宮澤康一氏は、1967年2月4日生まれ、長野県出身の国土交通官僚です。最終学歴は京都大学法学部。1990年4月に運輸省へ入省し、航空、鉄道、海洋政策、危機管理など幅広い行政分野を経験してきました。
注目したいのは、海上保安庁内部だけでキャリアを積んだ人物ではないことです。国土交通省の本省部局や内閣官房、内閣府、海外勤務などを経験し、行政組織の運営と政策調整に強みを持つ経歴です。公開されている略歴書から、主な転換点を整理します。
宮澤康一氏の主な経歴・年表| 時期 | 役職・出来事 | 経歴上のポイント |
|---|---|---|
| 1990年4月 | 運輸省入省 | 国家公務員としてキャリアを開始 |
| 1998年5月 | 在タイ日本国大使館二等書記官 | 外交実務を経験 |
| 2000年4月 | 在タイ日本国大使館一等書記官 | 海外勤務を継続 |
| 2004年7月 | ハーバード大学留学 | 国際的な政策知識を深める |
| 2006年7月 | 国土交通省総合政策局環境・海洋課地球環境対策室長 | 環境・海洋政策を担当 |
| 2010年7月 | 国際観光振興機構パリ事務所長 | 海外行政・観光分野を経験 |
| 2019年7月 | 海上保安庁総務部長 | 海上保安行政の中枢に関わる |
| 2021年7月 | 国土交通省大臣官房総括審議官 | 省内の政策調整を担当 |
| 2022年6月 | 大臣官房危機管理・運輸安全政策審議官 | 危機管理と運輸安全を担当 |
| 2023年7月 | 内閣府総合海洋政策推進事務局長 | 海洋政策全体の調整を担当 |
| 2024年7月 | 海上保安庁次長 | 長官を補佐する立場に就任 |
| 2025年7月 | 国土交通省航空局長 | 航空行政の責任者を務める |
| 2026年8月7日 | 海上保安庁長官 | 第49代長官に就任 |
宮澤氏のキャリアを理解するうえで、特に重要なのが次の3段階です。
1.2023年7月:内閣府総合海洋政策推進事務局長
海洋政策を政府全体で調整する立場を経験しました。海上保安庁の業務は、領海警備や海難救助だけでなく、海洋調査、海洋環境保全、国際協力などにも及びます。海洋政策全体を俯瞰する経験は、その後の海上保安庁幹部としての仕事にもつながります。
2.2024年7月:海上保安庁次長
海上保安庁の内部に戻り、次長に就任しました。前長官の瀬口良夫氏も、長官就任前に次長を務めています。
宮澤氏にとっては、過去に総務部長として携わった海上保安行政を、今度は組織全体を統括する側から経験する機会となりました。
3.2025年7月:国土交通省航空局長
海上保安庁次長から航空局長へ異動しました。
航空局長は航空行政のトップに位置する幹部職です。航空の安全確保、交通行政、危機管理など、広域的な行政運営を担う経験を重ねています。
その約1年後となる2026年8月7日、海上保安庁長官に就任しました。
宮澤氏は海上保安大学校出身なのかここは興味深いポイントです。
宮澤氏の最終学歴は京都大学法学部であり、海上保安大学校ではありません。
一方、前任の瀬口良夫氏は1986年3月に海上保安大学校本科を卒業しています。
つまり、海上保安庁長官になるために、海上保安大学校を卒業していることが必須条件というわけではありません。
海上保安大学校は、海上保安官を養成する重要な教育機関ですが、長官という行政組織のトップには、現場の専門性だけでなく、法制度、予算、人事、組織管理、国際関係などを総合的に扱う能力も求められます。
宮澤氏の経歴は、海上保安庁のトップに就くルートが一つではないことを示しています。
【歴代一覧】初代から第49代までの長官はどう変わった?

海上保安庁は1948年に設立されました。初代長官は大久保武雄氏です。
2026年11月現在、宮澤康一氏が第49代を務めています。
歴代長官の顔ぶれを振り返ると、海上保安行政が時代とともに変化してきたことが分かります。
近年の歴代長官一覧公開されている歴代長官の記録をもとに、2000年代以降の主な歴代長官をまとめると次のとおりです。
- 第36代:荒井正吾氏(1999~2001年)
- 第37代:縄野克彦氏(2001~2002年)
- 第38代:深谷憲一氏(2002~2004年)
- 第39代:石川裕己氏(2004~2007年)
- 第40代:岩崎貞二氏(2007~2009年)
- 第41代:鈴木久泰氏(2009~2012年)
- 第42代:北村隆志氏(2012~2013年)
- 第43代:佐藤雄二氏(2013~2016年)
- 第44代:中島敏氏(2016~2018年)
- 第45代:岩並秀一氏(2018~2020年)
- 第46代:奥島高弘氏(2020~2022年)
- 第47代:石井昌平氏(2022~2024年)
- 第48代:瀬口良夫氏(2024~2026年)
- 第49代:宮澤康一氏(2026年~)
なお、初代の大久保武雄氏は1948年の海上保安庁発足時に就任しています。
歴代長官の交代から見える変化歴代の変遷で注目したいのは、2000年代以降、海上保安庁の任務がより広範囲な海洋安全保障と結び付いてきたことです。
海難救助や海上犯罪の取締りに加え、領海警備、外国公船への対応、海洋権益の確保、国際的な海上保安機関との連携など、組織が扱う課題は多様化しています。
そのため、長官に求められる能力も、現場の業務経験だけではなく、政府全体の政策調整や国際関係への理解へと広がっています。
瀬口良夫前長官から宮澤康一長官への交代
氏
第48代・2024年7月~2026年8月
海上保安大学校本科卒業。対馬海上保安部長、第九管区海上保安本部長、警備救難部長、海上保安監、次長などを歴任しました。
氏
第49代・2026年8月7日就任
京都大学法学部卒業。国土交通省航空局長、海上保安庁次長、内閣府総合海洋政策推進事務局長などを歴任しました。
瀬口氏は2024年7月1日に次長から長官へ昇格し、2026年8月に退任しました。
その後、宮澤氏が航空局長から長官に就任しています。
両者のキャリアには違いがあります。瀬口氏は海上保安大学校を卒業し、海上保安庁の現場や警備救難部門を中心に経験を積んだ人物です。一方、宮澤氏は国土交通省の複数部局や内閣府などを経験した行政官です。
この交代は、海上保安庁の組織運営において、現場の専門性と政府全体の政策調整能力の双方が重要であることを考える材料になります。
【仕事内容と権限】海上保安庁長官は何を決めるのか?
海上保安庁長官の仕事を理解するには、海上保安庁法を確認する必要があります。
特に重要なのが、第2条と第10条です。
海上保安庁法第10条が定める長官の役割海上保安庁法第10条では、海上保安庁の長を海上保安庁長官と定めています。
加えて、長官は国土交通大臣の指揮監督を受けながら、庁務を統理し、所属職員を指揮監督するとされています。
ここでいう「庁務を統理する」とは、組織全体の行政事務をまとめ、各部門が任務を遂行できるように管理することです。
具体的には、次のような仕事が含まれます。
1.領海警備と海上治安の組織運営日本の領海や周辺海域の安全を確保することは、海上保安庁の重要な任務です。
尖閣諸島周辺の警備、外国漁船による違法操業への対応、不審船への対処など、海上の治安維持に関する体制を整えます。
長官自身が常に巡視船に乗って現場指揮を執るわけではありません。現場の海上保安官や各管区海上保安本部が活動できるよう、組織全体の方針や体制を統括します。
2.海難救助と災害対応海上保安庁は、船舶事故や海難事故が発生した場合、人命救助や捜索活動を行います。
地震や津波などの大規模災害では、海上からの救援活動、船舶の安全確保、被災地への支援なども重要です。
長官は、こうした活動を支える人員配置、装備、訓練、予算などを組織全体の視点から管理します。
3.予算・人事・巡視船艇の整備海上保安庁の活動には、巡視船、航空機、通信設備、基地、専門人材が必要です。
そのため、長官の仕事には次のような行政管理も含まれます。
- 巡視船艇や航空機の整備計画
- 海上保安官の採用・育成
- 組織の人員配置と人事管理
- 予算の確保と執行管理
- 情報通信システムの整備
- 国内外の関係機関との連携
海上保安庁の公式資料でも、巡視船や航空機の増強だけでなく、新技術、情報分析、サイバーセキュリティ、人材育成などが組織強化の柱として挙げられています。
4.国際的な海上保安協力海上の安全は、一国だけで完結する問題ではありません。
密輸、海賊、海難事故、海洋環境問題などは国境を越えて発生するため、各国の海上保安機関との連携が必要です。
長官は国際会議などに参加し、日本の海上保安政策を代表する役割も担います。
長官の権限はどこまで及ぶ?ここで押さえておきたいのが、長官の権限には法律上の範囲があるという点です。
海上保安庁法第10条は、長官が国土交通大臣の指揮監督を受けることを明記しています。
つまり、長官は独立した国家権力の最高責任者ではありません。国土交通省の外局である海上保安庁を統括する行政機関のトップです。
また、国土交通大臣以外の大臣が所管する事務については、それぞれの大臣の指揮監督を受けるという規定もあります。
加えて、海上保安官の立入検査や犯罪捜査などの具体的な職務権限は、個々の法令によって定められています。
長官の組織統括権限と、現場の海上保安官が行使する法定権限は、区別して理解する必要があります。
【組織図で理解】長官と次長・海上保安監の違い
海上保安庁長官は組織のトップですが、すべての業務を一人で処理するわけではありません。
本庁には長官を支える幹部職員や専門部門があり、全国の管区海上保安本部と連携して業務を進めています。
2026年の海上保安庁組織図2026年4月1日現在の公式パンフレットに基づく組織構造は、次のようになっています。
海上保安庁長官
組織全体の統括・職員の指揮監督
次長
長官の補佐
海上保安監
幹部職
首席監察官
監察業務
本庁の5つの内部部局
{#each ["総務部","装備技術部","警備救難部","海洋情報部","交通部"] as item}
{item}
{/each}
全国の地方支分部局・教育機関
第1~第12管区海上保安本部
全国の海上保安部・海上保安署・航空基地など
海上保安大学校
広島県呉市
海上保安学校
京都府舞鶴市
両者は同じ組織の幹部ですが、役割は異なります。
長官は海上保安庁の最高責任者で、庁務全体を統括します。
次長は長官を補佐する幹部職員です。組織の運営や各部局の調整などを担い、長官の業務を支えます。
2026年8月7日現在の公式幹部職員一覧では、次の人物がそれぞれのポストに就いています。
- 長官:宮澤康一氏
- 次長:佐々木渉氏
- 海上保安監:山戸義勝氏
佐々木氏は第八管区海上保安本部長から次長に就任しました。山戸氏は警備救難部長から海上保安監に就いています。
長官の任命方法は?内部昇格だけで決まるのか海上保安庁長官は、選挙によって選ばれる役職ではありません。
国家公務員法第55条には任命権についての規定があり、外局の長に対する任命権は各大臣に属する仕組みです。
海上保安庁は国土交通省の外局であるため、国土交通省の幹部人事として長官の任命が行われます。
宮澤氏の場合も、航空局長から海上保安庁長官への人事異動として発令されました。
【2026年の注目動向】宮澤長官が担う日本の海上保安の課題
宮澤長官の就任後、海上保安庁が取り組む課題として注目されるのが、領海警備の強化と国際協力です。
特に日本周辺海域では、外国公船の活動、違法操業、海洋調査、密輸など、複数の問題が同時に発生しています。
尖閣諸島周辺の領海警備海上保安庁の2025年版海上保安レポートは、尖閣諸島周辺海域における中国海警局の船舶の活動や領海侵入への対応を重要課題として取り上げています。
また、日本海の大和堆周辺における外国漁船の違法操業なども、継続的な監視と対応が必要な問題です。
こうした事案では、巡視船艇による警戒監視だけでなく、航空機や海洋監視システムを活用した情報収集も重要になります。
2026年9月のアジア海上保安機関長官級会合宮澤長官の就任後の国際的な活動として、注目されるのが第22回アジア海上保安機関長官級会合(HACGAM)です。
海上保安庁の公式発表によると、会合は2026年9月7日から10日まで、中国・杭州で開催され、宮澤長官が出席しました。
会合では、各国の取り組みや成功事例を共有し、海上保安に関する国際協力について意見交換が行われました。
特に注目されたのが、海上保安庁とオーストラリア沿岸警備隊が提案した新たな取り組み「HACGAM Vision 2030」です。
議論された主なテーマは次の5分野です。
1. 捜索救助
2. 海洋環境保全
3. 海上不法活動の予防・取締り
4. 人材育成
5. 情報共有・合同訓練
参加国・地域は行動計画や評価指標などについて合意し、共同声明を採択しました。2027年の開催国にはパキスタンが選ばれています。
この会合は、宮澤長官の仕事が国内の組織管理にとどまらず、アジア地域の海上保安協力にも及んでいることを示す具体例です。
今後注目すべき3つのポイント宮澤体制の評価を考えるうえでは、次の3点が重要になります。
- 領海警備の実効性: 巡視船や航空機、情報収集能力をどう組み合わせて周辺海域の安全を確保するか。
- 国際協力の具体化: HACGAM Vision 2030などの国際的な取り組みを、実際の合同訓練や情報共有にどうつなげるか。
- 人材と組織の持続性: 専門人材の育成、現場の負担軽減、装備の更新をどのように進めるか。
特に、巡視船や航空機の数を増やすだけでは十分ではありません。運用する人材、通信システム、情報分析、整備体制がそろって初めて、海上保安能力は実効性を持ちます。
【よくある質問】海上保安庁長官に関するFAQ
Q1:2026年現在の海上保安庁長官は誰ですか?
A1:2026年11月現在は、第49代の宮澤康一氏です。2026年8月7日付で航空局長から就任しました。
Q2:海上保安庁長官になるには海上保安大学校を卒業する必要がありますか?
A2:必須ではありません。宮澤康一氏は京都大学法学部卒業で、1990年に運輸省へ入省した国家公務員です。一方、前任の瀬口良夫氏は海上保安大学校本科を卒業しています。
Q3:海上保安庁長官と次長はどちらが上ですか?
A3:長官が上位です。長官は海上保安庁のトップとして組織全体を統括し、次長は長官を補佐します。
Q4:海上保安庁長官は自衛隊の司令官と同じ立場ですか?
A4:異なります。海上保安庁は海上の安全と治安を担当する行政機関であり、海上保安庁法第25条は、海上保安庁や職員が軍隊として組織・訓練され、軍隊の機能を営むことを認めるものではないと定めています。
2026年11月現在、海上保安庁のトップを務めているのは、第49代長官の宮澤康一氏です。
2026年8月7日に航空局長から就任し、瀬口良夫前長官から組織運営を引き継ぎました。
宮澤氏は京都大学法学部卒業後、運輸省に入省。航空、鉄道、海洋政策、危機管理、国際行政などを経験してきた行政官です。海上保安大学校出身の瀬口氏とは異なるキャリアを持つ点も特徴です。
長官の仕事は、巡視船による領海警備や海難救助を直接行うことだけではありません。人事、予算、装備、教育、国際協力を含め、海上保安庁という大きな組織を動かすことにあります。
今後は、尖閣諸島周辺を含む日本周辺海域の警備、海難救助体制の充実、国際協力、そして現場で働く海上保安官の人材育成が重要な評価ポイントになります。
海上保安庁長官を見る際は、肩書や就任人事だけでなく、領海警備・救難活動・組織強化・国際連携という4つの観点から、その実績を追うことが大切です。