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【高速炉開発への成果】もんじゅは日本の原子力技術に何を残したのか

朝倉 仁 朝倉 仁 • 更新: • 公開: • 読了約 7 分
目次

もんじゅは廃炉が決まったことで、その研究開発の歴史まで無意味になったわけではありません。

約半世紀にわたる設計・建設・試験・保守を通じて、高速炉に必要な技術的知見が蓄積されました。JAEAがまとめた技術成果の報告書では、主に次の分野が整理されています。

- 高速炉特有の炉心設計手法
- ナトリウム冷却機器の設計・製作技術
- ナトリウムの取扱技術
- 原子炉の安全性確保策
- 高速炉の運転・保守経験
- 燃料や材料に関する研究開発

特に注目したいのが、もんじゅの設計・建設・運転に関する膨大な資料を知識データベースとして整理する取り組みです。

JAEAの「もんじゅ開発成果のとりまとめ」では、設計関連図書だけでも約17万件に上る資料が紹介されています。こうした情報を次世代の高速炉設計者が利用できるよう体系化することも、もんじゅが残す成果の一つです。

もんじゅは高速増殖炉の実用化に成功したのか?

ここは正確に理解しておきたい部分です。

もんじゅは1994年4月5日に初臨界を達成し、1995年8月29日に初発電を実現しました。しかし、1995年12月に事故が発生し、その後は長期間停止しました。

2010年に性能試験を再開したものの、炉内中継装置の落下や保守管理問題が続き、商業炉としての本格的な運転実績を確立するには至りませんでした。

したがって、「高速増殖炉の実用化に成功した」という評価は適切ではありません。一方で、「技術的成果が何もなかった」という評価も正しくありません。

もんじゅの歴史は、実用化に至らなかった原型炉であっても、次世代技術に活用できる研究成果を残すことがあると示しています。

廃炉後の敦賀市と原子力研究の行方

もんじゅが立地する福井県敦賀市では、施設の廃止措置と並行して、原子力研究の拠点としての地域の将来も課題になっています。

2016年の政府方針では、もんじゅサイトを活用した新たな試験研究炉の整備構想も示されました。2026年10月23日付のJAEA敦賀事業本部週報には、もんじゅサイトに設置する新たな試験研究炉に関するコンソーシアム会合が記載されています。

ただし、新たな試験研究炉の構想と、もんじゅの廃止措置は別の事業です。試験研究炉の整備が進んだからといって、もんじゅの解体が完了したことにはなりません。

廃止措置を安全に終えること、地域の研究基盤を維持すること、技術者や研究者を育成すること。この3つをどのように両立させるかが、敦賀の今後を考えるうえで大切なテーマです。

【よくある誤解を検証】もんじゅの現在について知っておきたいこと

高速増殖原型炉もんじゅ

もんじゅに関する情報では、事故、燃料、ナトリウム、廃炉の進捗が混同されることがあります。特に次の3点は区別しておく必要があります。

誤解1:1995年の事故で放射性物質が周辺に大量拡散した?

事故は2次主冷却系で発生しました。原子力委員会の記録では、放射性物質による周辺環境や従事者への影響はなかったとされています。ただし、ナトリウム漏えいと火災、事故後の情報公開問題は重大な事案でした。

誤解2:燃料体をすべて取り出したので、施設内に燃料は残っていない?

530体の燃料体は2022年10月13日までに燃料池への移送が完了しています。しかし、燃料池で保管されているのであり、施設外への搬出が完了したという意味ではありません。また、しゃへい体等の取出しは燃料体の取出しとは別の作業です。

誤解3:2028年度にナトリウムをすべて搬出し、廃炉が終わる?

2028年度から2031年度はナトリウム搬出の計画期間です。原子炉や建屋の解体、放射性廃棄物の処理などはその後も続き、施設全体の廃止措置完了目標は2047年度です。

【高速増殖原型炉もんじゅ】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:もんじゅは2026年現在も稼働していますか?

A1:いいえ。2016年12月21日に政府が廃止措置への移行を決定し、現在は発電していません。2026年11月時点では第2段階の解体準備期間にあり、燃料・しゃへい体の管理や設備の撤去などが続いています。

Q2:もんじゅのナトリウムはいつ搬出されますか?

A2:JAEAと文部科学省の資料では、2028年度から2031年度にかけて搬出する計画です。非放射性ナトリウムと放射性ナトリウムでは管理方法が異なり、輸送用タンクなどの準備が進められています。英国への搬出・処理も計画されています。

Q3:もんじゅの廃止措置はいつ完了しますか?

A3:現在の計画では2047年度が完了目標です。第1段階の燃料体取出しは2022年度に完了し、2023年度から第2段階の解体準備期間に移行しました。今後はナトリウム搬出、原子炉や冷却設備の解体、建屋撤去などが予定されています。

高速増殖原型炉もんじゅは、1994年の初臨界から1995年のナトリウム漏えい事故、2010年の性能試験再開、2016年の廃止決定を経て、現在は解体準備の段階にあります。

2026年11月時点で押さえておきたい重要事項は、次のとおりです。

  • 2016年12月21日:政府が廃止措置への移行を決定。
  • 2022年10月13日:530体の燃料体を燃料池へ移送完了。
  • 2023年度:第2段階の解体準備期間がスタート。
  • 2026年:しゃへい体等の取出し、冷却系・発電設備の解体撤去を継続。
  • 2028~2031年度:ナトリウム搬出を計画。
  • 2047年度:施設全体の廃止措置完了目標。

【プロの結論】

もんじゅの歴史から学ぶべきことは、原子力技術の評価を発電性能だけで判断してはいけないという点です。どれほど先進的な設計であっても、長期間にわたって安全に運転・保守できる組織体制がなければ、技術は社会的な信頼を得られません。

また、廃炉を決めることと、安全に廃炉を完了させることも別の課題です。ナトリウムの搬出、放射性物質の管理、原子炉容器の解体、廃棄物の処理まで、長期的な安全管理が大切です。

今後の動向を追うなら、JAEAの月次更新や週報だけでなく、文部科学省の廃止措置評価専門家会合、原子力規制委員会の変更認可状況も確認することが有効です。特に注目すべきなのは、2028年度のナトリウム搬出開始と、第2段階から第3段階への移行です。

2047年度という目標の実現には、計画の数字だけでなく、現場での安全対策と工程管理を一つずつ積み重ねることが欠かせません。もんじゅの廃止措置は、日本の高速炉開発の歴史を総括すると同時に、次世代の原子力技術に何を引き継ぐのかを問う事業でもあります。

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トレンドリサーチャー 朝倉 仁
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