「後をつける」は、先に移動する人や動物の後を追い、その行動や居場所を確認することを意味します。
『精選版 日本国語大辞典』では、人や動物の行くあとについて行き、様子を探ること、つまり尾行することを意味する表現として説明されています。
似た言葉には「尾行する」「追跡する」「つけ回す」「追いかける」などがあります。ただし、それぞれの言葉にはニュアンスの違いがあります。
後をつける・後を追う・尾行するの違い- 後をつける:相手の後ろについて行く行為。日常的な表現から、意図的な追跡まで幅広く使われる。
- 後を追う:先に行った人や物を追いかけること。必ずしも相手に気づかれないようにするとは限らない。
- 尾行する:相手に気づかれないように後をつけ、行動を探ったり監視したりすること。
- つけ回す:相手の周囲を執拗に追い続けること。迷惑行為やストーカーを連想させる表現。
例えば、友人と待ち合わせていて、先に歩いている友人の後ろについて行く場合も「後をつける」という表現が使われることがあります。
一方、相手の意思に反して移動先を追跡し、住居や職場の周辺で待ち伏せする場合は、単なる移動上の行為では済まない可能性があります。
重要なのは、後ろを歩いているという外形だけではなく、相手との関係、行為の目的、継続性、相手に与える不安や危険性です。
【尾行・つきまとい・ストーカー行為はどう違う?】

「尾行」と「つきまとい」は似た意味で使われますが、法律上は同じものではありません。
特に注意したいのが、ストーカー規制法に定められた「つきまとい等」と「ストーカー行為」の区別です。
尾行は行為の方法、つきまといは法律上の規制対象尾行は、相手に気づかれないように後を追うという行動を表す言葉です。
例えば、警察による捜査や正当な調査活動など、一定の目的と適法性を備えた尾行もあります。そのため、尾行という言葉だけで犯罪と判断することはできません。
これに対して、ストーカー規制法の「つきまとい等」は、特定の相手に対する恋愛感情その他の好意、またはその感情が満たされなかったことへの怨恨を満たす目的で行われる、法律に定められた行為を指します。
加えて、同一の相手に対して一定のつきまとい等を反復して行うことなどが、法律上の「ストーカー行為」に該当します。
3つの言葉と法律上の位置づけを比較法律で規制される「つきまとい等」には、単純な尾行以外にもさまざまな行為が含まれます。
1. つきまとい、待ち伏せ、進路妨害、住居や勤務先付近での見張り、押しかけ。
2. 監視していると思わせるような内容を告げる行為。
3. 面会や交際など、義務のないことを要求する行為。
4. 著しく粗野または乱暴な言動。
5. 無言電話や、拒否されているにもかかわらず繰り返す電話・メール・SNSメッセージなど。
6. 汚物や動物の死体など、不快感を与える物を送付する行為。
7. 名誉を傷つける内容を告げたり、第三者が知り得る状態にしたりする行為。
8. 性的羞恥心を害する行為。
これらは単なる迷惑行為として片付けられるものではありません。
また、位置情報を本人の承諾なく取得する行為についても、法律による規制があります。
【後をつける心理・理由と「後をつけられる原因」の誤解】
誰かの後をつける理由は一つではありません。
恋愛感情や嫉妬、相手への執着、恨みなどの感情が関係する場合もあれば、金品を狙う目的や、特定の人物の行動を確認したいという別の動機が関係する場合もあります。
ただし、行動だけから相手の心理状態や精神的な問題を断定することはできません。
後をつける人に見られる心理的な背景代表的な背景として、次のようなものがあります。
1. 相手への強い好意や執着
相手ともっと接点を持ちたい、どこにいるのか知りたいという気持ちが、相手の意思を無視した行動につながるケースです。
交際を断られた後も相手の生活を把握しようとする場合や、別れた相手の行動を監視しようとする場合もあります。
2. 拒絶されたことへの怒りや恨み
交際や復縁を断られたことを受け入れられず、相手に接触し続けるケースです。
自分の要求が通らないことへの不満が、待ち伏せや繰り返しの連絡、監視行為などに発展することがあります。
3. 相手を管理・支配したい気持ち
相手の交友関係や行動を把握し、自分の思いどおりにしたいという意識が背景にある場合です。
特に元交際相手や配偶者など、以前から相手の生活を知っている関係では、行動パターンを利用した接近が問題になることがあります。
4. 金銭や犯罪目的による追跡
すべての追跡が恋愛感情に関係しているわけではありません。
窃盗や強盗などの犯罪目的で相手の行動を確認するケースも考えられます。こうした場合には、ストーカー規制法以外の法律が問題になる可能性もあります。
2025年の警察庁統計から見るストーカー被害の実態2026年3月19日に警察庁が公表した2025年の集計は、被害者と加害者の関係を理解するうえで重要な資料です。
相談等件数は2万2,881件。前年の1万9,567件から16.9%増加しました。
被害者の性別では女性が1万9,880件で86.9%、男性が3,001件で13.1%となっています。
さらに注目したいのが、被害者と行為者の関係です。
- 交際相手・元交際相手:8,910件、38.9%
- 知人・友人:3,059件、13.4%
- 勤務先の同僚・職場関係:2,757件、12.0%
- 関係が不明:2,260件、9.9%
- 面識なし:2,021件、8.8%
交際相手や元交際相手が最も多い一方、職場や友人関係、面識のない相手による事案も確認されています。
つまり、ストーカー被害は元恋人との関係だけに限定される問題ではありません。
後をつけられる原因は被害者側にあるのかここは誤解しないでほしいポイントです。
誰かに後をつけられたとしても、その原因が被害者の服装、外見、性格、交友関係にあると決めつけることはできません。
加害者側の執着や感情、犯罪目的など、行為者側の事情が関係している場合があります。
また、毎日同じ時間に同じ電車に乗る人がいる、近所で何度も同じ人とすれ違うというだけで、尾行と断定することもできません。
偶然の一致と、特定の相手を意図的に追跡する行為は分けて考える必要があります。
不安を感じたときには、自分を責めるよりも、実際にどのような行動が起きているのかを整理することが先決です。
【後をつけられているサインと不審者の見分け方】
誰かに後をつけられているかもしれないと感じた場合、重要なのは一度の遭遇ではなく、行動の繰り返しや状況の一致です。
ただし、見た目だけで不審者を判断することはできません。
後をつけられている可能性を考えるサイン次のような行動が複数回確認される場合は、注意が必要です。
1. 別々の場所で同じ人物を繰り返し見かける
自宅付近だけでなく、勤務先や普段利用する施設など、異なる場所で同じ人物を繰り返し見かける場合です。
偶然の可能性もありますが、出現する場所や時間に一定の関連性がないかを確認してください。
2. 自宅や職場の近くで待っている
自宅の出入り口、勤務先の周辺、普段利用する店舗などで、特定の人物が繰り返し待っている場合です。
本人が移動すると、その後も同じ人物が現れる状況が続くなら、注意すべき兆候です。
3. 自分の行動を詳しく把握されている
会話や連絡の中で、相手が自分の服装、外出先、帰宅時間などを不自然に詳しく知っている場合です。
ストーカー規制法でも、監視していると思わせるような事項を告げる行為が規制対象として定められています。
4. 拒否しているのに接触が続く
連絡を断っているのに、電話やSNSのメッセージが繰り返し届く場合です。
加えて、待ち伏せや職場への訪問などが組み合わさっている場合には、より慎重な対応が必要です。
5. 身の回りの物や位置情報に不自然な変化がある
自分の持ち物や車などに見覚えのない機器が取り付けられていたり、位置情報を知られているような状況が発生したりする場合です。
2025年12月30日からは、紛失防止タグを悪用した無断の位置情報取得などもストーカー規制法の規制対象になっています。
不審者の見分け方で間違えてはいけないこと不審者を判断するとき、服装、年齢、性別、外見などを基準にするのは適切ではありません。
例えば、次のような行動に注目してください。
- 特定の人物の後を繰り返し追っている。
- 自宅や勤務先の付近で不自然に待っている。
- 相手の移動先に合わせて何度も現れる。
- 進路をふさいだり、無理に接触したりする。
- 拒否されても連絡や訪問を続ける。
- 相手の生活状況を把握していることを繰り返し示す。
大切なのは、人物の属性ではなく、具体的な行動です。
また、確認するためにわざと遠回りしたり、人通りの少ない場所に移動したりすることは避けてください。尾行かどうかを自分で試す必要はありません。
不安を感じたら、確認作業より安全確保を優先しましょう。
【後をつけられたときの対処法と証拠の残し方】
実際に後をつけられていると感じた場合、最初に考えるべきことは相手の正体を突き止めることではなく、自分の身を守ることです。
尾行されたときに取るべき5つの行動1. 人通りのある場所に移動する
暗い路地や人の少ない場所を避け、営業中の店舗、駅、交番など、人のいる場所へ移動してください。
コンビニエンスストアなどに入り、店員に不安な状況を伝えて助けを求める方法もあります。
2. 自宅へ直接帰らない
相手が本当に後をつけている可能性がある場合、自宅の場所を知られるリスクがあります。
無理に帰宅せず、安全な場所で家族や信頼できる人に連絡してください。
3. 相手に直接問い詰めない
「何をしているのですか」「なぜついてくるのですか」と直接対峙すると、相手が逆上する可能性があります。
自分で相手を追いかけたり、証拠を集めようとして接近したりすることも避けましょう。
4. 周囲の人や施設のスタッフに助けを求める
駅員、店舗スタッフ、警備員、交番の警察官などに状況を説明してください。
一人で対応しようとせず、第三者に状況を共有することが大切です。
5. 緊急性があれば110番する
相手が接近してくる、進路をふさぐ、脅す、身体に触れようとするなど、危険が差し迫っている場合は110番してください。
すでに安全な場所へ移動できている場合でも、被害の状況を警察に伝えることができます。
警視庁などの警察機関も、不安を感じた場合には店舗などへ避難し、必要に応じて110番するよう呼びかけています。
ストーカー被害の証拠を残す方法警察に相談するとき、被害の経緯を具体的に説明できると、状況を把握してもらいやすくなります。
記録しておきたい情報は次のとおりです。
| 記録する項目 | 残しておきたい内容 |
|---|---|
| 日時 | 発生した年月日と時刻 |
| 場所 | 自宅周辺、駅、職場、店舗など |
| 行動 | 待ち伏せ、尾行、接触、連絡など |
| 相手の特徴 | 服装、身体的特徴、車両など |
| 目撃者 | 目撃した人や施設スタッフ |
| デジタル記録 | SNS、メール、着信履歴、留守番電話 |
| その他 | 手紙、送付物、関連する写真など |
特に重要なのが、日時と場所を具体的に記録することです。
例えば、単に「何度も見かけた」と記録するのではなく、「11月2日午後6時ごろ、駅の改札付近で見かけた。帰宅方向に移動した後、近くの店舗前でも同じ人物を確認した」というように、状況を整理しておくと役立ちます。
写真・動画・SNSの記録は削除しない証拠として残しておきたいものには、次のようなものがあります。
- SNSやメールのメッセージのスクリーンショット。
- 電話の着信履歴や留守番電話。
- 相手から送られてきた手紙や荷物。
- 安全に撮影できた場合の現場写真や動画。
- 被害日時や状況を記録したメモ。
データは加工や削除をせず、元の状態でも保管してください。バックアップを作っておくことも有効です。
見覚えのない位置情報機器などを発見した場合は、むやみに操作したり捨てたりせず、発見時の状態を安全に記録して警察に相談してください。
政府広報オンラインでも、被害の日時・場所・状況のメモ、手紙や送付物、着信履歴、メール、留守番電話などを保存して警察に持参するよう案内しています。
【ストーカー規制法と2026年の相談先】
2026年のストーカー対策で見逃せないのが、法律の改正です。
スマートフォンや位置情報サービスが普及したことで、直接後をつけなくても、相手の居場所や移動状況を把握できる手段が増えました。
そのため、法律による規制も従来の待ち伏せや尾行だけにとどまらなくなっています。
2025年12月30日施行のストーカー規制法改正警察庁の発表によると、2025年12月10日に改正法が公布され、同年12月30日から主な改正内容が施行されました。
特に重要なのが、紛失防止タグを悪用した位置情報取得への対応です。
改正によって、相手の承諾なく紛失防止タグなどを利用して位置情報を取得する行為や、相手の持ち物に位置情報を取得できる機器を取り付ける行為などが規制対象に追加されました。
また、次の変更も実施されています。
- 警察による職権での警告制度の創設。
- 被害者の勤務先や学校の長を、被害者支援に協力する主体に追加。
- 禁止命令等を行う主体について、被害者の住居所在地を管轄する公安委員会等への対応を追加。
加えて、2026年3月10日からは、ストーカー行為をするおそれのある人物に被害者の情報を提供する可能性がある第三者に対し、警察が情報提供をしないよう求める仕組みも始まっています。
被害者の住所や居場所が第三者を通じて相手に伝わるリスクへの対応も進められています。
ストーカー行為に対する罰則ストーカー規制法では、一定の要件を満たすストーカー行為について刑事罰が定められています。
内閣府男女共同参画局が掲載する法律の概要では、次の罰則が示されています。
| 違反内容 | 罰則 |
|---|---|
| ストーカー行為 | 1年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金 |
| 禁止命令等に違反してストーカー行為をした場合など | 2年以下の拘禁刑または200万円以下の罰金 |
| その他の禁止命令等への違反 | 6か月以下の拘禁刑または50万円以下の罰金 |
2025年の警察庁統計では、ストーカー規制法に基づく禁止命令等は3,037件に達し、法施行後最多となりました。
また、ストーカー規制法違反による検挙は1,546件でした。
これらの数字は、相談だけでなく、警察による行政措置や刑事対応も実施されていることを示しています。
なお、相談件数と検挙件数は異なる指標であり、相談された事案のすべてが犯罪として立件されるわけではありません。
後をつけられた場合の相談先は?相談先として最も重要なのが、警察です。
緊急時:110番
相手が現在も追跡している、脅迫や暴力がある、身体に危険が迫っているなど、すぐに警察官に来てもらいたい場合に利用します。
警察相談専用電話:#9110
ストーカー被害の不安、繰り返される待ち伏せ、迷惑行為など、緊急の事件・事故ではない警察への相談に利用できます。
最寄りの警察署・交番
被害状況を直接説明したい場合や、記録・証拠を持参して相談したい場合に利用できます。
女性相談支援センター:#8778
ストーカーやDVなど、女性のさまざまな悩みについて相談できる窓口です。
警察相談専用電話「#9110」は、電話をかけた地域を管轄する警察本部などの相談窓口につながる全国共通番号です。
政府広報オンラインが案内する基本的な受付時間は、平日午前8時30分から午後5時15分までです。ただし、都道府県によって受付時間は異なります。
土日祝日や時間外は、当直や音声案内などで対応する場合があります。また、ダイヤル回線や一部のIP電話では利用できないことがあるため、その場合は各都道府県警察の相談用電話番号を利用してください。
| 相談内容 | 利用する窓口 |
|---|---|
| 今まさに追跡されている | 110番 |
| 暴力や脅迫などの緊急事態 | 110番 |
| 繰り返し待ち伏せされている | #9110・警察署 |
| 過去の尾行について相談したい | #9110・警察署 |
| 証拠を持参して相談したい | 最寄りの警察署 |
| 女性としての生活上の不安も相談したい | #8778 |
相談するときは、被害の日時や場所、相手との関係、実際に起きた行為を簡潔に伝えるとよいでしょう。
「ストーカーかどうか自分では判断できない」という段階でも、不安な状況を説明して構いません。
【後をつけるに関するよくある質問(FAQ)】
Q1:後をつけることと尾行することは同じ意味ですか?
A1:ほぼ同じ意味で使われる場合がありますが、厳密にはニュアンスが異なります。「後をつける」は幅広い表現で、「尾行する」は相手に気づかれないように行動を追跡する意味合いが強い言葉です。
Q2:一度だけ後をつけられた場合もストーカーになりますか?
A2:ストーカー規制法上の「ストーカー行為」は、一定の行為を同一の相手に反復することなどが要件です。ただし、一度の行為でも状況によっては別の法律に抵触したり、警察への相談が必要になったりする場合があります。危険を感じたら回数にかかわらず相談してください。
Q3:後をつけられているかもしれない場合、#9110に相談できますか?
A3:相談できます。尾行や待ち伏せが疑われる状況、繰り返される不審な接触などについて、警察に相談してください。現在進行形で危険が迫っている場合は、#9110ではなく110番を利用してください。
「後をつける」は、相手の移動を追う行為を表す一般的な言葉です。しかし、尾行やつきまといが執拗に繰り返され、相手の安全や生活の平穏を脅かす場合には、ストーカー規制法などによる対応が必要になります。
2025年のストーカー事案に関する相談等件数は2万2,881件に達し、2025年12月と2026年3月には法律の改正内容も順次施行されました。位置情報の無断取得など、デジタル技術を利用した追跡への対策も強化されています。
【プロの結論】
後をつけられているか判断するときに大切なのは、相手の外見や一度の偶然ではなく、具体的な行動とその継続性です。
判断に迷った場合は、次の3点を意識してください。
1. 同じ人物による待ち伏せや追跡、接触が繰り返されていないか。
2. 日時や場所、メッセージなど、状況を説明できる記録が残っているか。
3. 自分だけで解決しようとせず、警察や信頼できる人に相談できているか。
何よりも優先すべきなのは、自分の安全です。相手の正体を突き止めたり、尾行の事実を証明しようとしたりするために危険な行動を取る必要はありません。
少しでも身の危険を感じたら安全な場所に避難し、緊急時には110番、継続的な不安や被害の相談には#9110を利用してください。被害を一人で抱え込最初に、早い段階で適切な支援につながることが、安心できる生活を取り戻す第一歩です。