原材料名欄を読むうえで、もう一つ理解しておきたいのが、個別表示と一括表示の違いです。
消費者庁の2026年4月版ハンドブックでは、個別表示を原則とし、一定の条件で一括表示を認めるという考え方が示されています。
個別表示は原材料ごとにアレルゲンを示す個別表示は、アレルゲンを含む原材料の直後に、その旨を記載する方法です。
例えば、次のような表示になります。
- マヨネーズ(卵を含む)
- 醤油(大豆・小麦を含む)
- チョコレート(乳成分を含む)
メリットは、アレルゲンがどの原材料に含まれているかを判断しやすいことです。
複数の原材料が使用されている食品でも、アレルゲンの由来を確認しながら商品を選べます。
一括表示は商品に含まれるアレルゲンをまとめて示す一括表示は、原材料名欄の最後などに、商品に含まれるアレルゲンをまとめて記載する方法です。
代表的な例は次のとおりです。
「(一部に小麦・卵・乳成分・大豆を含む)」
個別表示よりも文字数を減らせるため、表示スペースに限りがある場合などに利用できます。
ただし、メーカーが自由に好きな表示方法を選べるわけではありません。個別表示ができない場合や、個別表示が適さない場合など、認められた条件に従う必要があります。
また、重要なルールとして、個別表示と一括表示を組み合わせることはできません。
消費者が確認する際には、原材料名の途中にある括弧書きだけでなく、欄の最後にある一括表示まで確認することが必要です。
食品添加物にもアレルゲン表示が必要見落としやすいのが、食品添加物に由来するアレルゲンです。
食品に使用される添加物が特定原材料等に由来する場合、原則として添加物名の後に「○○由来」と表示します。
具体例は次のとおりです。
- キチン(かに由来)
- カゼインナトリウム(乳由来)
- 保存料(しらこたんぱく:さけ由来)
- 乳化剤(大豆由来)
添加物の表示は、原材料名欄とは別の添加物欄に記載される場合があります。原材料名欄だけを見て判断するのは不十分です。
また、添加物として表示される「乳化剤」という名称にも注意が必要です。
乳化剤という言葉に「乳」が含まれていても、牛乳由来であることを意味するわけではありません。
乳化剤は食品の成分を均一に混ぜるなどの目的で使用される添加物です。乳酸、乳酸菌、乳酸カルシウム、乳酸ナトリウムなども、名称に「乳」の文字が含まれるからといって、牛乳由来のアレルゲンと判断することはできません。
一方、実際に乳由来の添加物が使われている場合は、由来を示す表示が必要です。
加えて、加工助剤やキャリーオーバーに該当して通常の添加物表示を省略できる場合でも、アレルゲン表示は必要になることがあります。
つまり、添加物の名称だけでなく、原材料の由来まで確認することが大切です。
【見落とし厳禁】コンタミネーションとアレルギー表示の対象外

食品表示を確認していても、すべてのアレルゲン混入リスクを把握できるわけではありません。
その理由の一つが、コンタミネーションです。
コンタミネーションとは何かコンタミネーションとは、本来その食品の原材料として使用していないアレルゲンが、製造や加工の過程で意図せず混入することです。
例えば、次のようなケースがあります。
- ピーナッツ入り菓子を製造したラインで、別の商品を製造する。
- 同じ調理器具や機械を複数の食品に使用する。
- 製造設備の洗浄後も、微量のアレルゲンが残る。
- 小麦粉やそば粉などの粉末が製造環境で飛散する。
消費者庁は、製造ラインの十分な洗浄、専用器具の使用、アレルゲンを含まない食品から先に製造することなどを混入防止策として挙げています。
「同じ工場で製造しています」という表示の意味パッケージに次のような注意書きが記載されていることがあります。
「本品製造工場では、落花生を含む製品も生産しています。」
これは、同じ製造施設で対象アレルゲンを使用する別の商品を製造していることを知らせる注意喚起です。
その商品に必ず落花生が入っているという意味ではありません。
一方、表示がないからといって、意図しない混入の可能性が完全に排除されているとも限りません。
消費者庁のハンドブックでは、混入防止策を徹底しても可能性を排除できない場合に、製造工場などに関する注意喚起表示を行うことが望ましいとしています。
なお、「入っている可能性があります」「入っている場合があります」といった単なる可能性表示は認められていません。
ここは、通常の原材料表示とコンタミネーションに関する注意喚起を区別するうえで要点です。
外食・中食は食品表示の義務対象なのかもう一つの誤解が、飲食店や惣菜店でも市販の加工食品と同じアレルギー表示義務があるという認識です。
実際には、食品表示制度の対象範囲は異なります。
| 食品・販売形態 | アレルギー表示の扱い |
|---|---|
| 容器包装された一般用加工食品 | 特定原材料9品目は義務 |
| 容器包装された食品添加物 | 対象となるアレルゲンの表示が必要 |
| アレルゲン由来の添加物を使用した一部の生鮮食品 | 対象となる場合がある |
| 店頭でのばら売り・量り売り | 原則として表示義務の対象外 |
| 飲食店で提供される料理 | 加工食品と同じ表示義務はない |
| 酒類 | 特定原材料の表示義務の対象外 |
例えば、スーパーで販売される包装済みのハンバーグと、飲食店で提供されるハンバーグでは、適用される表示制度が異なります。
飲食店では自主的にアレルゲン一覧やメニュー情報を提供するところもありますが、原材料の変更や調理器具の共用などによって情報が変わる可能性があります。
外食や中食を利用する際は、メニュー表だけで判断せず、店員に原材料や調理環境について確認することが大切です。
なお、食品表示基準では、表示可能面積が30平方センチメートル以下の小さな容器包装であっても、食物アレルギー表示を省略することはできません。
【プロの結論】食品アレルギー表示は3段階で確認する
2026年の制度改正によって、カシューナッツは義務表示の対象となりました。しかし、経過措置や推奨表示の仕組みがある以上、パッケージの表示だけを見て、すべてのアレルゲンが確認できたと考えるのは危険です。
食品を選ぶときは、次の3段階で確認することをおすすめします。
第1段階:義務表示9品目を確認する。
最初に、えび、かに、くるみ、小麦、そば、卵、乳、落花生、カシューナッツを確認します。特にカシューナッツは2028年3月31日まで経過措置があるため、表示がない場合にも注意が必要です。
第2段階:推奨表示20品目を確認する。
自分や家族のアレルゲンが推奨表示に含まれている場合は、その品目が表示対象になっているか確認します。表示されていない場合は、メーカーへの問い合わせも検討します。
第3段階:添加物と製造環境を確認する。
原材料名欄だけで確認を終えず、添加物欄、一括表示、製造工場に関する注意書きまで目を通します。
また、対象29品目に含まれていない食品でも、食物アレルギーの原因になることがあります。29品目はすべてのアレルゲンを網羅したリストではありません。
食物アレルギーのある人は、医師から指示された除去対象や摂取可能な食品を基準に選択してください。
表示制度は、消費者が食品を安全に選択するための重要な仕組みですが、個人のアレルギーに対する安全性を一律に保証するものではありません。
【食品表示アレルギー】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:2026年4月からカシューナッツは必ず表示されるのですか?
A1:2026年4月1日から特定原材料に追加され、表示義務の対象になりました。ただし、2028年3月31日まで経過措置があります。この期間中に製造・加工・輸入された一般用加工食品などは従前の表示方法を適用できるため、表示がない商品も存在します。
Q2:ピスタチオは表示義務がありますか?
A2:2026年4月1日から特定原材料に準ずるものに追加されました。表示は推奨されていますが、義務ではありません。そのため、ピスタチオを使用していても、パッケージに記載されない場合があります。
Q3:アレルギー表示がなければ、その食品にアレルゲンは含まれていないと考えてよいですか?
A3:一概には判断できません。推奨表示20品目は表示されない場合があります。また、カシューナッツには経過措置があり、対象29品目以外にもアレルギーの原因となる食品があります。必要に応じてメーカーに原材料や製造環境を問い合わせてください。
2026年4月1日の食品表示基準改正により、カシューナッツが義務表示の特定原材料9品目に加わり、ピスタチオが推奨表示の20品目に追加されました。
現在の対象品目は合計29品目です。ただし、カシューナッツには2028年3月31日までの経過措置があり、すべての商品に新表示が反映されているわけではありません。
買い物の際に覚えておきたい要点は、次の4つです。
- 義務表示9品目だけでなく、推奨表示20品目も確認する。
- 原材料名欄の括弧書きと末尾の一括表示を確認する。
- 添加物の由来やコンタミネーションにも注意する。
- 外食・中食では店頭の商品表示と同じルールが適用されないことを理解する。
消費者庁は2026年4月版の「加工食品の食物アレルギー表示ハンドブック」を公表しており、今回の改正を反映した最新の制度情報を確認できます。
最も大切なのは、「表示がないから含まれていない」と思い込まないことです。
制度の改正内容を知り、原材料・添加物・製造環境を総合的に確認することが、日々の食品選びでアレルギー事故を防ぐための基本になります。