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育児放棄とは?ネグレクトの定義・具体例・判断基準と相談先189を2026年最新情報で徹底解説

園田 薫 園田 薫 • 更新: • 公開: • 読了約 22 分
目次

育児放棄とは、保護者が子どもに必要な食事や医療、安全の確保、衛生管理、教育、精神的なケアなどを十分に行わず、健やかな成長を妨げる状態を指します。法律上は「ネグレクト」と呼ばれ、児童虐待防止法第2条で定められた児童虐待の一類型です。食事を与えない、乳幼児を長時間一人にする、病気になっても受診させないといった行為が代表例に挙げられます。

2026年11月1日現在、こども家庭庁が公表している全国の最新統計では、令和6年度の児童相談所における児童虐待相談対応件数は223,691件に上っています。育児放棄は、外傷など目に見える証拠が残らない場合もあり、周囲が異変に気づきにくい問題です。法律上の定義や具体的な判断基準、しつけとの違い、子どもへの影響、相談窓口まで、公的資料をもとに整理します。

【基礎知識】育児放棄とは?児童虐待防止法第二条におけるネグレクトの定義

育児放棄とは
育児放棄とネグレクトは同じ意味?

育児放棄は、一般的に保護者が子どもに必要な養育を行わないことを意味する言葉です。

一方、ネグレクトは児童虐待防止法で定められた法律上の概念です。

児童虐待防止法第2条では、保護者が監護する18歳未満の子どもに対して行う虐待を、次の4種類に分類しています。

- 身体的虐待:殴る、蹴る、叩くなど、身体に危害を加える行為。
- 性的虐待:子どもに性的行為をする、性的行為を見せるなどの行為。
- ネグレクト:著しい食事制限や長時間の放置など、保護者としての監護を著しく怠る行為。
- 心理的虐待:著しい暴言、無視、拒絶的な対応、子どもの前での家族への暴力など。

このうち、育児放棄に直接関係するのがネグレクトです。

同法第2条第3号には、次のような行為が規定されています。

「児童の心身の正常な発達を妨げるような著しい減食又は長時間の放置」や「その他の保護者としての監護を著しく怠ること」です。

つまり、単に親が子どもの世話をする時間が少ないというだけではなく、子どもの成長や生命、安全を守るために必要な養育が著しく不足していることが問題になります。

この定義は、こども家庭庁が2025年12月24日に全部改正した「こども虐待対応の手引き」でも整理されています。

法律上の「保護者」は実父母だけではない

見落とされやすいのが、虐待防止法における保護者の範囲です。

法律では、親権を行う者や未成年後見人だけでなく、実際に子どもを監護している者も保護者に含めています。

そのため、養父母や、子どもの母親・父親と同居する交際相手などであっても、実際に養育・監護している場合には法律上の保護者に該当する可能性があります。

また、保護者以外の同居人が子どもに虐待を行っていることを保護者が放置した場合も、ネグレクトとして扱われることがあります。

育児放棄は、実の親だけに限定された問題ではありません。

【参考:児童虐待防止法第二条、こども家庭庁「こども虐待対応の手引き」】

【具体例と兆候】育児放棄に該当する行為とネグレクトの見分け方

育児放棄の代表的な具体例6種類

育児放棄には、食事を与えないといった身体的なケアの不足だけでなく、子どもの安全管理や精神的なケア、教育に関する問題も含まれます。

こども家庭庁の手引きや日本小児科学会の資料などでは、ネグレクトを複数の側面から捉えています。

種類 具体的な行為・状態 子どもに現れやすい兆候
食事・栄養の放棄 十分な食事を与えない、極端に偏った食生活を放置する 低体重、強い空腹、食べ物への異常な執着
衛生・生活管理の放棄 入浴や着替えをさせない、極端に不衛生な環境で生活させる 強い体臭、汚れた衣服、ひどいおむつかぶれ
安全管理の放棄 乳幼児を自宅や車内に放置する、危険な状況を放置する 保護者不在の時間が長い、事故やけがの危険
医療の放棄 重い病気やけががあっても受診させない、必要な治療を受けさせない 病状の悪化、未治療の虫歯、慢性疾患の放置
教育の放棄 正当な理由なく学校に通わせない、教育を受ける機会を保障しない 欠席や遅刻の繰り返し、不登校
情緒的ケアの放棄 子どもの必要な感情的欲求に応えない、継続的に無関心な状態 無気力、表情の乏しさ、過度な緊張や不安

特に注意したいのは、子どもが十分な栄養や生活環境を与えられていない場合だけでなく、保護者が必要な医療や教育を受けさせない場合もネグレクトに該当し得る点です。

食事を与えない・長時間放置する行為

食事は子どもの生命や成長に直結する基本的な養育です。

年齢や発達に応じた食事を著しく不足させ、健康状態を損なうような状態はネグレクトに該当する可能性があります。

また、乳幼児を長時間一人にする行為も重大な問題です。

乳幼児は自分で危険を回避したり、必要な食事や水分を確保したりすることが難しいため、保護者による安全管理が欠かせません。

車内への放置や、幼い子どもだけを自宅に残して繰り返し外出する行為などは、生命に関わる危険を伴います。

病院に連れて行かない医療ネグレクト

医療ネグレクトとは、子どもに必要な医療を受けさせないことです。

例えば、次のような状態が考えられます。

- 重い病気の症状があるのに医療機関を受診させない。
- 必要な治療を受けさせず、病状の悪化を放置する。
- 慢性疾患の治療や必要な健康管理を著しく怠る。
- 子どもの健康状態に重大な問題があるのに、必要な対応を取らない。

経済的な事情や医療機関へのアクセスの問題など、背景にはさまざまな事情が存在します。

しかし、子どもの生命や健康に重大な危険が及んでいる場合には、早急な支援や介入が必要です。

周囲が気づきやすいネグレクトの兆候

ネグレクトは家庭内で起こるため、周囲の人が直接目撃するとは限りません。

そのため、学校や保育所、医療機関などでは、日常生活に現れる複数の変化を観察することが大切です。

文部科学省が2026年5月に改訂した学校・教育委員会等向け虐待対応の手引きでは、次のような異変がチェック項目として示されています。

子どもの様子

- 衣服や身体が長期間不潔な状態にある。
- 季節に合わない服装をしている。
- 食べ物を過度に欲しがる。
- 友達に食べ物をねだることが多い。
- 体重が増えない、体重が減少している。
- 表情が乏しく、無気力な様子が続いている。
- 理由のはっきりしない欠席や遅刻が多い。
- 家に帰りたがらない。

保護者や家庭の様子

- 子どもの健康状態や発達に無関心な様子がある。
- 子どもに必要な医療や支援を受けさせない。
- 保育所や学校からの連絡に応じない。
- 家庭訪問を繰り返し拒否する。
- 家庭内に強い不和や暴力がある。
- 家の中に大量のごみがあり、衛生状態が著しく悪い。

ただし、これらはあくまで注意すべき兆候です。

一つの項目に当てはまったからといって、直ちに育児放棄と決まるわけではありません。複数の異変が継続している場合や、子どもの安全に問題がある場合には、専門機関への相談が必要です。

【参考:文部科学省「学校・教育委員会等向け虐待対応の手引き」令和8年5月改訂版、日本小児科学会「子ども虐待診療の手引き」】

【判断基準としつけとの違い】どこからが育児放棄になるのか

育児放棄を判断する3つの重要な視点

育児放棄に該当するかどうかを、単純な時間や回数だけで判断することはできません。

こども家庭庁の2025年12月改正版の手引きでは、子どもの状況、保護者の状況、生活環境などを総合的に判断する必要性が示されています。

具体的には、次の3点が重要です。

1. 子どもの安全と健康が守られているか

十分な食事や医療、安全な生活環境が確保されているかを確認します。

特に乳幼児や障害のある子どもなど、自分で身を守ることが難しい場合には、より慎重な判断が必要です。

2. 必要な養育が継続的に行われているか

一時的な体調不良や家庭の事情による養育の不足と、必要なケアを著しく怠っている状態は区別する必要があります。

ただし、一度の行為でも子どもの生命に重大な危険を及ぼす場合は、緊急の対応が必要です。

3. 子どもの発達に悪影響が生じていないか

栄養状態、身体の成長、情緒面、教育環境などを総合的に確認します。

親に悪意があるか、本人が虐待だと認識しているかだけで判断するものではありません。

重要なのは、子ども側から見て必要な養育が確保されているかという点です。

育児放棄と通常のしつけは何が違う?

しつけとは、子どもの成長や社会性を育むために、年齢や発達に応じて生活習慣や社会的なルールを教えることです。

これに対し、ネグレクトは子どもが生きていくために必要な養育を著しく怠る行為です。

両者は性質が異なります。

例えば、子どもに規則正しい食生活を教えるために食事の時間を決めることと、罰として食事を与えないことは同じではありません。

また、子どもが危険な行動をした際に理由を説明して注意することと、長時間放置して安全を確保しないことも違います。

ここで知っておきたいのが、児童虐待防止法第14条です。

同条では、親権者がしつけをする際にも子どもの人格や発達段階を尊重し、体罰や心身の健全な発達に有害な影響を及ぼす言動をしてはならないと定めています。

したがって、「しつけだから」という理由で、子どもに食事を与えないことや危険な状態に置くことが正当化されるわけではありません。

よくある誤解:親が忙しいだけでも育児放棄?

仕事や病気、家庭の事情などで子どもと過ごす時間が少ないからといって、それだけでネグレクトになるわけではありません。

保育所や学童保育、親族、地域の支援などを利用し、子どもに必要な養育や安全が確保されていれば、育児放棄とは異なります。

また、経済的に苦しい家庭やひとり親家庭であること自体も、ネグレクトを意味するものではありません。

問題なのは家庭の形や経済状況ではなく、子どもに必要なケアが実際に確保されているかどうかです。

【原因・背景】なぜ育児放棄が起きる?親の心理と家庭環境

育児放棄は、単純に親の愛情不足や性格だけで説明できる問題ではありません。

こども家庭庁の手引きでは、児童虐待は身体的、精神的、社会的、経済的な要因が複雑に絡み合って発生すると説明されています。

経済的困窮と子育ての負担

家庭の経済状況が不安定になると、食事や住居、医療など子どもの生活に必要なものを確保することが難しくなる場合があります。

失業や収入の減少、住居の不安定さなどが重なると、保護者の心理的負担も大きくなります。

ただし、貧困そのものが虐待を意味するわけではありません。

経済的な困難を抱えていても、適切な支援を受けながら子どもを養育している家庭は数多くあります。

重要なのは、経済的な困窮を家庭だけの責任にせず、必要な生活支援や子育て支援につなげることです。

産後うつや精神的な不調

妊娠・出産後は、身体的にも精神的にも大きな変化が生じます。

産後うつや強い育児不安、慢性的な睡眠不足などによって、日常的な育児を続けることが難しくなるケースもあります。

保護者自身が精神疾患や慢性疾患を抱えている場合も、子どもの養育に必要な支援が不足する可能性があります。

こうした場合には、保護者を責めるだけでなく、医療や福祉によるサポートを組み合わせることが必要です。

育児の孤立と周囲からの支援不足

核家族化や地域とのつながりの希薄化によって、子育ての悩みを相談できる相手がいない家庭もあります。

家族や親族の協力を得られず、育児の負担を一人で抱え込む状況は、養育上の問題を深刻化させる要因になります。

こども家庭庁の手引きでは、地域社会からの孤立や人的なサポートの不足も重要なリスク要因として挙げられています。

親自身の生育歴や依存症

子どもの頃に虐待や不適切な養育を経験した人が、適切な支援を受けられないまま親になる場合もあります。

また、アルコール依存や薬物依存、ギャンブル依存などによって、子どもの養育よりも依存対象を優先してしまうケースも考えられます。

ただし、過去に虐待を受けた人が必ず育児放棄をするわけではありません。

適切なケアや支援につながることで、安定した子育てを実現できる場合もあります。

育児放棄を防ぐには家庭だけでなく社会の支援が必要

育児放棄を防ぐためには、問題が深刻化してから対応するだけでなく、妊娠中や出産直後から家庭の困難を把握することが大切です。

市区町村の「こども家庭センター」は、妊産婦や子育て家庭の相談に応じ、保健・福祉の両面から継続的な支援を行う機関です。

家庭訪問や相談対応、地域の子育て支援サービスとの連携などを通じて、養育環境の改善を支援しています。

【参考:こども家庭庁「こども虐待対応の手引き」令和7年12月改正版】

【子どもへの影響】育児放棄が身体・心理・発達に及ぼすリスク

育児放棄の影響は、食事や衛生状態など目に見える問題だけではありません。

成長期の子どもは、身体的なケアだけでなく、安心できる人間関係や情緒的な交流も必要としています。

身体的な成長への影響

食事や医療が十分に確保されない状態が続くと、栄養障害や体重増加不良、低身長などが生じる可能性があります。

必要な治療が受けられなければ、病気が悪化したり、慢性的な健康問題につながったりすることもあります。

特に乳幼児は、食事や水分の不足、室温管理の不備、安全管理の欠如によって生命に関わる危険にさらされることがあります。

知的発達や学習への影響

子どもが安心して生活できない環境では、落ち着いて学習に取り組むことが難しくなる場合があります。

学校に通う機会が失われたり、必要な教育的支援を受けられなかったりすることで、知的発達や学習面に影響が及ぶ可能性もあります。

愛着形成や自己肯定感への影響

子どもにとって保護者は、安心感や信頼関係を形成するうえで重要な存在です。

しかし、必要な情緒的ケアが得られない状態が続くと、保護者との安定した愛着関係を築くことが難しくなる場合があります。

その結果、次のような問題につながる可能性があります。

- 他人との信頼関係を築くことが難しくなる。
- 自分は大切にされる存在ではないと感じる。
- 自己肯定感が低下する。
- 他人の顔色を過度に気にする。
- 不安や緊張が強くなる。

行動面や精神面への影響

ネグレクトを経験した子どもには、無気力や攻撃的な行動、落ち着きのなさ、不登校などが見られる場合があります。

また、心の傷が適切なケアを受けないまま残ると、思春期以降にPTSDなどの症状として現れることもあります。

ただし、これらの症状は虐待を受けた子どもだけに見られるものではありません。

症状だけで虐待の有無を判断するのではなく、家庭環境や生活状況も含めて専門的に評価する必要があります。

適切な支援によって回復を目指せる

育児放棄による影響が生じた場合でも、子どもが安心できる環境を確保し、医療・心理・教育面で必要な支援を受けることが重要です。

保護者への治療や生活支援、親子関係の再構築なども、状況に応じて進められます。

こども家庭庁の手引きでも、子どもへの支援だけでなく、家庭全体への継続的な支援が必要とされています。

【参考:こども家庭庁「こども虐待対応の手引き」令和7年12月改正版】

【2026年最新統計】令和6年度の児童虐待相談対応件数とネグレクトの実態

育児放棄を含む児童虐待の状況を把握するうえで、重要な資料がこども家庭庁の「令和6年度児童相談所における児童虐待相談対応件数」です。

この資料は2026年1月30日に公表されました。

全国の児童虐待相談対応件数は223,691件

令和6年度に全国236か所の児童相談所が対応した児童虐待相談件数は、223,691件でした。

令和5年度の225,509件と比較すると、1,818件、割合にして0.8%の減少です。

ただし、依然として年間22万件を超える高い水準にあります。

虐待の種類別の内訳は次のとおりです。

虐待の種類 令和5年度 令和6年度 令和6年度の割合
身体的虐待 51,623件 52,535件 23.5%
ネグレクト 36,465件 35,612件 15.9%
性的虐待 2,473件 2,520件 1.1%
心理的虐待 134,948件 133,024件 59.5%
合計 225,509件 223,691件 100%

※割合は公表資料に基づく。端数処理により合計が100%にならない場合があります。

ネグレクトは35,612件で全体の15.9%

令和6年度のネグレクト相談対応件数は35,612件でした。

全体の15.9%に当たり、4種類の虐待のうち3番目に多い分類です。

前年度の36,465件と比較すると853件減少しています。

一方、身体的虐待や性的虐待の対応件数は前年度より増加しました。

この数字から読み取れるのは、児童虐待の問題が単一の形で発生しているわけではないということです。

相談対応件数は虐待の発生総数ではない

統計を読む際には注意点があります。

223,691件という数字は、児童相談所が相談を受け、援助方針会議などを経て児童虐待と判断し、指導や措置などを行った件数です。

日本全国で実際に発生した虐待のすべてを数えたものではありません。

また、複数の虐待種別に該当する相談は、主な虐待種別にのみ計上されています。

そのため、ネグレクトが35,612件だからといって、実際にネグレクトを経験している子どもの総数がこの数字で確定するわけではありません。

2026年11月はオレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン

2026年11月1日、首相官邸は「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」に関するメッセージを公表しました。

11月は児童虐待防止について社会全体で考えるキャンペーン期間です。

政府は児童相談所の体制強化に加え、地域で子育て家庭を支援するこども家庭センターの整備も進めています。

同日の首相メッセージでは、こども家庭センターの設置率が全国の市区町村の約86%に達していることも紹介されました。

育児放棄の予防には、虐待が疑われる家庭を発見するだけでなく、育児に困っている保護者が早い段階で相談できる仕組みも欠かせません。

【参考:こども家庭庁「令和6年度児童虐待相談対応件数」(2026年1月30日公表)、首相官邸「オレンジリボン・児童虐待防止推進キャンペーン」に関するメッセージ(2026年11月1日)】

【法律・罰則・相談先】育児放棄は犯罪になる?189への相談方法

児童虐待防止法によって虐待は禁止されている

児童虐待防止法第3条では、何人も児童に対して虐待をしてはならないと定めています。

また、同法第6条では、虐待を受けたと思われる児童を発見した者に対し、市町村や児童相談所などへの速やかな通告を義務づけています。

これは、虐待の事実を自分で証明してから通告するという意味ではありません。

虐待の疑いがある段階で、専門機関につなぐことが重要です。

育児放棄にはどのような罰則がある?

育児放棄に該当する行為が、必ずしも一律に同じ刑罰を受けるわけではありません。

行為の内容や結果によっては、刑法上の犯罪に該当する可能性があります。

特に関係するのが刑法第218条の「保護責任者遺棄等」です。

この条文では、幼年者などを保護する責任のある人が、その人を遺棄したり、生存に必要な保護をしなかったりした場合について、3か月以上5年以下の拘禁刑を定めています。

例えば、保護責任のある親が、子どもの生命を守るために必要な保護を著しく怠った場合など、具体的な状況によって適用が検討されます。

加えて、遺棄等によって人を死傷させた場合には、刑法第219条に基づき、傷害の罪と比較して重い刑により処断されることがあります。

なお、児童虐待防止法第17条などにも特定の命令違反に対する罰則がありますが、ネグレクトのすべてに一律の刑罰が設定されているわけではありません。

実際の刑事責任は、個々の行為や証拠、法律上の要件に基づいて判断されます。

【参考:刑法第218条・第219条、児童虐待防止法】

育児放棄が疑われた場合の相談先

育児放棄かもしれないと感じたとき、最も重要なのは一人で抱え込まないことです。

日本には、子どもや保護者、周囲の人が相談できる公的な窓口があります。

1. 児童相談所虐待対応ダイヤル189

<こちらが最も重要な相談先です。

電話番号は全国共通の「189(いちはやく)」です。

虐待を受けている可能性がある子どもについて、児童相談所に通告・相談できます。

主な特徴は次のとおりです。

- 全国共通の電話番号で利用できる。
- 発信すると地域を担当する児童相談所につながる。
- 通告・相談は匿名でも可能。
- 通告した人や相談内容に関する秘密は守られる。
- 通話料は無料。

一部のIP電話からは接続できない場合があります。

また、2025年12月22日からは、固定電話・携帯電話など発信端末の種類にかかわらず、コールセンターの担当者が居住地域を聞き取り、管轄の児童相談所へ転送する方式になっています。

2. 児童相談所相談専用ダイヤル

電話番号は「0120-189-783」です。

虐待だけでなく、子どもの福祉や養育について幅広く相談できます。

通話料は無料です。

3. こども家庭センター

市区町村に設置されている相談機関です。

妊娠中の不安、産後の悩み、育児負担、親子関係、子どもの生活環境などについて相談できます。

必要に応じて、保健師や福祉関係者などが連携して支援を行います。

4. 親子のための相談LINE

電話での相談が難しい場合には、こども家庭庁が案内する「親子のための相談LINE」も利用できます。

子ども本人や保護者などが、子育てや親子関係の悩みを相談できる窓口です。

匿名での利用も可能です。

相談するときに伝えたい情報

虐待が疑われる場合には、次のような情報を伝えると状況を把握してもらいやすくなります。

- 子どもの年齢やおおよその居住地域。
- 食事や衣服、衛生状態などの生活状況。
- 保護者が不在になる時間や頻度。
- 病気やけがをしているのに受診していない状況。
- いつ、どのような異変に気づいたのか。
- 子どもの安全に差し迫った危険があるか。

すべての情報を把握している必要はありません。

分かる範囲で伝えれば十分です。自分で証拠を集めようとしたり、保護者に直接問い詰めたりする必要もありません。

子どもの生命に差し迫った危険がある場合は、警察や救急への緊急通報も含め、速やかに安全を確保してください。

【参考:こども家庭庁「児童相談所虐待対応ダイヤル189について」「こども家庭センター」、児童虐待防止法第6条】

【育児放棄とは】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:育児放棄とネグレクトは同じ意味ですか?

A1:一般的にはほぼ同じ意味で使われます。育児放棄は日常的な表現であり、ネグレクトは児童虐待防止法第2条第3号に規定された法律上の分類です。食事や医療、安全管理、衛生、教育など必要な養育を著しく怠る行為が対象になります。

Q2:子どもを一人で留守番させると育児放棄になりますか?

A2:留守番をさせたという事実だけで、直ちにネグレクトと決まるわけではありません。子どもの年齢、発達段階、留守番の時間、住環境、安全確保の状況などを総合的に判断します。特に乳幼児を長時間一人にする行為は、重大な危険につながるため注意が必要です。

Q3:育児放棄をしている親に悪意がなくても虐待になりますか?

A3:なります。虐待の判断では、親の悪意や自覚だけでなく、子どもの安全や健全な成長が守られているかが重要です。保護者自身が育児の困難を抱えている場合には、子どもの安全を確保しながら保護者への支援も進める必要があります。

Q4:育児放棄を見つけた場合、証拠がなくても189に相談できますか?

A4:相談できます。児童虐待防止法第6条は、虐待を受けたと思われる子どもを発見した場合の通告を定めています。虐待の確証を得る必要はありません。匿名での相談も可能です。

Q5:育児放棄をしてしまいそうな場合も相談できますか?

A5:もちろん相談できます。育児の負担や精神的な不調、経済的な問題などで子どもの養育が難しいと感じた場合は、児童相談所や市区町村のこども家庭センターに早めに相談してください。支援を受けることは、子どもの安全を守るための大切な行動です。

育児放棄とは、子どもに必要な養育を著しく怠り、健全な成長や安全を損なう行為です。法律上はネグレクトに該当し、食事を与えない、長時間放置する、必要な医療を受けさせない、極端に不衛生な環境で生活させるなど、さまざまな形で現れます。

2026年1月に公表された令和6年度の児童虐待相談対応件数は223,691件で、そのうちネグレクトは35,612件でした。前年度より減少したものの、依然として多くの子どもが支援を必要としています。

育児放棄を判断する際に大切なのは、親の意図や家庭の外見だけで決めつけないことです。子どもの安全、健康、発達、生活環境を総合的に考える必要があります。

また、育児放棄を防ぐためには、子どもを守ることと同時に、育児に困難を抱える保護者を支える視点も欠かせません。

虐待かもしれないと感じたら、確証がなくても189に相談することが大切です。

子どもの異変に気づいた人の相談が、深刻な状況を防ぐ第一歩になることがあります。子どもの安全と健やかな成長を守るためには、家庭だけに問題を抱え込ませず、地域や行政が連携して支えることが求められています。

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