肺炎は、日本人の死因上位に位置する重大な病気です。2026年11月現在、厚生労働省が公表した最新の人口動態統計によると、2024年の肺炎死亡率は人口10万人あたり66.6人、2025年の肺炎死亡数は84,021人となっています。
2025年の確定数では、肺炎は日本人の死因第5位です。加えて、統計上は別項目となっている誤嚥性肺炎でも64,396人が亡くなっています。高齢化が進む日本では、肺炎そのものだけでなく、飲み込む機能の低下によって起こる誤嚥性肺炎も見逃せない問題です。
この記事では、厚生労働省の人口動態統計やe-Statの公的資料をもとに、肺炎死亡率の最新数値、年齢別・男女別の傾向、過去からの推移、誤嚥性肺炎との違い、2026年度の肺炎球菌ワクチン制度まで詳しく解説します。
【最新統計】肺炎死亡率は人口10万人あたり何人?2024年・2025年を比較

最初に、最も気になる肺炎死亡率と死亡者数を整理します。
厚生労働省の「人口動態統計」において、2024年の肺炎死亡数は80,176人でした。人口10万人あたりの死亡率は66.6人です。
2025年については、2026年9月30日に公表された「令和7(2025)年人口動態統計(確定数)の概況」で、肺炎死亡数が84,021人と確定しています。
前年と比較すると、3,845人の増加です。
2024年と2025年の肺炎死亡統計| 項目 | 2024年 | 2025年 |
|---|---|---|
| 肺炎死亡数 | 80,176人 | 84,021人 |
| 男性死亡数 | 46,529人 | 48,733人 |
| 女性死亡数 | 33,647人 | 35,288人 |
| 死因順位 | 第5位 | 第5位 |
| 死亡総数に占める割合 | 5.0% | 5.3% |
| 死亡率(人口10万人対) | 66.6人 | 詳細確定値の公表待ち |
| 誤嚥性肺炎死亡数 | 63,667人 | 64,396人 |
出典:厚生労働省「令和6年人口動態統計」「令和7年人口動態統計(確定数)」など。2025年の男女別死亡数は確定値。2025年の詳細な人口10万人対死亡率は2026年11月の公表予定です。
2025年の死亡率70.4人という数字には注意2025年の肺炎死亡率については、70.4人という数字も公表されています。
これは2026年6月3日に発表された人口動態統計月報年計(概数)に基づく数値です。
同資料では肺炎死亡数84,013人、死亡率70.4人とされていました。その後、9月30日の確定数公表で死亡数は84,021人に修正されています。
したがって、2025年の確定死亡数と概数段階の死亡率を混同しないことが大切です。確定数に基づく詳細な人口10万人対死亡率は、2026年11月にe-Statで公表予定とされています。
そもそも人口10万人あたりの死亡率とは?肺炎死亡率の「人口10万人あたり66.6人」とは、1年間に人口10万人につき何人が肺炎で亡くなったかを示す数値です。
計算式は次のとおりです。
死亡率=年間の肺炎死亡数÷10月1日現在の日本人人口×100,000
ここで注意したいのが、死亡率と致死率は別の指標だという点です。
- 死亡率:人口全体に対する肺炎による死亡者の割合。
- 致死率:肺炎を発症した患者のうち死亡した人の割合。
人口10万人あたり66.6人という数字は、肺炎にかかった人のうち何人が亡くなるかを示すものではありません。
また、66.6人は人口の年齢構成をそのまま反映する粗死亡率です。高齢者の多い地域と若い人の多い地域を比較する場合には、年齢調整死亡率も確認する必要があります。
【年齢別・男女別】肺炎死亡率は何歳から高くなる?男女差も検証
肺炎死亡率を理解するうえで、特に重要なのが年齢と性別です。
2024年の人口動態統計をもとにした人口統計資料集2026では、肺炎による死亡率は年齢が上がるにつれて大幅に高くなる傾向が確認できます。
年齢別の肺炎死亡率2024年の年齢階級別死亡率は、次のとおりです。
| 年齢 | 肺炎死亡率(人口10万人対) |
|---|---|
| 70~74歳 | 49.4人 |
| 75~79歳 | 97.4人 |
| 80~84歳 | 229.0人 |
| 85~89歳 | 504.1人 |
| 90~94歳 | 935.1人 |
| 95~99歳 | 1,533.6人 |
| 100歳以上 | 2,195.4人 |
特に注目したいのは、80歳以降の上昇幅です。
80~84歳では人口10万人あたり229.0人ですが、85~89歳では504.1人となります。90~94歳では935.1人に達します。
これは、年齢を重ねるほど肺炎による死亡リスクが高まることを示すデータです。
ただし、この数値は各年齢階級の人口を分母とした年間死亡率であり、個人が肺炎にかかった場合の死亡確率ではありません。
男女別の肺炎死亡率2024年の男女別死亡率を見ると、男性のほうが女性より高い結果となっています。
- 男性:人口10万人あたり79.6人
- 女性:人口10万人あたり54.4人
男性は女性の約1.46倍です。
2025年の確定死亡数でも、男性48,733人、女性35,288人となっており、男性の死亡数が多くなっています。
ただし、男女の死亡数には人口規模や年齢構成の違いも影響します。男女のリスクを正確に比較するには、人口を分母にした死亡率や年齢階級別のデータを確認する必要があります。
高齢者の肺炎死亡リスクが高い理由高齢者で肺炎が重症化しやすい背景には、複数の身体的変化があります。
1. 免疫機能の低下
加齢に伴って感染症に対する免疫反応が弱くなり、病原体に感染した際に重症化しやすくなります。
2. 咳反射・嚥下機能の低下
食べ物や唾液が誤って気道に入りやすくなり、誤嚥性肺炎につながる場合があります。
3. 基礎疾患の存在
糖尿病、心臓病、腎臓病、慢性呼吸器疾患などを抱えている場合、肺炎の発症や重症化のリスクが高まります。
4. 栄養状態や身体機能の低下
食事量の減少、低栄養、筋力低下、寝たきりなども肺炎の発症と回復に影響します。
日本呼吸器学会も、65歳を超えると肺炎の発症率が増加し、基礎疾患のある人は重症化しやすいと説明しています。
【誤嚥性肺炎との違い】死亡数64,396人をどう見るべきか
肺炎死亡率を調べる際、見落とされやすいのが誤嚥性肺炎です。
実は、厚生労働省の人口動態統計では、一般的な肺炎と誤嚥性肺炎は別々の死因として集計されています。
2025年の誤嚥性肺炎による死亡数は64,396人で、死因順位は第6位です。
一般的な肺炎の84,021人と合わせると、148,417人になります。ただし、これは2つの統計分類を合算した参考値であり、厚生労働省の公式な死因分類上の順位とは異なります。
一般的な肺炎と誤嚥性肺炎の違い一般的な肺炎
細菌やウイルスなどの病原微生物が肺に感染し、炎症を引き起こす病気です。
主な原因には肺炎球菌、インフルエンザウイルス、肺炎マイコプラズマなどがあります。
誤嚥性肺炎
食べ物、飲み物、唾液などが誤って気管や肺に入り、そこに含まれる細菌などによって炎症が起こる病気です。
特に高齢者や脳血管障害のある人、嚥下機能が低下した人に多く見られます。
誤嚥性肺炎の死亡数は増えている?2024年と2025年を比較すると、誤嚥性肺炎の死亡数は次のように推移しています。
- 2024年:63,667人
- 2025年:64,396人
729人の増加です。
一般的な肺炎と同様に、誤嚥性肺炎も高い死亡者数を記録しています。
この背景には、高齢者人口の増加に加え、嚥下機能や身体機能が低下した人の感染リスクがあります。
日本呼吸器学会は、誤嚥性肺炎の予防策として、口腔ケア、嚥下機能への対応、食事中の姿勢の改善などを挙げています。
特に介護を受けている高齢者の場合、食事中にむせることが少なくても、気づかないうちに唾液などが気道に入る不顕性誤嚥が起こることがあります。
発熱だけでなく、食欲低下、元気がない、意識状態がいつもと違うといった変化にも注意が必要です。
【肺炎死亡率の年次推移】2020年以降に何が変わった?
肺炎死亡数は、長期的に見ると2019年から2021年にかけて大きく減少し、その後再び増加しています。
厚生労働省の公表資料や大臣記者会見で示された数値を整理すると、次のようになります。
| 年 | 肺炎死亡数 |
|---|---|
| 2017年 | 96,859人 |
| 2018年 | 94,661人 |
| 2019年 | 95,518人 |
| 2020年 | 78,450人 |
| 2021年 | 73,194人 |
| 2022年 | 74,013人 |
| 2023年 | 75,753人 |
| 2024年 | 80,176人 |
| 2025年 | 84,021人 |
2019年には95,518人だった肺炎死亡数が、2020年には78,450人まで減少しました。
その後、2021年には73,194人となり、2022年以降は増加傾向に転じています。
この変化については、新型コロナウイルス感染症の流行との関係も議論されています。
2025年10月14日の厚生労働大臣記者会見では、記者から2020年以降の肺炎死亡数の減少について質問がありました。
厚生労働大臣は、新型コロナウイルス感染症の流行が影響した可能性を否定できない一方、死亡診断書に記載された死因の増減について、人口動態統計だけで正確な原因を評価することは難しいとの見解を示しています。
つまり、新型コロナの流行によって感染症の発生状況や死因の分類に変化が生じた可能性はありますが、肺炎死亡数の減少を単一の原因だけで説明することはできません。
2022年以降は再び増加傾向2021年の73,194人を底に、肺炎死亡数は2022年74,013人、2023年75,753人、2024年80,176人と増加しました。
そして2025年には84,021人となっています。
注目したいのは、2025年には日本全体の死亡数が前年より減少したにもかかわらず、肺炎による死亡数は増加したことです。
厚生労働省の確定統計では、2025年の全死亡数は1,589,533人で、2024年の1,605,378人から減少しています。
その中で肺炎死亡数は3,845人増加しました。
人口全体の死亡動向と肺炎死亡の動向は必ずしも一致しません。肺炎という特定の死因に注目することが、感染症対策や高齢者医療を考えるうえで重要です。
【肺炎の原因と予防方法】肺炎球菌ワクチンはどこまで効果がある?
肺炎の原因は一つではありません。
細菌やウイルスなど、さまざまな病原微生物によって引き起こされます。
細菌性肺炎の主な原因代表的な原因菌には次のものがあります。
- 肺炎球菌
- インフルエンザ菌
- 肺炎マイコプラズマ
- 黄色ブドウ球菌
特に肺炎球菌は市中肺炎の重要な原因菌です。
肺炎球菌は飛沫などを通じて感染し、肺炎だけでなく、敗血症や髄膜炎などの重い感染症を引き起こすこともあります。
ウイルス性肺炎の主な原因ウイルス性肺炎の原因には、次のような病原体があります。
- インフルエンザウイルス
- RSウイルス
- 新型コロナウイルス
- ヒトメタニューモウイルス
ウイルス感染によって気道の炎症が起こり、肺まで感染が広がることで肺炎を発症する場合があります。
また、ウイルス感染後に細菌が二次感染し、症状が重くなるケースもあります。
2026年度から肺炎球菌ワクチンの定期接種が変更2026年の重要な変更点として、高齢者向け肺炎球菌ワクチンの定期接種制度があります。
厚生労働省によると、2026年4月1日から、定期接種で使用するワクチンが従来のPPSV23からPCV20に変更されました。
沈降20価肺炎球菌結合型ワクチン(PCV20)
対象者は次のとおりです。
- 65歳の人
- 60~64歳で、心臓・腎臓・呼吸器の機能に一定の障害がある人
- 60~64歳で、HIVによる免疫機能障害があり、日常生活がほとんど不可能な人
定期接種は原則1回で、PCV20を筋肉内に接種します。
肺炎球菌ワクチンの予防効果肺炎球菌には100種類以上の血清型があります。
2026年度の定期接種に使われるPCV20は、そのうち20種類の血清型を対象としています。
厚生労働省が紹介する研究結果では、対象となる20種類は成人の侵襲性肺炎球菌感染症の原因の約5~6割を占めます。
また、血清型を限定せずに見た侵襲性肺炎球菌感染症全体に対して、約3~4割程度を予防する効果があるとされています。
ただし、この3~4割という数値は侵襲性肺炎球菌感染症に対するものであり、あらゆる肺炎の発症や肺炎による死亡を3~4割減らすという意味ではありません。
肺炎球菌以外の細菌やウイルスによる肺炎まで完全に防ぐことはできないため、ほかの予防策も欠かせません。
日常生活でできる肺炎予防方法肺炎予防では、感染対策と誤嚥対策の両方を意識することが大切です。
1. 手洗い・換気・咳エチケット
外出後の手洗い、室内の換気、必要に応じたマスク着用などを心がけます。
2. インフルエンザ・新型コロナワクチンの接種
高齢者や基礎疾患のある人は、医師と相談しながら定期接種の対象となる予防接種を検討します。
3. 口腔ケア
歯磨きや舌の清掃などで口の中を清潔に保ちます。誤嚥性肺炎の予防にも役立ちます。
4. 食事中の姿勢を整える
食事中はできるだけ上体を起こし、ゆっくり食べることを意識します。食後すぐに横になることも避けましょう。
5. 禁煙と栄養管理
喫煙は気道の防御機能に悪影響を及ぼします。栄養状態を整え、糖尿病や心臓病などの基礎疾患を適切に管理することも大切です。
日本呼吸器学会と厚生労働省も、口腔ケア、禁煙、ワクチン接種、手洗いなどを肺炎予防の重要な取り組みとして紹介しています。
【プロの結論】肺炎死亡率の数字から読み取るべき本当の問題
2026年の統計から見えてくるのは、肺炎が依然として日本の主要な死亡原因であり、特に高齢者にとって大きな健康リスクとなっていることです。
重要なのは、死亡数だけを見て肺炎の危険性を判断しないことです。
判断基準1:死亡率と死亡数を分けて考える2024年の死亡率66.6人と2025年の死亡数84,021人は、異なる年の異なる指標です。
加えて、2025年の70.4人という数値は概数段階のものです。
統計を比較するときは、確定数か概数か、人口10万人あたりの死亡率か実際の死亡者数かを必ず確認してください。
判断基準2:一般的な肺炎と誤嚥性肺炎を区別する2025年は一般的な肺炎で84,021人、誤嚥性肺炎で64,396人が亡くなっています。
誤嚥性肺炎は、食事や唾液の飲み込みに関係するため、感染症対策だけでは十分ではありません。
口腔ケアや嚥下機能の確認、食事姿勢の改善など、介護現場を含めた継続的な対策が大切です。
判断基準3:ワクチンだけに頼らない2026年度から定期接種のワクチンはPCV20になりました。
これは肺炎球菌感染症への対策として重要な変更ですが、肺炎の原因すべてをカバーするものではありません。
予防接種に加え、栄養管理、禁煙、口腔ケア、感染対策を組み合わせることが重要です。
【肺炎死亡率】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:日本の肺炎死亡率は人口10万人あたり何人ですか?
2024年の確定統計では、人口10万人あたり66.6人です。2025年の確定死亡数は84,021人ですが、詳細な確定死亡率は2026年11月に公表予定です。
Q2:2025年の肺炎死亡数は何人ですか?
厚生労働省の2025年人口動態統計確定数によると、84,021人です。前年の80,176人から3,845人増加しています。
Q3:肺炎の死因順位は何位ですか?
2025年の日本の死因順位では第5位です。誤嚥性肺炎は別項目で第6位となっています。
Q4:肺炎死亡率は男性と女性のどちらが高いですか?
2024年の統計では男性79.6人、女性54.4人(人口10万人あたり)で、男性のほうが高くなっています。
Q5:肺炎死亡率が特に高くなる年齢は何歳ですか?
2024年の年齢別統計では、80歳以降に死亡率が大きく上昇しています。90~94歳では人口10万人あたり935.1人、100歳以上では2,195.4人です。
Q6:肺炎球菌ワクチンを接種すれば肺炎を完全に防げますか?
完全には防げません。2026年度の定期接種で使用されるPCV20は、肺炎球菌の特定の血清型を対象としたワクチンです。ウイルス性肺炎など、ほかの原因による肺炎は防げないため、日常的な感染対策も必要です。
Q7:誤嚥性肺炎の予防には何が効果的ですか?
口腔ケア、食事中の姿勢の改善、ゆっくりした咀嚼・嚥下、嚥下機能の評価などが重要です。飲み込みに問題がある場合は、医師や言語聴覚士などの専門職に相談してください。
2026年11月現在、肺炎死亡率を考えるうえで基準となる2024年の確定死亡率は、人口10万人あたり66.6人です。
一方、2025年の肺炎死亡数は84,021人と確定し、前年から増加しました。肺炎は死因第5位であり、誤嚥性肺炎も64,396人という大きな死亡数を記録しています。
今回の統計から押さえておきたい要点は次の3つです。
- 肺炎死亡率は人口10万人あたりの数値であり、患者の致死率とは異なる。
- 80歳以降は死亡率が大幅に上昇し、誤嚥性肺炎も大きな課題となっている。
- 2026年度はPCV20への定期接種変更を踏まえ、ワクチンと日常生活の予防策を組み合わせることが大切。
肺炎は高齢者だけの病気ではありませんが、年齢や基礎疾患によって重症化リスクが変わります。
本人だけでなく家族や介護に関わる人も、食事中のむせ、食欲低下、普段と異なる様子などに気を配ることが大切です。
統計上の死亡率を正しく理解し、予防接種や口腔ケア、早期受診につなげることが、肺炎による死亡リスクを減らすための現実的な取り組みです。