野球の試合やプロ野球の個人成績を見ると、「打数」「打席」「打率」という数字が並んでいます。なかでも打数は、打者が何回ヒットを打てる機会に立ち、実際にどのような打撃結果を残したかを評価する基本的な記録です。しかし、打席数とは同じ意味ではなく、四球や死球、犠牲バントなどが発生すると、打席には数えられても打数には加算されない場合があります。
日本野球機構(NPB)の公認野球規則9.02、9.21、9.22に沿って整理すると、打数の基本的な意味だけでなく、打率・長打率・出塁率との関係も理解できます。2026年度のプロ野球公式記録も参考にしながら、打数の数え方、打撃妨害や走塁妨害の例外、規定打席との違いまで詳しく解説します。
【基本知識】打数とは?野球における意味とABの定義

打数とは、野球において打者が打撃を完了した回数を表す公式記録です。英語では「At Bat」と呼ばれ、成績表ではABと略されます。
ただし、打者が打席に立つたびに必ず打数が1増えるわけではありません。公認野球規則9.02では、打撃を完了した回数を打数として扱う一方、一定の条件に該当する場合は打数に算入しないと定めています。
打数は打撃結果を比較するための基準例えば、ある選手が10回打席に立ち、そのうち2本のヒットを打ったとします。
この10回すべてが打数として記録されるなら、打数は10、安打数は2です。打率は2÷10で、.200となります。
一方、10打席のうち3回が四球だった場合、残り7回が打数となります。安打数が2本なら、打率は2÷7で約.286です。
このように、打数は単純な打席数ではなく、打撃結果を比較するために対象を整理した数字です。
AB(At Bat)とは何かABは「At Bat」の略称で、日本語の打数に相当します。プロ野球の公式成績や海外の野球データでも一般的に使用される表記です。
野球の成績表では、次の略称を覚えておくと数字の意味を把握しやすくなります。
- AB:打数(At Bat)
- PA:打席数(Plate Appearances)
- H:安打数(Hits)
- BB:四球(Base on Balls)
- HBP:死球(Hit By Pitch)
- SH:犠牲バント(Sacrifice Hit)
- SF:犠牲フライ(Sacrifice Fly)
ABとPAを区別できるようになると、選手の打撃成績をより正確に読み取れます。
【徹底比較】打席数と打数の違いは?数え方を具体例で解説
打席数と打数の最大の違いは、打席数のほうが広い範囲の打撃機会を数えることです。
打席数は、打者が打撃を完了した機会を対象とし、打数に加えて四球、死球、犠牲バント、犠牲フライ、妨害や走塁妨害による出塁などを含みます。
一方、打数は公認野球規則で定められた例外を除き、打撃を完了した回数です。
打席数と打数の具体的な違い基本的な関係は次のようになります。
打席数=打数+四球+死球+犠牲バント+犠牲フライ+妨害・走塁妨害による出塁
この式は規定打席を算出する際の基本的な考え方です。妨害による出塁は、打数に含まれないだけでなく、打席数には含まれるという点が重要です。
例えば、次のような10回の打席を考えてみます。
- 安打:2回
- 凡打・三振:3回
- 四球:2回
- 死球:1回
- 犠牲バント:1回
- 犠牲フライ:1回
この場合、打席数は10ですが、打数は5です。安打数は2なので、打率は2÷5=.400となります。
四球や死球によって出塁した3回と、犠打・犠飛の2回は、打席数には含まれますが打数には加算されません。
打席数と打数はどちらを見ればよい?目的によって確認すべき数字は異なります。
- 安打を打つ能力を確認したい場合:打数と打率
- 打撃機会の総数を確認したい場合:打席数
- 出塁する能力を確認したい場合:出塁率
- 長打を生み出す能力を確認したい場合:長打率
打率だけで選手の打撃能力を判断すると、四球による出塁の多さや長打力を見落とす可能性があります。打数・打席数・出塁率を組み合わせて見ることが大切です。
【公認野球規則】打数に含まれないものは?四球・死球・犠打・妨害を整理
打数の数え方で特に間違えやすいのが、打者が一塁に出塁しても打数が増えないケースです。
日本野球機構が公開している「公認野球規則9.02」では、次の条件に該当する場合、打数には算入しないと定めています。
1. 四球(フォアボール)四球は、打者が規定のボール数を受けて一塁に進む記録です。
四球で出塁した場合、打席数には1を加えますが、打数には加えません。
四球は安打ではありませんが、打者がアウトにならずに出塁できる結果です。そのため、打率には直接影響しない一方、出塁率にはプラスの影響を与えます。
2. 死球(デッドボール)死球は、投球が打者の身体に当たり、規則上の条件を満たして一塁が与えられるプレーです。
四球と同様に、死球も打席数には含まれますが、打数には含まれません。
打率の計算対象にはならないものの、出塁率では四球とともに評価されます。
3. 犠牲バント(送りバント)犠牲バントは、主に走者を進塁させるために打者がバントを行い、犠打として公式記録に認められた場合に記録されます。
犠牲バントが記録された打席は、打席数には含まれますが打数には含まれません。
ただし、バントをすれば必ず犠打になるわけではありません。バントが安打になった場合や、犠打として記録されない結果になった場合は、通常の打数として扱われることがあります。
4. 犠牲フライ犠牲フライは、主にノーアウトまたは1アウトの場面で、打者が飛球を打ち、走者がタッチアップなどによって得点した場合に記録されるものです。
犠牲フライが記録された場合も、打席数には含まれますが打数には加算されません。
ただし、外野フライを打っただけで自動的に犠牲フライになるわけではありません。公式記録員による記録上の判断が必要です。
5. 打撃妨害・走塁妨害による出塁捕手のミットがバットに触れるなどして打撃妨害が成立し、打者に一塁が与えられた場合、原則として打数には含まれません。
走塁妨害についても、打者が妨害によって一塁を与えられた場合は、原則として打数に算入されません。
ただし、ここには公認野球規則9.02の重要な例外があります。
打者が打球を打ち、野手がすでに選択守備を終えた後にオブストラクションによって一塁を与えられた場合には、打数が記録されます。また、記録員がその打球を安打と判断した場合も、打数を取り消さず安打として記録します。
つまり、走塁妨害が発生したという事実だけで、必ず打数が消えるわけではありません。妨害が起きたタイミングと守備の状況が判断のポイントになります。
打数に含まれるもの・含まれないものの比較表代表的なプレーを一覧にすると、次のようになります。
| 打撃結果・プレー | 打席数 | 打数 | 公式記録上の扱い |
|---|---|---|---|
| 安打 | 1 | 1 | 安打として記録 |
| 凡打・三振 | 1 | 1 | 通常の打数として記録 |
| 失策・野手選択による出塁 | 1 | 1 | 原則として打数に算入 |
| 四球・死球 | 1 | 0 | 打数には算入しない |
| 犠牲バント・犠牲フライ | 1 | 0 | 公式記録で犠打・犠飛が成立した場合 |
| 打撃妨害・走塁妨害による一塁出塁 | 1 | 0 | 規則上の例外を除く |
| 野手の選択守備完了後のオブストラクション | 1 | 1 | 公認野球規則9.02の注記による例外 |
この表で押さえておきたいのは、打者が一塁に到達したかどうかだけでは打数を判断できないということです。安打、失策、野手選択、妨害など、出塁に至った理由によって公式記録が変わります。
【計算方法】打率・長打率・出塁率は打数からどう求める?
打数は、野球の代表的な打撃指標である打率と長打率の計算に使われます。また、出塁率の計算でも分母の一部として利用されます。
打率の計算式は「安打数÷打数」打率は、打数に対して何本の安打を打ったかを示す指標です。
打率=安打数÷打数
例えば、100打数の選手が30本の安打を記録した場合は、次のようになります。
30÷100=0.300
したがって、打率は.300(3割)です。
打率は通常、小数第4位を四捨五入して小数第3位まで表示します。日本野球機構の公式記録でも、この計算方法が採用されています。
なお、安打数は打数の内数です。三振や凡打は打数に加算されますが、安打にはなりません。失策による出塁も、通常は安打ではなく打数として記録されます。
長打率の計算方法と塁打数長打率は、打数1回あたりに何塁打を獲得したかを示す指標です。
長打率=塁打数÷打数
塁打数は、安打の種類によって次のように計算します。
- 単打:1塁打
- 二塁打:2塁打
- 三塁打:3塁打
- 本塁打:4塁打
例えば、50打数で次の安打を記録した選手がいるとします。
- 単打:8本
- 二塁打:4本
- 三塁打:1本
- 本塁打:2本
安打数は合計15本です。塁打数は、次の計算で求められます。
8×1+4×2+1×3+2×4=27塁打
したがって、長打率は27÷50=.540です。
長打率は割合という名称ですが、最大値が1.000というわけではありません。1打数で本塁打を打った場合、塁打数は4となるため、長打率は4.000になります。
出塁率と打率の違い打率と出塁率は、どちらも打者の攻撃力を評価する数字ですが、評価する内容が異なります。
打率は安打を打つ割合を示し、出塁率は安打・四球・死球によって出塁した割合を示します。
出塁率=(安打数+四球+死球)÷(打数+四球+死球+犠牲フライ)
例えば、次の成績を残した選手を考えます。
- 打数:50
- 安打:15
- 四球:5
- 死球:1
- 犠牲フライ:2
打率は15÷50=.300です。
一方、出塁率は(15+5+1)÷(50+5+1+2)となり、21÷58=約.362です。
この場合、打率は.300ですが、出塁率は.362になります。
四球や死球は打数に含まれない一方、出塁率の分子と分母には加算されます。そのため、安打数が同じでも四球を多く選ぶ打者は出塁率が高くなります。
犠打・犠牲フライが出塁率に与える影響出塁率では、犠牲バントと犠牲フライの扱いも異なります。
犠牲バントは出塁率の分子にも分母にも加算されません。そのため、犠牲バントだけでは出塁率は変わりません。
一方、犠牲フライは分母に加算されますが、分子には加算されません。そのため、犠牲フライを記録すると、ほかの条件が同じなら出塁率は低下します。
また、失策による出塁は安打として扱われないため、打数だけが増え、通常は打率と出塁率の両方にマイナスの影響を与えます。
なお、打撃妨害や走塁妨害による出塁は、出塁率の計算対象から除外されることが公認野球規則9.21に明記されています。
【2026年最新データ】実際のプロ野球成績で打数と打席数を確認
打数と打席数の違いは、実際のプロ野球選手の公式成績を見ると、さらに分かりやすくなります。
日本野球機構が公開している2026年度セントラル・リーグの個人打撃成績では、佐藤輝明選手が次の記録を残しています。
- 打席数:614
- 打数:539
- 安打数:165
- 打率:.306
- 四球:68
- 死球:2
- 犠打:0
- 犠飛:5
打席数614から打数539を引くと75です。
四球68、死球2、犠打0、犠飛5を合計すると、ちょうど75になります。
つまり、打席数と打数の差は、四球・死球・犠打・犠飛など、打数として扱われない記録によって生じることが、実際の公式成績からも確認できます。
打率についても、165安打÷539打数=約.3061となり、公式成績の.306と一致します。
このように、選手の成績表では打席数と打数を別々に確認することで、打撃機会の総数と安打を打つ割合を区別できます。
【規定打席との関係】打数が少なくても首位打者になれる?
打数と混同されやすい野球用語に「規定打席」があります。
規定打席とは、打率や長打率、出塁率などのタイトルを獲得するために必要となる打席数の基準です。
2026年のNPBにおける規定打席の計算式日本プロ野球では、基本的に次の計算式で規定打席を求めます。
規定打席=所属チームの試合数×3.1
2026年のNPBレギュラーシーズンは、各球団143試合制です。
143×3.1=443.3
端数を四捨五入すると、2026年の規定打席は443打席になります。
ここで重要なのは、規定打席が443打数ではなく443打席であることです。
四球や死球、犠牲バント、犠牲フライなども打席数に含まれるため、規定打席に到達していても打数は443より少なくなる場合があります。
規定打席に達しない選手は首位打者になれない?原則として、規定打席に達していない選手は首位打者などの打撃タイトルの対象になりません。
ただし、公認野球規則9.22には例外があります。
規定打席に不足している選手でも、不足分を打数として加算して打率などを計算した結果、規定打席到達者を上回る場合には、タイトル獲得が認められる仕組みです。
これは、少ない打席数で高い打率を残した選手が、打撃機会の少なさだけを理由に不当に有利にならないようにするための基準です。
成績表を見るときに確認したいポイント2026年度のNPB公式個人成績では、打席数・打数・安打数・打率・長打率・出塁率などがそれぞれ別の項目として掲載されています。
選手を比較する場合は、次のような見方がおすすめです。
- 打数:打撃結果が評価対象になった回数
- 打席数:打者として完了した打撃機会の総数
- 打率:安打を打つ能力
- 長打率:1打数あたりの塁打数
- 出塁率:安打・四球・死球による出塁能力
- 規定打席:タイトル獲得に必要な打席数の基準
特に打率だけでは評価しきれない選球眼や長打力を確認したい場合、出塁率と長打率も合わせて見ると、選手の特徴をより立体的に把握できます。
【打数とは】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:打数とは簡単にいうと何ですか?
A1:打数とは、打者が打撃を完了した回数のうち、公認野球規則で打数として認められる回数です。英語ではAt Batと呼ばれ、ABと表記されます。
Q2:打席数と打数はどちらが多くなりますか?
A2:通常は打席数のほうが多くなります。四球・死球・犠牲バント・犠牲フライ・妨害による出塁などは打席数には含まれますが、原則として打数には含まれないためです。
Q3:四球や死球は打数に入りますか?
A3:入りません。四球と死球は打席数には含まれますが、打数には加算されません。また、出塁率の計算では四球・死球ともに評価対象となります。
Q4:送りバントや犠牲フライは打数に入りますか?
A4:公式記録で犠牲バントまたは犠牲フライが成立した場合、打数には入りません。ただし、すべてのバントや外野フライが犠打・犠飛として記録されるわけではありません。
Q5:打撃妨害や走塁妨害は打数に入りますか?
A5:妨害や走塁妨害によって打者が一塁を与えられた場合、原則として打数には入りません。ただし、野手の選択守備が完了した後にオブストラクションで一塁を与えられた場合などには例外があります。
Q6:打率の計算に打席数を使わないのはなぜですか?
A6:打率は、安打を打つ機会に対してどの程度ヒットを記録したかを評価する指標だからです。四球や死球など、通常の打数として扱わない結果を分母から除くため、打席数ではなく打数を使います。
Q7:2026年の規定打席は何打席ですか?
A7:2026年のNPBは143試合制のため、143×3.1=443.3となり、四捨五入して443打席です。これは打数ではなく打席数の基準です。
打数とは、野球において打者が打撃を完了した回数を表す公式記録であり、打率や長打率を計算するための基本的な数字です。
打席数との大きな違いは、四球・死球・犠牲バント・犠牲フライ・妨害による出塁などが、原則として打数には含まれないことです。
特に覚えておきたい要点は次の4つです。
- 打数はAB(At Bat)と表記される。
- 打率は安打数÷打数で求める。
- 長打率は塁打数÷打数で求める。
- 規定打席は打数ではなく打席数を基準にする。
また、打撃妨害や走塁妨害による出塁には、公認野球規則9.02に定められた例外があり、プレーの状況によって公式記録が変わります。
プロ野球の成績を見る際は、打率だけでなく打数・打席数・出塁率・長打率を組み合わせて確認すると、打者の実力や特徴をより正確に理解できます。2026年の公式記録を読み解くうえでも、まずは打数と打席数の違いを確認しましょう。