日本列島を襲う記録的な猛暑、突然の集中豪雨、進路の予測が難しい台風。かつては数十年に一度と考えられていた極端な気象現象が、私たちの生活や社会インフラを脅かしている。では、異常気象の原因は本当に地球温暖化だけなのだろうか。
2026年11月1日時点の気象庁の最新分析を見ると、答えは単純ではない。温室効果ガスによる長期的な気温上昇を土台として、エルニーニョ現象、偏西風の蛇行、海面水温の変化、大気中の水蒸気量など、複数の要素が重なって異常気象を引き起こしている。2026年夏の西日本の記録的猛暑や8月の千葉豪雨にも、こうした複合的なメカニズムが表れていた。
【基本知識】異常気象とは何か?増えている理由を科学的に解説

異常気象とは、ある地域や時期において、気温、降水量、降雪量、風などが通常の気候状態から大きく外れる現象を指す。気象庁では、一般に30年に1回程度以下の頻度で発生する現象を異常気象として扱うことがある。
ただし、異常気象という言葉は、必ずしも災害の規模だけを表すものではない。極端な猛暑や寒波、干ばつ、豪雪、記録的な大雨など、平年の気候から大きく外れた現象全般が対象になる。
異常気象が増えている最大の背景は気候の基準そのものの変化異常気象の発生を考えるうえで重要なのは、普段の気温や降水量を決める気候の土台が変化していることだ。
地球温暖化によって平均気温が上昇すると、以前と同じ気象条件が発生しても、結果として記録的な高温になりやすい。つまり、気象現象そのものが突然すべて変化したというより、極端な現象が発生する環境条件が変わっているのである。
例えば、以前なら35℃程度だった気象条件が、気温の底上げによって40℃近い高温につながる可能性がある。加えて、海洋や大気に蓄積される熱エネルギーも増えるため、熱波や大雨の発生条件にも影響が及ぶ。
2026年に確認された世界と日本の気候変化世界気象機関(WMO)が2026年3月23日に公表した「世界気候の現状2025」によると、2015年から2025年までの11年間は観測史上最も暑い11年間となった。
2025年の世界平均気温は、産業革命前の1850~1900年平均と比べて約1.43℃高く、観測史上2番目または3番目に高い水準だった。海洋の熱含量も2025年に66年間の観測記録で最高となっている。
一方、気象庁の「気候変動監視レポート」に掲載された2025年のデータでは、日本の年平均気温偏差は1991~2020年の平均と比べてプラス1.23℃となり、1898年の統計開始以降で3番目に高かった。
こうした数字が示しているのは、一時的な天候の変化だけではない。地球全体の気候システムに蓄積される熱が増え、極端な現象が発生する背景が変化しているという事実である。
【原因を徹底解剖】地球温暖化・エルニーニョ・偏西風・海面水温はどう重なる?
異常気象の原因を理解するには、長期的な温暖化と、年ごとに変化する自然の気象現象を分けて考える必要がある。
特に重要なのが、温室効果ガス、エルニーニョ現象、偏西風の蛇行、海面水温の4つだ。それぞれが独立して作用するだけでなく、互いに影響し合いながら日本の天候を左右している。
1.温室効果ガスの増加が地球温暖化を進める地球温暖化の根本的な原因は、人間活動によって排出される二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素などの温室効果ガスの増加にある。
温室効果ガスは、地表から放射される赤外線の一部を吸収し、再び放出する性質を持つ。この働き自体は地球の気温を保つために必要だが、濃度が増えすぎると地球のエネルギー収支が変化し、長期的な気温上昇につながる。
気象庁が2026年10月27日に公表したWMO温室効果ガス年報第22号に関する分析では、2025年の世界平均濃度が次のように報告された。
- 二酸化炭素:426.8ppm
- メタン:1948ppb
- 一酸化二窒素:339.1ppb
いずれも観測史上最高値である。特に二酸化炭素濃度は、産業革命以前の約278ppmと比べて約53%増加した。
この変化は、単に夏が暑くなるという問題にとどまらない。海洋の昇温、氷河の融解、水蒸気量の増加、降水パターンの変化など、地球の気候システム全体に影響を及ぼす。
2.エルニーニョ現象が世界の大気循環を変えるエルニーニョ現象とは、太平洋赤道域の中部から東部にかけて海面水温が平年より高くなる状態が続く現象だ。
通常、熱帯太平洋では貿易風によって暖かい海水が西側に集まりやすい。しかし、エルニーニョが発生すると貿易風が弱まり、暖かい海水の分布や熱帯域の上昇気流が変化する。
その結果、熱帯から中緯度にかけて大気の流れが変わり、日本の気温や降水量にも影響が及ぶ。
気象庁は2026年6月10日、同年春からエルニーニョ現象が発生しているとみられると発表した。さらに10月9日のエルニーニョ監視速報では、9月の監視海域の海面水温が基準値より4.0℃高くなったと報告している。
これは、1949年以降で最も高かった1997年12月のプラス3.6℃を上回る値だ。気象庁は、過去最大の強さのエルニーニョ現象が冬にかけて続く見込みとしている。
ただし、エルニーニョが発生すれば日本全国で必ず猛暑になるわけではない。日本の天候は、偏西風や太平洋高気圧、他の海洋変動などにも左右されるためだ。
3.偏西風の蛇行とブロッキング高気圧が異常気象を長引かせる偏西風とは、中緯度地域の上空を西から東に向かって吹く強い風の流れである。日本付近の天候を左右する重要な大気循環の一つだ。
偏西風は一直線に流れているわけではない。南北に大きく蛇行しながら流れ、その位置や強さによって高気圧や低気圧の発生・移動に影響する。
偏西風が北側に大きく蛇行すると、その地域では高気圧が発達しやすくなる。加えて、高気圧が長期間停滞するブロッキング現象が発生すると、晴天や高温が続き、熱波や干ばつにつながることがある。
反対に、偏西風が南に蛇行した場所では寒気が南下し、寒波や大雪が発生する場合もある。
つまり、偏西風の蛇行は猛暑だけでなく、寒波や豪雨など、さまざまな異常気象に関係している。
4.海面水温の上昇が大気に熱と水蒸気を供給する海は地球に蓄積された余分な熱エネルギーの大部分を吸収する役割を担っている。海面水温が高くなると、海面から大気に供給される熱や水蒸気の量にも影響が及ぶ。
気象庁の2026年3月公表データによると、日本近海の年平均海面水温は2025年までの長期的な上昇率が100年あたり1.36℃となっている。
これは世界平均の100年あたり0.63℃を大きく上回る。2025年の日本近海の平均海面水温も、平年より1.00℃高く、1908年以降で3番目の高温だった。
海面水温の上昇は、台風や前線周辺に供給される水蒸気にも関係する。暖かい海から大量の水蒸気が供給されれば、積乱雲が発達しやすくなり、豪雨のリスクが高まる。
ただし、海面水温が高いだけで台風や豪雨が必ず発生するわけではない。上空の風、湿度、大気の不安定度などがそろう必要がある。
異常気象を引き起こす要因の関係性を整理これらの要素を整理すると、異常気象は長期的な気候変化と短期的な大気・海洋の変動が組み合わさって生じることがわかる。
| 要因・現象 | 主な性質 | 異常気象への影響 | 2026年の関連事例・データ |
|---|---|---|---|
| 温室効果ガス | 主に人為的要因 | 地球全体の気温を長期的に上昇させる | 2025年のCO2濃度426.8ppm |
| エルニーニョ現象 | 自然変動 | 熱帯の海洋・大気循環を変化させる | 2026年9月の監視海域水温偏差プラス4.0℃ |
| 偏西風の蛇行 | 大気循環の変動 | 高気圧・低気圧の位置や停滞を左右する | 2026年夏の西日本の高温や千葉豪雨に関係 |
| 海面水温の上昇 | 長期的な温暖化と自然変動 | 大気への熱・水蒸気の供給に影響する | 日本近海の上昇率は100年あたり1.36℃ |
| 大気中の水蒸気量 | 気温や海洋状態に左右される | 積乱雲の発達や降水量に影響する | 高温環境で極端な大雨のリスクが増大 |
| イベント・アトリビューション | 科学的な影響評価手法 | 温暖化が特定の異常気象に与えた影響を検証する | 2026年7月中旬~8月上旬の西日本の猛暑を分析 |
この関係から見えてくるのは、温暖化が気候の土台を変え、自然変動や大気循環が実際に発生する異常気象の場所・時期・強度を左右するという構図だ。
【現象別】猛暑・集中豪雨・線状降水帯・台風が発生する仕組み
異常気象と一口にいっても、猛暑と集中豪雨では発生の仕組みが異なる。それぞれの現象を理解すると、気候変動がどこに作用しているのかが見えてくる。
猛暑・熱波の原因は高気圧と下降気流、地球温暖化猛暑を引き起こす代表的な要因は、太平洋高気圧やチベット高気圧などの勢力が強まり、日本列島が長期間にわたって高気圧に覆われることだ。
高気圧の内部では下降気流が発生しやすい。空気が上空から地表に向かって下降すると、周囲の気圧が高くなるにつれて圧縮され、温度が上昇する。これを断熱昇温という。
加えて、雲が少なく晴天が続けば、強い日射によって地表が加熱される。暖かい空気の流入も重なると、気温が極端に高くなる。
ここに地球温暖化による気温の底上げが加わると、過去なら記録的な高温にならなかった気象条件でも、危険な猛暑になる可能性が高まる。
集中豪雨・線状降水帯の原因は水蒸気と上昇気流の集中集中豪雨を引き起こす代表的な現象が、積乱雲の急激な発達と連続的な発生だ。
特に線状降水帯は、発達した積乱雲が列をなして同じような場所を通過し、数時間にわたって激しい雨を降らせる現象である。
発生には、次のような条件が関係する。
- 暖かく湿った空気が大量に流れ込む。
- 地表付近で風が集まり、上昇気流が発生する。
- 上空に寒気が入り、大気の状態が不安定になる。
- 積乱雲が次々と発生・発達し、同じ地域に雨を降らせる。
地球温暖化との関係で重要なのは、水蒸気を含むことのできる空気の量が増えることだ。気温が1℃上昇すると、飽和水蒸気量はおよそ7%増加する。
大気中の水蒸気量が増えれば、雨が降る条件が整ったときに、より多くの水が短時間で降る可能性が高まる。
気象庁の観測データでは、1時間降水量80mm以上、3時間降水量150mm以上、日降水量300mm以上といった強い雨の頻度は、1980年頃と比べておおむね2倍程度に増加している。
ただし、これは全国的な観測傾向であり、すべての地域やすべての種類の雨が一律に2倍になったという意味ではない。
台風の発生と大型化は海洋の熱エネルギーが関係する台風は、熱帯・亜熱帯の暖かい海から供給される水蒸気をエネルギー源として発達する熱帯低気圧だ。
海面から蒸発した水蒸気が上昇して雲を形成し、水蒸気が凝結する際に放出される潜熱が周囲の空気を暖める。このエネルギー供給が台風の発達を支える。
海面水温が高いと、台風が発達できる環境が整いやすくなる。ただし、台風の発生には大気の状態、風の鉛直シアー、湿度、地球の自転による効果なども関係する。
ここで注意したいのが、「台風の大型化」と「台風の強大化」は同じ意味ではないという点だ。
- 強度:最大風速や中心気圧などで評価される台風の勢力。
- 大きさ:強風域や暴風域がどの程度広がっているか。
- 降水量:台風周辺の水蒸気量や進行速度、地形などによって変わる雨の量。
IPCC第6次評価報告書では、カテゴリー3~5の強い熱帯低気圧の割合が過去40年間に増加した可能性が高いと評価されている。一方、すべての強さの台風を含めた発生数の長期的な変化については、確信度が低い。
また、人為的な気候変動が熱帯低気圧に伴う大雨を増加させることについては、強い科学的根拠が示されている。
つまり、温暖化によって台風の雨が強まるリスクは考えられるものの、世界中で台風の数や大きさが一律に増えていると断定することはできない。
【2026年最新事例】西日本の猛暑と8月の千葉豪雨から原因を検証
2026年の日本では、異常気象の複雑な仕組みを示す出来事が相次いだ。気象庁が9月1日に公表した異常気象分析検討会の結果は、温暖化と自然変動がどのように重なるのかを理解するうえで重要な資料となっている。
西日本の夏の平均気温は1946年以降で3番目の高さ気象庁によると、2026年夏の西日本の平均気温は、1946年の統計開始以降で3番目に高かった。
7月下旬から8月初めにかけては東日本・西日本を中心に厳しい暑さとなり、国内初の5日連続を含む酷暑日も観測された。8月下旬にも九州で酷暑日が発生し、酷暑日の延べ地点数は36地点に達した。
この高温の背景には、日本付近で偏西風が平年より北側を流れ、西日本を中心に背の高い暖かい高気圧に覆われたことがあった。
高気圧による下降気流、強い日射、暖かい空気の流入が重なった結果、厳しい暑さが続いたのである。
さらに注目されるのが、気象研究所と文部科学省の共同研究チームが実施したイベント・アトリビューション解析だ。
2026年9月1日に公表された研究結果では、7月中旬から8月上旬にかけての西日本の記録的な高温は、地球温暖化の影響がなかったと仮定した場合、ほぼ発生し得なかったとされた。
これは、温暖化が単なる背景要因ではなく、実際の猛暑の発生に大きく寄与したことを示す重要な科学的分析である。
2026年8月千葉豪雨は複数の大気現象が重なって発生2026年8月13日夕方から14日未明にかけて、千葉県では記録的な大雨が発生した。
千葉の観測地点では、24時間降水量367mm、1時間降水量115mmを観測し、いずれも観測史上1位の記録を更新した。
気象庁の分析によると、この豪雨には日本の南海上に形成されたモンスーンジャイア、偏西風の分流、上空の寒冷渦、下層の暖湿気の流入などが関係していた。
特に房総半島付近では、東から暖かく湿った空気が流れ込む一方、上空には寒気が入り、大気が非常に不安定になっていた。
加えて、冷たい空気の層と暖湿気がぶつかる場所に局地的な前線が形成され、その上で線状降水帯が発生した。積乱雲が次々と発達する構造になっていたことが、記録的な雨につながった。
この事例は、地球温暖化だけを見ても豪雨の発生場所やタイミングを説明できないことを示している。
2026年夏の台風発生数は17個、平年を大幅に上回る気象庁の分析では、2026年夏の台風発生数は17個となり、平年値の11.0個を大きく上回った。1951年の統計開始以降では3位タイの多さだった。
主な要因の一つは、7月から8月にかけて偏東風波動の活動が活発だったことだ。気象庁は、顕著なエルニーニョ現象がこの活動に影響した可能性も指摘している。
また、8月上旬に発生した台風第15号は、日本の東の海上から茨城県に上陸した後、本州を西へ進むという珍しい経路をたどった。
この進路には、北側に停滞した勢力の強い高気圧と南側のモンスーンジャイアの間の大気の流れ、南下した上空の寒冷渦などが関係していた。
2026年夏は、地域によって極端な少雨と豪雨が同時に発生した点も特徴的だった。西日本では梅雨明け後に雨の少ない状態が続き、8月の九州北部地方の降水量は1946年以降で最も少なかった。
一方、東日本太平洋側では台風や千葉豪雨の影響で降水量がかなり多くなった。
同じ日本列島でも、気圧配置や大気の流れによって、深刻な水不足と記録的な大雨が同時期に起こり得ることを示す事例だった。
【科学的な見分け方】自然変動と人為的要因はどう区別する?
異常気象が発生すると、「これは地球温暖化が原因なのか」「エルニーニョによる一時的な現象なのか」という疑問が生まれる。
科学的に重要なのは、自然変動と人為的な気候変動を対立する原因として扱わないことだ。両者は同時に作用するため、個々の現象についてそれぞれの寄与を調べる必要がある。
自然変動は短期的な天候の振れ幅を左右する自然変動には、エルニーニョ・ラニーニャ現象、偏西風の蛇行、海洋の十年規模変動などがある。
これらは、地球の気候システムに元々備わっている変動であり、人間活動による温暖化がなくても発生する。
例えば、エルニーニョが発生すると、熱帯太平洋の対流活動が変化し、遠く離れた日本の大気循環にも影響する。しかし、その影響は毎回同じではない。
実際、2026年夏の気象庁の分析では、エルニーニョ特有の熱帯域の特徴が確認された一方、ユーラシア大陸の偏西風の位置には、過去のエルニーニョ発生時とは異なる特徴も見られた。
つまり、自然変動の存在を知っていても、それだけで特定の年の異常気象を説明できるわけではない。
人為的要因は極端な現象が起こる確率を変える人間活動による温暖化は、気温や海洋の熱状態など、気候の基準となる環境を長期的に変化させる。
IPCC第6次評価報告書では、1950年代以降、多くの陸域で熱波の頻度と強度が増加しており、その主な原因は人為的な気候変動であると高い確信度で評価されている。
また、観測データが十分な多くの地域では、強い降水現象の頻度と強度も増加しており、人為的な気候変動が主要な要因である可能性が高いとされている。
ただし、地域ごとに大気循環や地形などの影響が異なるため、すべての異常気象について同じ結論が出るわけではない。
イベント・アトリビューションとは何か自然変動と温暖化の影響を科学的に区別するために使われる手法が、イベント・アトリビューションだ。
これは、実際に発生した猛暑や豪雨について、現在の温暖化した気候と、人為的な温暖化がなかったと仮定した気候をコンピューターシミュレーションなどで比較し、発生確率や強度がどの程度変化したかを調べる研究手法である。
例えば、同じ気象条件を設定した複数の気候モデルによる実験を比較することで、温暖化によって特定の猛暑が発生しやすくなったのかを評価できる。
2026年の西日本の猛暑についても、この手法を用いた分析が行われ、温暖化がなければほぼ発生し得なかったという結果が示された。
重要なのは、イベント・アトリビューションは「温暖化がその日その場所の天気を直接作った」と単純に判定するものではないことだ。気候変動によって特定の現象がどの程度起こりやすくなったかを確率的に評価する手法である。
気象庁とIPCCのデータを見るときの判断基準異常気象のニュースやSNS上の情報を見極める際には、次の4点を確認するとよい。
- 長期的な傾向か:単年の記録だけでなく、30年以上の観測データで変化を確認する。
- 自然変動が考慮されているか:エルニーニョや偏西風など、同時期の気象条件を調べる。
- 人為的影響の評価があるか:イベント・アトリビューションなどの科学的分析が示されているかを確認する。
- 確信度が明示されているか:「可能性が高い」「確信度が低い」など、研究結果の不確実性を確認する。
気象庁の気候変動監視レポート、異常気象分析検討会の発表、IPCCの評価報告書は、こうした判断をする際の重要な資料となる。
【将来予測】異常気象は今後どうなる?日本の気候変動を展望
異常気象の将来を考えるうえでは、気温がどこまで上昇するかが大きな分岐点になる。
気象庁と文部科学省による「日本の気候変動2025」では、温室効果ガスの排出量に応じた複数の将来シナリオが示されている。
21世紀末の日本は最大約4.5℃の気温上昇が予測される同報告書では、20世紀末の1980~1999年と比較した2076~2095年の日本の年平均気温について、次の予測が示されている。
- 2℃上昇シナリオ:年平均気温は約1.4℃上昇。
- 4℃上昇シナリオ:年平均気温は約4.5℃上昇。
この予測は、将来の温室効果ガス排出量によって気温上昇の規模が大きく変わることを示している。
また、4℃上昇シナリオでは、21世紀末の日本の猛暑日が年間約17.5日増加し、熱帯夜は約38.0日増加すると予測されている。
一方、2℃上昇シナリオでは猛暑日が年間約2.9日、熱帯夜が約8.2日増加する予測だ。
いずれも将来予測であり、実際の気候は排出量や自然変動などによって変化する。しかし、温暖化を抑制できるかどうかで、将来の暑さの程度が大きく変わることは明らかだ。
豪雨の強度と水不足の両方に備える必要がある温暖化が進行すると、大気中に含まれる水蒸気量が増加し、短時間に集中する大雨の強度や発生頻度が増える可能性がある。
その一方で、雨の降る日数は減少する傾向があり、雨が降るときには大量に降る一方、長期間雨が降らない地域も生まれ得る。
このため、将来の水害対策は洪水対策だけでは不十分だ。ダムや貯水施設の運用、地下水の管理、農業用水の確保など、渇水への対応も必要になる。
台風は発生数だけでなく雨量や勢力にも注目台風については、今後の発生数だけを見て気候変動の影響を判断することはできない。
重要なのは、強い台風の割合、最大風速、降水量、移動速度、高潮や沿岸浸水のリスクなどを総合的に評価することだ。
海面水温の上昇や大気中の水蒸気量の増加は、台風に伴う豪雨を強める要因となり得る。加えて、海面水位の上昇が進めば、同じ規模の高潮でも沿岸部への影響が大きくなる可能性がある。
そのため、今後の防災では台風の進路や中心気圧だけでなく、降水量や沿岸部への複合的な影響を確認することが欠かせない。
【プロの結論】異常気象の本当の原因を理解するために知っておきたいこと
異常気象の原因を一つに絞ることは、科学的には適切ではない。長期的な温暖化、自然変動、大気循環、海洋の状態、地域の地形など、複数の条件が重なって現象が発生するからだ。
ただし、原因を複雑に考えることと、温暖化の影響を小さく評価することは別問題である。
2026年の西日本の猛暑では、イベント・アトリビューションによって、温暖化がなければほぼ発生し得なかったという分析結果が示された。温暖化は、実際に発生する異常気象の確率や強度を変えている。
今後、異常気象の情報を判断するときには、次の3つの視点を持つことが重要だ。
- 長期的な背景を見る:温室効果ガスや気温、海面水温の変化を確認する。
- 短期的な気象条件を見る:エルニーニョ、偏西風、高気圧、暖湿気の流入などを確認する。
- 科学的な因果関係を見る:観測データやイベント・アトリビューションの結果を参考にする。
特に注意したいのは、過去の経験だけで災害リスクを判断しないことだ。以前は珍しかった気象条件が、気候の変化によって以前より発生しやすくなっている可能性がある。
「100年に一度」「数十年に一度」という表現も、将来にわたって同じ発生確率が維持されることを保証するものではない。気候の基準が変われば、極端現象の発生確率も変化する。
【異常気象の原因】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:異常気象の最大の原因は地球温暖化ですか?
A1:地球温暖化は、現在の極端な高温や強い大雨が発生しやすくなる重要な背景要因です。ただし、実際の発生時期や場所、強度はエルニーニョ現象、偏西風の蛇行、海面水温などにも左右されます。
Q2:エルニーニョ現象が発生すると日本は必ず猛暑になりますか?
A2:必ず猛暑になるわけではありません。エルニーニョは熱帯の大気循環を変化させ、日本の天候にも影響しますが、偏西風や高気圧などの状態によって結果は異なります。2026年夏の気象庁の分析でも、過去のエルニーニョ発生時とは異なる大気循環の特徴が確認されました。
Q3:線状降水帯が増えているのは地球温暖化が原因ですか?
A3:温暖化による水蒸気量の増加は、線状降水帯を含む強い雨のリスクを高める要因です。ただし、線状降水帯の発生には風の収束や大気の不安定度、地形なども関係するため、すべての発生を温暖化だけで説明することはできません。
Q4:台風は地球温暖化によって大型化しているのですか?
A4:台風の強度と大きさは別の指標です。温暖化によって強い熱帯低気圧の割合や台風に伴う降水量が増える可能性はありますが、すべての台風の発生数やサイズが一律に増えているとは断定できません。
Q5:2026年に異常気象が増えていることを示すデータはありますか?
A5:あります。2026年夏の西日本の平均気温は1946年以降で3番目に高く、千葉県では8月に24時間降水量367mmを観測しました。また、気象庁の2025年までの観測統計では、強い大雨の発生頻度が1980年頃と比べておおむね2倍程度に増加しています。
異常気象の原因は、地球温暖化だけではない。温室効果ガスによる長期的な気温上昇に、エルニーニョ現象、偏西風の蛇行、海面水温の変化、大気中の水蒸気量などが複雑に重なっている。
2026年の西日本の猛暑や8月の千葉豪雨は、その複雑な仕組みを示す具体的な事例だった。特に西日本の高温については、イベント・アトリビューションによって温暖化の明確な寄与が確認されている。
また、気象庁の観測データやIPCCの評価が示すように、極端な高温や強い大雨のリスクは気候変動と深く関係している。
これからの時代に必要なのは、異常気象を単なる一時的な天候の乱れとして捉えるのではなく、気候システム全体の変化として理解することだ。
気象庁の異常気象分析検討会、気候変動監視レポート、エルニーニョ監視速報などの最新情報を確認しながら、猛暑への備え、洪水・土砂災害への対策、渇水への対応を進めていく必要がある。
異常気象の発生を完全に防ぐことはできない。しかし、その原因を科学的に理解し、将来のリスクを見据えて行動することで、私たちの暮らしや社会を守ることはできる。