「は・か・た・の・しお」という力強い歌声を聞けば、思わず口ずさんでしまう人も多いのと考えられます。伯方の塩のテレビCMは、長年にわたって日本のお茶の間で親しまれてきた、食品広告を代表するサウンドロゴの一つです。
実は、この印象的なフレーズを歌っている人物は、長い間、一般には知られていませんでした。2023年11月、伯方塩業が創業50周年を機に調査結果を公表し、作曲者は浦田博信さん、初代の歌声を担当した人物は音楽家の塩谷信廣さんと正式に判明。加えて、演歌歌手の髙城靖雄さんによる歌唱や、2019年の二代目声優オーディションなど、CMには意外な歴史があります。
2026年には新商品「伯方の塩 さらりんちょ」の居酒屋篇も全国放送され、ブランドの広告展開は新しい段階に入っています。1980年のテレビCM開始から現在まで、誰が歌い、どのように受け継がれてきたのか。伯方塩業の公式沿革、公式発表、関係者への取材記事をもとに、その全貌を整理します。
【声の正体】伯方の塩CM「は・か・た・の・しお」は誰が歌っている?

最初に答えを明らかにしましょう。
伯方の塩CMでおなじみの「は・か・た・の・しお」の初代の声を担当したのは、音楽家の塩谷信廣(しおたに・のぶひろ)さんです。
そして、あの耳に残るメロディーを作曲したのは、作編曲家の浦田博信(うらた・ひろのぶ)さんです。
この2人の名前は、2023年11月4日に開催された伯方塩業の創業50周年イベント「伯方の塩まつり」で正式に発表されました。伯方塩業は同月9日付のプレスリリースでも、作曲者と初代声優の特定を公表しています。
つまり、一般に「伯方の塩の声優」と呼ばれている人物は、アニメや映画を中心に活動する一般的な声優というより、音楽活動を専門とするスタジオミュージシャンです。
初代声優・塩谷信廣さんのプロフィール伯方塩業の公式ギャラリーでは、塩谷さんを兵庫県在住のスタジオミュージシャン、シンガー、ギタリストとして紹介しています。
CMで聞こえる声の特徴は、短いフレーズを一気に押し出すような力強いシャウトです。わずか6文字のブランド名を、単なる商品名ではなく、耳に残る音楽として印象づけています。
なお、塩谷さん本人は2023年の発表イベントには出席しておらず、代理として株式会社ステップの制作部プロデューサー・榎裕一さんが出席しました。
作曲者・浦田博信さんのプロフィール浦田さんは大阪市在住の作編曲家、ギタリスト、歌手、ラジオパーソナリティです。
伯方の塩以外にも、「ノーベルVC3000のど飴」や「眼鏡の愛眼」などのCMソングに関わった人物として知られています。
特に興味深いのは、伯方の塩のサウンドロゴが、単に商品名を読み上げる音声として作られたわけではないことです。斬新さ、親しみやすさ、力強さという3つの方向性を意識し、塩谷さんの声質を生かす形で制作されました。
作曲者と初代声優が明らかになったことで、あの短いフレーズにも、明確な音楽的意図と制作背景があったことが分かります。
【CMの歴史】1980年の放送開始から1987年のサウンドロゴ誕生まで
伯方の塩のCMを振り返る際、最初に押さえておきたいのが、テレビCMの放送開始とサウンドロゴの登場は同じ年ではないという点です。
伯方塩業の公式沿革によると、テレビCMの放送が始まったのは1980年11月。現在の「は・か・た・の・しお」というサウンドロゴが使用され始めたのは、そこから7年後の1987年5月です。
1980年:伯方の塩がテレビCMを開始伯方塩業は1973年8月に創業し、1974年1月に「伯方の塩」を発売しました。
その後、1980年11月にテレビCMの放映を開始します。この時点では、まだ現在の有名なサウンドロゴは登場していません。
つまり、伯方の塩のCMそのものは、あの特徴的な歌声よりも先に存在していたのです。
1987年:おなじみのサウンドロゴが登場大きな転換点となったのが1987年5月です。テレビCMに「は・か・た・の・しお」というサウンドロゴが採用されました。
短いフレーズで商品名を伝える仕組みは、広告表現として非常に合理的です。長い商品説明をしなくても、音を聞くだけでブランド名を思い出してもらえるからです。
伯方塩業の公式ギャラリーによれば、このサウンドロゴの登場によって商品の認知度が高まり、視聴者から作曲者や初代声優について問い合わせが寄せられるようになりました。
1997~2005年:髙城靖雄さんが歌唱に参加初代の塩谷さんだけが、長年にわたって伯方の塩のCMを歌っていたわけではありません。
1997~2005年には、演歌歌手の髙城靖雄(たかじょう・やすお)さんも歌唱を担当しました。
髙城さんの歌唱によるバージョンが存在したため、長年CMを見てきた人の中には、あの声の主を髙城さんだと記憶している人もいます。
しかし、初代の声と、後年に参加した歌手の声は別のものです。伯方塩業の公式情報では、塩谷さんの力強いシャウトが効いたサウンドロゴは、当初から現在まで使用されていると説明されています。
【人物・関係者一覧】浦田博信さん、塩谷信廣さん、髙城靖雄さんの関係
伯方の塩CMの歴史を理解するには、作曲者、初代声優、後年の歌唱担当者、二代目声優を区別することが大切です。
特に、髙城さんと2019年のオーディション受賞者は、初代の声と混同されやすい存在です。それぞれの役割を整理すると、次のようになります。
| 人物・名称 | 担当・時期 | 関係・実績 |
|---|---|---|
| 浦田博信さん | 1987年のサウンドロゴ作曲 | 作編曲家。塩谷さんの声を生かして制作。 |
| 塩谷信廣さん | 1987年からの初代歌唱 | スタジオミュージシャン、シンガー、ギタリスト。 |
| 髙城靖雄さん | 1997~2005年 | 演歌歌手。CMの歌唱を担当した時期がある。 |
| Novembreさん | 2019年オーディションでグランプリ | 二代目声優としてWeb広告に起用。2020年にWeb CM公開。 |
| 伯方塩業 | 1973年創業 | 伯方の塩の製造・販売元。2023年に初代声優と作曲者を公表。 |
| 榎裕一さん | 2023年の発表イベント | 塩谷さんの代理としてイベントに出席した制作関係者。 |
この関係から分かるのは、伯方の塩CMの歴史には、ひとりの声優が交代していくという単純な構図ではなく、複数の音楽関係者が参加してきた背景があるということです。
特に重要なのは、2019年の二代目声優オーディションと、1997~2005年の髙城さんの歌唱を、初代の声の交代と同じ意味で捉えないことです。
【誕生秘話】なぜ初代声優と作曲者は36年間も分からなかったのか?
誰もが知っている有名なCMでありながら、作曲者と初代声優が長年判明していなかった。この事実には、広告制作の仕組みが関係しています。
社内に制作資料が残っていなかった伯方塩業は、当時のテレビCM制作を広告代理店に依頼していました。そのため、作曲や歌唱に関する詳しい資料が社内に残っていなかったのです。
加えて、調査を始めた時点では、当時の広告代理店は閉鎖。制作会社も廃業しており、関係者をたどるための手掛かりが限られていました。
会社側が把握していた情報も、初代の声の担当者がスタジオミュージシャンだったという程度だったと、FNNプライムオンラインの2023年11月の取材で説明されています。
2019年のオーディションで複数の人物が名乗り出た2019年に二代目声優オーディションが話題になると、初代声優や作曲者についても注目が集まりました。
ところが、メディアで大きく取り上げられた後、作曲者や初代声優は自分だと名乗り出る人物が複数現れたため、当時は確実な特定に至りませんでした。
加えて、過去に演歌歌手がCMの歌唱を担当していたことから、初代の声までその人物だと誤認される可能性も生じていました。
2023年、関係者の証言と断片的な資料から特定転機となったのは、伯方塩業の創業50周年です。
2023年、会社は改めて本格的な調査を開始。当時のCM制作に関わった人々とのつながりが生まれ、断片的な資料や関係者の記憶を照合することで、浦田博信さんと塩谷信廣さんの名前にたどり着きました。
同年11月4日の「伯方の塩まつり」で2人の名前が公表され、作曲者の浦田さんには感謝状が贈呈されました。塩谷さんには代理人の榎さんを通じて感謝が伝えられています。
一晩で作曲、録音は生楽器による一発録り2023年の発表時には、制作当時のエピソードも紹介されました。
浦田さんは、サウンドロゴを一晩で作り上げたと説明しています。斬新さ、親しみやすさ、力強さを意識し、シャウトを得意とする友人の塩谷さんを起用したというのです。
また、録音は生楽器の演奏による一発録りで行われ、その中から最も良いテイクを選んだといいます。
短いフレーズだからこそ、歌声の勢いや音の立ち上がりが印象を左右します。現在まで親しまれている独特の響きには、こうした制作上の工夫がありました。
「サウンドロゴは『伯方の塩』の商標と同じく、当社にとって大切な財産」
伯方塩業の担当者がFNNプライムオンラインの取材で説明した、サウンドロゴを継続使用する理由を象徴する言葉です。
単なる懐かしいCMソングではなく、企業が長い時間をかけて育ててきたブランド資産として位置づけられていることが分かります。
【2019年の話題】伯方の塩・二代目声優オーディションの結果は?
伯方の塩のCMを調べると、2019年に開催された「二代目声優オーディション」も頻繁に話題になります。
この企画は、現在の力強いイメージとは異なる、新しい「は・か・た・の・しお」を募集する参加型企画でした。
応募総数は2,639件!グランプリはNovembreさんオーディションは2019年5月11日から6月30日まで開催されました。
最終的な応募数は2,639件。多数の応募作品の中から、福岡を中心に活動していたNovembre(ノヴァンブル)さんがグランプリに選ばれました。
審査では、オリジナルの音階を生かしながら、従来とは異なる柔らかい雰囲気で歌い上げた点などが評価されています。
当初の目的は、Web広告で歌う二代目声優を選ぶことでした。つまり、従来のテレビCMの声を全面的に交代させる企画ではありません。
NovembreさんのWeb CMは2020年3月26日に公開グランプリ獲得後、Novembreさんは2020年3月26日公開のWeb CM「しあわせの音色」に起用されました。
この作品は、買い物帰りの母と娘、家庭で料理を作る母親、食卓を囲む家族というストーリーを中心に構成されています。
従来の力強いサウンドロゴとは対照的に、家庭の温かさを感じさせる優しい歌声が特徴です。
ここで押さえておきたいのは、Novembreさんの歌声はWeb CM限定であり、テレビCMのサウンドロゴは変更されなかったという点です。
2020年の伯方塩業の公式発表にも、今回の動画はWeb CM専用であり、テレビCMのサウンドに変更はないと明記されています。
したがって、二代目声優という名称から、塩谷さんの後任としてテレビCM全体を引き継いだと理解するのは正確ではありません。
【2026年最新】伯方の塩「さらりんちょ」居酒屋篇の内容と見どころ
2026年の伯方の塩CMで注目したいのが、新商品「伯方の塩 さらりんちょ」のテレビCMです。
伯方塩業は2026年5月8日に新CMの放送開始を発表。翌日の5月9日から全国で順次スポット放送を開始しました。
居酒屋篇は「さらりんちょ いっちょ!」が印象的「伯方の塩 さらりんちょ」居酒屋篇は15秒のテレビCMです。
舞台は居酒屋。枝豆を注文した客が「塩ください!」と声をかけるところから物語が始まります。
それに対して店員が威勢よく「さらりんちょ いっちょ!」と応じ、キャッチーな音楽とユニークな振り付けで商品を紹介します。
「さらりんちょ」という聞き慣れない言葉に戸惑う客との対比も、CMの見どころです。
従来のCMが商品名そのものを力強く印象づけるスタイルだったのに対し、2026年の居酒屋篇は、商品を使う場面や楽しさを前面に出した広告表現になっています。
新商品「伯方の塩 さらりんちょ」とは?さらりんちょは、片手で手軽に使えるハンディボトルタイプの塩です。
特徴は、用途に応じて使い分けられる2way仕様の振り口と、片手で簡単に開閉できるキャップ。サラサラした質感で、料理に均一に振りかけやすい設計になっています。
炒め物やグリル料理など、調理中に手軽に塩を加えたい場面に適しています。
| 項目 | 公式発表の内容 |
|---|---|
| 商品名 | 伯方の塩 さらりんちょ |
| 発売日 | 2026年2月27日 |
| 容量 | 100g |
| 容器 | ハンディボトルタイプ |
| 振り口 | 2way仕様 |
| 希望小売価格 | オープン価格 |
| CMタイトル | 「伯方の塩 さらりんちょ」居酒屋篇 |
| CMの長さ | 15秒 |
| 放送開始 | 2026年5月9日 |
| 放送エリア | 全国(一部エリアは放送スケジュールが異なる) |
商品名には、サラサラした質感だけでなく、いつでも、どこでも、誰でも、どんな料理にも気軽に使えるという新しい価値を提案する意図が込められています。
従来のサウンドロゴは2026年も継続している?ここは、2026年のCMを理解するうえで要点です。
伯方塩業の公式ギャラリーは、塩谷さんの力強いシャウトによるサウンドロゴを、当初から現在まで変わらず使用していると説明しています。
一方、さらりんちょ居酒屋篇の公式プレスリリースで紹介されているのは、「さらりんちょ いっちょ!」という新しい掛け声やキャッチーな音楽、振り付けです。
つまり、従来のサウンドロゴをブランド全体で継続していることと、個別の新CMでどの音楽表現を使用するかは分けて考える必要があります。
2026年の広告展開から見えてくるのは、長年培ったブランドの認知度を維持しながら、新商品ごとに異なる楽しさや利用シーンを伝える戦略です。
【プロの結論】伯方の塩CMが40年近く記憶に残り続ける理由
伯方の塩CMの魅力は、単に印象的な歌声にあるわけではありません。広告としての設計と、長期的なブランド運用がうまく組み合わさっている点にあります。
1. 商品名そのものを音楽にした通常の食品CMでは、商品の特徴やおいしさ、利用方法などを映像やナレーションで説明します。
しかし、伯方の塩のサウンドロゴは、商品名そのものを短い音楽に変換しました。
「は・か・た・の・しお」という6文字を、独特のリズムと力強い声で伝えることで、視覚的な広告を見ていなくても商品を思い出せる仕組みになっています。
2. 音を変えすぎず、ブランドの記憶を維持した広告は新鮮さを保つために、出演者や演出、音楽を変更することがあります。
しかし、伯方の塩は、サウンドロゴというブランドの核を長く維持してきました。
1997~2005年の髙城さんの歌唱や、2019年のオーディション企画など、異なる声や表現を取り入れた時期はありましたが、初代の音がブランドの基準として残り続けています。
これは、広告における一貫性が、消費者の記憶にどれほど大きな影響を与えるかを示す事例です。
3. 新しい世代には新しい接点を作る2019年の二代目声優オーディションでは、2,639件もの応募が集まりました。
この企画は、単なる声の募集ではありません。SNSを通じて一般の人が参加し、自分なりの「は・か・た・の・しお」を表現できる仕組みでした。
加えて、2026年のさらりんちょ居酒屋篇では、ダンス動画やSNS投稿を促す「さらりんちょ応援隊」の企画も展開されています。
長年親しまれてきたブランドの音を守りながら、参加型企画や新しい商品体験を通じて若い世代との接点を増やしている点は、広告戦略として興味深いところです。
伯方の塩CMの情報を見極める3つのポイントネット上でCMの声の正体を調べる際は、次の区別を意識すると情報を整理しやすくなります。
- 初代の声と作曲者を区別する:歌ったのは塩谷信廣さん、作曲したのは浦田博信さんです。
- 髙城靖雄さんの歌唱時期を区別する:1997~2005年に歌唱を担当した時期があり、初代声優とは別人です。
- 二代目声優とテレビCMを区別する:Novembreさんは2019年のオーディションのグランプリですが、起用されたのはWeb CM限定です。
この3点を押さえておけば、「現在の声は誰なのか」「髙城さんが初代なのか」「二代目に完全交代したのか」といった疑問を正しく整理できます。
【よくある質問】伯方の塩CMに関するFAQ
Q1:伯方の塩CMの「は・か・た・の・しお」は誰の声ですか?
A1:初代の声を担当したのは、音楽家・スタジオミュージシャンの塩谷信廣さんです。作曲者は浦田博信さんで、2023年11月に伯方塩業が正式発表しました。
Q2:伯方の塩CMの二代目声優は誰ですか?
A2:2019年の二代目声優オーディションでグランプリを獲得したNovembre(ノヴァンブル)さんです。ただし、起用されたのはWeb CM限定で、テレビCMのサウンドロゴは変更されませんでした。
Q3:髙城靖雄さんは伯方の塩CMに出演していたのですか?
A3:はい。伯方塩業の公式情報によると、1997~2005年に歌唱を担当していました。ただし、初代の声を担当した人物ではありません。初代は塩谷信廣さんです。
伯方の塩のテレビCMは、1980年11月に放送を開始し、1987年5月に現在の「は・か・た・の・しお」というサウンドロゴを導入しました。
その作曲者は浦田博信さん、初代の声を担当したのは塩谷信廣さんです。1997~2005年には演歌歌手の髙城靖雄さんも歌唱に参加し、2019年にはNovembreさんが二代目声優オーディションのグランプリに選ばれました。ただし、Novembreさんの起用はWeb CM限定です。
そして2026年には、新商品「伯方の塩 さらりんちょ」の居酒屋篇が5月9日から全国で順次放送されました。「さらりんちょ いっちょ!」という新しい掛け声やダンスを取り入れ、従来のブランドイメージに新しい楽しさを加えています。
今回の歴史で特に印象的なのは、誰もが知っているCMの作曲者と初代声優が、36年もの間、一般には明らかになっていなかったことです。2023年の公式発表によって、その制作の裏側がようやく明らかになりました。
伯方の塩CMは、1987年に生まれた音を大切に受け継ぎながら、新しい商品や時代に合わせて広告表現を変えてきたブランドの好例です。2026年の新CMも、その長い歴史の新たな1ページとして注目されます。
今後も「は・か・た・の・しお」というおなじみの歌声が、どのような新しい映像や企画と組み合わされていくのか、引き続き注目したいところです。
(出典: 伯方 の 塩 cm(Yahoo!ニュース))