平野海祝を語るうえで欠かせないのが、兄である平野歩夢との関係だ。歩夢は北京2022冬季五輪の男子ハーフパイプで金メダルを獲得した世界的なスノーボーダーであり、海祝にとって競技を始めるきっかけを与えた存在でもある。
兄・歩夢のソチ五輪がスノーボード人生の出発点所属先TOKIOインカラミの選手紹介によると、海祝がスノーボードを本格的に目指すようになったのは2014年。ソチ冬季オリンピックで活躍する兄・歩夢の姿を見たことがきっかけだった。当時12歳だった海祝は、兄と同じスノーボードの世界に進むことを決めた。
その後、兄弟は北京2022冬季五輪でそろって男子ハーフパイプに出場する。歩夢が金メダルを獲得した一方、海祝も決勝に進出し、世界を驚かせる大ジャンプを披露した。
JOCの大会記録によれば、北京五輪決勝で海祝が記録した順位は9位。兄の金メダルだけでなく、弟の独創的なパフォーマンスも大きな話題となった。
兄弟でも目指すスタイルは同じではない興味深いのは、海祝が歩夢の実績を追いかけるだけの選手ではないことだ。
2025年5月の日本大学公式インタビューで、海祝は自分のスノーボードについて、トータルのスタイルや板に乗る感覚へのこだわりを語っている。スノーボードを楽しむことを大切にしながら、競技成績も残すことが理想だという考え方だ。
また、兄については、けがをしても以前より強くなって戻ってくる姿を尊敬していると話している。自分自身もけがから学び、成長して復帰したいという思いにつながっている。
兄弟の関係を理解するうえで重要なのは、単純な優劣で比較しないことだ。歩夢は五輪金メダリストとして完成度の高い演技を追求し、海祝は高いエアや独自のスタイルを武器に存在感を築いている。それぞれ異なる個性を持つ競技者なのである。
【競技実績とオリンピック成績】北京五輪9位から世界記録への道

平野海祝は北京五輪で突然現れた選手ではない。ジュニア時代から国内外の大会で実績を重ね、国際大会で戦う力を身につけてきた。
ジュニア時代からX Games銅メダルまで日本大学の2025年卒業特集に掲載された選手プロフィールによると、海祝は12歳頃から本格的にスノーボードに取り組み始めた。
2017年にはJOCジュニアオリンピックカップで優勝。2018年の世界ジュニア選手権では3位に入った。さらに2020年冬季ユース五輪では銀メダルを獲得し、若い世代の有力選手として実力を示した。
2021年には全日本ジュニア選手権で優勝し、全日本選手権でも3位に入賞。2022年には初出場のX Games Aspenで銅メダルを獲得し、兄・歩夢とともに表彰台に立った。
北京2022冬季五輪では高さ7.4mの大ジャンプ海祝の名前を世界中に知らしめたのが、2022年2月11日の北京五輪男子ハーフパイプ決勝だった。
1本目の得点は75.50点。順位は最終的に9位だったが、特に注目されたのは7.4mに達したエアの高さだ。
ハーフパイプの壁の上端から大きく飛び出すパフォーマンスは、従来の高さの記録を塗り替えるものとして大きく報じられた。日本大学の五輪特集でも、コースのボトムから測ると約14.6mに相当する高さだったと紹介されている。
JOCの2022年2月11日の報道によると、海祝は2回目と3回目で転倒したものの、1回目に自身のスタイルを貫いた演技を披露。大会後には、再び五輪の舞台に立ち、兄とともにメダルを獲得したいという目標も語っていた。
平野海祝の主な競技実績| 年 | 大会・出来事 | 結果 |
|---|---|---|
| 2017年 | JOCジュニアオリンピックカップ | 優勝 |
| 2018年 | 世界ジュニア選手権 | 3位 |
| 2020年 | 冬季ユース五輪 | 銀メダル |
| 2021年 | 全日本ジュニア選手権 | 優勝 |
| 2021年 | 全日本選手権 | 3位 |
| 2022年 | X Games Aspen | 銅メダル |
| 2022年 | 北京冬季五輪 | 男子ハーフパイプ9位 |
| 2024年 | W杯アスペン大会 | 3位 |
| 2026年2月 | The Snow League・アスペン | 7.68mの最高エア記録 |
| 2026年3月 | The Snow League・ラークス | 7.72mの最高エア記録 |
出典:日本大学、TOKIOインカラミ、JOC、The Snow League、ギネス世界記録の公開情報。
2024年のW杯アスペン大会では、自身2度目となる3位入賞も果たしている。単発の大ジャンプだけではなく、国際大会で表彰台に上がる競技力も備えている点は見逃せない。
【2026年3月19日のギネス世界記録】スイスで7.72mを達成した瞬間
2026年の平野海祝を語る最大のニュースが、スノーボード・ハーフパイプにおける最高エアのギネス世界記録だ。
記録が生まれたのは、2026年3月19日、スイスのラークス(LAAX)。国際プロリーグ「The Snow League」のシーズン1最終大会で、海祝は25フィート4インチ、メートル換算で7.72mという高さを記録した。
7.72mはどれほどの記録なのかギネス世界記録の公式記録ページには、記録名「Highest snowboard air on a halfpipe」として平野海祝の名前が掲載されている。
公式記録の内容は次のとおりだ。
| 項目 | 記録内容 |
|---|---|
| 記録保持者 | 平野海祝 |
| 記録名 | ハーフパイプにおけるスノーボードの最高エア |
| 高さ | 7.72m |
| フィート換算 | 25フィート4インチ |
| 達成日 | 2026年3月19日 |
| 開催地 | スイス・ラークス |
| 大会 | The Snow League Season One |
ここで注目したいのは、7.72mが単なるジャンプの飛距離ではなく、ハーフパイプから飛び出した際の最高到達高度を示す記録だという点である。
また、北京五輪で話題になった7.4mと比較すると、今回の記録はさらに高い。海祝が得意としてきたエアの高さが、国際的な公式記録として新たな評価を受けたことになる。
実は3月の記録は2度目の世界記録更新だった今回の7.72mに至るまでには、もう一つ重要な出来事があった。
2026年2月27日、アメリカ・コロラド州アスペンで開催されたThe Snow Leagueの大会で、海祝は7.68mを記録。これも自身の持つ最高エア記録を更新するパフォーマンスだった。
The Snow Leagueは3月2日付の公式発表で、この7.68mを新記録として発表した。この段階ではギネス世界記録の審査・確認待ちとされていた。
そして約1か月後の3月19日、スイス・ラークスで7.72mに到達。わずか0.04m、つまり4cmの更新だが、極限の高さを追求する競技においては大きな前進だった。
大会公式発表とギネス世界記録の掲載内容は一致しており、記録達成日、場所、高さの3点が確認できる。
10月にはギネス公式認定証の授与式も開催記録達成から約半年後の2026年10月1日、平野海祝へのギネス世界記録公式認定証の授与式が行われた。
新潟放送(BSN)やテレビ新潟の報道によると、海祝は認定証を手にした喜びを語り、今回の記録について、メダルよりも重く感じるという趣旨のコメントを残している。
また、新シーズンに向けては、エアの高さだけに頼るのではなく、技術面でも観客を驚かせたいという意欲を示した。
この発言は、海祝の今後を考えるうえで重要だ。世界記録を持つ選手として高さを追求するだけでなく、競技者としての総合的な技術を磨こうとしているからだ。
ギネス世界記録の公式ページにも、7.72m、2026年3月19日、スイス・ラークスという記録内容が掲載されている。単なるSNS上の自己申告ではなく、公式認定まで確認できる実績となった。
【平野海祝の現在・2026年最新】ミラノ五輪不出場と今後の競技活動
2026年11月現在の海祝を理解するには、ギネス世界記録だけでなく、2025年から2026年にかけての競技状況も押さえる必要がある。
2024年11月の足首のけがが競技生活に影響日本大学の2025年5月のインタビューでは、海祝は2024年11月に足首を2度骨折したことを明かしている。
当時は足首を曲げるだけでも痛みがあり、片足立ちも不安定になる状態だったという。ハーフパイプでは着地時に足首や膝へ大きな衝撃がかかるため、競技復帰には慎重なリハビリが必要だった。
インタビュー時点では、リハビリによって回復度は8〜9割程度まで戻っていた。雪上でのトレーニングも少しずつ再開し、2025年秋からの本格復帰を目指していた。
けがによって出場できなかった大会があり、本人も五輪選考に向けて不利な状況になったことを認識していた。2025年のインタビューでは、与えられた時間を大切にして、できることを積み重ねる姿勢を語っている。
ミラノ・コルティナ2026冬季五輪には出場していないここは検索時に誤解が生じやすいポイントだ。
平野海祝は北京2022冬季五輪の日本代表だが、2026年2月開催のミラノ・コルティナ冬季五輪では、男子ハーフパイプの日本代表メンバーに選ばれていない。
2026年1月20日にTBS NEWS DIGが報じた代表内定選手の一覧では、男子ハーフパイプの日本代表は次の4選手だった。
- 平野歩夢
- 平野流佳
- 戸塚優斗
- 山田琉聖
海祝の名前はこの代表メンバーには含まれていない。兄の歩夢は同大会に出場したが、兄弟そろっての五輪出場とはならなかった。
また、JOCが2026年1月に掲載したスノーボードW杯アスペン大会の結果では、海祝は男子ハーフパイプ14位だった。けがからの復帰を進めながら、競技に取り組んでいたことが分かる。
つまり、2026年の海祝は五輪出場こそ逃したものの、その後の3月に世界記録を更新するという別の形で大きな成果を残したのである。
2026/2027シーズンの強化指定にも変化2026年7月16日、全日本スキー連盟(SAJ)は2026/2027シーズンの強化指定選手を発表した。
SAJの公式ハーフパイプ選手一覧には、兄の平野歩夢や戸塚優斗、山田琉聖らが掲載されている。一方、海祝の名前は現在の強化指定選手一覧には見当たらない。
2025/2026シーズンの強化指定では海祝はAランクに入っていたため、今回の一覧との違いは注目点だ。デイリースポーツも2026年7月、海祝が強化指定から外れたことを報じている。
ただし、強化指定の対象から外れたことと、選手としての引退や競技活動の終了は同じ意味ではない。実際、2026年3月にはThe Snow Leagueで世界記録を達成している。
2026年11月時点で確認できる重要な事実は、海祝がギネス世界記録保持者であり、TOKIOインカラミ所属のスノーボーダーとして知られている一方、2026/2027シーズンのSAJ強化指定選手には掲載されていないということだ。
【プロの結論】平野海祝を評価するなら「高さ・技術・競技実績」の3軸を見る
平野海祝の競技者としての価値を考えるとき、7.72mという数字だけで評価を完結させるのはもったいない。
今回の世界記録は、彼の最大の武器であるエアの高さが世界的に認められた証拠だ。しかし、ハーフパイプは高さだけで順位が決まる競技ではない。
1. 高さは世界的な個性であり、明確な武器北京五輪の7.4mから、2026年の7.68m、そして7.72mへ。海祝は高さという自分の持ち味を継続的に伸ばしてきた。
特に、2026年に自身の記録を短期間で2度更新したことは、偶然の一発ではなく、高さを追求する競技スタイルが継続していることを示している。
2. 競技の採点では高さ以外も必要海祝自身も日本大学のインタビューで、高いエアに加えて回転技術も取り入れ、自分らしいスタイルを残したいと語っている。
現在のハーフパイプは高回転の技が重視される傾向にあり、選手には高さ、回転数、技の難度、完成度、演技全体の流れが求められる。
そのため、ギネス記録を持っていることと、五輪やW杯で優勝できることは別の評価軸になる。世界記録は大きな強みだが、競技成績を伸ばすには総合力も必要だ。
3. けがからの復帰とシーズンを通した安定性ハーフパイプは着地の衝撃が大きく、選手の身体に高い負荷がかかる競技だ。海祝が経験した足首の骨折も、競技生活に大きな影響を与えた。
2026年の五輪代表から外れた背景にも、2025/2026シーズンのけがの影響があったと報じられている。
今後の評価では、単発の記録更新だけでなく、複数の大会で安定した演技を披露できるか、シーズンを通じてコンディションを維持できるかが重要になる。
海祝にとって7.72mは大きな到達点であると同時に、新たな競技人生の出発点でもある。高さだけの選手から、技術と完成度を兼ね備えた総合的なスノーボーダーへ進化できるかが、次の注目ポイントだ。
【平野海祝に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:平野海祝は2026年現在何歳ですか?
A1:2002年10月14日生まれで、2026年11月2日時点では24歳です。新潟県村上市出身のスノーボード・ハーフパイプ選手です。
Q2:平野海祝のギネス世界記録は何メートルですか?
A2:7.72mです。2026年3月19日にスイス・ラークスで開催されたThe Snow League Season Oneで達成しました。「ハーフパイプにおけるスノーボードの最高エア」としてギネス世界記録に認定されています。
Q3:平野海祝と平野歩夢は兄弟ですか?
A3:はい。平野歩夢が兄、平野海祝が弟です。2014年のソチ五輪で兄の活躍を見たことが、海祝がスノーボードを本格的に目指すきっかけになりました。
Q4:平野海祝の北京五輪の成績は何位ですか?
A4:北京2022冬季五輪の男子ハーフパイプで9位でした。決勝1本目では75.50点を獲得し、約7.4mの高さのエアを披露して注目されました。
Q5:平野海祝はミラノ・コルティナ2026冬季五輪に出場しましたか?
A5:出場していません。2026年大会の男子ハーフパイプ日本代表には平野歩夢、平野流佳、戸塚優斗、山田琉聖の4選手が選ばれました。
Q6:平野海祝の出身高校と大学はどこですか?
A6:開志国際高等学校を卒業し、日本大学スポーツ科学部に進学しました。2025年5月には日本大学の公式サイトで卒業特集が公開されています。
Q7:平野海祝の所属先はどこですか?
A7:TOKIOインカラミです。2022年9月に所属契約を締結したことが運営会社の公式発表で公表されています。
平野海祝は、新潟県村上市出身のスノーボード・ハーフパイプ選手であり、平野歩夢の弟として知られる一方、自分自身のスタイルを確立してきた競技者だ。
北京2022冬季五輪では男子ハーフパイプ9位。約7.4mの大ジャンプで世界を驚かせ、2026年3月19日にはスイス・ラークスで7.72mを記録。ギネス世界記録に認定され、同年10月には公式認定証も授与された。
一方、2024年11月の足首のけがやミラノ・コルティナ2026冬季五輪への不出場、2026/2027シーズンのSAJ強化指定からの除外など、競技生活には厳しい局面もある。
それでも、世界最高のエアを記録した実績は揺るがない。今後は高さだけでなく、技術や演技全体の完成度をどこまで高められるかが大きな焦点になる。
兄・歩夢の実績を追うだけではなく、自分だけのスノーボードを追求する平野海祝。24歳の世界記録保持者が次のシーズンにどんな滑りを見せるのか、引き続き注目したい。
主な参照資料:JOC「平野海祝選手プロフィール・北京五輪成績」、日本大学競技スポーツセンター「卒業特集」(2025年5月2日)、TOKIOインカラミ所属発表、The Snow League公式発表(2026年3月2日・19日)、Guinness World Records公式記録、SAJ 2026/2027シーズン強化指定選手一覧、新潟放送(2026年10月1日)。