2023年11月、東京ビッグサイトで開催されたアートイベント「デザインフェスタ」で販売されたマフィンから、納豆のような異臭や糸を引く現象が報告され、購入者の体調不良も相次いだ。この出来事は「糸引きマフィン騒動」として大きく報道され、厚生労働省によるCLASS I(クラス1)の自主回収対象にもなった。
では、マフィンが糸を引いた原因は何だったのか。2026年11月現在、確認できる調査結果では、目黒区保健所は食中毒と断定できる原因菌やウイルスを検出しておらず、原因は特定されていない。一方、食品安全委員会などが示す細菌の増殖条件や水分活性の仕組みを踏まえると、常温保存や製造工程における衛生管理の問題が食品の安全性にどう影響するかは理解できる。
この記事では、事件の経緯と保健所の調査結果を整理したうえで、バチルス属の芽胞、黄色ブドウ球菌、セレウス菌の特徴、砂糖と水分活性の関係、マフィンの適切な保存方法、腐敗の見分け方まで解説する。
【事件の真相】2023年の糸引きマフィン騒動で何が起きたのか?

問題が発生したのは、2023年11月11日と12日に東京ビッグサイトで開催された「デザインフェスタvol.58」だった。
東京都目黒区の焼き菓子店「Honey×Honey xoxo(ハニーハニーキス)」が出店し、9種類のマフィンを販売していた。
イベント終了後、購入者から一部の商品について、納豆のような臭いがする、内部から糸を引いているといった報告が寄せられた。加えて、マフィンを食べた後に腹痛や吐き気、嘔吐などの体調不良を訴える人も確認された。
目黒区が2023年11月16日に公表した情報でも、購入者から異臭や糸引きの申し出があったこと、喫食後に腹痛などの症状を呈した人が複数名いたことが記されている。
対象となった商品は次の9種類だった。
- 栗マフィン
- チョコチップマフィン
- スイートポテトマフィン
- ミルクティーマフィン
- 焼きりんごマフィン
- ベーコンとクリームチーズマフィン
- ざくろマフィン
- ブルーベリーマフィン
- チェリーマフィン
問題はSNSなどでも広がり、食品の安全管理や販売店の対応に対する関心が急速に高まった。
厚生労働省がCLASS Iのリコール対象として公表2023年11月中旬、販売店は対象マフィンの自主回収を開始した。
厚生労働省の食品リコール情報にも掲載され、対象商品は健康被害の危険性が高いとされるCLASS Iに分類された。
販売数は9種類合計で約3,008個。報道によると、11月20日時点で回収された商品は851個だった。
ここで注意したいのは、CLASS Iという分類の意味だ。
これは、食品を食べることで重篤な健康被害や死亡につながる可能性が高い場合に適用されるリコールの危険度区分である。
つまり、CLASS Iに分類されたことは、当時の食品の危険性を考慮した回収判断を示すものであり、特定の食中毒菌が検出された証拠ではない。
目黒区保健所の調査結果は「食中毒と断定できない」事件の最大の疑問は、実際にどのような原因でマフィンの異常や体調不良が発生したのかという点だ。
2023年12月19日、販売店は保健所の調査結果について公式ウェブサイトで報告した。
同店の公表内容によれば、目黒区保健所から調査結果の説明を受けたのは2023年12月15日だった。
検査対象となったのは、次の3種類である。
1. 店舗の食品従事者の検体
2. 食中毒患者の疑いがある購入者7人の検体
3. 購入者から提供されたマフィン15検体
これらの検体から、食中毒菌およびウイルスは検出されなかったとされる。
また、店舗側の発表では、調査対象となった7人の中に入院した人や重症者はいなかったと説明されている。
この結果を受け、目黒区保健所は食中毒と断定できないとの判断を示した。
弁護士ドットコムニュースの2023年12月19日の報道でも、保健所は食中毒の原因となる菌が見当たらず、原因の断定には至らなかったと説明している。
ただし、ここには重要な区別がある。
食中毒菌が検出されなかったことと、食品に異常がなかったことは同じではない。
検査対象の検体から原因菌が見つからなかったという結果は、調査対象とした検体に関する科学的な所見である。検査対象外の商品や、検査時点までに変化した食品の状態まで完全に説明するものではない。
また、細菌による食中毒が確定しなかったからといって、異臭や糸引きが報告された食品を食べても安全だったという意味にもならない。
2026年現在も、この事件の原因菌や具体的な腐敗メカニズムは確定していない。
【事件の経緯】販売から調査終了までの時系列と事実関係
糸引きマフィン騒動では、SNS上での情報拡散、リコール、保健所の調査結果がそれぞれ異なる意味を持っている。
情報を正確に理解するには、発生直後の危険性評価と、その後の原因調査を分けて整理する必要がある。
事件の時系列まとめ| 時期 | 発生した出来事 | 確認できる事実 |
|---|---|---|
| 2023年11月11日・12日 | デザインフェスタvol.58開催 | 東京ビッグサイトで9種類のマフィンを販売 |
| 2023年11月13日 | 店舗がSNSで謝罪 | 異臭や糸引きに関する購入者からの申し出を受けて対応 |
| 2023年11月14日 | 保健所への報告などが進む | 目黒区が調査・対応を進める |
| 2023年11月16日 | 自主回収情報が公表 | 約3,008個がCLASS Iのリコール対象に |
| 2023年11月20日 | 回収状況が報道される | 約851個が回収されたと報じられる |
| 2023年12月15日 | 保健所から調査結果の説明 | 食中毒と断定できないとの説明を店舗が受ける |
| 2023年12月19日 | 店舗が調査結果を公表 | 検査した検体から食中毒菌・ウイルスは検出されず |
| 2026年11月 | 現在 | 原因菌や具体的な発生メカニズムは未特定 |
この事件では、リコールの危険度分類と、最終的な原因調査の結果が混同されやすい。
特に押さえておきたいのが、次の違いだ。
| 論点 | 確認された事実 | 正しい理解 |
|---|---|---|
| CLASS I分類 | 厚生労働省のリコール情報に掲載 | 食品の危険性に基づく回収区分 |
| 食中毒菌 | 検査対象から検出されなかった | 原因菌は確定していない |
| 糸引き・異臭 | 購入者から申し出があった | 食品の異常を示す危険な兆候 |
| 体調不良 | 腹痛などの申し出が複数あった | 症状の申し出だけで原因菌までは特定できない |
| 行政処分 | 食中毒と断定できず、処分は見送られたと報道 | 食品に問題がなかったという意味ではない |
特にCLASS Iについては、厚生労働省の食品リコール報告制度における分類基準を確認すると理解しやすい。
同制度では、重篤な健康被害や死亡につながる可能性が高い食品などがCLASS Iに分類される。腐敗・変敗した食品も分類例に含まれている。
一方、原因菌の検出は別の検査上の問題である。
この2つを混同すると、「CLASS Iなのだから食中毒菌が確実に存在した」「菌が見つからなかったから安全だった」という、どちらも正確ではない解釈につながる。
【科学的に解説】マフィンで細菌が増殖する原因と芽胞の危険性
マフィンは焼き菓子だから常温でも安全とは限らないマフィンは小麦粉、砂糖、卵、牛乳、バターなどを使用して作られる焼き菓子だ。
オーブンで加熱するため、一般的には生の食品より微生物によるリスクが低くなる。しかし、焼成後の保存や取り扱いまで安全が保証されるわけではない。
食品安全委員会によると、細菌が増殖するには主に次の条件が関係する。
- 栄養素:でんぷん質やタンパク質など
- 水分:微生物が利用できる自由水
- 温度:細菌の増殖に適した温度帯
焼き上がったマフィンには、でんぷんやタンパク質が含まれている。加えて、内部に水分が残っていれば、微生物が増殖できる条件が整う可能性がある。
食品安全委員会の解説では、多くの細菌が増殖しやすい温度帯は5〜45℃、特に30〜40℃とされている。
日本の夏場の室温は、細菌の増殖に適した温度帯と重なりやすい。
つまり、焼き菓子であっても、製造後に長時間常温で保存したり、衛生管理が不十分な状態で包装したりすれば、食品の安全性は低下する。
バチルス属の芽胞は通常の加熱で残ることがあるマフィンの食中毒リスクを理解するうえで知っておきたいのが、バチルス属の細菌と芽胞の関係だ。
バチルス属には、土壌や自然環境に広く存在する細菌が含まれている。その中でも、セレウス菌(Bacillus cereus)は食品衛生上注意すべき芽胞形成菌の一つである。
芽胞とは、細菌が生育に適さない環境で形成する、非常に抵抗性の高い構造だ。
食品安全委員会の用語解説によれば、芽胞は加熱や乾燥などの過酷な条件に強く、環境が再び適した状態になると発芽して増殖を再開する。
この性質が、焼き菓子の保存管理にも関係する。
通常の焼成によって多くの細菌は減少するが、芽胞まで完全に除去できるとは限らない。
焼き上がった後に食品の温度が下がり、水分や栄養が利用できる状態で長時間保存されると、残存した芽胞が発芽して増殖する可能性がある。
ただし、糸引きマフィン騒動でセレウス菌が検出されたわけではない。芽胞形成菌の性質は一般的な食品衛生上の知識であり、今回の事件の原因を示すものではない。
黄色ブドウ球菌とセレウス菌の違いマフィンなどの焼き菓子を扱う際には、セレウス菌だけでなく黄色ブドウ球菌にも注意が必要だ。
両者は食中毒の仕組みや症状が異なる。
黄色ブドウ球菌
黄色ブドウ球菌は、人の皮膚や鼻、喉などに存在することがある細菌だ。
食品を扱う人の手指を介して食品に付着する可能性があり、食品中で増殖するとエンテロトキシンという毒素を産生する。
この毒素は熱に強く、通常の加熱では無毒化されにくい。
そのため、焼成後に手で触れる作業や包装工程における衛生管理が重要になる。
セレウス菌
セレウス菌は土壌などの自然環境に広く存在し、芽胞を形成する。
主に嘔吐型と下痢型の食中毒が知られている。
嘔吐型は食品中で作られたセレウリドという毒素が原因で、下痢型は腸管内での毒素産生が関係する。
セレウス菌の芽胞や嘔吐毒は耐熱性が高いため、加熱すれば必ず安全になるという考え方は危険だ。
【保存方法】常温保存のリスクと砂糖・水分活性の関係
マフィンの保存性を左右する水分活性とは?マフィンの保存期間を決めるうえで、単純な水分量だけでは判断できない。
重要なのが「水分活性(Aw)」という指標だ。
水分活性とは、食品に含まれる水のうち、微生物が利用できる自由水の割合を示すもの。純水を1、完全に乾燥した状態を0として表す。
食品安全委員会によれば、細菌は一般に水分活性0.9以上の環境でよく生育する。
つまり、食品の水分量が多くても、その水分が糖分などと結びついていれば、微生物が利用できる水は少なくなる。
反対に、見た目が乾燥しているように見えても、内部に自由水が残っていれば細菌が増殖する可能性がある。
砂糖を減らすと腐りやすくなるのか?砂糖には甘みを加えるだけでなく、食品中の水分を抱え込む性質がある。
砂糖の濃度が高くなると水分活性が低下し、微生物が利用できる水分が減少する。その結果、食品の保存性が高まる場合がある。
農林水産省も、砂糖の親水性や食品の水分を保持する性質について解説している。
ただし、砂糖を多く使用すれば必ず安全になるわけではない。
実際の保存性は、次の条件を総合的に考慮する必要がある。
- 砂糖の配合割合
- 食品に含まれる水分量
- 水分活性
- pH
- 焼成温度と時間
- 焼成後の衛生管理
- 包装方法
- 保存温度
糸引きマフィン騒動については、食品衛生関係の専門団体による解説で、店舗が配布したチラシに市販の焼き菓子より砂糖の量が少ない旨の記載があったと紹介されている。
砂糖の使用量が少なければ、水分活性が想定より高くなる可能性はある。
しかし、事件の対象商品の正確な配合や水分活性の測定値が確認できない以上、砂糖の少なさが糸引きの直接原因だったとは判断できない。
マフィンの適切な保存温度と保存期間家庭で作ったマフィンと、市販の包装済みマフィンでは、保存条件が異なる。
市販品は製造方法、包装、保存性の検査などを踏まえて期限が設定されているため、まずはパッケージに記載された保存方法と期限を守ることが基本だ。
一方、家庭で作ったマフィンには、すべての商品に共通する安全な保存日数は存在しない。
次の方法を目安に管理したい。
| 保存方法 | 管理の目安 | 注意点 |
|---|---|---|
| 常温保存 | 常温保存可能と確認された製品に限る | 高温多湿や直射日光を避け、表示された期限を守る |
| 冷蔵保存 | 10℃以下を目安に管理 | 粗熱を取って密閉し、できるだけ早く食べる |
| 冷凍保存 | 冷凍庫は-18℃以下が目安 | 小分けして密閉し、解凍後は早めに食べる |
農林水産省が2025年7月に更新した冷蔵庫の使用方法では、冷蔵室は4℃前後、冷凍室は-18℃以下が目安とされている。
また、調理済み食品は粗熱を取った後、密閉容器やラップで保護して早めに冷蔵・冷凍することが推奨されている。
保存期間については、マフィンの種類や配合によって異なるため、一律に「常温なら何日」「冷蔵なら何日」と安全を保証することはできない。
特に、クリームチーズ、カスタード、生の果物など水分の多い材料を使用したものは、保存性が低くなる可能性がある。
家庭で作ったものは、長時間の常温放置を避け、速やかに冷蔵または冷凍するのが基本だ。
腐敗したマフィンの見分け方と危険なサインマフィンが傷んでいる場合、見た目や臭いに異常が現れることがある。
特に次のような変化には注意したい。
- 納豆や発酵食品に似た異臭がする
- 内部から糸を引く
- 表面や内部が異常にぬるつく
- 青、緑、白などのカビが生えている
- 通常とは違う変色がある
- 包装が膨張している
- 食感や状態が明らかに変化している
ただし、ここで大切なのは、見た目や臭いに異常がないからといって安全とは限らないという点だ。
農林水産省も、臭いや色、味だけでは食中毒菌がどの程度存在するか判断できないと注意喚起している。
黄色ブドウ球菌が産生する毒素などは、食品の外観から存在を判断できない。
また、カビの部分だけを取り除いて食べる方法も安全とはいえない。カビやカビ毒が食品の内部に残っている可能性があるためだ。
少しでも異常を感じた場合は、味見をせずに食べるのをやめ、廃棄することが望ましい。
【健康への影響】マフィンによる食中毒の症状と受診の目安
腹痛・嘔吐・下痢は代表的な食中毒症状マフィンなどの食品を食べた後に、腹痛や嘔吐、下痢が起きた場合は、食中毒の可能性を考える必要がある。
ただし、症状だけで原因菌を特定することはできない。
農林水産省によると、食中毒の一般的な症状には次のものがある。
- 腹痛
- 吐き気
- 嘔吐
- 下痢
- 発熱
- 血便
症状が現れるまでの時間も、原因となる細菌やウイルスによって異なる。
黄色ブドウ球菌とセレウス菌の潜伏期間代表的な2種類の細菌について、食品安全委員会が示す特徴を整理する。
黄色ブドウ球菌
潜伏期間は約1〜5時間で、平均約3時間。
主な症状は吐き気、嘔吐、腹痛、下痢などだ。
食品中で産生されたエンテロトキシンを摂取することによって発症する。毒素が熱に強いため、食べる直前に再加熱すれば問題ないという考え方は危険である。
セレウス菌
セレウス菌には、嘔吐型と下痢型がある。
嘔吐型の潜伏期間は約30分〜6時間で、吐き気や嘔吐が中心となる。
下痢型は約8〜16時間で、腹痛や下痢が主な症状だ。
どちらも原因や発症の仕組みが異なるため、症状が出た時間だけで自己判断することはできない。
食中毒が疑われた場合の対処方法マフィンを食べた後に体調不良が起きた場合、まずは医療機関に相談することが大切だ。
特に次のような状態では、早めの受診が必要になる。
- 嘔吐や下痢が繰り返される
- 水分を十分に摂取できない
- 尿の量が明らかに減る
- 強い腹痛が続く
- 血便が出る
- 高熱や強い倦怠感がある
乳幼児、高齢者、妊娠中の人、免疫機能が低下している人などは、症状が重くなる可能性があるため、特に注意したい。
農林水産省は、下痢や嘔吐がある場合には水分を補給し、自己判断で薬を使用せず、医師の診察を受けるよう案内している。
また、食べたマフィンの包装、購入時のレシート、残っている食品などは、原因を調べる際の手がかりになることがある。
【再発防止】マフィンの食中毒を防ぐ食品衛生管理のポイント
マフィンの食中毒予防には、製造工程から販売、家庭での保存まで、一貫した衛生管理が欠かせない。
厚生労働省が示す食中毒予防の基本は「つけない・増やさない・やっつける」の3原則だ。
つけない:手指や調理器具の衛生管理焼き上がったマフィンは、包装や盛り付けの段階で再び細菌が付着する可能性がある。
特に黄色ブドウ球菌は、人の手指などを介して食品に付着することがある。
製造現場では次の対策が重要だ。
- 調理前と作業変更時の手洗い
- 調理器具や作業台の洗浄・消毒
- 清潔な手袋や器具の使用
- 手指に傷や化膿した部分がある人の食品取扱いへの配慮
- 生の材料と加熱済み食品の接触防止
手袋を着用していても、汚れた手袋を使い続ければ衛生管理にはならない。交換のタイミングも重要になる。
増やさない:温度と時間を管理する焼き上がった食品を室温に長時間放置すると、残存する細菌が増殖する可能性がある。
そのため、製造後は食品の性質に応じた温度管理が必要だ。
大量生産する場合には、焼成後の冷却時間や包装までの時間、保管場所の温度などを記録することが望ましい。
イベント販売の場合も、販売前に製造した食品をどのような条件で保存し、会場まで運搬したのかが安全性を左右する。
やっつける:十分な加熱と過信しない衛生管理加熱によって多くの細菌は死滅するが、芽胞や一部の細菌が作る毒素は通常の加熱で完全に除去できるとは限らない。
したがって、焼成温度だけを確認して食品の安全性を判断するのは不十分だ。
製造時の加熱条件を管理するとともに、焼成後の二次汚染を防止し、適切な保存温度を維持する必要がある。
HACCPに沿った衛生管理も重要食品事業者には、HACCPに沿った衛生管理が求められている。
HACCPとは、食品の製造・調理工程で発生する可能性のある危害要因を分析し、重要な工程を継続的に管理する仕組みだ。
マフィン製造の場合、例えば次のような項目が管理対象になる。
- 原材料の受け入れと保管温度
- 生地の調製・混合工程
- 焼成条件
- 焼成後の冷却工程
- 包装作業の衛生状態
- 製品の保存温度
- 消費期限・賞味期限の設定根拠
- 製造日やロットの記録
特に重要なのは、レシピを変更した場合の再評価だ。
砂糖の配合や水分量、具材の変更によって保存性が変わる可能性があるため、以前と同じ期限をそのまま使用できるとは限らない。
【プロの結論】
糸引きマフィン騒動から読み取れる最大の教訓は、食品の安全性を焼き上がりの状態だけで判断してはいけないということだ。
焼成は食品衛生管理の一工程にすぎない。その後の冷却、包装、運搬、販売、保存まで、すべてが食品の安全性に関係する。
また、無添加や砂糖控えめという商品特性は、それだけで安全性や危険性を判断する材料にはならない。重要なのは、実際の配合、水分活性、衛生管理、保存条件を科学的に評価することだ。
購入者にとっても、販売者の説明や商品の見た目だけを安全の根拠にするのではなく、保存方法や期限の表示、製造・販売時の管理体制を確認することが大切になる。
【マフィン食中毒原因】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2023年の糸引きマフィン騒動の原因菌は何だった?
A1:原因菌は特定されていない。2023年12月に公表された店舗側の調査結果によると、食品従事者、体調不良を訴えた7人の検体、購入者から提供されたマフィン15検体から食中毒菌やウイルスは検出されなかった。したがって、セレウス菌や黄色ブドウ球菌が原因だったと断定することはできない。
Q2:マフィンを常温で何日保存すると危険?
A2:一律に危険になる日数は決められない。マフィンの水分量、砂糖の配合、具材、製造環境、室温などによって保存性が異なる。市販品は表示された保存方法と期限を守り、手作りの場合は長時間の常温放置を避けて、早めに冷蔵または冷凍することが基本となる。
Q3:マフィンが糸を引いていたら食べても大丈夫?
A3:食べてはいけない。糸引きや異臭は食品の異常を示す兆候であり、腐敗や微生物の増殖が疑われる。味見をして安全性を確認しようとせず、廃棄することが望ましい。
2023年のデザインフェスタで発生した糸引きマフィン騒動は、食品の保存管理や衛生管理に対する社会的な関心を高めた出来事だった。
事件では、約3,008個のマフィンが自主回収対象となり、厚生労働省のリコール情報ではCLASS Iに分類された。その後、目黒区保健所の調査では検査対象から食中毒菌やウイルスが検出されず、食中毒と断定できないとの結果が示された。
2026年11月現在、具体的な原因菌や糸引きの発生メカニズムは特定されていない。
一方、食品安全委員会や農林水産省などの資料からは、細菌の増殖に水分、栄養、温度が関係すること、芽胞形成菌は通常の加熱だけでは完全に除去できない場合があること、砂糖や水分活性が食品の保存性に影響することが分かる。
日常生活でマフィンを安全に楽しむためには、次の5点を意識したい。
1. 商品に表示された保存方法と期限を守る。
2. 手作りマフィンは長時間常温で放置しない。
3. 冷蔵・冷凍が必要なものは速やかに保管する。
4. 異臭、糸引き、カビなどの異常があれば食べない。
5. 食後に腹痛、嘔吐、下痢などが起きた場合は医療機関に相談する。
食品の安全性は、見た目や味、製造時の加熱だけで決まるものではない。原材料から保存、販売までの一連の管理があって初めて守られる。
糸引きマフィン騒動は、消費者にとっても食品を選び、保存し、口にする際の判断基準を改めて考えるきっかけとなった。
主な根拠資料: 目黒区の2023年11月16日公表資料、販売店の2023年12月19日調査結果報告、食品安全委員会の細菌・芽胞・水分活性に関する解説、厚生労働省の食品リコール分類資料、農林水産省の2025年更新の食品保存・食中毒対策資料。