「Story(English Version)」は、映画のためにゼロから書き下ろされた新曲ではありません。もともとはAIが2005年5月18日に発表した日本語曲「Story」を、全編英語詞にしたバージョンです。
ユニバーサル ミュージックの公式ディスコグラフィーによると、オリジナルの「Story」は2005年にシングルとして発売されました。作詞をAI、作曲・編曲を2 SOULが担当したバラードです。
一方、2014年の英語版はAIと2 SOULが英語詞を担当。AIの公式サイトも、オリジナル曲を全英語詞化した楽曲として紹介しています。つまり、同じメロディーと作品の核となるメッセージを引き継ぎながら、英語で歌うために歌詞を再構成した作品です。
日本語版・英語版の比較この比較で重要なのは、英語版が単なるカラオケ音源や海外歌手によるカバーではないという点です。AI本人が歌唱し、英語詞にも携わっています。
2014年11月7日には、オリコンが映画の本編映像と日本語オリジナル版「Story」を組み合わせた特別映像の公開を報道しました。実際の映画のエンドロールでは英語版が流れる一方、日本語版も作品の世界観を伝えるプロモーションに活用されたのです。
「Story」の歌詞を和訳すると、どんな意味?「Story」の歌詞を一言で表現するなら、孤独や不安を抱える人に寄り添い、あなたは一人ではないと伝える愛情の歌です。
歌詞の内容は、大きく分けると次のような流れで理解できます。
- 心を閉ざしていた時間:自分の気持ちをうまく表現できず、人との距離に不安を抱えている。
- 大切な人との出会い:そばにいてくれる存在によって、自分らしさや前に進む力を取り戻す。
- 相手を支える決意:今度は自分が相手のそばに立ち、悲しみや涙を受け止めようとする。
- 未来への希望:一人ではないという実感が、明日へ進むための力になる。
この内容は、ヒロとベイマックスの関係に驚くほど自然に重なります。
ヒロは兄タダシを失い、深い悲しみから心を閉ざします。そんな彼の前に現れたのが、タダシが開発したケア・ロボットのベイマックスです。ベイマックスはヒロの身体だけでなく、心の傷にも寄り添い続けます。
そして物語が進むにつれ、ヒロもまたベイマックスを大切な存在として受け入れていきます。誰かに支えられるだけでなく、自分も誰かを守りたいと思うようになる。この関係性こそが「Story」のメッセージと響き合う部分です。
英語版の歌詞を日本語で理解したい場合も、単語を一つずつ置き換えるより、こうした相手の存在によって救われ、自分も相手を支えたいと願う気持ちを軸に捉えると、映画とのつながりがよく分かります。
なお、AIの公式サイトでは、2014年の英語版発表時に「Story」は累計450万ダウンロードを超えたヒット曲として紹介されていました。映画のために選ばれたのは、当時すでに多くの人に親しまれていた楽曲だったのです。
【なぜAIのStoryが選ばれた?】ディズニーからのオファーと起用の経緯

「Story」が『ベイマックス』の日本版エンドソングに選ばれた経緯には、ディズニー側が楽曲の歌詞に注目したことが大きく関係しています。
2014年10月21日の映画.com、シネマトゥデイなどの報道によると、ディズニーの担当者は「Story」の歌詞に込められた、人と人との心のつながりを評価。傷ついたヒロに寄り添うベイマックスの姿と重なると考え、AI側にエンドソングとしての使用を打診しました。
その際、幸運にも未発表の英語版が存在していたことから、日本公開版のエンドソングとして「Story(English Version)」を採用することが実現しました。
この経緯には、映画と音楽のタイアップにおける興味深いポイントがあります。
新曲を作るのではなく、既存の名曲を選んだ理由映画の主題歌といえば、作品のために新曲を書き下ろす方法が一般的な選択肢の一つです。しかし、『ベイマックス』では既存のヒット曲が選ばれました。
その理由は、作品のテーマと「Story」のメッセージがすでに強く結びついていたからです。
映画の中心にあるのは、単なるロボットと少年の冒険ではありません。大切な人を失った悲しみ、残された人との絆、そして誰かを守ろうとする無償の愛です。
AI自身も、映画と楽曲の共通点について、ベイマックスが自分自身を傷つけてもヒロを守ろうとする姿が、自分の伝えたかった無償の愛と重なるという趣旨のコメントを寄せています。
加えて、AIは自分にも妹がいることから、兄弟や家族の絆を描いた映画に自分自身を重ねて鑑賞したと語っています。
2014年11月7日に公開された日本語版「Story」の特別映像も、映画と楽曲の親和性を伝える取り組みでした。エンドロールには英語版を使用しながら、日本語版を聴いて歌詞の意味を理解できる機会も用意したのです。
ここで注目したいのは、ディズニーが単に知名度のあるアーティストを起用したわけではないことです。物語の中心にある感情をすでに表現していた楽曲を見つけ、その魅力を映画の最後に届ける方法を選んだ点にあります。
【Immortalsとの違い】Fall Out Boyの曲もベイマックスの主題歌なの?
もう一つ、検索でよく見つかるのが、アメリカのロックバンドFall Out Boyによる「Immortals(インモータルズ)」です。
こちらも『ベイマックス』に深く関係する正式な楽曲ですが、AIの「Story」とは役割が異なります。
「Immortals」は、映画『ベイマックス』のためにFall Out Boyが書き下ろし、演奏したオリジナル楽曲です。
ウォルト・ディズニー・レコードが2014年10月14日に発表したサウンドトラックのプレスリリースでは、ビッグ・ヒーロー・シックスのメンバーが、頭脳明晰な若者たちからハイテク・ヒーローへと変わっていく場面のために制作されたと説明されています。
つまり、映画のヒーローとしての成長や仲間との結束を盛り上げる役割を担った曲です。
「Immortals」の歌手と制作背景歌唱を担当したのは、アメリカ・シカゴ出身のロックバンドFall Out Boyです。
メンバーのパトリック・スタンプは、兄のために立ち上がる少年という物語の要素が「Immortals」というタイトルの着想につながったと説明しています。
また、ベーシストのピート・ウェンツも、ヒーローたちが新しいスーツを初めて試す場面について言及しています。仲間たちが新しい役割へと踏み出していく姿を楽曲に重ねた制作背景が分かります。
海外版のサウンドトラックには「Immortals (End Credit Version)」というエンドクレジット版もあります。一方、日本版の公式エンドソングとして発表されたのは、あくまでAIの「Story(English Version)」です。ここを区別すると、2曲が混同される理由も理解できます。
StoryとImmortalsの違いを整理2曲は対立する関係ではありません。むしろ映画の異なる感情を担当しています。
「Immortals」が仲間との連帯やヒーローとして踏み出す力強さを表現するのに対し、「Story」は傷ついた心に寄り添う優しさを表現します。
アクションと感動の両方を持つ『ベイマックス』だからこそ、ロックとバラードという異なる音楽性が、それぞれの場面で生きているのです。
【オリジナルサウンドトラック完全解説】ヘンリー・ジャックマンの劇伴と収録曲
『ベイマックス』の音楽を語るうえで、もう一人欠かせない人物がいます。映画音楽を担当した作曲家、ヘンリー・ジャックマン(Henry Jackman)です。
ヘンリー・ジャックマンは、映画の場面に合わせて流れる劇伴(スコア)を担当しました。
ディズニーの2014年の発表資料によると、ジャックマンは本作のために77人編成のオーケストラを使用。オーケストラの響きと電子音楽を組み合わせ、コミック作品らしいアクション性、テクノロジー、登場人物たちの関係性を音楽に反映させました。
監督のドン・ホールも、メロディーや印象的なテーマを重視しながら、エレクトロニックな音楽表現を取り入れたかったという制作意図を説明しています。
日本盤オリジナルサウンドトラックの収録内容ユニバーサル ミュージックの公式商品情報によると、日本盤『ベイマックス オリジナル・サウンドトラック』は2014年12月17日発売。日本版エンドソングであるAIの「Story(English Version)」も特別収録されています。
収録内容は全21トラックです。大きく分けると、次の3つの要素で構成されています。
1.Fall Out Boyの楽曲
- Immortals(インモータルズ)
2.ヘンリー・ジャックマンによる劇伴
- Hiro Hamada(ヒロ・ハマダ)
- Nerd School(ナード・スクール)
- Microbots(マイクロボッツ)
- First Flight(ファースト・フライト)
- Family Reunion(ファミリー・リユニオン)
- Reboot(リブート)
このほか、物語の登場人物や展開に合わせた複数のスコアが収録されています。
3.日本版エンドソング
- Story (English Version) / AI
特に注目したいのは、サウンドトラックの最後にAIの「Story(English Version)」が収録されていることです。
アルバム全体を聴くと、映画の冒険やアクションを支える劇伴から、最後にヒロとベイマックスの関係を振り返るようなバラードへとつながります。映画のストーリーを音楽で追体験したい人にとって、アルバムの収録順にも意味を感じられる構成です。
なお、ここで紹介したのは日本盤サウンドトラックの収録曲です。映画本編で使われる音楽すべてと、CDに収録される楽曲が必ずしも一致するわけではありません。
【2026年最新情報】ベイマックスの主題歌は現在もStoryなのか?
2026年11月現在、ディズニー公式の『ベイマックス』作品紹介ページでは、日本版エンドソングとして引き続き「Story(English Version)/AI」と掲載されています。
2014年の公開時に決まった日本版エンドソングの位置づけは、現在も公式作品情報で確認できます。別のアーティストによる新しい日本版エンドソングに変更されたという公式発表は確認できません。
2025年には「Story」発売20周年の節目も2025年は、オリジナル版「Story」の発売から20周年にあたる年でした。
ユニバーサル ミュージックはAIのデビュー25周年を記念する特設企画を展開し、2005年の発売から20周年を迎えた「Story」の歴代ライブ映像などを紹介しています。
加えて、2025年2月26日発売の7インチレコードには、日本語版の「Story」と、B面に「Story (English Version)」が収録されました。映画『ベイマックス』とのつながりを持つ英語版が、オリジナル曲の記念アイテムにも採用された点は興味深い動きです。
2026年に楽曲を探す場合、配信サービスやCDの収録情報では、次の名称を区別すると間違いにくくなります。
- Story:2005年発表の日本語オリジナル版。
- Story (English Version):2014年発表の英語版。『ベイマックス』日本版エンドソング。
- Immortals:Fall Out Boyが映画のために制作したロックナンバー。
- Big Hero 6 Original Motion Picture Soundtrack:ヘンリー・ジャックマンの劇伴などを収録した映画音楽アルバム。
検索時に「AI ベイマックス 主題歌」と入力するときのAIは、人工知能のことではなく、歌手のAIを指しています。この点も検索結果を読み違えないためのポイントです。
【ベイマックスの主題歌】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:ベイマックスの主題歌を歌っているのは誰ですか?
A1:日本版の公式エンドソングは、歌手AIが歌う「Story(English Version)」です。日本語版「Story」を英語詞にしたバージョンで、2014年10月22日に配信が始まりました。
Q2:ベイマックスのエンディング曲は日本語版のStoryですか?
A2:日本版の映画のエンドソングは英語版の「Story(English Version)」です。日本語オリジナル版も特別映像やプロモーションで使用されましたが、劇場版の公式エンドソング表記は英語版です。
Q3:Fall Out BoyのImmortalsも主題歌ですか?
A3:「Immortals」も映画のために制作された正式な楽曲です。ヒーローチームが新しいスーツを試し、成長していく場面などで使用されます。ただし、日本版エンドソングとして公式に採用された曲はAIの「Story(English Version)」です。
Q4:Storyの日本語版と英語版は同じ曲ですか?
A4:同じメロディーと基本的なテーマを持つ楽曲です。日本語版は2005年に発売され、英語版は2014年に発表されました。英語版はAIと2 SOULが英語詞を担当しています。
Q5:Storyの歌詞はどんな意味ですか?
A5:大切な人とのつながりや、孤独なときに寄り添ってくれる存在への感謝、今度は自分が相手を守りたいという愛情を描いています。ヒロとベイマックスの関係に重ねると、映画のメッセージがより深く伝わります。
Q6:ベイマックスのサントラにはAIのStoryが入っていますか?
A6:はい。日本盤『ベイマックス オリジナル・サウンドトラック』に「Story(English Version)」が収録されています。21曲目に配置されており、Fall Out Boyの「Immortals」やヘンリー・ジャックマンの劇伴も楽しめます。
Q7:ベイマックスの音楽を作った人は誰ですか?
A7:映画の劇伴を担当したのはヘンリー・ジャックマンです。日本版エンドソングはAI、映画のためのオリジナル曲「Immortals」はFall Out Boyが担当しています。それぞれ異なる役割で映画の音楽を支えています。
『ベイマックス』の音楽を整理すると、検索で混同されやすい3つの楽曲の役割が明確になります。
- AI「Story(English Version)」:日本版の公式エンドソング。2005年の名曲を全英語詞化した楽曲。
- Fall Out Boy「Immortals」:映画のために制作されたオリジナル楽曲。ヒーローたちの成長や仲間との結束を盛り上げる。
- ヘンリー・ジャックマンの劇伴:オーケストラと電子音楽を融合し、映画全体の感情やアクションを支える音楽。
なかでもAIの「Story」が特別なのは、単に映画の最後に流れる曲だからではありません。2005年から歌い継がれてきた楽曲が、ヒロとベイマックスの関係性と結びつき、新しい意味を持って届けられたことにあります。
大切な人を失った悲しみから立ち直ろうとするヒロ。そして、どんなときも彼のそばにいようとするベイマックス。「Story」が歌う人とのつながりや無償の愛は、映画の物語そのものと深く響き合っています。
2026年に改めて映画を観るなら、エンドロールで流れるAIの英語版を聴き、その後に2005年の日本語オリジナル版と聴き比べてみてください。同じ楽曲でありながら、言語の違いによって伝わる響きや印象が変わることも、この作品を楽しむ一つの方法です。
映画の感動を音楽でもう一度味わいたい人には、日本盤オリジナルサウンドトラックもおすすめです。AIのバラードだけでなく、Fall Out Boyのロック、ヘンリー・ジャックマンの劇伴まで聴くことで、『ベイマックス』が持つ優しさと冒険の両方を感じられます。
主な情報確認先: ディズニー公式作品紹介、ユニバーサル ミュージック ジャパン、AI公式サイト、ウォルト・ディズニー・レコードの2014年発表資料、オリコンニュース、映画.com、シネマトゥデイ。