膣から便が出る、膣からおならのようなガスが漏れる、便のような臭いがする液体が出てくる。このような症状がある場合、注意したい病気の一つが直腸腟瘻(ちょくちょうちつろう・直腸膣瘻)です。直腸腟瘻とは、本来つながっていない直腸と膣の間に異常な通り道ができる病気で、便や腸内ガスが膣から排出されることがあります。
原因には、出産時の会陰裂傷、クローン病などの炎症性腸疾患、骨盤内の手術や放射線治療に伴う組織の損傷などがあります。一方、膣から空気が出るだけなら、性交渉や運動によって入り込んだ空気が排出される生理的な現象の場合もあります。症状だけで病気を決めつけることはできませんが、便や便汁が膣から出る場合は、早めに医療機関で確認することが大切です。
【原因を解説】膣から便が出るのはなぜ?直腸腟瘻の仕組みと主な症状
直腸腟瘻は、直腸と膣の間に本来存在しない通路(瘻孔)が形成された状態です。英語ではRectovaginal Fistulaと呼ばれます。
通常、直腸と膣は隣り合っていても、それぞれ独立した臓器として機能しています。両者の間には組織の壁があり、便や腸内ガスが膣へ直接流れ込むことはありません。
しかし、出産時の損傷や慢性的な炎症、手術後の組織障害などによって、この隔壁に穴が開くと、直腸内の便やガスが膣側へ流れ込むようになります。
瘻孔の大きさや位置によって症状は異なります。小さな瘻孔ではガスや少量の液体だけが漏れることもあり、大きな瘻孔では便がはっきりと膣から排出される場合があります。
膣から便汁が漏れる・ガスが出るときの特徴直腸腟瘻で代表的な症状は、膣からの便やガスの排出です。具体的には次のような変化が見られます。
- 膣から便の一部や便のような液体が出る。
- 膣からおならに似たガスが繰り返し出る。
- 膣から便臭のする分泌物が出る。
- 下着に茶色や黄色っぽい液体が付着する。
- 膣や外陰部に便が付着し、洗っても臭いが気になる。
- 膣や会陰部に炎症、痛み、かゆみが生じる。
- 膣炎や尿路感染症を繰り返す。
- 性交時に痛みや違和感がある。
特に、便の排出や便臭を伴う分泌物は重要なサインです。便が下痢状になっているときには、比較的小さな瘻孔でも漏れが目立つ場合があります。
また、便が膣から出ているように見えても、実際には肛門からの便漏れが膣周辺に付着しているケースも考えられます。どこから排出されているのかを診察で確認する必要があります。
膣からガスが出るだけなら病気とは限らない膣からガスが出る症状には、直腸腟瘻とは別の原因もあります。
一般的な膣内ガス(膣の空気)は、性交渉やヨガ、スクワットなどの運動、姿勢の変化によって膣内に入り込んだ空気が外へ出る現象です。英語ではVaginal GasやQueefと呼ばれます。
この場合、排出されるのは腸内で発生したガスではなく、膣内に入り込んだ空気です。そのため、通常は便の臭いがなく、便や便汁が一緒に出ることもありません。
2026年6月更新の米国クリーブランド・クリニックの解説でも、膣内ガスは性交渉や運動などに伴う一般的な現象とされる一方、悪臭、痛み、膿や便の漏出を伴う場合は医療機関への相談が勧められています。
つまり、膣から空気が出ることと、膣から便や腸内ガスが出ることは区別して考える必要があります。特に便臭を伴う場合や、便汁が漏れる場合は、単なる膣内ガスとして片付けないでください。
【原因を徹底整理】出産後の会陰裂傷・クローン病・手術後の合併症
1.出産時の会陰裂傷や肛門括約筋の損傷直腸腟瘻の代表的な原因の一つが、経膣分娩に伴う産科的損傷です。
出産時には赤ちゃんが産道を通過するため、膣と肛門の間にある会陰部に大きな負担がかかります。裂傷が深くなり、直腸や肛門括約筋まで損傷すると、直腸と膣の間の組織が十分に修復されず、瘻孔が形成されることがあります。
特に注意したいのが、第3度・第4度会陰裂傷です。
- 第3度会陰裂傷:肛門括約筋まで損傷が及んだ状態。
- 第4度会陰裂傷:肛門括約筋だけでなく、直腸の粘膜まで損傷が及んだ状態。
第4度の損傷では直腸と膣の間の組織が大きく傷つくため、修復後の感染や創部の離開などによって直腸腟瘻が生じる可能性があります。
出産直後に症状がなくても、傷の治癒過程で異常な通路が形成され、時間が経ってから便やガスの漏出に気づく場合もあります。
ただし、出産経験があるからといって直腸腟瘻になるわけではありません。通常の経膣分娩後に膣から便が出るのは一般的なことではなく、症状があれば確認が必要です。
2.クローン病などの炎症性腸疾患もう一つの重要な原因が、クローン病です。
クローン病は消化管のさまざまな部位に慢性的な炎症が起こる病気です。炎症が腸壁の深い部分まで及ぶことがあり、周辺組織へ広がると、腸と別の臓器をつなぐ瘻孔が形成されることがあります。
直腸周辺に炎症が広がった場合には、膣との間に瘻孔ができる可能性があります。
ただし、クローン病の患者すべてに直腸腟瘻が発生するわけではありません。米国メイヨー・クリニックも、クローン病は重要な危険因子であるものの、大多数の患者が直腸腟瘻を発症するわけではないと説明しています。
日本炎症性腸疾患学会などの関連研究班による2024年3月改訂の「潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針」では、クローン病の肛門病変について、局所の状態だけでなく腸管全体の炎症活動性や肛門機能を評価する必要性が示されています。
同指針の直腸・肛門管と膣を結ぶ瘻孔に関する項目では、便やガスの排出が多い場合に外科治療を考慮するとされています。クローン病が背景にある場合、消化器内科と大腸肛門外科などによる連携が欠かせません。
3.骨盤内手術後の合併症膣、直腸、肛門、会陰部などを対象とする手術の後に、直腸腟瘻が発生することもあります。
考えられる背景には、次のようなものがあります。
- 婦人科領域の骨盤内手術。
- 直腸や大腸の手術。
- 骨盤臓器脱に対する手術。
- 膣後壁や会陰部に関係する手術。
- 手術後の感染や組織の血流障害。
手術中に直腸や膣の組織が損傷した場合だけでなく、術後の感染、縫合不全、組織の治癒不良などによって瘻孔が形成されることもあります。
なお、骨盤内の手術を受けた人すべてに発生する合併症ではありません。手術内容や周辺組織の状態によってリスクは異なります。
4.放射線治療・憩室炎・感染症などそのほか、骨盤内のがんや放射線治療による組織障害、憩室炎、周辺組織の感染や膿瘍なども原因になります。
放射線治療では組織に慢性的な障害が残り、時間が経過してから瘻孔が形成されることがあります。また、大腸憩室炎などによる炎症や膿瘍が周辺組織へ広がり、直腸と膣の間に通路を作るケースもあります。
したがって、原因を調べる際には出産歴だけでなく、過去の手術、放射線治療、炎症性腸疾患、感染症の既往なども重要な情報になります。
【症状を比較】直腸腟瘻が疑われるサインと原因の関係
膣から便が出るという症状は、患者にとって非常に不安を感じやすいものです。しかし、原因を特定するには、排出物の性状だけでなく、いつから症状が始まったのか、何をきっかけに発生したのかを整理することが役立ちます。
代表的な原因と確認したいポイントを
| 原因・背景 | 確認したい症状や経緯 | 主な評価・検査 |
|---|---|---|
| 出産時の会陰裂傷 | 経膣分娩後の便・ガス漏れ、会陰部の傷の治癒不良 | 産婦人科診察、肛門括約筋の評価、MRI |
| クローン病 | 慢性的な下痢、腹痛、肛門周囲の炎症や膿瘍 | 大腸内視鏡、MRI、血液検査 |
| 骨盤内手術後 | 手術後の感染、便汁の漏出、創部の治癒不良 | CT、MRI、内視鏡、局所診察 |
| 放射線治療後 | 骨盤内治療歴、慢性的な炎症や組織障害 | MRI、CT、必要に応じた組織検査 |
| 膣内に空気が入る生理的現象 | 性交渉や運動後に無臭の空気だけが出る | 症状に応じた婦人科診察 |
この表は原因を考えるための整理であり、症状だけで診断を確定するものではありません。実際には複数の原因が重なっている場合もあり、診察や画像検査によって判断します。
自己判断を避けたい症状の組み合わせ特に注意したいのは、次のような症状が重なっているケースです。
- 膣から便または便汁が出る。
- 膣から出るガスに便のような臭いがある。
- 悪臭のある分泌物が続いている。
- 出産や骨盤内手術の後から症状が始まった。
- 膣や会陰部の炎症を繰り返している。
- クローン病の治療中に新たな漏出症状が現れた。
これらが見られる場合は、直腸腟瘻を含めた原因の確認が必要です。特に便が膣から出ている場合は、症状が少量でも早めに受診してください。
発熱、悪寒、強い会陰部痛、腫れ、膿の排出、強い腹痛などを伴う場合は、膿瘍や感染症などの可能性もあるため、当日中に医療機関へ相談することが望まれます。急激に体調が悪化している場合は救急受診も検討してください。
【診断と検査】直腸腟瘻はどのように発見される?
1.問診と婦人科・肛門科での診察診断の第一歩は、症状の経過を詳しく確認することです。
医師は、便やガスが膣から出始めた時期、排出物の量や臭い、出産歴、手術歴、クローン病などの既往歴を確認します。
その後、膣、肛門、会陰部の状態を観察します。膣鏡を使用して膣内を確認したり、直腸診によって直腸側の異常を調べたりすることがあります。
瘻孔が小さい場合、通常の診察では確認しにくいこともあります。その場合は追加の検査が必要です。
2.MRI・CTによる画像検査MRI検査は、直腸と膣の間にある軟部組織や炎症の範囲を確認するために役立ちます。瘻孔の位置や周辺組織の状態、膿瘍の有無などを評価できます。
CT検査では、骨盤内の炎症や感染、周辺臓器の状態などを確認します。原因となる病気を調べるうえでも有用です。
どちらを選択するかは、疑われる原因や症状、施設の診療体制によって異なります。
3.大腸内視鏡・肛門機能検査クローン病や大腸の炎症性疾患が疑われる場合は、大腸内視鏡検査によって腸管内の状態を確認することがあります。必要に応じて組織を採取し、炎症の性質を調べます。
また、出産時の損傷が疑われる場合には、肛門括約筋が正常に機能しているかどうかも重要です。肛門内圧検査や経肛門的超音波検査などによって、筋肉の損傷や機能低下を評価することがあります。
日本のクローン病肛門病変治療指針でも、内視鏡、瘻孔造影、CT、MRI、経肛門的超音波検査などを用いた局所評価と、肛門括約筋機能の確認が示されています。
4.検査は恥ずかしい?痛みや負担はある?膣や肛門の診察に抵抗を感じる人は少なくありません。しかし、直腸腟瘻の治療方針を決めるには、瘻孔の位置や大きさを把握することが欠かせません。
診察方法は症状や必要性に応じて選ばれます。検査内容について不安がある場合は、事前に医師へ伝えて構いません。
通常の診察で瘻孔を確認できない場合や、詳しい評価が必要な場合には、麻酔下で肛門や直腸を詳しく調べる検査が検討されることもあります。
【治療方法を解説】直腸腟瘻は自然治癒する?手術と回復の実態
直腸腟瘻は自然に治る可能性がある?直腸腟瘻は、すべてのケースで必ず手術が必要になるわけではありません。瘻孔の大きさ、原因、周辺組織の健康状態によっては、自然に閉鎖する可能性があります。
例えば、小さく浅い瘻孔で、炎症や感染がなく、組織の損傷が限定的な場合には、経過観察を含めた保存的な対応が検討されます。
米国メイヨー・クリニックの2025年12月23日付の解説では、治療開始後に周辺組織の状態を整えるため、手術まで3〜6か月程度待機することがあると説明されています。この期間には、瘻孔が自然に閉鎖するかを確認する意味もあります。
ただし、これはすべての患者に適用される一律の待機期間ではありません。感染や膿瘍がある場合、症状が強い場合、クローン病や放射線障害が背景にある場合などは、異なる治療計画が必要です。
便やガスの漏出が続いているのに、自然に治ることを期待して長期間放置するのは避けてください。
保存的治療で行われること瘻孔の状態によっては、まず感染や炎症をコントロールすることが優先されます。
- 抗菌薬:周辺組織に細菌感染がある場合に使用する。
- 感染部位の排膿:膿瘍がある場合には、必要に応じて排膿処置を行う。
- 原因疾患の治療:クローン病などの炎症性疾患を適切に管理する。
- 排便管理:便秘や下痢を調整し、局所への負担を軽減する。
- 局所の衛生管理:膣周辺や会陰部を清潔に保ち、皮膚炎などを防ぐ。
なお、保存的治療は必ずしも瘻孔そのものを閉じる方法ではありません。感染を抑えたり、手術に適した組織の状態を整えたりする目的で行われることがあります。
直腸腟瘻の手術にはどのような方法がある?自然閉鎖が期待できない場合や、便・ガスの漏出が続く場合には、外科的な修復手術が検討されます。
代表的な方法には次のものがあります。
1.瘻孔切除・縫合閉鎖
異常な通路を切除し、直腸側と膣側の組織をそれぞれ修復する方法です。周辺組織の状態や瘻孔の位置を確認しながら実施されます。
2.Advancement Flap法(前進皮弁法)
周囲の健康な組織を移動させ、瘻孔の開口部を覆う方法です。経肛門的または経膣的に実施されることがあります。
クローン病に関連する直腸腟瘻でも、症例に応じて選択される外科的治療の一つです。
3.肛門括約筋の修復
出産時の会陰裂傷などによって肛門括約筋が損傷している場合は、瘻孔の修復と併せて括約筋の再建を検討することがあります。
4.人工肛門の造設
重症例や再発例、感染や組織損傷が強い症例では、便が修復部位を通過しないようにするため、一時的な人工肛門を造設することがあります。
人工肛門はすべての患者に必要な処置ではありません。病状や手術の難易度によって必要性が判断されます。状態が改善すれば閉鎖できる場合もありますが、必ず閉鎖できるとは限りません。
手術後の回復期間と再発予防直腸腟瘻の手術後は、傷の治癒状況や便・ガスの漏出が改善したかを継続的に確認します。
回復期間は、瘻孔の大きさ、手術方法、感染の有無、クローン病などの基礎疾患、肛門括約筋の状態によって異なります。そのため、一律に何週間で完治すると断定することはできません。
術後は医師の指示に従って、排便状態を整えることが大切です。便秘による強いいきみや、下痢による頻繁な刺激を避けるため、食事や水分摂取、必要に応じた薬剤の調整を行います。
また、局所を清潔に保つことも大切です。米国メイヨー・クリニックでは、ぬるま湯で外陰部を優しく洗い、刺激の強い石けんや香料入り製品を避け、十分に乾燥させることなどをセルフケアとして紹介しています。
手術で瘻孔を閉鎖できても、原因疾患の活動性が高い場合や周辺組織の状態が悪い場合には、再発や治癒の遅れが起こる可能性があります。術後の定期診察は欠かせません。
【受診先はどこ?】産婦人科と肛門科・大腸肛門外科の違い
膣から便が出たら最初に行くべき診療科膣から便や便汁が出ている場合、相談先として考えられるのは産婦人科と肛門科・大腸肛門外科です。
どちらを受診してもよい場合がありますが、それぞれ得意とする診療領域が異なります。
産婦人科は、膣や子宮、会陰部など女性生殖器の状態を確認する診療科です。出産後から症状が始まった場合や、膣内の異常な分泌物が気になる場合には相談しやすい窓口です。
肛門科・大腸肛門外科は、直腸、肛門、肛門括約筋、肛門周辺の疾患を専門的に診療します。直腸腟瘻の位置や肛門括約筋の損傷を調べ、外科的な修復を検討する際に重要な診療科です。
施設によっては、婦人科医と大腸肛門外科医が連携して治療を進めます。
クローン病がある場合は消化器内科にも相談クローン病と診断されている人は、普段から通院している消化器内科にも早めに連絡してください。
直腸腟瘻の治療では、瘻孔だけでなく腸管の炎症がどの程度活動しているかも重要です。消化器内科による薬物治療と、肛門科・大腸肛門外科による局所治療を組み合わせることがあります。
症状が出ているのに、普段のクローン病の診察日まで待つ必要はありません。新しい便漏れや膣からのガスの排出があれば、早めに主治医へ伝えましょう。
受診前に整理しておきたい5つの情報診察をスムーズに進めるために、次の情報を整理しておくと役立ちます。
- 症状が始まった時期:出産直後なのか、手術後なのか、突然始まったのか。
- 排出物の種類:便、便汁、透明な液体、膿、ガスのどれに近いか。
- 症状の頻度:毎日なのか、排便後だけなのか、性交渉や運動後だけなのか。
- 過去の病歴:出産時の会陰裂傷、クローン病、骨盤内手術、放射線治療などの有無。
- 併発症状:発熱、腹痛、会陰部痛、下痢、便秘、悪臭などの有無。
排出物の写真や症状の記録が診察の参考になることもあります。ただし、無理に撮影したり、膣内を自分で調べたりする必要はありません。
また、膣内に器具を入れたり、洗浄液で内部を洗ったりする自己処置は避けてください。
【誤解を解消】膣から便が出る症状について知っておきたい要点
誤解1:膣からガスが出れば必ず直腸腟瘻なのかこれは正しくありません。
性交渉、運動、ヨガ、姿勢の変化などで膣内に空気が入り、その空気が出ることは珍しくありません。臭いのない空気だけが一時的に排出され、ほかの症状がなければ、生理的な現象である可能性があります。
ただし、ガスが頻繁に出る、便臭がする、膿や便汁を伴う、性交時に痛むといった場合には、婦人科で相談してください。
誤解2:出産から時間が経っていれば関係ないのか出産時の損傷が原因であっても、症状が出る時期には個人差があります。
傷の治癒過程で問題が生じたり、組織の状態が変化したりすることで、出産から時間が経過してから症状に気づくこともあります。
出産から数年経っている場合でも、経膣分娩時の重度会陰裂傷や修復手術の既往は診断に役立つ情報です。
誤解3:直腸腟瘻は必ず人工肛門になるのか人工肛門が必要になるのは、主に複雑な瘻孔、再発例、重度の感染や組織障害など、特定の状況です。
比較的小さな瘻孔や、局所的な修復が可能なケースでは、瘻孔切除や縫合、前進皮弁法などによって治療できる場合があります。
治療方法は、瘻孔の大きさだけでなく、原因疾患、組織の状態、肛門括約筋の機能などを総合して決定されます。
誤解4:症状が軽ければ放置しても問題ないのか少量の便汁やガスしか出ていなくても、直腸と膣の間に異常な通路が存在する可能性はあります。
放置すると、膣炎、皮膚炎、尿路感染症、慢性的な不快感などにつながることがあります。症状が軽いうちに診断を受けることで、治療の選択肢を検討しやすくなります。
また、便漏れの原因が直腸腟瘻ではなく、肛門括約筋の損傷や便失禁である場合もあります。原因を区別することが適切な治療につながります。
【よくある質問】膣から便が出る症状に関するFAQ
Q1:膣から便が出るのは、どんな病気が原因ですか?
A1:代表的な原因の一つは直腸腟瘻です。直腸と膣の間に異常な通路ができ、便やガスが膣から漏れます。出産時の会陰裂傷、クローン病、骨盤内手術、放射線治療などが関係する場合があります。
Q2:膣からおならのようなガスが出るだけでも受診が必要ですか?
A2:性交渉や運動後に無臭の空気が出るだけなら、生理的な膣内ガスの可能性があります。ただし、頻繁に繰り返す場合や、便臭、痛み、膿、便汁などを伴う場合は産婦人科で相談してください。
Q3:膣から便汁が漏れる場合、直腸腟瘻の可能性は高いですか?
A3:直腸腟瘻を疑う重要な症状です。ただし、肛門からの便漏れが膣周辺に付着している可能性などもあります。婦人科診察や肛門・直腸の診察によって排出経路を確認する必要があります。
Q4:直腸腟瘻は自然に治りますか?
A4:小さく浅い瘻孔などでは自然閉鎖する場合があります。しかし、組織の損傷が大きい場合や、慢性的な炎症、感染がある場合には自然治癒が難しく、手術が必要になることがあります。医師による経過観察が必要です。
Q5:直腸腟瘻の手術をすれば完全に治りますか?
A5:手術によって症状の改善や瘻孔の閉鎖が期待できます。ただし、原因疾患や組織の状態によっては再発することもあります。術後の経過観察と、クローン病などの基礎疾患の管理が大切です。
Q6:膣から便が出た場合、産婦人科と肛門科のどちらに行けばよいですか?
A6:どちらも相談先になります。出産後の症状や膣の異常が気になる場合は産婦人科、直腸や肛門の異常、便漏れが気になる場合は肛門科・大腸肛門外科が適しています。必要に応じて両方の診療科が連携します。
Q7:直腸腟瘻の検査ではMRIや大腸内視鏡が必要ですか?
A7:全員に同じ検査が必要なわけではありません。診察で瘻孔が確認できない場合や、周辺組織の状態を詳しく調べる必要がある場合にはMRIやCTが検討されます。クローン病などが疑われる場合は大腸内視鏡検査を行うこともあります。
Q8:膣から便が少しだけ出る場合も病院に行くべきですか?
A8:はい。少量であっても、便や便汁が膣から出る場合は早めに受診してください。排出量が少ないからといって、瘻孔がないとは判断できません。
膣から便や便汁が出る症状には、直腸腟瘻が関係している可能性があります。直腸と膣の間に異常な通路が形成されることで、便や腸内ガスが膣から排出される状態です。
主な原因としては、出産時の会陰裂傷、クローン病などの炎症性腸疾患、骨盤内手術後の合併症、放射線治療による組織障害などが挙げられます。
一方、膣から空気が出るだけなら、性交渉や運動に伴う生理的な現象の場合もあります。便や便汁が混じっているか、臭いがあるか、痛みや炎症を伴うかなどが確認のポイントです。
診断では、婦人科や肛門科での診察を基本として、必要に応じてMRI、CT、大腸内視鏡、肛門機能検査などが行われます。治療は原因と瘻孔の状態によって異なり、保存的な対応から外科手術まで選択肢があります。
【プロの結論】
膣から便が出る症状で最も大切なのは、恥ずかしさから受診を先延ばしにしないことです。排出量が少なくても、便臭のある液体や便が膣から出ている場合は、直腸腟瘻などの異常が隠れている可能性があります。
自然治癒するケースもありますが、すべての瘻孔が自然に閉鎖するわけではありません。特にクローン病や出産時の重度損傷が関係している場合には、原因疾患と局所の状態を一緒に評価する必要があります。
産婦人科、肛門科・大腸肛門外科、必要に応じて消化器内科が連携し、原因に合った治療を選ぶことが回復への第一歩です。膣から便や便汁が出る、便臭のするガスが繰り返し出るといった変化があれば、早めに医療機関へ相談してください。
主な参考資料・医学的根拠
- 米国メイヨー・クリニック「Rectovaginal fistula:Symptoms and causes」(2025年12月23日更新)
- 米国メイヨー・クリニック「Rectovaginal fistula:Diagnosis and treatment」(2025年12月23日更新)
- 日本炎症性腸疾患学会などの関連研究班「潰瘍性大腸炎・クローン病診断基準・治療指針」(2024年3月改訂)
- 米国大腸肛門外科学会(ASCRS)「直腸腟瘻を含む肛門直腸疾患の診療ガイドライン」(2022年)
- 米国クリーブランド・クリニック「Vaginal Gas」(2026年6月19日更新)
※本記事は医学情報の一般的な解説です。症状だけで病名を確定することはできません。個別の診断や治療については医療機関で相談してください。