「生憎」「胡坐」「論う」――。普段の文章や新聞、書籍で見かける漢字なのに、いざ読み方を尋ねられると答えに迷ってしまう言葉は少なくありません。漢字には、一文字ずつの音読み・訓読みからは想像できない熟字訓や当て字、昔から受け継がれてきた独特の読み方が数多く存在します。
2026年版の今回は、難しい読み方の漢字を厳選し、日常語20選、動物20選、植物20選、食べ物20選、地名20選の合計100選で紹介します。加えて、常用漢字で画数が最も多い「鬱」の読み方と意味、難読漢字の由来、読めそうで読めない漢字を効率よく覚える方法まで解説。読み方だけでなく、意味や実際の使い方も分かるまとめの一覧です。
【基礎知識】難しい読み方の漢字とは?読めない理由と5つの特徴

難読漢字とは、一般的な漢字の知識だけでは読み方を推測しにくい漢字や熟語のことです。難しさの原因は、画数の多さだけではありません。普段から目にする簡単な漢字でも、複数の文字を組み合わせたときに特別な読み方になる場合があります。
例えば「海豚」は、漢字をそのまま音読みすれば「かいとん」と考えてしまいそうですが、正解は「いるか」です。「心太」も「しんた」ではなく「ところてん」と読みます。このような読み方は、漢字の意味だけを追っても正解にたどり着けません。
難しい漢字を理解するには、まず読み方が難しくなる仕組みを知ることが近道です。
| 分類 | 特徴・仕組み | 代表的な漢字 | 読み方 |
|---|---|---|---|
| 熟字訓 | 複数の漢字全体に特別な読みを当てる | 心太・土竜 | ところてん・もぐら |
| 当て字 | 漢字の意味や音を利用して言葉を表記する | 金平糖・生憎 | こんぺいとう・あいにく |
| 慣用的な読み | 長い使用の中で定着した読み方 | 胡坐・論う | あぐら・あげつらう |
| 意味を組み合わせた表記 | 漢字の意味から動植物などの特徴を表す | 向日葵・海豚 | ひまわり・いるか |
| 地名固有の読み | 歴史や地域の言葉に由来する独特の読み方 | 放出・及位 | はなてん・のぞき |
特に重要なのが、熟字訓と当て字の違いです。熟字訓は「五月雨(さみだれ)」や「心太(ところてん)」のように、熟語全体に読みを対応させるもの。当て字は、漢字本来の意味や音を利用して別の言葉を表すものです。
また、漢字の読み方には音読みと訓読みだけでなく、送り仮名を伴う訓読み、慣用読み、地名や人名に使われる固有の読み方もあります。国立国語研究所の解説でも、常用漢字表には熟字訓など、一文字ずつの音訓だけでは整理できない表記があることが示されています。
難読漢字100選や120選という一覧も、選定するジャンルや難易度によって掲載語が異なります。100語や120語という数字そのものに公的な基準があるわけではなく、目的に応じた語彙の整理として活用するのがおすすめです。
【日常語編】読めそうで読めない難しい漢字20選!生憎・胡坐・論うの読み方
最初に紹介するのは、日常生活で見かける機会がありながら、正しい読み方を間違えやすい漢字20選です。
動植物や地名の難読漢字と違い、日常語は文章の意味から推測できる場合もあります。しかし、読み間違いが起こりやすいのもこのジャンルの特徴です。
簡単そうなのに読めない漢字一覧- 生憎(あいにく):期待や目的に合わず、都合が悪いこと。「生憎ですが、本日は満席です」のように使う。
- 胡坐(あぐら):両膝を左右に開き、足を組んで座る姿勢。「胡坐をかいて座る」と表現する。
- 論う(あげつらう):物事の是非や欠点などを取り立てて論じること。「他人の失敗を論う」のように使う。
- 強か(したたか):しっかりしていて手ごわいさま。また、程度が非常に強いこと。「強かな人物」「強かに打つ」など。
- 予め(あらかじめ):事前に、前もって。「予めご了承ください」といった表現がある。
- 暫く(しばらく):少しの間、ある程度長い時間。「暫くお待ちください」と使う。
- 漸く(ようやく):長い時間や努力を経て、やっと。「漸く完成した」と表現する。
- 忽ち(たちまち):非常に短い時間で、すぐに。「雨が忽ち降り始めた」など。
- 悉く(ことごとく):残らず全部。「計画が悉く失敗した」のように使う。
- 徐に(おもむろに):落ち着いて、ゆっくりと行動するさま。「徐に立ち上がる」が代表例。
- 蔑ろ(ないがしろ):軽んじて大切に扱わないこと。「約束を蔑ろにする」など。
- 所謂(いわゆる):世間一般でいうところの。「所謂、人気商品というものだ」と使う。
- 流石(さすが):評判や期待どおりであること。「流石の実力だ」と表現する。
- 態と(わざと):意図的に、故意に行うこと。「態と間違えたふりをする」など。
- 拘る(こだわる):細かい点まで気にかけ、妥協しないこと。「品質に拘る」と使う。
- 概ね(おおむね):大体、おおよそ。「概ね予定どおりに進んだ」など。
- 僅か(わずか):数量や程度が非常に少ないこと。「僅かな差で勝利した」と表現する。
- 些か(いささか):少しばかり、多少。「些か疑問が残る」のように使う。
- 徒に(いたずらに):無益に、むやみに。「徒に時間を費やす」など。
- 尤も(もっとも):当然であること。また、補足や例外を述べる接続的な使い方もある。
1.生憎(あいにく)
「生憎」は、漢字を一文字ずつ読もうとすると難しい言葉の代表格です。小学館『デジタル大辞泉』では、期待や目的にそぐわず、都合が悪いさまを表す言葉として説明されています。
語源をたどると、もともとの「あやにく」という言葉が「あいにく」に変化したものとされています。「生」の字がそのまま「あい」という音を示すわけではありません。
現代では「生憎の雨」「生憎ですが」「生憎留守だった」など、会話からビジネス文章まで幅広く使われます。
2.胡坐(あぐら)
「胡坐」は、足を組んで座る姿勢を指します。「胡座」とも表記され、漢字ペディアでも「あぐら」という読み方が紹介されています。辞書によっては「こざ」という読み方も掲載されています。
興味深いのは、「胡床(あぐら)」という古い表記との関係です。古代には腰掛けや床の高い台を意味していた言葉があり、時代とともに座り方を表す言葉へと意味が変化していきました。
「胡坐をかく」は単純に足を組んで座るという意味だけでなく、努力せず現状に甘んじるという比喩にも使われます。
3.論う(あげつらう)
「論う」は、物事の理非や細かな問題を取り上げて論じることです。「人の欠点を論う」という表現がよく知られています。
「論」という漢字からは「ろん」という音を想像しやすいものの、送り仮名の「う」を伴うことで「あげつらう」という読み方になります。
語源由来辞典などの語源解説では、もともとは物事を論じる意味を持ち、時代が下るにつれて欠点を取り立てて非難する意味合いが強くなったと説明されています。
この3語に共通するのは、漢字の見た目や音だけでは正解を導きにくいことです。語源や実際の使用例を一緒に覚えると、単なる暗記よりも記憶に残りやすくなります。
【動物・植物編】身近なのに読めない難読漢字40選
動物や植物の名前には、漢字の意味からは想像しにくい難読表記が数多く存在します。生き物の特徴や外見、古くからの呼び名が漢字表記に反映されているためです。
動物の難読漢字20選まずは動物・魚・昆虫などの難読漢字を紹介します。水族館や動物園、自然に関する文章で出会うこともある言葉です。
- 海豚(いるか):イルカ。海に生息する哺乳類。漢字の字面から読み方を想像しにくい代表例。
- 河豚(ふぐ):フグ。膨らむ習性を持つ魚で、食用としても知られる。
- 海豹(あざらし):アザラシ。海に生息する哺乳類。
- 海象(せいうち):セイウチ。大きな牙が特徴の海棲哺乳類。
- 河馬(かば):カバ。アフリカに生息する大型哺乳類。
- 蝸牛(かたつむり):殻を背負った陸生の巻貝。
- 土竜(もぐら):地中にトンネルを掘って生活する哺乳類。
- 百舌(もず):モズ。小型の鳥で、獲物を枝などに刺す習性が知られる。
- 啄木鳥(きつつき):木をくちばしでつつく習性がある鳥。
- 梟(ふくろう):フクロウ。夜行性のものが多い猛禽類。
- 鶉(うずら):小型の鳥。卵も食用として親しまれる。
- 鼬(いたち):細長い体と短い足を持つ哺乳類。
- 栗鼠(りす):リス。木の実などを食べる小型哺乳類。
- 鼈(すっぽん):水辺に生息するカメの仲間。食材としても知られる。
- 蟷螂(かまきり):鎌のような前脚を持つ昆虫。
- 蜻蛉(とんぼ):細長い体と大きな羽を持つ昆虫。
- 蚯蚓(みみず):土の中などに生息する細長い環形動物。
- 百足(むかで):多数の脚を持つ節足動物。
- 信天翁(あほうどり):大型の海鳥。長距離を飛ぶことで知られる。
- 樹懶(なまけもの):樹上でゆっくりと生活する哺乳類。
動物の難読漢字では、「海」「河」「土」などの自然に関係する漢字が使われている点にも注目です。「海豚」「海豹」「海象」は、いずれも海に関係する動物ですが、読み方はそれぞれ全く異なります。
また、「百足」は文字どおり足の多さを表すような構成になっており、意味を考えると覚えやすい漢字です。
植物の難読漢字20選植物名は、季節や花の形、色、成長する環境などを反映した漢字表記が多いジャンルです。日本の植物名には伝統的な表記が残っており、普段はカタカナやひらがなで見かける花も、漢字になると急に難しくなります。
- 紫陽花(あじさい):梅雨の時期に色鮮やかな花を咲かせる植物。
- 蒲公英(たんぽぽ):春に黄色い花を咲かせ、綿毛を飛ばす植物。
- 向日葵(ひまわり):夏を代表する大きな黄色い花を咲かせる植物。
- 薔薇(ばら):美しい花と香りで知られる植物。
- 秋桜(コスモス):秋に花を咲かせるキク科の植物。
- 勿忘草(わすれなぐさ):小さな青い花を咲かせる植物。
- 杜若(かきつばた):水辺などに生育するアヤメ科の植物。
- 女郎花(おみなえし):秋の七草の一つ。黄色い花を咲かせる。
- 竜胆(りんどう):青紫色の花が美しい多年草。
- 沈丁花(じんちょうげ):春に香りの強い花を咲かせる低木。
- 木通(あけび):秋に果実が熟すつる性植物。
- 翌檜(あすなろ):ヒノキ科の針葉樹。ヒノキに似た樹木。
- 公孫樹(いちょう):秋に葉が黄色く色づく樹木。銀杏とも書く。
- 無花果(いちじく):独特の食感と甘みを持つ果実をつける植物。
- 山茶花(さざんか):冬に花を咲かせるツバキ科の植物。
- 梔子(くちなし):香りのよい白い花を咲かせ、果実は染料にも使われる。
- 躑躅(つつじ):春に赤やピンク、白などの花を咲かせる低木。
- 芍薬(しゃくやく):大きく華やかな花が特徴の植物。
- 牡丹(ぼたん):大輪の花を咲かせるボタン科の植物。
- 百合(ゆり):大きな花と香りが特徴の植物。
植物の難読漢字は、花の名前と漢字の意味を結び付けると覚えやすくなります。
例えば「向日葵」は太陽に向かう花というイメージ、「勿忘草」は忘れないという意味を持つ名前として覚えられます。「蒲公英」や「紫陽花」のように、文字の意味だけで読みを直接推測するのが難しいものは、植物の写真と読み方をセットにして記憶するのがおすすめです。
植物名については、日外アソシエーツの『難読・誤読植物名漢字よみかた辞典』など、植物に特化した辞典も参考になります。一般的な漢和辞典だけでは拾いにくい植物固有の読み方を調べる際に便利です。
【食べ物・地名編】読めたらすごい難読漢字40選
食べ物の漢字は、飲食店のメニューや食品表示、和菓子の名前などで目にする機会があります。一方、地名は地域独自の歴史や古い発音が残っているため、漢字の一般的な読み方からは正解を導きにくいのが特徴です。
食べ物の難読漢字20選和食や郷土料理、菓子などに関する漢字を集めました。読み方だけでなく、どんな食べ物なのかも一緒に確認しましょう。
- 心太(ところてん):テングサなどの海藻から作る、つるりとした食感の食品。
- 饂飩(うどん):小麦粉を原料とする日本の麺料理。
- 蕎麦(そば):ソバの実を原料とする麺や食品。
- 蒟蒻(こんにゃく):コンニャクイモから作られる食品。
- 鹿尾菜(ひじき):海藻の一種。煮物などに使われる。
- 外郎(ういろう):米粉などを原料にした、もちもちした食感の和菓子。
- 羊羹(ようかん):あんを寒天などで固めた和菓子。
- 金平糖(こんぺいとう):表面に小さな突起がある砂糖菓子。
- 求肥(ぎゅうひ):もち米由来の粉などを練って作る、柔らかい和菓子の材料。
- 御強(おこわ):もち米を蒸して作るご飯。
- 雪花菜(きらず・おから):豆腐を作る際にできる大豆の搾りかす。
- 雁擬(がんもどき):豆腐に野菜などを混ぜて揚げた食品。
- 薯蕷饅頭(じょうよまんじゅう):山芋などを使った生地であんを包んだ和菓子。
- 水団(すいとん):小麦粉などを練った生地を汁に入れて煮た料理。
- 粽(ちまき):笹や竹の葉などで包んで蒸した食品。
- 焼売(しゅうまい):肉などの具材を皮で包んで蒸した料理。
- 炒飯(チャーハン):ご飯を具材と一緒に炒めた料理。
- 叉焼(チャーシュー):中国料理に由来する、味付けした焼き豚料理。
- 蚕豆(そらまめ):春から初夏にかけて出回る豆類。
- 大蒜(にんにく):料理の香り付けや薬味などに使う野菜。
食べ物の難読漢字には、外国語を漢字で表現したものや、昔の呼び名が残っているものがあります。
例えば「金平糖」はポルトガル語に由来する菓子の名前に漢字を当てたもの。「外郎」も和菓子の名前として定着しています。「心太」は漢字だけを見ても「ところてん」という読みを予測するのが難しい代表例です。
食品表示や料理の専門資料でも、鹿尾菜・羊栖菜が「ひじき」、雪花菜が「おから」、大蒜が「にんにく」といった表記が紹介されています。漢字の由来を知ると、食文化と言葉の歴史を同時に学べます。
地名の難読漢字20選地名の難読漢字は、漢字の読み方を覚えるだけではなく、地域の歴史や文化を知るきっかけにもなります。古い地名や方言、アイヌ語などの影響が残る地名もあり、一般的な音読み・訓読みとは異なる読み方が定着しています。
- 放出(はなてん):大阪府大阪市にある地名・駅名。
- 喜連瓜破(きれうりわり):大阪市平野区にある大阪メトロの駅名。喜連と瓜破という地名を組み合わせている。
- 指宿(いぶすき):鹿児島県南部にある市。温泉地として知られる。
- 我孫子(あびこ):千葉県の市名。大阪市にも同じ読みの地名・駅名がある。
- 雑餉隈(ざっしょのくま):福岡市博多区と大野城市周辺に関係する地名・駅名。
- 及位(のぞき):山形県真室川町にあるJRの駅名・地名。
- 特牛(こっとい):山口県下関市にある地名・駅名。
- 一口(いもあらい):京都府久御山町にある地名。
- 今帰仁(なきじん):沖縄県北部にある村の名前。
- 各務原(かかみがはら):岐阜県の市名。
- 匝瑳(そうさ):千葉県北東部にある市の名前。
- 酒々井(しすい):千葉県にある町の名前。
- 安食(あじき):千葉県栄町の地名・駅名。
- 八街(やちまた):千葉県にある市の名前。
- 石神井(しゃくじい):東京都練馬区の地名。
- 舎人(とねり):東京都足立区の地名。
- 御徒町(おかちまち):東京都台東区の地名・駅名。
- 太秦(うずまさ):京都市右京区にある地名。
- 温泉津(ゆのつ):島根県大田市にある町の名前。
- 長万部(おしゃまんべ):北海道にある町の名前。アイヌ語に由来する地名として知られる。
地名の中でも特に印象的なのが「雑餉隈」です。「雑餉」は、もてなしのための酒食などを意味する言葉で、「隈」は奥まった場所や入り込んだ場所を意味します。地域の歴史と結び付いた地名の一例です。
また、「放出」は「はなてん」、「喜連瓜破」は「きれうりわり」と読みます。大阪の難読地名として知られ、漢字の一般的な音訓だけでは正解を導けません。
「及位」「特牛」「一口」「今帰仁」なども、土地固有の歴史や言語が読み方に影響しています。地名を覚えるときは、都道府県や市町村名とセットで記憶すると混同を防げます。
【画数の多い漢字】鬱は何画?日本語の難しい漢字と珍しい多画数文字
難読漢字と聞いて、複雑な形をした漢字を思い浮かべる人も多いでしょう。画数の多い漢字は、読み方だけでなく、書き順や字形を覚えることにも苦労します。
常用漢字で最も画数が多いのは「鬱」日常生活で使う漢字の基準となる常用漢字表は、2010年11月30日の改定で2,136字となりました。文化庁の常用漢字表に基づくこの範囲で、最も画数が多い漢字として知られるのが「鬱」です。
鬱(うつ)は29画。音読みは「ウツ」で、草木が茂ることや、気持ちがふさがることなどを意味します。
「憂鬱」「鬱屈」「鬱蒼」などの熟語で使われ、特に「憂鬱」は日常でも目にする機会があります。
漢字ペディアや小学館『デジタル大辞泉』などの辞書では、「鬱」に草木が茂る意味や、気分が晴れない状態を表す意味が掲載されています。
さらに画数の多い珍しい漢字常用漢字以外にも、非常に画数の多い漢字が存在します。代表的な例を見てみましょう。
- 驫(30画):馬を三つ組み合わせた漢字。非常に珍しい字で、一般的な文章ではほとんど使用されない。
- 麤(33画):鹿を三つ組み合わせた漢字。粗い、大まかといった意味を持つ。
- 龘(48画):龍を三つ組み合わせた漢字。非常に珍しい多画数文字。
加えて、国立国会図書館レファレンス協同データベースには、新潟市立中央図書館が『大漢和辞典』の総画索引を調査した事例が掲載されています。
その回答によると、龍を四つ組み合わせた64画の漢字があり、「テツ」または「テチ」と読み、言葉が多いこと、多言を意味するとされています。また、興を四つ組み合わせた64画の漢字も記録されており、こちらは「セイ」と読むものの、字義は不詳とされています。
このように、画数の最多記録は、対象とする辞書や文字の範囲によって変わります。常用漢字の最多、一般的な漢和辞典に収録される文字の最多、文字コードに登録された希少文字の最多は、同じ基準では比較できません。
画数の多い漢字はどう覚える?画数の多い漢字を一画ずつ暗記するのは効率的ではありません。構成する部品に分けて覚える方法が有効です。
例えば「鬱」は、中央付近の「缶」や左右の「木」など、複数の構成要素を意識すると形を整理しやすくなります。書き順を確認しながら、部品ごとに繰り返し練習すると定着しやすくなります。
ただし、画数の多さと読み方の難しさは必ずしも一致しません。「鬱」は複雑な形でも「うつ」と読めますが、「生憎」は比較的画数が少なくても読み方が難しい言葉です。
漢字を学ぶときは、字形・音・意味という3つの要素を分けて考えることが大切です。
【覚え方のコツ】難読漢字の由来を知って効率よく暗記する方法
難読漢字を100語、120語と覚えるとき、単純に読み方だけを暗記しても、時間が経つと忘れてしまいがちです。長く記憶に残すためには、漢字が使われる理由や言葉の成り立ちを理解が必要です。
1.漢字の意味と読み方をセットにする漢字の意味と実際の対象を結び付ける方法です。
例えば「向日葵」は、太陽に向かうというイメージを持つことで「ひまわり」と覚えやすくなります。「海豹」は海に生息するアザラシ、「河馬」は水辺で生活するカバというように、生き物の特徴と漢字を関連付けるのも効果的です。
単語だけを暗記するのではなく、写真やイラストと一緒に覚えると、視覚的な記憶も利用できます。
2.熟字訓と当て字を区別する「心太」「土竜」「海豚」などは、文字を一つずつ読んでも正解にたどり着きにくい熟字訓です。
一方、「金平糖」などは、外国語に由来する言葉を漢字で表現した当て字の例です。
この違いを理解すると、読めない漢字に出会ったときも、音読み・訓読みだけで考えるべきなのか、言葉全体の読み方を覚えるべきなのか判断しやすくなります。
3.由来や語源を調べる読み方の由来を知ると、難読漢字は単なる暗記対象から、興味深い日本語の知識に変わります。
「生憎」は「あやにく」という古い言葉との関係があり、「胡坐」は古代の胡床という表記ともつながっています。「金平糖」はポルトガル語に由来する菓子名として知られています。
このように、漢字の背景には日本語の変化、外国語との交流、生活文化の歴史が反映されています。
4.ジャンル別に20語ずつ覚える今回の100選のように、日常語・動物・植物・食べ物・地名に分類する方法もおすすめです。
一度に100語を覚えようとすると負担が大きくなりますが、1日20語ずつ、5日間に分ければ無理なく学習できます。
例えば、1日目は日常語、2日目は動物、3日目は植物、4日目は食べ物、5日目は地名というように学習範囲を分けます。翌日に前日の読み方を復習することで、記憶の定着を促せます。
5.クイズ形式で繰り返し確認する漢字を見て読み方を答える練習は、覚えた知識を実際に使えるようにするために効果的です。
特におすすめなのは、最初に読み方を隠して自分で答え、その後に意味と用例を確認する方法です。
正解できた漢字も、数日後にもう一度確認しましょう。間違えた漢字だけを別のリストにまとめれば、自分が苦手とする読み方の傾向も把握できます。
難読漢字の学習に向いている人・向いていない人難読漢字の学習は、漢字検定や日本語能力の向上を目指す人だけでなく、読書や文章を書くことが好きな人にも向いています。
- 向いている人:語彙を増やしたい人、漢字検定に挑戦する人、読書や新聞を楽しみたい人、クイズや雑学が好きな人。
- 特におすすめの学習法:読み方だけでなく意味や由来、用例も一緒に覚えたい人。
- おすすめしにくい学習法:実生活で使わない希少漢字の画数だけを大量に暗記する方法。
漢字の学習では、珍しい字を何個知っているかよりも、日常で出会う言葉を正確に読んで意味を理解できるかが大切です。まずは生憎・胡坐・論うなどの実用的な言葉から覚え、徐々に専門的な漢字へ範囲を広げるとよいでしょう。
【難しい読み方の漢字】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:難読漢字100選と120選では、どちらを覚えるのがおすすめですか?
A1:初めて学ぶ人には100選程度から始める方法がおすすめです。日常語・動物・植物・食べ物・地名などのジャンルに分け、読み方と意味をセットで覚えましょう。120選は、さらに語彙を増やしたい人や漢字クイズに挑戦したい人に向いています。なお、100選・120選は統一された公的な語彙リストではなく、掲載語は資料によって異なります。
Q2:「生憎」「胡坐」「論う」の正しい読み方は何ですか?
A2:「生憎」は「あいにく」、「胡坐」は「あぐら」、「論う」は「あげつらう」と読みます。「生憎」は都合が悪いさま、「胡坐」は足を組んで座る姿勢、「論う」は物事の是非や欠点を取り上げて論じることを意味します。いずれも日常語でありながら、読み方が難しい漢字です。
Q3:日本で最も画数が多い漢字は何ですか?
A3:常用漢字の範囲では「鬱(うつ)」の29画が最多です。ただし、常用漢字以外には「驫(30画)」「麤(33画)」「龘(48画)」など、さらに画数の多い文字があります。古典的な漢和辞典には64画の文字も記録されています。何を対象とするかによって答えは変わります。
難しい読み方の漢字には、日常生活で使う「生憎」「胡坐」「論う」から、動物の「海豚」「河豚」、植物の「紫陽花」「蒲公英」、食べ物の「心太」「外郎」、地名の「放出」「雑餉隈」まで、さまざまな種類があります。
読み方が難しい理由も一つではありません。熟字訓や当て字、古い言葉の名残、地域固有の発音など、それぞれに異なる背景があります。画数が多い漢字についても、常用漢字の「鬱」と、辞書に収録される希少な多画数文字では位置付けが異なります。
覚える際は、漢字の読み方だけでなく、意味や由来、実際の使い方を一緒に確認することがポイントです。まずは今回紹介した100語から、知っている漢字と初めて知った漢字を分類してみてください。
難読漢字は、知識を増やすだけでなく、日本語の歴史や文化、自然、食生活、地域の特色に触れられる興味深い学習テーマです。毎日少しずつ読み方を確認すれば、読めそうで読めない漢字も、確かな語彙として身に付いていきます。