右翼団体とは、日本の伝統、国家、皇室、国益、歴史認識などを重視する政治的・思想的な立場を掲げ、街頭宣伝や抗議活動、講演会、機関紙の発行などを行う団体の総称です。ただし、すべての右翼団体が同じ思想を持っているわけではありません。暴力団との関係がない団体、暴力団が組織運営に関与する団体、民族派学生運動を源流とする新右翼など、組織の成り立ちや活動目的は大きく異なります。
2026年現在、警察庁の「令和7年版警察白書」と公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望(令和8年版)」は、右翼団体の歴史的な系譜、街宣活動、暴力団との関係、違法行為への対応を整理しています。特に重要なのは、右翼思想を持つことと、違法な活動を行うことは別問題だという点です。玄洋社から続く日本の右翼運動の歴史をたどりながら、現在の組織構造と合法的な政治活動との境界を解説します。
【基本知識】右翼団体とは?定義・意味と思想の特徴を解説

右翼団体とは、国家や民族、皇室、伝統文化、国の主権などを重視する思想を掲げ、政治的な主張や社会運動を展開する組織を指します。
「右翼」という言葉は、もともと政治的な立場を表す概念です。一般的には、既存の伝統や秩序を重視する保守的な立場、国家や民族の独立性を重視する国家主義的な立場などを指します。
一方、日本で「右翼団体」という場合、単に保守的な意見を持つ人々ではなく、一定の組織性を持って政治活動や社会運動を展開する団体を意味することが多くあります。
なお、右翼団体という名称そのものが、特定の犯罪組織や法律上の禁止団体を意味するわけではありません。思想、組織形態、活動内容を区別して理解する必要があります。
右翼団体が掲げる主な思想と主義主張右翼団体の思想は団体によって異なりますが、代表的な主張には次のようなものがあります。
- 国家主義:国家の独立、主権、安全保障、国益を重視する考え方。
- 民族主義:民族の歴史、文化、伝統、共同体としての一体性を重視する思想。
- 皇室尊重:皇室や天皇を日本の歴史・伝統・国家の象徴として重視する考え方。
- 自主憲法制定論:日本独自の憲法を制定すべきだとする主張。
- 反共主義:共産主義や社会主義的な政治体制に反対する立場。
- 自主外交・自主防衛:外国への過度な依存を避け、日本の外交・防衛上の自立性を高めようとする考え方。
- 対外強硬論:領土問題や歴史認識問題などについて、外国政府に厳しい姿勢を求める主張。
ただし、これらすべてを一つの団体が掲げているわけではありません。親米的な立場を取る団体もあれば、アメリカの対日政策を批判する団体もあります。反米・反安保を掲げる民族派の団体も存在します。
また、国家主義と経済政策は必ずしも同じ方向を向くとは限りません。国家による経済介入を重視する民族主義者もいれば、市場経済や小さな政府を支持する右派もいます。
東京大学大学院公共政策学研究部の谷口将紀教授が執筆したNIRA総合研究開発機構の2026年の研究報告でも、日本の政治的な左右の対立軸は、欧米とは異なる特徴を持つと分析されています。特に憲法改正、安全保障、歴史観、原子力発電などが日本独自の主要な争点として位置づけられています。
つまり、右翼という言葉だけで、その団体の具体的な政策や活動方針まで判断することはできません。
【歴史を振り返る】玄洋社から新右翼まで、日本の右翼運動の変遷
1881年に結成された玄洋社が源流日本の近代右翼運動を語る際、重要な存在として挙げられるのが玄洋社です。
玄洋社は1881年(明治14年)、福岡で結成された国家主義的な政治団体です。中心人物には平岡浩太郎、頭山満、箱田六輔らがいました。
その前身は1879年に結成された向陽社です。向陽社は国会開設請願運動などに参加していましたが、玄洋社へ改称した後は、次第に国権主義やアジア主義を重視する方向へと進みました。
玄洋社が掲げた基本理念として知られるのが、皇室の敬戴、本国の愛重、人民権利の固守です。国家の独立と国民の権利を結び付けて考える思想が、その背景にありました。
国立国会図書館の「近代日本人の肖像」によると、頭山満は民権運動にも参加した後、向陽社の結成に関わり、玄洋社への改称後は国権論やアジア主義の主張を強めました。
ただし、玄洋社の活動を現代の一般的な保守政治活動と同一視することはできません。対外強硬論や海外での政治工作など、現在の民主主義社会とは異なる政治的手法も取っていました。
玄洋社は1946年、第二次世界大戦後のGHQによる占領政策の下で解散しました。
昭和初期から戦後にかけての右翼運動昭和初期には、経済政策や外交政策をめぐって政府を批判する国家主義的な運動が広がりました。
当時の一部の右翼勢力は、政府の外交方針を弱腰だと批判し、政治体制の変革を求めました。その一方で、政治家や政府関係者を標的とする暗殺事件など、暴力的な行動も発生しました。
1930年の浜口雄幸首相狙撃事件、1932年の五・一五事件、1936年の二・二六事件などは、当時の国家主義運動や軍部の政治的動向を理解するうえで重要な歴史的事件です。
戦後はGHQの占領政策によって右翼団体が解散させられ、指導者の一部も公職追放などの措置を受けました。その後、占領政策の転換に伴い、右翼指導者の公職復帰や団体の再建が進みました。
1970年代に登場した新右翼新右翼とは、昭和40年代の民族派学生運動を源流とする右翼運動の一系統です。
1960年代後半から1970年にかけて、大学紛争や第二次安保闘争が激化するなか、既存の右翼団体とは異なる思想や行動様式を持つ民族派学生運動が存在感を強めました。
1970年11月25日の三島事件も、その後の運動に影響を与えました。三島由紀夫と楯の会の学生長・森田必勝が死亡した事件を受け、民族派学生運動の経験者らが新たな団体を結成し、マスメディアが「新右翼」と呼ぶようになったと公安調査庁は説明しています。
新右翼の代表的な思想的特徴には、戦後体制の打破、反米、反安保などがあります。活動としては学習会、集会、デモ行進、街頭宣伝などが挙げられます。
1970年代後半から1980年代にかけての変化公安調査庁の令和8年版資料では、高度経済成長の終わりによって資金難に陥った右翼団体の一部が、資金や人脈を求めて暴力団と関係を持つようになり、そのような団体が勢力を伸ばした経緯も説明されています。
この時期の変化は、現在の右翼団体を理解するうえでも重要です。思想的な主張を中心とする政治結社と、資金獲得や勢力誇示を目的に活動する組織が、同じ「右翼団体」という言葉で語られるようになった背景の一つだからです。
平成から令和にかけては、中国、韓国、北朝鮮、ロシアなどをめぐる外交・領土問題を取り上げた抗議活動が継続しています。
【組織の種類を比較】非暴力団系・暴力団系・新右翼の違い
右翼団体を理解するうえで欠かせないのが、組織の成り立ちによる分類です。
公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望(令和8年版)」は、現在の右翼団体について、非暴力団系右翼団体、暴力団系右翼団体、新右翼という主な系統を紹介しています。
以下は、同庁の資料に基づく分類と、警察庁が別項目で取り上げる右派系市民グループなどを整理した比較です。
| 分類・関連組織 | 成り立ち・思想 | 主な活動・特徴 | 暴力団との関係 |
|---|---|---|---|
| 非暴力団系右翼団体 | 戦前の皇道主義を基本理念とする右翼運動の系譜 | 神事、学習会、機関紙発行、街宣活動など | 公安調査庁の分類上、暴力団の関与が見られない |
| 暴力団系右翼団体 | 暴力団の関与によって結成・吸収された団体など | 街宣車を利用した勢力誇示や街頭宣伝活動など | 暴力団が組織運営に関与 |
| 新右翼 | 昭和40年代の民族派学生運動が源流 | 学習会、集会、デモ、街宣活動など | 団体ごとに異なり、一律には分類できない |
| 右派系市民グループ | 極端な民族主義・排外主義的主張などを掲げるグループ | デモ、街頭宣伝、外国公館などへの抗議活動 | 右翼団体とは別の分類として警察庁が扱う |
| 左翼団体 | 社会主義、共産主義、社会変革などを掲げる政治勢力 | 労働運動、集会、デモ、政策要求など | 右翼団体とは異なる政治思想上の分類 |
この分類で特に注意したいのが、「非暴力団系」という言葉の意味です。
これは暴力団との組織的な関係が見られないという意味であり、団体の構成員が絶対に暴力を振るわないという意味ではありません。暴力団との関係の有無と、実際の活動が合法か違法かは、別々に判断する必要があります。
また、新右翼という呼称も、単純に新しい右翼団体という意味ではありません。特定の歴史的背景と思想的な系譜を持つ運動を指しています。
【暴力団との関係と街宣活動】右翼団体の実態・活動目的とは
右翼団体と暴力団は同じ組織なのか右翼団体と暴力団は、本来、異なる概念です。
右翼団体は政治的・思想的な主張を掲げる組織であり、暴力団は暴力団対策法などで定義される組織犯罪集団です。思想的な立場と組織の犯罪性は区別されなければなりません。
ただし、実際には両者が関係するケースもあります。
警察庁の令和7年版警察白書は、右翼団体の中には幹部の多くが暴力団員や元暴力団員である組織や、暴力団そのものが右翼団体を標榜するケースが存在すると説明しています。
こうした組織の一部では、政治的な主張を掲げながら、恐喝や詐欺などによって資金を獲得しようとする違法行為が問題になっています。
つまり、右翼団体を名乗っているからといって、純粋な政治活動を目的とした組織であるとは限りません。反対に、暴力団との関係がない右翼団体まで犯罪組織として扱うことも適切ではありません。
街宣活動とは何をする活動なのか街宣活動とは、街頭宣伝活動の略称です。街頭宣伝車や拡声器、演説などを利用して、政治的な主張や抗議の意思を社会に伝える活動を指します。
右翼団体による代表的な街宣活動のテーマには、次のようなものがあります。
- 尖閣諸島などの領土問題に関する主張
- 竹島問題や歴史認識問題に関する抗議
- 北朝鮮による弾道ミサイル発射や拉致問題への抗議
- 北方領土問題やロシアの対日政策への批判
- 自主憲法制定や安全保障政策に関する主張
- 靖国神社参拝や戦没者慰霊に関する活動
警察庁の資料によれば、令和6年には中国、ロシア、北朝鮮、韓国、政府関連の問題を取り上げた街頭宣伝活動などが行われました。
活動に動員された団体、人数、街頭宣伝車の延べ数も公表されています。例えば中国関連の活動では、動員団体数が約1,310、動員人数が約3,060人、動員車両数が約910台でした。これらは実数ではなく、活動テーマ別の延べ数です。
企業に対する糾弾活動と資金獲得問題街宣活動のなかでも、特に問題視されているのが企業に対する糾弾活動です。
警察庁の資料では、一部の右翼が資金獲得を目的として、企業に対し街頭宣伝車を用いた大音量の宣伝活動を執拗に行う実態が紹介されています。
こうした行為は、騒音被害や交通渋滞を引き起こし、市民生活に影響を及ぼす可能性があります。
令和6年中に糾弾活動の対象となった企業は、延べ約80社、実数で約30社でした。同資料は、全国の右翼の街頭宣伝車を約800台と推計しています。
ただし、企業への抗議活動すべてが犯罪になるわけではありません。問題となるのは、恐喝や脅迫、業務妨害などの違法な手段を伴う場合です。
【2026年最新動向】警察庁の検挙統計と公安調査庁の公表情報
警察庁の令和7年版警察白書が示す検挙実績右翼団体の活動実態を数字で把握するために重要なのが、警察庁の「令和7年版警察白書」です。
同白書に掲載された令和6年(2024年)の実績は、右翼運動に伴う事件の検挙件数が45件、検挙人員が52人でした。
また、資金獲得を目的とした恐喝事件や詐欺事件などについては、49件・53人が検挙されています。
加えて、悪質な街頭宣伝活動に関しては、暴力行為等処罰法違反などで7件・8人が検挙され、右翼及びその周辺者から拳銃3丁が押収されました。
数字を読み解く際には、それぞれの統計が別の分類で集計されていることに注意が必要です。45件と49件を単純に足して、右翼団体による犯罪の総数とすることはできません。
- 45件・52人:右翼の街頭宣伝活動や抗議行動などに伴う事件の検挙。
- 49件・53人:恐喝・詐欺など、資金獲得を目的とした事件の検挙。
- 7件・8人:悪質な街頭宣伝活動に対する暴力行為等処罰法違反などの検挙。
- 3丁:右翼及びその周辺者から押収された拳銃。
これらは2026年の発生件数ではなく、令和7年版警察白書が公表した2024年の実績です。最新の公表資料を読む際には、発行年と統計対象年を分けて理解する必要があります。
右派系市民グループのデモ活動も別に集計警察庁は右翼団体だけでなく、右派系市民グループについても独立した項目を設けています。
令和6年には、極端な民族主義や排外主義的な主張を掲げる右派系市民グループが、韓国や北朝鮮をめぐる問題などを取り上げ、全国で約20件のデモを実施しました。
その活動に対しては、ヘイトスピーチに当たると批判するグループによる抗議も行われています。
警察は双方の対立によって発生するトラブルを防ぐため、厳正公平な立場で警備措置を講じ、違法行為が確認された場合には法と証拠に基づいて対応するとしています。
公安調査庁の2026年公表情報で確認できる動向2026年の重要資料が、公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望(令和8年版)」です。
同資料は2026年版ですが、国内外の情勢については主に2025年の動向を振り返った内容です。したがって、2026年の実際の活動状況を知るには、同庁が毎月公表している「最近の内外情勢」も併せて確認する必要があります。
令和8年版では、右翼団体が近隣諸国との問題や領土問題を取り上げ、中国、ロシア、韓国などを批判する活動を行ったことが記されています。
2025年の活動例として、次のようなものが紹介されています。
- 中国関連:尖閣諸島周辺の中国海警局船舶の動向などを取り上げ、在日中国公館周辺で抗議活動を実施。
- ロシア関連:北方領土の日や北方領土問題を取り上げ、ロシアに対する抗議活動を実施。
- 韓国関連:金沢市内で計画された尹奉吉追悼館の設立をめぐり、設立中止を求める抗議活動を展開。
- 日米関係:米国大統領の来日に際し、日米同盟の強化を支持する活動と、対米従属を批判する活動の双方を実施。
同資料は、右翼団体の思想や活動方針が必ずしも一枚岩ではないことも示しています。特に対米関係については、日米同盟を支持する団体と、対米従属を批判する団体が存在します。
2026年に確認された街宣・抗議活動公安調査庁の2026年の月次公表情報からも、活動の具体例を確認できます。
- 2月7日:北方領土の日に合わせ、全国各地で北方領土返還を訴える街宣活動を実施。
- 2月11日:建国記念の日に際し、紀元節を奉祝する街宣活動や神社参拝を実施。
- 5月3日:憲法記念日に合わせ、自主憲法制定を訴える街宣活動などを実施。
- 8月6日~9日:原爆の日に際して、米国による原爆投下を批判する街宣活動を実施。
- 8月15日:終戦の日に際し、靖国神社や護国神社への参拝、戦没者慰霊祭への参列などを実施。
- 8月21日~23日:愛知県で開催された教育関係労働組合の全国集会に対し、会場周辺で抗議活動を実施。
- 9月29日:反中共デーと称し、東京や大阪などで在日中国公館に対する抗議活動を実施。
これらは公安調査庁が2026年の月次情報として公表した個別の活動記録です。活動の回数や参加人数を示す全国総計ではありませんが、現在の右翼団体がどのような社会問題や国際情勢に反応しているかを把握する材料になります。
【右翼団体と左翼団体の違い】右派系市民グループとの関係も整理
右翼団体と左翼団体は何が違う?右翼と左翼は、政治思想を分類する際に使われる対立概念です。
その起源は18世紀のフランス革命期にさかのぼります。議会で、王政や従来の秩序を支持する勢力が議長席から見て右側に、急進的な改革を求める勢力が左側に座ったことに由来するとされています。
一般的には、右翼は国家や伝統、既存の社会秩序を重視する立場、左翼は平等や社会改革、既存の制度の変革を重視する立場として説明されます。
日本では、憲法改正、安全保障、歴史認識、皇室や靖国神社、原子力発電などが左右の政治的対立を理解するうえで重要な争点となっています。
ただし、右派だから経済的に自由主義、左派だから必ず社会主義という単純な分類はできません。国家主義、経済政策、社会文化的な価値観は、それぞれ別の軸で考える必要があります。
右派系市民グループは右翼団体と同じなのか右派系市民グループと右翼団体は、重なる部分があるものの、同じ意味ではありません。
警察庁は、令和7年版警察白書において「右翼の動向と対策」と「右派系市民グループをめぐる情勢と警察の対応」を別項目で取り扱っています。
前者は、歴史的な右翼運動の系譜を持つ組織や、組織的な右翼活動を行う団体を中心としています。一方、後者では、極端な民族主義や排外主義的な主張を掲げ、デモや街頭宣伝活動などを行う市民グループが取り上げられています。
そのため、右派的な政策を支持する市民、右翼団体の構成員、右派系市民グループの参加者を一括りにすることは適切ではありません。
特に、保守的な政治意見を持つことや、政府の外交政策に反対することだけで、右翼団体の構成員と判断することはできません。
【合法と違法の境界】街宣・抗議活動と警察の取締り
右翼思想や政治的主張そのものは違法なのか日本国憲法第21条は、集会、結社、言論、出版などの表現の自由を保障しています。
したがって、国家主義、民族主義、皇室尊重、憲法改正論、外交政策への批判などの思想を持つこと自体が、直ちに違法になるわけではありません。
政治的な主張を街頭で訴えることや、政府に抗議することも、法律に従って行われる限り、憲法上の表現活動として保護されます。
一方、表現の自由は、暴力や脅迫、恐喝、他人の権利を侵害する行為まで無条件に認めるものではありません。
違法行為として問題になる具体例右翼団体の活動に関連して、警察が取り締まる対象となる主な行為には次のようなものがあります。
- 恐喝:金銭を得る目的で相手を脅し、財産を交付させる行為。
- 詐欺:虚偽の説明などによって相手を欺き、金銭や財産を得る行為。
- 脅迫:生命、身体、自由、名誉、財産などへの害悪を告知する行為。
- 暴行・傷害:他人に暴力を加え、身体的な被害を与える行為。
- 威力業務妨害:威力を用いて企業や団体の正常な業務を妨げる行為。
- 公務執行妨害:公務員の職務執行に対して暴行や脅迫を加える行為。
- 政治資金規正法違反:政治団体の届出や政治資金の収支に関する法令上の義務に違反する行為。
- 道路交通法違反:道路使用や交通に関する規定に違反する行為。
警察庁の令和7年版警察白書には、2024年に右翼団体幹部が街頭宣伝車の不正車検に関して道路運送車両法違反で逮捕された事例や、政治団体の届出を行わずに街宣車の購入代金を支出したとして政治資金規正法違反で逮捕された事例が掲載されています。
こうした事例から分かるのは、違法性の判断は団体の思想ではなく、実際に行われた行為と適用される法律に基づいて行われるということです。
街頭宣伝やデモには許可が必要なのか街頭宣伝やデモの実施には、活動する場所や方法に応じて、道路使用許可や公安条例などの規制が関係する場合があります。
道路交通法第77条は、一般交通に著しい影響を及ぼすような道路の使用や、道路に人が集まり交通に影響を及ぼす行為などについて、一定の場合に所轄警察署長の許可を求めています。
また、都道府県ごとに集団示威運動や道路使用に関する条例・規則が設けられている場合があります。
そのため、街宣活動だから自由に道路を占有できるわけではなく、実施場所や活動方法に応じた手続きが必要です。
ヘイトスピーチ解消法との関係2016年に施行されたヘイトスピーチ解消法は、本邦外出身者に対する不当な差別的言動をなくすため、国や地方公共団体に相談体制の整備や教育・啓発活動などを求める法律です。
法務省の説明によれば、この法律自体にはヘイトスピーチに対する刑事罰は設けられていません。
しかし、差別的な言動に関連して脅迫、暴行、器物損壊、業務妨害などの犯罪が成立する場合は、別の法律による対応が行われます。
また、刑事罰の対象にならない言動であっても、社会的な批判や自治体による啓発、相談対応などの対象になる場合があります。
警察庁と公安調査庁の役割の違い右翼団体の動向を調べる際には、警察庁と公安調査庁の役割を区別することも重要です。
警察庁は、警察行政を担う機関として、全国の警察活動の調整や治安対策を行います。右翼団体による違法行為についても、各都道府県警察などと連携して情報収集や取締りを進め、警察白書などで情勢を公表しています。
公安調査庁は、破壊活動防止法や団体規制法などに基づき、公共の安全に関わる国内外の動向を調査・分析する機関です。収集した情報を政府関係機関に提供するほか、法律上の要件を満たす団体については、必要に応じて公安審査委員会に規制処分を請求する役割を担います。
公安調査庁が右翼団体の動向を資料に掲載していることは、その団体がすべて違法団体として指定されていることを意味しません。情報収集・分析の対象となることと、法的な規制処分を受けることは別の問題です。
【プロの結論】右翼団体を理解するために押さえたい判断基準
右翼団体を正しく理解するには、思想、組織、活動、法的評価という4つの観点を分けて考えることが重要です。
第一に、思想だけで団体の性格を判断しないことです。国家主義や民族主義を掲げる団体であっても、活動の目的や手段は異なります。保守的な政策を支持する一般市民と、組織的な右翼運動を行う団体も区別しなければなりません。
第二に、暴力団との関係を確認することです。非暴力団系と暴力団系では、組織の成り立ちや運営上の背景が異なります。ただし、暴力団との関係がないことだけで、活動がすべて合法だと判断することもできません。
第三に、主張の内容と実際の行動を分けることです。外交政策への抗議や憲法改正の主張は、原則として政治的表現活動です。一方、恐喝、脅迫、暴行、業務妨害などは、思想とは別に法律による判断を受けます。
第四に、情報源と統計の対象年を確認することです。警察庁の検挙統計は、実際の違法行為への取締り状況を知る資料です。公安調査庁の「内外情勢の回顧と展望」は、団体の系譜や思想、活動動向を理解するための資料です。両者は役割が異なるため、併せて読むことで全体像が見えてきます。
また、特定の団体について調べる際は、団体の公式な主張だけでなく、設立経緯、構成、活動履歴、暴力団との関係に関する公的情報、過去の検挙事例などを照らし合わせることが有効です。
【右翼団体の意味と活動】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:右翼団体とは簡単にいうと何ですか?
A1:国家、民族、皇室、伝統、国益などを重視する思想を掲げ、政治活動や社会運動を行う組織の総称です。街頭宣伝、抗議活動、講演会、機関紙の発行など、活動内容は団体によって異なります。
Q2:右翼団体はすべて暴力団と関係していますか?
A2:いいえ。公安調査庁は、暴力団の関与が見られない非暴力団系右翼団体と、暴力団が組織運営に関わる暴力団系右翼団体を区別しています。新右翼という別の系譜もあります。
Q3:右翼団体の街宣活動は違法ですか?
A3:政治的な主張を街頭で訴えること自体は、憲法上の表現の自由に関わる活動です。ただし、道路使用に関する規制に違反したり、脅迫、恐喝、暴行、業務妨害などを行ったりすれば、法律による取締りの対象になります。
Q4:玄洋社とはどのような団体ですか?
A4:1881年に福岡で結成された国家主義的な政治団体です。頭山満や平岡浩太郎らが中心人物として知られ、国権論やアジア主義を重視しました。1946年にGHQの占領政策の下で解散しました。
Q5:新右翼とは何ですか?
A5:昭和40年代の民族派学生運動を源流とする右翼運動の一系統です。戦後体制の打破や反米・反安保などを主張し、学習会、集会、デモ行進、街宣活動などを展開してきました。
Q6:2026年現在、右翼団体の活動はどのようなものがありますか?
A6:公安調査庁の2026年公表情報では、北方領土問題、日米関係、中国・ロシアに対する抗議、終戦の日の慰霊活動、憲法記念日の自主憲法制定に関する街宣活動などが確認されています。
Q7:右翼団体の検挙件数はどのくらいですか?
A7:警察庁の令和7年版警察白書によると、令和6年の右翼運動に伴う事件の検挙は45件・52人です。また、恐喝・詐欺などの資金獲得目的の事件は49件・53人でした。いずれも2024年の実績です。
右翼団体とは、国家、民族、皇室、伝統、国益などを重視する思想を掲げ、政治的な主張や社会運動を行う組織の総称です。その歴史は1881年に結成された玄洋社にまでさかのぼり、戦前の国家主義運動、戦後の団体再建、1970年代の新右翼の登場などを経て、現在に至っています。
現在の右翼団体には、非暴力団系右翼団体、暴力団系右翼団体、新右翼など異なる系譜が存在します。加えて、右翼団体とは別に、右派系市民グループも街頭宣伝やデモを展開しています。
2026年の情勢を理解するうえでは、警察庁の令和7年版警察白書と、公安調査庁の令和8年版「内外情勢の回顧と展望」が重要な資料です。警察庁は2024年の検挙実績を公表し、公安調査庁は2025年の動向や2026年の月次活動情報を公開しています。
最も重要なのは、右翼思想を持つこと、右翼団体に所属すること、違法行為を行うことを混同しないことです。政治的な思想や表現活動は憲法によって保障される一方、暴力や恐喝、脅迫、業務妨害などは法律による規制を受けます。
右翼団体をめぐるニュースや社会問題を読み解く際には、歴史的背景、組織の実態、実際の活動、法的な評価を分けて考えることが、正確な理解につながります。