激しい運動とは、どの程度の負荷や息切れを伴う運動なのでしょうか。厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」では、身体活動の強度を示すメッツ(METs)を基準に、6メッツ以上を高強度運動と定義しています。ゆっくりしたジョギングやバスケットボール、水泳、一定の速度で行うサイクリングなどが代表例です。
ただし、同じ運動でも速度や運動時間、本人の体力によって感じる負担は変わります。2026年11月現在の公的な健康づくりの指針を踏まえ、メッツの意味、中強度運動との違い、心拍数や呼吸による見分け方、健康効果、安全に続けるための注意点まで詳しく解説します。
【基礎知識】激しい運動とは?6メッツ以上が高強度の基準

激しい運動とは、一般的に身体への負荷が大きく、呼吸や心拍数が相応に増加する運動を指します。健康づくりの指標として具体的に判断する場合は、厚生労働省が採用するメッツという単位が役立ちます。
メッツ(METs)とは何を表す単位?メッツとは、身体活動の強度を示す単位です。静かに座っている状態を1メッツとし、その活動によって消費するエネルギーが何倍になるかを表します。
例えば、3メッツの活動は安静座位時の約3倍、8メッツの活動は約8倍のエネルギー消費に相当する強度です。
厚生労働省の情報サイト「e-ヘルスネット」では、立っている状態は約2メッツ、普通歩行は約3メッツ、やや速い歩行は約4メッツ、ゆっくりしたジョギングは約6メッツと紹介されています。
つまり、メッツの数値が大きいほど、身体活動に必要なエネルギーが増えるという仕組みです。ただし、実際の身体的なきつさは個人の体力や健康状態によって異なります。
中強度運動と高強度運動の違い身体活動の強度は、厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に基づく分類では、次のように整理できます。
- 低強度:1.5〜2.9メッツ程度
- 中強度:3.0〜5.9メッツ
- 高強度:6.0メッツ以上
中強度運動は、少し息が弾み、汗をかくこともあるものの、比較的会話を続けやすい運動です。一方、高強度運動では呼吸や心拍数がさらに増え、運動中の会話が難しくなる傾向があります。
ここで押さえたいのは、6メッツという数値は活動そのものの強度を示す絶対的な指標だということです。運動習慣のない人にとっては5メッツ程度でもかなりきつく感じる場合があり、体力の高い人は6メッツ以上の活動を比較的余裕を持って行える場合もあります。
【具体例を比較】ランニング・水泳・サイクリングは何メッツ?
激しい運動に該当するかどうかは、運動の種類だけでは判断できません。走る速度や泳ぎ方、自転車の負荷などによって強度が変わるためです。
厚生労働省の「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」に掲載されている運動のメッツ表を参考に、代表的な活動を比較します。
運動強度の比較一覧| 運動の種類 | メッツ | 強度の分類 |
|---|---|---|
| 普通歩行 | 3.0 | 中強度 |
| やや速歩 | 4.3 | 中強度 |
| 水泳・ゆっくりした平泳ぎ | 5.3 | 中強度 |
| ゆっくりしたジョギング | 6.0 | 高強度 |
| 水泳・のんびり泳ぐ | 6.0 | 高強度 |
| ジョギング | 7.0 | 高強度 |
| ランニング(134m/分) | 8.3 | 高強度 |
| サイクリング(約20km/h) | 8.0 | 高強度 |
| 水泳・クロール(普通の速さ) | 8.3 | 高強度 |
| 水泳・クロール(速い) | 10.0 | 高強度 |
※数値は厚生労働省の運動メッツ表に基づく代表例です。実際の強度は速度、負荷、技術、運動環境などによって変化します。
ランニング:ゆっくり走っても高強度になる?ランニングは、速度によってメッツが大きく変わる代表的な運動です。
厚生労働省の資料では、ゆっくりしたジョギングが6メッツ、ジョギングが7メッツ、毎分134mのランニングが8.3メッツとされています。
特に注目したいのは、ゆっくりしたジョギングでも6メッツに達するという点です。速く走らなければ高強度運動にならないわけではありません。
ただし、初心者にとってはゆっくりしたジョギングでも負担が大きい場合があります。走ることに慣れていない人は、ウォーキングと短時間のジョギングを交互に行う方法から始めるとよいでしょう。
水泳:泳ぎ方や速度によって強度が変わる水泳も運動強度に幅があります。ゆっくりした平泳ぎは5.3メッツで中強度に分類される一方、のんびり泳ぐ場合でも6メッツ、通常の速さのクロールでは8.3メッツが目安です。
速いクロールでは10メッツに達します。水中では浮力によって関節への負担を抑えやすい一方、呼吸のタイミングや泳ぐ距離によって疲労の感じ方が変わります。
そのため、水泳なら必ず身体への負担が軽い、あるいはすべての泳ぎ方が激しい運動に該当するという理解は正確ではありません。
サイクリング:速度と負荷が強度を左右するサイクリングでは、平坦な道を軽い負荷で走る場合と、速い速度で走る場合では運動強度が異なります。
厚生労働省の資料では、軽い負荷の自転車運動は4メッツ、約20km/hのサイクリングは8メッツです。また、自転車エルゴメーターでは90〜100ワットの運動が6.8メッツとされています。
坂道や向かい風、ギア設定によっても負荷は変わります。走行速度だけでなく、ペダルを踏むときの抵抗や呼吸の状態も確認することが大切です。
【見分け方】息が上がる運動と心拍数で強度を判断する方法
メッツ表は便利ですが、日常生活の中で自分が何メッツの運動をしているかを正確に測定するのは簡単ではありません。
そこで役立つのが、呼吸の状態、会話のしやすさ、心拍数、本人が感じる疲労度を使った判断方法です。
会話が続けられるかを確認する「トークテスト」運動強度を簡単に判断する方法として、トークテストがあります。運動中にどの程度会話できるかを確認する方法です。
- 低強度:息がほとんど乱れず、普通に会話できる。
- 中強度:会話はできるが、歌を歌うのは難しい。
- 高強度:数語話すだけでも息継ぎが必要になる。
米国疾病予防管理センター(CDC)も、中強度では会話できるものの歌うのは難しく、高強度では呼吸のために数語以上を続けて話すことが難しくなるという目安を紹介しています。
ただし、会話のしやすさは運動強度を推測するための方法であり、6メッツ以上かどうかを直接測定するものではありません。運動の種類や個人の体力も踏まえて判断しましょう。
心拍数から運動強度を把握する心拍数も運動強度を把握するための参考になります。運動負荷が上がると、一般的には心拍数も増加します。
目安として、米国心臓協会(AHA)は最大心拍数を「220−年齢」という簡易式で推定し、中強度運動では最大心拍数の約50〜70%、高強度運動では約70〜85%を目安として紹介しています。
例えば40歳の場合、推定最大心拍数は180拍/分です。この計算を当てはめると、高強度運動の参考範囲は次のようになります。
- 推定最大心拍数:180拍/分
- 高強度の目安:126〜153拍/分
ただし、この数値はあくまで一般的な参考値です。年齢予測式には個人差があり、実際の最大心拍数と一致するとは限りません。
また、降圧薬の一部、特にβ遮断薬などは心拍数に影響を与えるため、心拍数だけで運動強度を判断できない場合があります。厚生労働省の安全対策資料でも、このような場合は主観的運動強度を参考にするよう説明されています。
自分に合う運動強度を判断する3つのポイント実際に運動するときは、次の3つを組み合わせると判断しやすくなります。
- 呼吸:普段より明らかに呼吸が速くなっているか。
- 会話:文章を続けて話せるか、それとも数語ごとに息継ぎが必要か。
- 心拍数:年齢や健康状態を踏まえた範囲に収まっているか。
スマートウォッチや活動量計を利用すれば、運動中の心拍数を継続的に確認できます。ただし、数値が目標範囲に入っているからといって、体調不良を無視して運動を続けてよいわけではありません。
【健康効果】激しい運動を取り入れるメリットと厚生労働省の推奨量
激しい運動には、心肺機能や全身持久力を高めるなどの健康上のメリットがあります。一方、健康づくりにおいて高強度運動だけが正解というわけではありません。
高強度運動で期待できる健康効果厚生労働省の身体活動ガイドでは、身体活動量が多い人ほど、循環器病、2型糖尿病、一部のがん、うつ病、認知症などの発症リスクが低いことが報告されています。
身体活動を継続することで期待できる主な効果は次のとおりです。
- 心肺機能の向上:歩行やランニング、水泳などの有酸素性活動を続けることで全身持久力の維持・向上が期待できる。
- 血糖・脂質代謝の改善:筋肉の活動によって糖や脂質の代謝が促される。
- 体重管理:エネルギー消費量が増え、食事とのバランスを整えることで体重管理に役立つ。
- 筋力・骨の健康:適切な筋力トレーニングや身体への刺激によって、筋力や骨の健康維持に役立つ。
- メンタルヘルス:身体活動は気分や精神的な健康、認知機能にもよい影響をもたらす。
ただし、これらの健康効果は高強度運動だけに限定されるものではありません。中強度のウォーキングや日常的な身体活動でも健康上のメリットが期待できます。
健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023の推奨事項厚生労働省が公表した「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」は、健康日本21(第三次)における身体活動・運動分野の取り組みを支える指針です。2024年1月に取りまとめられた資料で、2026年現在も健康づくりの基本的な参考資料として利用されています。
成人に対する主な推奨事項は以下のとおりです。
- 3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行う。
- 歩行または同等以上の強度の身体活動を1日60分以上行う。
- 3メッツ以上の運動を週4メッツ・時以上行う。
- 息が弾み、汗をかく程度の運動を週60分以上行う。
- 筋力トレーニングを週2〜3日行う。
ここで重要なのは、成人向けの身体活動の推奨量が、必ずしも6メッツ以上の激しい運動を求めているわけではない点です。
例えば、週23メッツ・時の身体活動は、3メッツの活動を合計約7時間40分行うことでも達成できます。つまり、健康づくりの基本は、激しい運動を無理に増やすことではなく、日常的に身体を動かす時間を確保することです。
息が弾む運動を週60分行うことにも意味がある厚生労働省の成人向け推奨シートでは、息が弾むような運動を週60分実施している場合、疾病の発症リスクや死亡リスクが約10%低いことが示されています。
これは身体活動・運動と健康の関係を示すデータであり、すべての人が週60分の激しい運動をすれば必ずリスクが10%下がるという意味ではありません。
運動の効果は、強度だけでなく、継続時間や頻度、個人の健康状態にも左右されます。運動習慣がない人は、まず歩く時間を増やすことから始めても十分に意味があります。
【注意点】高強度運動のリスクとオーバーユースを防ぐ方法
激しい運動には健康上のメリットがある一方、体力や健康状態に合わない負荷をかけると、けがや体調不良につながる可能性があります。
特に運動習慣がない人が急にランニングや高負荷の筋力トレーニングを始める場合は、運動量の増やし方に注意が必要です。
オーバーユースとは?運動のやりすぎに注意オーバーユースとは、身体の特定の部位に繰り返し過度な負荷が加わることで、筋肉や腱、骨などに障害が生じる状態を指します。
例えば、ランニングの距離や頻度を急激に増やした場合、膝や足首、アキレス腱などに負担が集中することがあります。
また、筋力トレーニングで同じ部位ばかりを連日鍛え、十分な回復時間を確保しない場合も、疲労が蓄積しやすくなります。
オーバーユースを防ぐためには、次のような工夫が有効です。
- 運動の時間や距離、負荷を急激に増やさない。
- 同じ筋肉や関節に負荷を集中させない。
- 疲労や痛みが残っている場合は休養を取る。
- ウォーキングや水泳など、異なる種類の運動を組み合わせる。
- 睡眠や食事を確保し、身体の回復を優先する。
痛みを我慢して続けることは、トレーニング効果を高める方法ではありません。長引く痛みや繰り返す不調がある場合は、医療機関で相談することが大切です。
運動中に注意したい危険なサイン厚生労働省の「身体活動・運動を安全に行うためのポイント」では、運動中に以下のような異変を感じた場合、直ちに運動を中止するよう示しています。
- 胸の痛み
- 動悸
- めまいやふらつき
- 冷や汗
- いつもと違う強い疲れ
- 関節や筋肉の強い痛み
- 強い空腹感やふるえ
特に胸痛や強い息苦しさ、失神などがある場合は、運動を中止して速やかに医療機関へ相談してください。症状が強い場合や急激に悪化した場合は救急対応が必要です。
安全に激しい運動を続けるための準備と回復ある程度の強度の運動を行う場合は、運動前のウォームアップが欠かせません。軽い動きから始めて、徐々に身体を運動に慣らしていきます。
また、運動中は水分やナトリウムの補給、気温や湿度への配慮も必要です。特に暑い環境では、普段と同じ運動でも身体への負担が大きくなる可能性があります。
運動後は急に動きを止めず、5〜10分程度の軽い運動でクールダウンすることが厚生労働省の資料で紹介されています。
翌日の日常生活に支障が出るほど疲れが残る場合は、運動の強度や量が過剰になっている可能性があります。休養を取り、次回は負荷を下げるなどの調整を行いましょう。
高血圧や糖尿病、心臓・血管の病気などがある人、服薬中の人、長期間運動していなかった人が高強度運動を始める場合は、事前に医師へ相談すると安心です。
【疑問を解消】激しい運動とはに関するよくある質問(FAQ)
Q1:激しい運動とは何メッツ以上の運動ですか?
A1:厚生労働省の身体活動の強度分類では、6メッツ以上が高強度運動です。ゆっくりしたジョギングは6メッツ、ランニングは速度によって8メッツ以上になることもあります。
Q2:息が上がる運動はすべて激しい運動ですか?
A2:必ずしもそうではありません。3メッツ程度の身体活動でも少し息が上がることがあります。会話ができるか、息継ぎが必要になるかなどを確認し、運動の種類やメッツの目安と合わせて判断しましょう。
Q3:ウォーキングは激しい運動に入りますか?
A3:一般的なウォーキングは約3メッツで、中強度に分類されます。かなり速い歩行でも約5メッツ程度が目安です。通常の歩行は高強度運動には該当しませんが、健康づくりには十分役立ちます。
Q4:ランニングとジョギングはどちらも高強度ですか?
A4:速度や走り方によって異なります。厚生労働省の資料では、ゆっくりしたジョギングが6メッツ、ジョギングが7メッツ、毎分134mのランニングが8.3メッツです。いずれもこの例では高強度に分類されます。
Q5:激しい運動は毎日行ったほうがよいですか?
A5:毎日行う必要はありません。運動量や身体の回復状態に合わせて休養日を設けることが大切です。特に高強度の運動を始めたばかりの人は、無理に頻度を増やさず、少しずつ身体を慣らしましょう。
Q6:心拍数が高ければ激しい運動と判断できますか?
A6:心拍数は運動強度を判断する参考になりますが、それだけでは判断できません。年齢や体力、服薬、気温、体調などによって変わるため、呼吸や会話のしやすさ、本人の疲労感も確認しましょう。
Q7:激しい運動をしなくても健康効果は得られますか?
A7:得られます。厚生労働省は、3メッツ以上の身体活動を週23メッツ・時以上行うことなどを成人向けに推奨しています。ウォーキングや家事などの生活活動も健康づくりに役立つため、激しい運動を無理に取り入れる必要はありません。
激しい運動とは、厚生労働省の身体活動の強度分類において、6メッツ以上に該当する高強度運動を指します。ゆっくりしたジョギングやバスケットボール、一定の速度で行うサイクリング、水泳などが代表的な例です。
一方、運動強度は種類や速度によって変わり、同じ活動でも個人の体力によって感じる負担は異なります。メッツの数値だけでなく、呼吸の状態や会話のしやすさ、心拍数などを組み合わせて判断することが大切です。
また、健康づくりのために必ずしも激しい運動を行う必要はありません。厚生労働省のガイド2023では、日常的な身体活動を増やすことや、息が弾む程度の運動、筋力トレーニングを取り入れることが推奨されています。
大切なのは、運動の強度を競うことではなく、自分の体力や健康状態に合った負荷を選び、無理なく続けることです。十分な休養と適切な運動量を意識しながら、日々の身体活動を少しずつ充実させていきましょう。
主な参照資料: 厚生労働省「健康づくりのための身体活動・運動ガイド2023」、健康日本21アクション支援システム「e-ヘルスネット」、米国疾病予防管理センター(CDC)、米国心臓協会(AHA)。