卵巣がんになりやすい人には、家族に乳がんや卵巣がんを発症した人がいる、BRCA1・BRCA2遺伝子に病的な変化がある、リンチ症候群に該当するなど、遺伝的な要因を持つケースがあります。また、年齢や出産歴、初経・閉経の時期など、女性の生殖歴に関係する要因も発症リスクと関連しています。
2026年現在、日本では2023年の全国がん登録データとして、卵巣がんの新規罹患数は年間12,926人と報告されています。卵巣がんは初期症状が乏しく、一般的な検診による死亡率低下も証明されていないため、自分のリスクを正しく把握することが大切です。ここでは、国立がん研究センターの情報や日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構(JOHBOC)の2024年版診療ガイドライン、2026年度の制度変更を踏まえ、注意したい体質や家族歴、検査・予防の選択肢を整理します。
【まず確認】卵巣がんになりやすい人に見られる6つの特徴

卵巣がんの発症には、遺伝的要因、年齢、ホルモン環境、生殖歴など複数の要素が関係します。特定の特徴が1つあるだけで発症が決まるわけではありませんが、複数のリスク要因が重なる場合には、医療機関で相談する価値があります。
1.家族に卵巣がんや乳がんの経験者がいる卵巣がんのリスクを考えるうえで、重要なのが家族歴です。
特に、母親、姉妹、娘などの近い血縁者に卵巣がんを発症した人がいる場合や、同じ家系に若年性乳がん、両側乳がん、男性乳がんなどの発症者がいる場合には、遺伝性乳がん卵巣がん症候群(HBOC)の可能性を検討します。
ここで見落としたくないのは、父方の家族歴も確認する必要があるという点です。
BRCA1・BRCA2の病的バリアントは、父親から娘へも受け継がれます。父親自身に卵巣がんや乳がんの発症歴がなくても、父方の祖母や叔母、いとこなどに関連するがんの経験者がいる場合は、遺伝的な背景を考える手掛かりになります。
2.BRCA1・BRCA2遺伝子に病的バリアントがあるBRCA1とBRCA2は、細胞内でDNAの損傷を修復する働きに関係するがん抑制遺伝子です。
生まれつきこれらの遺伝子に病的バリアントがあると、乳がんや卵巣がんなどの発症リスクが高くなります。
BRCA1とBRCA2では、卵巣がんの発症リスクにも違いがあります。国立健康危機管理研究機構のMGenReviewsが紹介するデータでは、70歳までの卵巣がん累積罹患リスクは、BRCA1で約40%、BRCA2で約18%とされています。
ただし、これは集団データに基づく推定値です。遺伝子に病的バリアントがあっても、必ず卵巣がんになるわけではありません。
3.リンチ症候群と診断されているリンチ症候群は、MLH1、MSH2、MSH6、PMS2などのミスマッチ修復遺伝子に生まれつきの病的バリアントがあることで発症リスクが高まる遺伝性疾患です。
大腸がんや子宮体がんとの関連がよく知られていますが、卵巣がんも関連するがんの1つです。
国立健康危機管理研究機構のMGenReviewsでは、リンチ症候群の人が70歳までに卵巣がんを発症するリスクについて、遺伝子の種類などによって異なるものの、約6~14%と紹介されています。
家族に若年発症の大腸がんや子宮体がんが複数ある場合には、卵巣がんだけでなくリンチ症候群の可能性も視野に入れることが重要です。
4.50歳以上の中高年である卵巣がんは年齢とともに発症リスクが高まる傾向があります。
厚生労働省が2026年1月14日に公表した2023年全国がん登録の報告によると、日本で2023年に卵巣がんと診断された人は12,926人でした。
年齢階級別の罹患状況では50歳代に多く、閉経後の女性も注意したい年代です。ただし、若い年代でも発症することがあり、年齢だけで安全かどうかを判断することはできません。
5.出産経験がない、または不妊の経験がある出産経験がないことや不妊の経験も、上皮性卵巣がんのリスクと関連する要因として報告されています。
妊娠・出産によって排卵が一時的に停止することや、授乳期間中に排卵が抑制されることなどが、卵巣がんの発症リスクとの関連を説明する要素として研究されています。
ただし、出産経験がない女性が必ず卵巣がんになりやすいという意味ではありません。妊娠・出産の有無だけで個人のリスクを判断することはできず、妊娠しなかったことを本人の責任として捉える必要もありません。
6.初経が早く、閉経が遅い初経が早いことや閉経が遅いことは、生涯にわたる排卵回数が増える可能性と関係しています。
排卵を繰り返すことで卵巣や卵管周辺の組織が長期間にわたって影響を受けるという考え方があり、排卵回数と卵巣がんの発症リスクとの関連が研究されています。
ただし、初経年齢や閉経年齢は、個人の発症を予測できる検査項目ではありません。こうした特徴があっても、必要以上に不安を抱える必要はありません。
【家族歴と遺伝子】HBOC・BRCA1・BRCA2・リンチ症候群の関係
卵巣がんの遺伝的リスクを理解するうえで、特に重要なのがHBOCとリンチ症候群です。
国立がん研究センターのがん情報サービスによると、遺伝性腫瘍は、若い年齢での発症、同じ臓器や異なる臓器での複数回のがん発症、家系内で同じ種類のがんが複数見られることなどが特徴です。
HBOCとは?乳がんと卵巣がんの両方に関係する遺伝性疾患HBOC(遺伝性乳がん卵巣がん症候群)は、BRCA1またはBRCA2の生まれつきの病的バリアントによって、乳がんや卵巣がんなどの発症リスクが高まる遺伝性腫瘍症候群です。
BRCA1とBRCA2は、通常、細胞のDNA修復を助ける役割を担っています。しかし、病的バリアントによって正常な働きが損なわれると、細胞ががん化しやすい状態になります。
JOHBOCの情報によれば、HBOCは常染色体顕性遺伝の形式をとります。病的バリアントを持つ親から子どもへ受け継がれる確率は、子ども1人につき50%です。
また、BRCA1とBRCA2ではリスクの程度が異なり、一般に卵巣がんのリスクはBRCA1のほうが高いとされています。
家族のどのようながん歴に注意するべきか家族のがん歴を確認するときは、卵巣がんだけに注目するのではなく、乳がん、大腸がん、子宮体がんなども含めて確認することが大切です。
次の表は、主な遺伝性疾患と関連するがん、家族歴の見方を整理したものです。
| 関連する要因・疾患 | 主な関連遺伝子 | 関連するがん | 確認したい家族歴 |
|---|---|---|---|
| HBOC | BRCA1 | 卵巣がん・乳がん | 卵巣がん、若年性乳がん、両側乳がんなど |
| HBOC | BRCA2 | 卵巣がん・乳がん・膵臓がん・前立腺がんなど | 乳がん、卵巣がん、男性乳がん、膵臓がんなど |
| リンチ症候群 | MLH1・MSH2・MSH6・PMS2 | 大腸がん・子宮体がん・卵巣がんなど | 若年発症の大腸がん、子宮体がんなど |
| 年齢・生殖歴 | 特定の単一遺伝子とは限らない | 主に上皮性卵巣がんとの関連 | 出産歴、初経年齢、閉経年齢、内膜症の有無など |
この表で大切なのは、乳がんと卵巣がんだけでなく、大腸がんや子宮体がんも家系全体の情報として確認することです。
家族に卵巣がん患者がいなくてもHBOCの可能性はある家族に卵巣がんの患者がいないからといって、HBOCの可能性が完全になくなるわけではありません。
理由として、家族内の男性が病的バリアントを受け継いでいても、卵巣がんを発症しないまま次世代に伝えることがあるためです。また、家族の人数が少ない場合や、家族の病歴を十分に把握できない場合もあります。
加えて、病的バリアントを持っていても、必ずがんを発症するわけではありません。
そのため、家族歴だけで遺伝性の有無を決めつけず、本人の既往歴と家系全体の発症状況を医師に伝えることが大切です。
【女性の生殖歴】初経・閉経・排卵回数と卵巣がんの関係
卵巣がんのリスクを考える際には、遺伝的要因だけでなく、女性ホルモンや排卵に関係する生殖歴も確認されます。
初経が早い・閉経が遅いとリスクが上がる可能性初経が早い女性や閉経が遅い女性は、月経周期を経験する期間が長くなる傾向があります。
排卵が起きるたびに卵巣周辺の組織が影響を受けることから、生涯の排卵回数が多いことと卵巣がんの発症との関連が研究されています。
ただし、初経や閉経の時期だけで卵巣がんの発症を予測できるわけではありません。年齢や遺伝的背景など、ほかの要因も合わせて考える必要があります。
出産経験がない・不妊と卵巣がんの関係出産経験がないことや不妊の経験は、卵巣がんのリスクと関連する要因です。
妊娠中は排卵が停止し、授乳中も排卵が抑制される場合があります。そのため、妊娠・出産の経験がある人では、生涯の排卵回数が少なくなる可能性があります。
また、不妊の背景には子宮内膜症などの婦人科疾患が関係している場合もあります。特に子宮内膜症は、特定の組織型の卵巣がんとの関連が知られています。
一方で、不妊治療を受けた経験があることだけで卵巣がんになりやすいと判断することは適切ではありません。不妊の原因や治療歴、基礎疾患などを個別に確認する必要があります。
排卵回数を減らせば卵巣がんを防げるのか排卵回数と卵巣がんの関係から、経口避妊薬の使用と発症リスク低下との関連も研究されています。
ただし、卵巣がんの予防だけを目的に自己判断でホルモン剤を使用することは勧められません。ホルモン剤には適応や副作用、個人の健康状態に応じた判断が必要です。
また、妊娠・出産の有無は個人の人生設計に関わる問題です。卵巣がんを予防するために出産を選択する必要があるわけではありません。
【検診の真実】卵巣がん検診は有効?CA125と超音波検査の限界
卵巣がんについて、多くの人が気にするのが「定期的に検査を受ければ早期発見できるのか」という問題です。
実は、卵巣がんは子宮頸がんのように、一般の人を対象とした有効性が確立した検診方法がありません。
CA125検査や経腟超音波検査は万能ではない卵巣がんの評価には、主に次のような検査が使われます。
- CA125検査:血液中のCA125という腫瘍マーカーの値を測定する。
- 経腟超音波検査:超音波を使って卵巣や子宮周辺の状態を確認する。
- 画像検査:必要に応じてMRIやCTなどで腫瘍の状態や広がりを調べる。
しかし、これらの検査を無症状の一般女性に定期的に実施することで、卵巣がんによる死亡率が下がるという科学的根拠は確立していません。
日本婦人科腫瘍学会も、超音波画像診断や腫瘍マーカーによる卵巣がん検診について、有効性は証明されていないと説明しています。
米国国立がん研究所(NCI)が紹介する大規模研究でも、平均的なリスクの女性にCA125検査や経腟超音波検査を実施しても、卵巣がんによる死亡率の低下は確認されませんでした。
つまり、検査を受けて異常がなかったからといって、将来の卵巣がん発症まで否定できるわけではありません。
HBOCの人は一般女性と同じ対応でよいのかBRCA1・BRCA2の病的バリアントを持つ人は、一般女性とは異なるリスク管理が必要です。
日本婦人科腫瘍学会は、HBOCと診断された人について、30~35歳から、または家族内で最も若く卵巣がんを発症した人の年齢より5~10歳早い時期から、婦人科医に相談することを提示しています。
その際、半年に1回程度の経腟超音波検査や腫瘍マーカー検査が選択肢として示されています。
ただし、こうした検査についても死亡率低下などの明確な有効性は証明されていません。定期検査を受けていれば確実に予防できるという意味ではないため、専門医とリスク低減手術も含めて相談が必要です。
見逃したくない卵巣がんの初期症状卵巣がんは、初期には自覚症状がほとんどないことがあります。腫瘍が大きくなったり、腹水がたまったりしてから異変に気づくケースもあります。
国立がん研究センターのがん情報サービスが紹介する主な症状は次のとおりです。
- お腹が張る、腹部膨満感が続く
- ウエストが急にきつくなった
- 下腹部にしこりや圧迫感がある
- 食欲が低下する、少量でも満腹になる
- 頻尿や便秘が続く
- 足のむくみが気になる
これらは卵巣がんに特有の症状ではなく、消化器疾患や良性の婦人科疾患でも起こります。
ただし、症状が長く続く、徐々に悪化する、普段と明らかに違うと感じる場合には、自己判断で様子を見続けず、婦人科を受診してください。
【遺伝子検査と遺伝カウンセリング】2026年に変わった保険適用
家族に乳がんや卵巣がんの発症者がいる場合、遺伝子検査によってHBOCなどの遺伝性腫瘍の可能性を調べる方法があります。
ただし、遺伝子検査は誰でも同じ条件で受けられるわけではありません。検査の目的、家族歴、本人の既往歴、保険適用の条件などを確認する必要があります。
卵巣がんの遺伝子検査では何を調べる?HBOCが疑われる場合には、血液などを検体としてBRCA1・BRCA2の生まれつきの病的バリアントを調べます。
ここで重要なのは、がん細胞だけに生じた遺伝子変化と、生まれつき持っている遺伝子変化を区別することです。
前者は腫瘍の性質や治療方針を調べるための検査に関係し、後者は本人の将来の発症リスクや血縁者への遺伝の可能性を評価するために使われます。
家族にすでにBRCA1・BRCA2の病的バリアントが確認されている場合には、同じ変化を受け継いでいるかを調べる方法もあります。
遺伝カウンセリングを受けるメリット遺伝カウンセリングは、遺伝性腫瘍の可能性や検査結果を理解し、今後の医療や生活について自分で判断するための相談です。
主に次のような内容を相談できます。
- 家族の乳がん・卵巣がん歴から考えられる遺伝的リスク
- BRCA1・BRCA2遺伝子検査の目的や限界
- 病的バリアントが見つかった場合の発症リスク
- 血縁者への遺伝の可能性と家族への伝え方
- 乳がんや卵巣がんのリスク管理と予防手術
- 妊娠・出産の希望と将来の健康管理の両立
遺伝子検査を受けること自体が目的ではありません。検査を受けない選択も含めて、本人が納得できる判断をするための支援が遺伝カウンセリングの役割です。
2026年度の診療報酬改定で血縁者の検査にも変化2026年の大きな動きとして、HBOCの遺伝学的検査に関する保険診療の対象が拡大されたことが挙げられます。
2026年9月10日、日本遺伝カウンセリング学会、日本遺伝子診療学会、日本遺伝性腫瘍学会、日本人類遺伝学会の4学会は、令和8年度診療報酬改定を踏まえたHBOC診療の保険適用についての考え方を公表しました。
この改定では、BRCA1・BRCA2の遺伝学的検査によってHBOCと診断された人の第一度近親者である父母・子・兄弟姉妹について、一定の要件を満たせば、本人が乳がんや卵巣がんを発症していなくても検査を保険診療で受けられるようになりました。
加えて、検査によってHBOCと診断された血縁者についても、所定の条件を満たす場合には、サーベイランスやリスク低減手術などが保険診療の対象となります。
ただし、対象となる検査や施設、診療上の条件には制限があります。すべての家族が無条件に無料で検査できる制度ではありません。実際の適用については、医療機関で確認する必要があります。
2026年は、がんを発症した人だけでなく、発症していない家族も遺伝情報を手掛かりに予防的な医療を検討できる方向へ、制度が進んだ年といえます。
【予防の選択肢】リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)は必要?
BRCA1・BRCA2に病的バリアントが確認された場合、卵巣がんのリスクを下げる方法として検討されるのが、リスク低減卵管卵巣摘出術(RRSO)です。
これは、卵巣がんを発症する前に両側の卵管と卵巣を摘出し、将来の卵巣がん・卵管がんの発症リスクを低下させることを目的とした手術です。
RRSOはどのような人が検討するのか主な対象は、BRCA1・BRCA2の病的バリアントを持ち、卵巣がんの発症リスクが高いと判断された女性です。
JOHBOCの2024年版HBOC診療ガイドラインでは、BRCA1・BRCA2の病的バリアント保持者に対するRRSOについて、条件付きで実施を推奨しています。
手術時期の一般的な目安としては、次の年齢が国内外のガイドラインで示されています。
- BRCA1:35~40歳ごろ
- BRCA2:40~45歳ごろ
原則として、今後の妊娠・出産の希望がなくなった後に検討します。家族内で若い年齢の卵巣がん発症者がいる場合には、その発症年齢なども考慮して時期を調整します。
これらは一律に手術を受けなければならない年齢ではありません。遺伝子の種類、家族歴、年齢、健康状態、妊孕性への希望などによって判断は異なります。
RRSOのメリットとデメリットJOHBOCの診療ガイドラインでは、RRSOを受けたBRCA1・BRCA2病的バリアント保持者は、受けていない人と比較して卵巣がんの発症リスクが低下し、全生存期間の延長も認められたとするメタ解析が紹介されています。
一方で、正常な卵巣と卵管を切除するため、妊娠する能力を失うことや、手術によって閉経が早まることなど、生活への影響もあります。
- メリット:卵巣がん・卵管がんの発症リスクを大幅に低減できる。
- メリット:BRCA1・BRCA2病的バリアント保持者では、全生存期間の延長が期待できる。
- デメリット:妊娠・出産ができなくなる。
- デメリット:外科的閉経によるほてり、発汗、睡眠障害などが起こる可能性がある。
- デメリット:骨粗鬆症や心血管系への長期的な影響などに配慮が必要になる。
手術後のホルモン補充療法(HRT)や更年期症状への対応についても、乳がんの既往歴などを踏まえて専門医と相談します。
卵管だけを切除すれば予防できる?卵巣がんの一部は卵管の細胞を発生起源とすることが分かっており、卵管だけを先に切除し、卵巣を後から摘出する方法も研究されています。
これはリスク低減卵管切除術(RRS)と、その後の卵巣摘出を組み合わせる方法です。卵巣を残すことで、早期の外科的閉経を避けられる可能性があります。
しかし、JOHBOCの2024年版ガイドラインでは、BRCA1・BRCA2病的バリアント保持者に対する卵巣がん予防目的の卵管単独切除は、現時点では推奨されていません。
卵管だけを切除すればRRSOと同じ予防効果が得られるという十分な証拠はなく、研究段階の選択肢として扱う必要があります。
手術後も卵巣がん関連のリスクはゼロにならないRRSOによって卵巣と卵管を摘出しても、腹膜に発生するがんのリスクが完全になくなるわけではありません。
そのため、手術後も定期的な健康管理や、必要に応じた診察を続けることが重要です。
RRSOは、遺伝的リスクが高い人にとって有力な予防手段ですが、本人の希望や将来設計を十分に考慮して決めるべき医療上の選択です。
【プロの結論】卵巣がんのリスクを正しく判断するための基準
卵巣がんになりやすい人を考える際、最も優先して確認したいのは、家族のがん歴と遺伝的な背景です。
特に、乳がん・卵巣がんの家族歴が複数ある場合、若年性乳がんや男性乳がんの経験者がいる場合、家系内に若年発症の大腸がんや子宮体がんがある場合には、遺伝性腫瘍の可能性を医師に相談する価値があります。
また、初経が早い、閉経が遅い、出産経験がない、不妊の経験があるといった要因は、発症リスクとの関連が研究されていますが、それだけで高リスクと決まるわけではありません。
医療機関への相談を優先したいケース- 母親、姉妹、娘などに卵巣がんの経験者がいる。
- 母方または父方の家系に乳がん・卵巣がんの発症者が複数いる。
- 家族に若年性乳がんや男性乳がんの経験者がいる。
- 自分や血縁者がBRCA1・BRCA2の病的バリアントを持っている。
- 家族に若年発症の大腸がんや子宮体がんの患者が複数いる。
- 腹部膨満感や頻尿、食欲低下などの症状が続いている。
卵巣がんの発症には、遺伝的要因だけでなく、加齢や環境的要因なども関係します。遺伝性腫瘍と診断されていない人にも卵巣がんは発症します。
また、家族歴があるからといって必ず遺伝子に病的バリアントがあるとは限らず、病的バリアントを持っていても必ずがんになるわけではありません。
検査結果を受け取った際には、病的バリアントが確認されたのか、病的意義不明のバリアント(VUS)なのかも区別する必要があります。VUSは、現時点で病気との関連性が十分に分かっていない遺伝子変化であり、それだけを根拠に予防手術を決めるものではありません。
リスクの判断では、遺伝子検査の結果だけでなく、家族歴、年齢、既往歴、本人の希望を総合的に考えることが大切です。
【卵巣がんになりやすい人】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:卵巣がんになりやすい人にはどんな特徴がありますか?
A1:家族に卵巣がんや乳がんの経験者がいる人、BRCA1・BRCA2の病的バリアントを持つ人、リンチ症候群の人などは、発症リスクが高い可能性があります。また、年齢、出産歴、初経・閉経の時期なども関連する要因です。ただし、該当する特徴があるからといって、必ず発症するわけではありません。
Q2:母親や祖母が卵巣がんだった場合、自分も発症しやすいですか?
A2:家族歴は重要なリスク評価の手掛かりになります。ただし、親族に卵巣がんの経験者がいることだけで、遺伝性の卵巣がんと決まるわけではありません。母方だけでなく父方の家族歴も確認し、必要に応じて遺伝カウンセリングを受けることが勧められます。
Q3:卵巣がんは遺伝するのでしょうか?
A3:一部の卵巣がんには遺伝的要因が関係しています。代表的なのが、BRCA1・BRCA2の病的バリアントによるHBOCや、リンチ症候群です。これらは親から子へ受け継がれる可能性がありますが、遺伝子の変化を受け継いだからといって、必ずがんを発症するわけではありません。
Q4:卵巣がんは何歳から注意すべきですか?
A4:日本では50歳代に新たに診断される人が多く、閉経後も注意が必要です。ただし、若年でも発症する可能性があります。BRCA1・BRCA2などの病的バリアントを持つ人は、一般女性より早い年齢から専門医によるリスク管理が必要になる場合があります。
Q5:卵巣がん検診を受ければ早期発見できますか?
A5:CA125検査や経腟超音波検査は卵巣の状態を調べるために使われますが、一般女性を対象にした検診として死亡率を下げる効果は証明されていません。家族歴や遺伝的リスクがある人は、一般的な検診とは異なる管理方法について専門医に相談してください。
Q6:BRCA1・BRCA2の遺伝子検査は未発症でも保険適用になりますか?
A6:2026年度の診療報酬改定により、HBOCと診断された人の第一度近親者である父母・子・兄弟姉妹は、一定の条件を満たせば、がんを発症していなくても検査を保険診療で受けられるようになりました。実際の適用条件や検査方法は医療機関で確認してください。
卵巣がんになりやすい人には、BRCA1・BRCA2の病的バリアント、HBOC、リンチ症候群、乳がん・卵巣がんの家族歴など、遺伝的な背景が関係するケースがあります。
また、50歳以上の年齢、出産経験がないこと、不妊の経験、初経が早いこと、閉経が遅いことなども発症リスクとの関連が研究されています。
ただし、リスク要因があることと、実際に卵巣がんを発症することは別の問題です。一般女性を対象にした有効な卵巣がん検診は確立されておらず、CA125検査や超音波検査だけで発症を防げるわけでもありません。
家族に乳がんや卵巣がんの経験者がいる場合は、母方・父方の両方の家族歴を確認し、婦人科や遺伝診療部門で相談することが大切です。
2026年度にはHBOCに関する保険診療の対象が血縁者にも拡大され、発症前から遺伝的リスクを把握して対策を考える環境が整いつつあります。
必要に応じて遺伝子検査や遺伝カウンセリングを活用し、BRCA1・BRCA2の病的バリアントが確認された場合には、リスク低減卵管卵巣摘出術などの選択肢も含めて専門医と相談することが、将来の健康を守るための具体的な一歩になります。
大切なのは、家族歴や体質だけで自分の未来を決めつけず、正確な情報をもとに自分に合ったリスク管理を選ぶことです。
【主な参考資料】国立がん研究センター「がん情報サービス」、厚生労働省「2023年全国がん登録」、日本遺伝性乳癌卵巣癌総合診療制度機構「HBOC診療ガイドライン2024年版」、日本婦人科腫瘍学会、国立健康危機管理研究機構「MGenReviews」、米国国立がん研究所(NCI)。
主な根拠資料・2026年の更新情報
- 国立がん研究センター「卵巣がん・卵管がん・腹膜がん」および「遺伝性腫瘍」
- JOHBOC「遺伝性乳癌卵巣癌(HBOC)診療ガイドライン2024年版」
- 日本婦人科腫瘍学会「その他の婦人科がん検診について」
- 日本遺伝カウンセリング学会ほか4学会による2026年度診療報酬改定を踏まえたHBOC診療の見解
- 国立健康危機管理研究機構 MGenReviews「HBOC」「リンチ症候群」
- 米国国立がん研究所(NCI)「Ovarian Cancer Screening」