野球中継で「エンタイトルツーベース」と聞いたことはあっても、どのような打球で成立するのか、走者は何塁まで進めるのか、ホームランとは何が違うのか、正確に説明できる人は意外と多くありません。特に、フェアの打球がワンバウンドしてスタンドに入った場合や、野手の悪送球がベンチに飛び込んだ場合は、進塁の基準が異なるため注意が必要です。
エンタイトルツーベースは、公認野球規則5.06(b)(4)に定められた安全進塁権の一つです。2026年度の野球規則改正でも関連する規則説明の表記が整理されています。この記事では、成立条件から打者走者と各走者の進塁、審判の判定、ホームランや通常の二塁打との違いまで、具体的なプレー例を交えて解説します。
【基本知識】エンタイトルツーベースとは?意味と認定二塁打の仕組み

エンタイトルツーベースとは、打球や送球が規則で定められた条件に該当し、ボールデッドとなった際に、打者走者と各走者に2個の塁を進む権利が与えられるプレーです。
英語では「Ground Rule Double」などと表現され、日本語では「認定二塁打」と呼ばれることもあります。
通常の二塁打は、打者が打ったボールがインプレーの状態にあり、打者走者が自ら走って二塁に到達した結果として成立します。一方、エンタイトルツーベースは、規則によって進塁が認められる点が特徴です。
エンタイトルツーベースが成立する代表的な場面代表的なのは、フェアの打球が地面に触れた後、スタンドに入るケースです。
例えば、打者が外野方向へゴロを打ち、打球がフェア地域でワンバウンドした後にフェンスを越えて観客席に入ったとします。この場合、原則として本塁打ではなくエンタイトルツーベースとなります。
また、打球がフェンスの下や金網の隙間を通過した場合、フェンスやスコアボードなどに挟まってプレーできなくなった場合も、規則に該当すれば2個の塁が与えられます。
重要なのは、単純にボールがグラウンドの外へ出たかどうかだけではありません。打球なのか送球なのか、フェアボールなのか、どのような経路でボールデッドになったのかによって、適用される規則が変わります。
「2個の塁が与えられる」とはどういう意味?ここでいう2個の塁とは、打球が外野まで転がった距離や、選手が実際に走った距離ではありません。規則が定める基準時点での占有塁から、2個先の塁まで進めるという意味です。
打者走者の場合は、本塁を起点として一塁、二塁と数えるため、原則として二塁が与えられます。
一塁走者なら三塁、二塁走者なら本塁、三塁走者なら本塁へ進むことになります。
【成立条件】公認野球規則5.06(b)(4)で定められた具体的なケース
エンタイトルツーベースの根拠となるのが、公認野球規則5.06(b)(4)です。この規則は、打者走者を含む各走者が、アウトにされることなく進塁できる条件を定めています。
その中でも、エンタイトルツーベースに関係する代表的な規定が5.06(b)(4)(F)と5.06(b)(4)(G)です。
1. フェアの打球がワンバウンドしてスタンドに入る最も分かりやすい成立例です。
打球がフェア地域に落ち、地面に触れた後にスタンドへ飛び込んだ場合、原則として2個の塁が与えられます。
打球が一度地面に触れていることが重要です。フェアの飛球が地面に触れる前に外野フェンスを越えれば、通常はホームランになります。
したがって、同じようにスタンドへ入った打球でも、地面に触れたかどうかによって判定が変わります。
2. フェアの打球がフェンスの下や設備の隙間を通過するフェアの打球がフェンスの下や、スコアボード、金網などの隙間を通過してプレーできない状態になった場合も、規則に該当すればエンタイトルツーベースとなります。
打球がフェンスの隙間に挟まり、野手が通常のプレーを続けられなくなった場合も対象となるケースがあります。
このようなプレーは、打球がフェンスを越えたかどうかだけでは判断できません。ボールがどこに入り、どのような状態になったのかが判定のポイントです。
3. 野手の悪送球がスタンドやベンチに入るエンタイトルツーベースは、打球がスタンドに入った場合だけの規則ではありません。
野手が送球したボールがスタンドやベンチに入った場合にも、公認野球規則5.06(b)(4)(G)に基づき、原則として2個の塁が与えられます。
ただし、ここには重要な例外があります。打球処理直後の内野手の最初のプレーに基づく悪送球なのか、それ以外の送球なのかによって、進塁の基準時点が変わります。
この違いは、次の進塁ルールで詳しく説明します。
4. 野手の用具などに関係する特殊なプレー公認野球規則5.06(b)(4)には、野手が正規の位置から離れた帽子やマスクなどでフェアボールに故意に触れた場合、グラブを故意に投げてフェアボールに触れた場合など、3個の塁が与えられるケースも定められています。
また、送球に対して同様の行為があった場合には、2個の塁が与えられる規定があります。
これらは一般的なフェンス越えによるエンタイトルツーベースとは異なる特殊な進塁措置です。ボールに触れた物や行為が故意だったかどうかも判定に関係します。
【進塁ルール】打者走者と各走者はどこまで進める?具体例で解説
エンタイトルツーベースで最も間違えやすいのが、走者の進塁基準です。
フェアの打球がスタンドに入ったケースと、野手の悪送球がスタンドに入ったケースでは、2個の塁を数え始める時点が異なる場合があります。
フェアの打球がスタンドに入った場合は投球時が基準フェアの打球がスタンドに入るなど、公認野球規則5.06(b)(4)(F)に該当する場合、各走者は原則として投手が投球した時点で占有していた塁を基準に2個進みます。
打球がスタンドに入るまでに走者がどれだけ進んでいたかは、基本的に進塁数の基準にはなりません。
具体例を見てみましょう。
- 走者なし:打者走者が二塁へ進む。
- 一塁走者:一塁走者は三塁、打者走者は二塁へ進む。
- 二塁走者:二塁走者は本塁へ生還し、打者走者は二塁へ進む。
- 一・二塁:二塁走者は生還、一塁走者は三塁、打者走者は二塁へ進む。
- 満塁:三塁走者と二塁走者は生還、一塁走者は三塁、打者走者は二塁へ進む。
一塁走者が打球を見て三塁まで走っていたとしても、投球時に一塁を占有していたのであれば、原則として与えられるのは三塁までです。実際に走った距離だけで進塁先が決まるわけではありません。
野手の悪送球では「最初のプレー」かどうかが重要送球がスタンドやベンチに入った場合は、公認野球規則5.06(b)(4)(G)が適用されます。
打球処理直後の内野手の最初のプレーに基づく悪送球なら、原則として投球時点の各走者の位置を基準に2個の塁を与えます。
一方、それ以外の送球では、原則として送球が野手の手を離れた時点の各走者の位置が基準になります。
この違いを理解するうえで参考になるのが、NPBが2019年5月17日に公開した公式記録員コラムです。
同コラムでは、2019年4月21日の阪神対巨人6回戦で起きたプレーが紹介されています。4回表無死一塁、巨人の岡本選手の遊撃ゴロに対し、遊撃手から二塁への送球はセーフ。その後、二塁手が一塁へ送ったボールが悪送球となり、一塁側ベンチに入りました。
このケースでは、二塁手の送球は打球処理直後の内野手による最初のプレーではありません。そのため、悪送球が手を離れた時点の走者の位置を基準にします。
一塁走者はすでに二塁に到達していたため、そこから2個進んで本塁へ生還。打者走者は二塁へ進みました。
この事例は、エンタイトルツーベースの進塁ルールを理解するうえで非常に重要です。
打球と送球による進塁ルールの比較| プレーの種類 | 主な適用規則 | 進塁の基準 | 基本的な措置 |
|---|---|---|---|
| フェアの打球がスタンドに入る | 5.06(b)(4)(F) | 投球時の占有塁 | 各走者に2個の塁 |
| フェアの打球がフェンスの下などを通過する | 5.06(b)(4)(F) | 投球時の占有塁 | 各走者に2個の塁 |
| 内野手の最初のプレーに基づく悪送球 | 5.06(b)(4)(G) | 投球時の占有塁 | 各走者に2個の塁 |
| その後の内野手や外野手による悪送球 | 5.06(b)(4)(G) | 原則として送球が手を離れた時点 | 各走者に2個の塁 |
| 投手板上からの投手の送球が直接場外へ出る | 5.06(b)(4)(H) | 投球時の占有塁 | 原則として各走者に1個の塁 |
この比較から分かるように、同じボールデッドでも、原因によって進塁数や基準時点が変わります。特に投手板上からのけん制球が直接スタンドに入るケースは、野手の悪送球による2個の進塁とは異なり、原則1個の進塁です。
【徹底比較】ホームラン・通常の二塁打・エンタイトルツーベースの違い
エンタイトルツーベースとホームランは、どちらも打球がフェンスの外へ出る場面があるため、混同されやすいプレーです。
しかし、野球規則上は明確な違いがあります。
ホームランとの違いは打球が地面に触れたかどうか基本的な見分け方は、フェアの打球が地面に触れる前に外野フェンスを越えたかどうかです。
フェアの飛球が地面に触れないまま外野フェンスを越えれば、原則としてホームランになります。打者と塁上の走者は、正しく各塁を踏んで本塁まで進むことができます。
一方、フェアの打球が地面に触れた後にスタンドへ入った場合は、原則としてエンタイトルツーベースです。
例えば、走者一塁で比較すると次のようになります。
- ノーバウンドでフェンス越え:ホームラン。打者と一塁走者がともに生還する。
- ワンバウンドでスタンドイン:エンタイトルツーベース。打者走者は二塁、一塁走者は三塁へ進む。
ただし、特殊な球場設備やローカルグラウンドルールによって扱いが異なるケースもあります。球場固有の規則が設定されている場合は、その内容も確認する必要があります。
通常の二塁打との違いはボールがインプレーかどうか通常の二塁打では、打球がグラウンド内にとどまり、ボールインプレーの状態で試合が続きます。
打者走者は二塁を目指し、守備側は送球やタッグによってアウトを狙います。塁上の走者も、守備側のプレーを見ながら進塁や帰塁を判断します。
一方、エンタイトルツーベースでは、対象となるプレーが発生した時点でボールデッドとなり、規則に従って進塁先が決まります。
打者走者が三塁まで走れそうな打球であっても、規則によって二塁までの進塁が認められた場合、原則としてそれ以上は進めません。
なお、公式記録上は、公認野球規則9.06(e)に基づき、5.06(b)(4)などによって打者走者に2個の塁が与えられた場合、二塁打として記録されます。
つまり、通常の二塁打とエンタイトルツーベースは、記録上はどちらも二塁打になり得ますが、成立する仕組みが異なります。
【審判判定】ボールデッドのタイミングとテイクツーベースの注意点
エンタイトルツーベースでは、審判員がボールデッドを宣告し、各走者に進塁先を指示します。
野手がボールを追いかけていても、打球や送球が規則上のボールデッドの場所に入れば、通常のプレーを継続することはできません。
審判員は何を確認しているのか審判員が判定する際には、主に次のようなポイントを確認します。
- 打球がフェアだったか、ファウルだったか。
- 打球が地面に触れる前にフェンスを越えたか。
- ボールがスタンド、ベンチ、フェンスの隙間などに入ったか。
- ボールが打球なのか、野手による送球なのか。
- 悪送球の場合、打球処理直後の最初のプレーに基づく送球か。
- 送球が野手の手を離れた時点で、各走者がどの塁を占有していたか。
全日本野球協会アマチュア野球規則委員会が公表する「キャンプゲーム・マニュアル第4版」でも、ボールデッドの宣告や走者への進塁指示について具体的な手順が説明されています。
審判員はタイムを宣告し、プレーヤーの動きを止めたうえで、走者に進塁・帰塁を指示します。判断が難しい場合には、複数の審判員による協議も行われます。
テイクツーベースとテイクワンベースの違い野球中継や草野球の試合では、悪送球によってボールが場外に出た際に「テイクワンベース」という表現を耳にすることがあります。
しかし、野手の送球が規則上のボールデッドの場所に入った場合、適用される規則によっては2個の塁が与えられます。このような措置を「テイクツーベース」と呼びます。
NPBの公式記録員コラムでも、悪送球による進塁を一律に1個と考える誤解について説明されています。
ただし、すべての場外送球が2個の進塁になるわけではありません。前述のように、投手板上からの投手の直接の送球など、1個の塁しか与えられないケースもあります。
「ボールが場外に出たから2個」と単純に判断するのではなく、誰が、どのような状況で送球したのかを確認することが大切です。
【2026年最新】公認野球規則の改正内容とエンタイトルツーベースへの影響
2026年度の野球規則改正は、2025年11月20日に日本野球規則委員会から公表されました。
全日本野球協会の発表によると、2026年度の公認野球規則では27項目の改正が行われています。米国オフィシャル・ベースボール・ルールズの改正に伴う変更や、日米の規則を比較検討したうえでの表記・解釈の整理などが含まれています。
5.06(b)(4)に関係する2026年度の変更点エンタイトルツーベースを理解するうえで注目したいのが、規則説明における用語の変更です。
2026年度改正では、公認野球規則5.06(b)(4)(G)の規則説明と、同項(I)の一部などについて、「打者」という表記を「打者走者」に改めています。
これは、打撃を終えて走者となった選手を指す用語を明確にするための表記整理です。
この変更によって、フェアの打球がスタンドに入った際の2個の進塁や、悪送球による進塁の基本条件が新たに変更されたわけではありません。
2026年度改正で押さえておきたいポイント2026年度の規則改正では、エンタイトルツーベース以外にも、内野手の守備位置に関する規定、投手の投球動作、走者の妨害、ベースコーチによるアシストなど、複数の項目が見直されています。
特に5.02(c)では、投球時に内野手4人のうち2人ずつが二塁ベースの両側に分かれ、両足を位置した側に置くという守備位置の規定と、その違反に対するペナルティが整理されました。
また、5.09(b)(7)では、フェアボールに走者が触れた場合の規定について文章が改められています。
ただし、これらはエンタイトルツーベースそのものの成立条件を変更するものではありません。
2026年の試合を観戦する際には、規則番号だけでなく、改正によって整理された用語や関連する規則の適用範囲にも目を向けると、プレーの理解が深まります。
【プロの結論】エンタイトルツーベースを正しく見分ける3つの判断基準
エンタイトルツーベースは、打球がスタンドに入るという見た目だけで判断すると、ホームランや通常の二塁打、悪送球による安全進塁権と混同しやすいプレーです。
実際の試合を観戦する際には、次の3つの判断基準を押さえておくと、審判の判定を理解しやすくなります。
判断基準1:打球が地面に触れたかを確認するフェアの飛球が地面に触れずにフェンスを越えたなら、原則としてホームランです。一方、ワンバウンドしてスタンドに入った場合などは、エンタイトルツーベースの対象になります。
打球がどのような経路でスタンドに入ったかが、最初の判断材料です。
判断基準2:2個の塁を数える基準時点を確認する打球がスタンドに入った場合は、投球時の占有塁が基本です。野手の悪送球では、最初のプレーに基づく送球か、それ以外の送球かによって基準時点が変わります。
特に一塁走者が二塁に到達した後の悪送球などでは、送球が手を離れた瞬間の走者の位置が重要になります。
判断基準3:ボールデッド後の進塁先を確認するエンタイトルツーベースでは、走者に安全進塁権が与えられますが、無制限に進めるわけではありません。
規則によって認められた塁まで進み、必要な塁を正しく踏むことが大切です。与えられた塁を空過した場合、守備側のアピールによってアウトになる可能性もあります。
特に、走者が進塁権を得た後にさらに先の塁へ進もうとする場合は、通常のインプレー時とは異なる扱いになるため注意が必要です。
野球のルールを深く理解したい人や、少年野球・草野球で審判を担当する人にとっても、この3つの判断基準は実践的な知識になります。
【エンタイトルツーベースのルール】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ワンバウンドでスタンドに入った打球はホームランになりますか?
A1:原則としてホームランにはなりません。フェアの打球が地面に触れた後にスタンドへ入った場合は、エンタイトルツーベースとなり、打者走者と各走者に2個の塁が与えられます。球場固有のグラウンドルールがある場合は、その規定も関係します。
Q2:一塁走者はエンタイトルツーベースでホームに帰れますか?
A2:フェアの打球がスタンドに入った通常のケースでは、一塁走者は一塁から2個進んで三塁に到達します。そのため、原則として本塁には帰れません。二塁走者や三塁走者は本塁まで進むことができます。
Q3:野手の悪送球でボールがスタンドに入った場合もエンタイトルツーベースですか?
A3:公認野球規則5.06(b)(4)(G)に該当する場合、原則として2個の塁が与えられます。ただし、打球処理直後の内野手の最初のプレーか、それ以外の送球かによって、進塁の基準時点が変わります。
Q4:エンタイトルツーベースと通常の二塁打は公式記録上も違いますか?
A4:どちらも二塁打として記録されます。エンタイトルツーベースは規則によって2個の塁が与えられた結果であり、通常の二塁打は打者走者がインプレー中に自力で二塁まで進んだ結果という違いがあります。
Q5:2026年度の野球規則改正でエンタイトルツーベースの条件は変わりましたか?
A5:2026年度改正では、5.06(b)(4)(G)の規則説明などで「打者」を「打者走者」に改める表記変更が行われました。エンタイトルツーベースの基本的な成立条件や2個の進塁という原則が変更されたわけではありません。
エンタイトルツーベースは、フェアの打球がワンバウンドしてスタンドに入った場合や、規則に該当する悪送球が場外に出た場合などに、打者走者と各走者へ2個の塁を与える制度です。
基本となるのは、公認野球規則5.06(b)(4)です。特に打球によるケースでは投球時の占有塁を基準とし、野手の悪送球では最初のプレーかどうかによって基準時点が異なる点を理解しておく必要があります。
ホームランとの違いは打球が地面に触れたかどうか、通常の二塁打との違いはボールデッドとなって規則上の進塁が与えられるかどうかです。
2026年度の野球規則改正では、関連する規則説明の用語整理が行われましたが、エンタイトルツーベースの基本的な進塁ルールは維持されています。
野球観戦で打球がフェンスを越えた場面に遭遇したら、まず打球が地面に触れたか、次にボールがどのような経路で場外へ出たか、そして走者がどの時点でどの塁を占有していたかを確認してみてください。この3点を押さえるだけで、エンタイトルツーベースの判定と進塁ルールを、より正確に理解できるようになります。
主な根拠資料: 日本野球機構(NPB)の「2026年度 野球規則改正」「記録員コラム 2個の塁が与えられるとき」、全日本野球協会アマチュア野球規則委員会の「キャンプゲーム・マニュアル第4版」、公認野球規則9.00。