聴神経腫瘍を早期に見つけるためには、耳鳴りの音や強さだけでなく、症状が続いている期間、左右差、聴力の変化を確認が必要です。
最初の受診先は、基本的に耳鼻咽喉科です。耳の診察や聴力検査によって難聴の有無を確認し、必要に応じてMRI検査ができる医療機関や脳神経外科などへ紹介してもらいます。
受診を検討したい症状次のような症状がある場合は、耳鼻咽喉科で相談することをおすすめします。
- 片耳だけの耳鳴りが繰り返し起こる、または長く続いている。
- 片側の耳だけ聞こえにくくなった。
- 耳鳴りと同じ側に耳閉感がある。
- 左右の耳で電話や会話の聞き取りやすさが違う。
- 片側の難聴に加えて、ふらつきや平衡感覚の異常がある。
- 聴力検査で左右差を指摘された。
特に、片側の耳鳴りと片側性難聴が同時にある場合は、単なる耳鳴りとして長期間放置しないことが大切です。
症状別の受診タイミング| 症状・状況 | 受診の目安 | 確認したいこと |
|---|---|---|
| 片側の耳鳴りが続く | 早めに耳鼻咽喉科へ | 聴力の左右差 |
| 片耳が徐々に聞こえにくい | 早めに受診 | 感音難聴や腫瘍の可能性 |
| 突然、片耳が聞こえにくくなった | 当日中に医療機関へ連絡 | 突発性難聴などの緊急性 |
| 顔の麻痺や急な歩行障害がある | 救急受診 | 脳卒中などの緊急疾患 |
| 脳ドックで腫瘍の疑いを指摘された | 専門医に相談 | 造影MRIなどによる精査 |
厚生労働省が紹介する突発性難聴の受診案内でも、突然の聴力低下は早期受診が必要とされています。突然の聞こえの変化は、数日間様子を見るのではなく、速やかに耳鼻咽喉科へ相談してください。
耳鳴りの原因を見分けるために医師へ伝えたい5つの情報診察時には、次の情報を整理しておくと、原因を調べるうえで役立ちます。
- 左右:右耳か左耳か、両耳なのか。
- 発症時期:いつから耳鳴りが始まったのか。
- 経過:突然始まったのか、徐々に強くなったのか。
- 音の性質:キーン、ピー、ジー、ボーなど、どのような音か。脈拍と連動するか。
- 併発症状:難聴、耳閉感、めまい、顔のしびれなどがあるか。
耳鳴りの原因は聴神経腫瘍だけではありません。加齢性難聴、騒音による聴力障害、メニエール病、突発性難聴、中耳の病気、薬剤の影響など、さまざまな原因が考えられます。
また、脈拍に合わせて聞こえる拍動性耳鳴りは、血管に関係する疾患なども考慮する必要があります。音の種類だけで自己判断せず、発症の仕方と聴力の状態を含めて診断を受けることが大切です。
聴神経腫瘍と診断されても、すべての人が直ちに手術や放射線治療を受けるわけではありません。腫瘍の大きさや成長速度、聴力の状態、年齢、症状などを総合的に評価して方針が決まります。
経過観察:小さな腫瘍では定期的にMRIを撮影腫瘍が小さく、症状が軽い場合には、定期的なMRIで大きさの変化を確認する経過観察が選ばれることがあります。
聴神経腫瘍は、ゆっくり成長するものや、長期間ほとんど大きさが変わらないものもあります。そのため、画像検査で増大の有無を確認しながら治療の必要性を判断します。
手術:腫瘍を摘出して周囲への圧迫を軽減腫瘍が大きくなり、脳幹への圧迫や神経症状が問題になる場合には、手術による摘出が検討されます。
手術では、腫瘍を取り除くことだけでなく、顔面神経や残っている聴力をできる限り温存することも重要です。腫瘍の位置や大きさによって手術方法が異なります。
放射線治療:腫瘍の増大を抑える選択肢ガンマナイフなどの定位放射線治療は、腫瘍の増大を抑える目的で検討される治療法です。手術とは異なり、腫瘍を直接摘出するものではありません。
ただし、治療後すぐに腫瘍が消失するわけではなく、長期的な画像検査による経過観察が必要です。聴力への影響なども含め、適応は専門医が判断します。
日本聴神経腫瘍研究会の診療指針でも、腫瘍の増大や症状、聴力の状態などに応じた治療選択が示されています。治療方針は一律ではなく、経過観察、手術、放射線治療を比較して決定します。
【よくある質問】聴神経腫瘍による耳鳴りの特徴に関するFAQ

Q1:聴神経腫瘍による耳鳴りはキーンという高い音ですか?
A1:必ずしもそうではありません。キーン、ピー、ジー、ボーなど、耳鳴りの音には個人差があります。高音だから聴神経腫瘍、低音だから別の病気という判別はできません。音の種類より、片側に続くか、聴力低下を伴うかを確認することが大切です。
Q2:聴神経腫瘍は耳鳴りだけで発見されることがありますか?
A2:あります。初期には耳鳴りだけが気になる場合や、難聴を自覚していない場合もあります。聴力検査やMRIによって発見されるケースもあるため、片側の耳鳴りが続く場合は耳鼻咽喉科で相談してください。
Q3:聴神経腫瘍による耳鳴りは両耳に起こりますか?
A3:一般的な孤発性の聴神経腫瘍は片側に発生するため、耳鳴りや難聴も片側に現れることが多いです。ただし、両側に腫瘍が発生する遺伝性疾患もあります。両耳の耳鳴りだけで聴神経腫瘍を判断することはできません。
Q4:聴神経腫瘍があってもめまいが出ないことはありますか?
A4:あります。前庭神経の機能低下がゆっくり進むと、脳や反対側の前庭器官が不足した機能を補うため、強いめまいを感じないことがあります。めまいがないことは、腫瘍を否定する根拠にはなりません。
Q5:聴神経腫瘍は聴力検査だけで診断できますか?
A5:聴力検査だけでは確定できません。純音聴力検査や語音聴力検査で聴覚障害の特徴を調べ、必要に応じて平衡機能検査や造影MRIを行います。腫瘍の有無や位置を確認するためには画像検査が重要です。
Q6:片耳の耳鳴りが何日続いたら病院に行くべきですか?
A6:何日続けば安全という一律の基準はありません。片側の耳鳴りが繰り返す、長引く、難聴や耳閉感を伴う場合は早めに耳鼻咽喉科を受診してください。突然聞こえにくくなった場合は、日数を待たず当日中に医療機関へ相談することが大切です。
聴神経腫瘍による耳鳴りの特徴として、特に注目したいのは片側に続く耳鳴りと、同じ側の聴力低下です。キーン、ピー、ジーといった音の違いだけで腫瘍を見分けることはできません。
初期症状には片側性難聴、耳鳴り、耳閉感などがあり、ふらつきやめまいを伴うこともあります。一方で、めまいがほとんどない場合や、自覚症状が乏しい場合もあるため、症状の数だけで判断することはできません。
診断では、純音聴力検査や語音聴力検査などで左右の聞こえ方を調べ、必要に応じて平衡機能検査と造影MRIを組み合わせます。突発性難聴のように急激な聴力低下を起こす疾患との区別も重要です。
【プロの結論】見逃さないための3つの判断基準第一に、片側だけに症状が続いていないか。両耳ではなく、いつも同じ側の耳に耳鳴りや聞こえにくさが現れる場合は、聴力検査を受ける価値があります。
第二に、耳鳴りと聴力低下が同時に起きていないか。耳鳴りの音の高さや大きさよりも、左右の聴力差や時間の経過に注目してください。
第三に、必要な検査につながっているか。耳の診察だけで原因が分からない場合は、聴力検査の結果を踏まえ、専門医にMRI検査の必要性を相談することが大切です。
片耳の耳鳴りが続いているからといって、聴神経腫瘍と決まったわけではありません。しかし、良性腫瘍であっても、発見が遅れれば周囲の神経に影響する可能性があります。
耳鳴りを単なる疲れやストレスのせいと決めつけず、片側性、聴力の左右差、発症時期という3つの視点から自分の症状を確認すること。それが、必要な検査と適切な診療につながる第一歩です。
参考資料:日本聴神経腫瘍研究会「患者さんのためのQ&A」「聴神経腫瘍の診療指針」、厚生労働省「突発性難聴について」、大阪府済生会中津病院、京都大学医学部附属病院、関西医科大学附属病院、慶應義塾大学病院の疾患・診療解説、日本耳鼻咽喉科頭頸部外科学会関連の耳鳴り・難聴診断資料。