。
Z’sの特徴は、矢沢が自ら選んだメンバーと新しい音楽的な化学反応を生み出すという企画性にある。
Z’sはキャロルの再結成だったのか?答えは違う。
キャロルの元メンバーを集めた再結成バンドではなく、オーディションで新たな演奏者を選び、矢沢を中心に結成した別のバンドである。
キャロルが1970年代の仲間同士で生み出したロックンロールだったのに対し、Z’sはソロアーティストとしての矢沢が新しいメンバーと組んだプロジェクトだった。
したがって、Z’sの存在は「矢沢永吉はソロ活動しかしていない」という理解を修正する材料にはなるが、キャロルが再結成されたことを意味するものではない。
【現在のバンド体制】矢沢永吉の歴代サポートメンバーと2025年の編成
ソロ時代の矢沢永吉を支えてきたバックバンドは、一つの固定メンバーで構成されているわけではない。
ツアーやレコーディングの内容に合わせて、国内外のミュージシャンを起用してきた。
1982年にはドゥービー・ブラザーズのメンバーをバックに迎えた公演を実現。ユニバーサルミュージックの公式バイオグラフィーでも、この海外ミュージシャンとの共演は重要なキャリアとして紹介されている。
2024年・2025年の公式ツアーで確認できる演奏陣矢沢永吉公式サイトの「FIGHT ON」2024年ツアーと「Do It!YAZAWA 2025」のツアーアーカイブには、具体的な演奏者の名前が掲載されている。
2025年の東京ドーム公演および全国ツアーで確認できる主な演奏陣は次のとおり。
- Toshi Yanagi: ギター
- Jeff Kollman: ギター
- MORIO: ベース
- Geoff Dugmore: ドラム
- Guy Allison: キーボード
- Snake Davis: サックス
- Annette Mary Cotrill: コーラス
- Argie Phine: コーラス
- Imani J Dawson: コーラス
- 桑迫陽一: パーカッション
- 湯本淳希: ホーンセクション
- 白須今: ストリングス
この編成を見ると、矢沢のライブが単純なギター・ベース・ドラムのロックバンドにとどまらないことがわかる。
サックス、ホーン、ストリングス、複数のコーラスを加えた大規模な演奏体制は、ソロアーティストとしてのステージを幅広く表現するためのものだ。
特にギター2人、リズム隊、キーボードという基本編成に加え、管楽器や弦楽器を配置している点は、キャロル時代との大きな違いである。
2026年現在のメンバーは誰?ここは混同しやすいポイントだ。
2026年11月2日時点で、公式の2026年ツアー特設ページには公演日程や会場、チケット情報などが掲載されているが、2026年ツアーの演奏者一覧は公表されていない。
そのため、2025年の演奏陣をそのまま2026年の正式メンバーとして紹介することはできない。
現時点で確認できる最新の公式な演奏者一覧は、2025年の「Do It!YAZAWA」のものだ。
矢沢永吉の現在のバンドを知りたい場合は、過去のツアーメンバーと当年の公式発表を分けて確認することが大切になる。
【2026年最新】Just keep going ~ロックの軌跡~の全公演と見どころ
2026年の矢沢永吉の活動を語るうえで外せないのが、EIKICHI YAZAWA CONCERT TOUR 2026「Just keep going ~ロックの軌跡~」だ。
2026年4月8日に公式サイトで開催が発表された。
今回のツアーで大きな注目を集めているのが、矢沢にとってキャリア初となる360度全方位ステージである。
2026年ツアーの開催日程| 日程 | 会場 | 状況 |
|---|---|---|
| 11月25日 | 神戸ワールド記念ホール | SOLD OUT |
| 11月28日 | 大阪城ホール | SOLD OUT |
| 11月29日 | 大阪城ホール | SOLD OUT |
| 12月3日 | 日本武道館 | SOLD OUT |
| 12月5日 | 日本武道館 | SOLD OUT |
| 12月6日 | 日本武道館 | SOLD OUT |
| 12月9日 | 日本武道館 | SOLD OUT |
| 12月11日 | 日本武道館 | SOLD OUT |
| 12月12日 | 日本武道館 | SOLD OUT |
全9公演のうち、6公演が日本武道館で開催される。
開場・開演時刻は全公演15時30分・17時となっている。
チケット価格はS席18,000円、SS席28,000円(税込)。11月2日現在、公式特設ページでは全公演がSOLD OUTと案内されている。
360度全方位ステージが意味するもの今回の特徴は、従来型のステージ正面を中心としたライブとは異なる演出に挑戦することだ。
360度ステージでは、観客がステージを囲む形になるため、演奏者の立ち位置や照明、音響、ステージ上の動線などにも工夫が必要になる。
矢沢が長年積み上げてきたライブパフォーマンスを、別の角度から体験できる企画といえる。
WOWOWとLeminoでの生中継も決定2026年10月29日には、日本武道館公演の生中継が発表された。
WOWOWとLeminoの案内によると、配信・放送対象は12月3日の日本武道館公演で、開始予定時刻は17時。
会場に足を運べないファンにとっても、今回のステージを楽しめる機会が用意されている。
2027年春ツアーもすでに発表加えて、矢沢永吉公式サイトは2026年6月23日付の発表で、2027年の全国ツアー開催を告知している。
ツアー名は「GOLD RUSH 2027」。
2027年4月から5月にかけて、全国16公演を予定しているという。
従来の秋冬開催から春開催へと時期を変更する方針も本人のメッセージで示された。
2026年の9公演だけで終わるのではなく、翌年も全国を巡る計画がすでに動いている点は注目に値する。
【プロの結論】矢沢永吉のバンド史を理解するための3つの視点
矢沢永吉のバンド活動を正しく理解するには、次の3つの視点が欠かせない。
第一に、キャロルは単なる過去の所属バンドではない。
ジョニー大倉の作詞と歌唱、内海利勝のギター、ユウ岡崎のドラム、そして矢沢のベースとボーカルが組み合わさった、独立した音楽グループだった。
その4人の個性がぶつかり合ったことこそ、キャロルの音楽的な魅力の一部だった。
第二に、ソロ時代の矢沢はバンドを持たないのではなく、演奏陣を自分の音楽に合わせて編成してきた。
2014年のZ’s、1982年のドゥービー・ブラザーズとの共演、2024年・2025年の国際色豊かなサポートミュージシャンなど、活動の形は一つではない。
ここを区別すると、ソロ時代の音楽的な広がりが理解しやすくなる。
第三に、再結成しない理由は本人の言葉から読み解くべきだ。
2025年のラジオ発言からわかるのは、キャロルというグループで過ごした時間を十分に経験し、その後はソロで進むと決意したことだ。
単純なメンバー間の不仲や確執だけで説明できる話ではない。
矢沢永吉の音楽活動は、過去のグループを復活させることよりも、自分自身の表現を更新し続けることに重心を置いてきた。
【よくある質問】矢沢永吉のバンドに関するFAQ
Q1:矢沢永吉のキャロル時代のメンバーは誰ですか?
A1:主要メンバーは矢沢永吉、ジョニー大倉、内海利勝、ユウ岡崎の4人です。矢沢がベースとボーカル、ジョニーがギターとボーカル、内海がリードギターとボーカル、ユウがドラムを担当しました。
Q2:矢沢永吉はなぜキャロルを再結成しないのですか?
A2:2025年のラジオ出演で、矢沢本人はキャロル時代のメンバー同士の激しい衝突や青春のぶつかり合いを振り返り、解散後はもうバンドをつくらず、ソロで進むと決めたと語っています。ただし、この発言をキャロル再結成についての直接的な拒否発言と同一視することはできません。
Q3:矢沢永吉の現在のバックバンドメンバーは誰ですか?
A3:2025年の公式ツアーアーカイブでは、Toshi Yanagi、Jeff Kollman、MORIO、Geoff Dugmore、Guy Allisonらの参加が確認できます。2026年ツアーの正式な演奏者一覧は11月2日時点で公表されていません。
Q4:Z’sは現在も活動しているバンドですか?
A4:Z’sは2014年にオーディションで選ばれたメンバーによって結成されたバンドです。2014年のツアー編成は公式アーカイブに記録されていますが、2026年のツアーにZ’sが参加するという公式発表は確認できません。
Q5:2026年の矢沢永吉のコンサートツアーはいつ開催されますか?
A5:「Just keep going ~ロックの軌跡~」は2026年11月25日に神戸で開幕し、大阪公演を経て12月3日から日本武道館6公演を開催する全9公演です。11月2日時点で公式サイトでは全公演SOLD OUTとなっています。
矢沢永吉のバンド活動は、1972年のキャロル結成から始まり、1975年のソロ転向を経て、現在の大規模なサポートミュージシャン体制へと発展してきた。
キャロルの主要メンバーは矢沢永吉、ジョニー大倉、内海利勝、ユウ岡崎。4人が生み出したロックンロールは、今も日本の音楽史に残る存在だ。
その後の矢沢は、Z’sのような特別なバンドプロジェクトにも挑戦しながら、ソロアーティストとして独自のライブスタイルを確立してきた。
2026年の「Just keep going ~ロックの軌跡~」では、初の360度全方位ステージと日本武道館6公演という新たな挑戦が待っている。さらに2027年春には16公演の全国ツアーも予定されている。
矢沢永吉の音楽人生を理解するうえで大切なのは、キャロルの再現を追い求めることだけではない。キャロルで培ったロックの原点を持ちながら、ソロとしてどのように進化し続けているかを見ることだ。
「過去の伝説」と「現在進行形のロック」。その両方を知ることで、矢沢永吉というアーティストの本当の魅力が見えてくる。