「珍走団(ちんそうだん)」とは、一般に暴走族を揶揄(やゆ)して呼ぶインターネット発祥の俗称である。「暴走族」という呼び名に含まれる威圧感や格好よさを否定し、「珍」という文字を使って、その迷惑行為や滑稽さを強調した表現だ。正式な警察用語や法律上の分類ではなく、独立した犯罪組織の名称でもない。
2026年現在、暴走族を取り巻く状況は大きく変化している。内閣府が公表した「令和8年交通安全白書」によると、2025年末時点で警察が把握している暴走族の構成員は5,485人。一方、旧車會についても5,392人が把握されており、集団走行や騒音をめぐる問題は現在も続いている。構成員数が減少する一方で、検挙人員が増加している点も見逃せない。
【基本知識】珍走団とは?意味と語源、暴走族との違いを解説

珍走団とは、バイクや自動車で集団走行し、騒音や交通妨害などを引き起こす暴走族を、皮肉や揶揄を込めて表現する言葉である。
「暴走」の「暴」を「珍」に置き換えることで、本人たちが誇示する勇ましさや反社会的なイメージを崩し、迷惑行為をする集団として捉え直す意味がある。
この言葉が特徴的なのは、単に集団の行動を説明するだけでなく、暴走族の社会的なイメージそのものに対する批判を含んでいる点だ。
暴走族という言葉には、かつて漫画や映画などで描かれた独特のファッション、仲間意識、上下関係といった文化的なイメージも付随していた。珍走団という表現は、そうしたイメージを格好いいものとして扱わず、周囲に迷惑をかける行為として捉える視点から広まった。
珍走団の語源と広まった時期珍走団は、インターネット掲示板「2ちゃんねる」などで使われたネットスラングとして知られている。暴走族という名称が集団に威圧感や格好よさを与えてしまうことへの反発から生まれた言い換え表現である。
2003年4月には、福岡県警西署と福岡市内の自治体が連携して制作した暴走族追放ポスターに「最近は珍走団って言うらしいよ」という表現が採用された。
当時の報道によれば、ポスター制作に当たっては暴走行為で逮捕されたメンバーへの聞き取りも実施され、本人たちが言われたくない言葉を啓発活動に取り入れたという。
つまり、珍走団は単なるネット上の悪口にとどまらず、2000年代初頭には警察の暴走族追放運動でも活用された表現だった。
珍走団と暴走族は何が違う?両者の違いは、基本的に呼び方と表現上のニュアンスにある。
暴走族は社会問題や交通犯罪を説明する際に使われる一般的な名称であり、警察庁や内閣府の統計でも使用される。一方、珍走団は暴走族を否定的・風刺的に呼ぶ俗称である。
珍走団という名称を持つ独立した組織が存在するわけではなく、警察が珍走団という名称で独自の構成員数を集計しているわけでもない。
このため、ニュースや統計を調べる場合には「珍走団」だけでなく「暴走族」「共同危険行為」「旧車會」といった正式な関連用語を使う必要がある。
【歴史と由来】暴走族はいつ誕生した?1982年のピークから現在まで
1950〜60年代:カミナリ族の登場暴走族の歴史をたどると、戦後の高度経済成長期に登場した「カミナリ族」に行き着く。
TBS NEWS DIGのアーカイブ特集によれば、1950〜60年代には、オートバイで大きなエンジン音を響かせながら走る若者のグループが現れ、カミナリ族と呼ばれるようになった。
当時のオートバイは現在よりも高価であり、バイクを所有して集団走行を楽しむ若者は限られていた。こうした集団が、後の暴走族文化につながる初期の存在とされている。
1970年代:集団で走る暴走族文化が拡大1970年代になると、オートバイが一般の若者にも手が届く乗り物となり、不良少年たちがグループを形成して集団走行するようになった。
単純に速さを競うだけではなく、仲間との結束や自己主張、目立つことを目的とした走行も増加した。蛇行運転や大音量の排気音によって、一般車両や地域住民に迷惑を及ぼす問題も深刻になった。
1980年代:構成員数が歴史的ピークに到達1980年代前半は、暴走族文化が大きく拡大した時期である。
TBS NEWS DIGが警察庁の資料を基に紹介した数字によると、暴走族の構成員数は1982年に約4万2,000人に達した。
この時代には、小規模なグループ同士が地域的な連合を形成する動きも見られた。独特の当て字を使った特攻服、派手な車両改造、初日の出暴走など、現在でも暴走族のイメージとして語られる文化の多くが、この時期に定着していった。
一方、警察による取締りも強化された。道路交通法第68条の共同危険行為等の禁止は1978年の法改正で設けられ、集団による危険な走行を規制する法的な枠組みが整えられた。
1990年代以降:社会的な批判とともに縮小1989年には、神奈川県の片瀬江ノ島で、暴走族に注意しようとした新聞社の論説委員が暴行を受けて死亡する事件が発生した。
TBSの歴史特集では、この事件が全国的な暴走族撲滅運動につながった要因の一つとして紹介されている。
警察による取締りが強化され、集団走行だけでなく、車両自体の整備不良や不正改造も問題視されるようになった。
同時に、若者文化の変化によって暴走族を格好いいと捉える風潮も弱まった。1990年代後半からは活動が次第に下火となり、構成員数は長期的な減少傾向に入っている。
【2026年最新統計】暴走族の構成員数・グループ数と旧車會の実態
令和8年交通安全白書が示す2025年末の実態2026年に公表された「令和8年交通安全白書」は、暴走族問題の現状を把握するうえで重要な資料だ。
同白書の「道路交通秩序の維持」に掲載された警察庁の統計によると、2025年末時点で全国の警察が把握している暴走族は、153グループ・5,485人だった。
2024年末の5,880人と比較すると395人減少している。一方、グループ数は144から153に増えている。
構成員の総数が減っているにもかかわらずグループ数が増えていることから、単純に組織数まで一貫して減少しているわけではないことが分かる。
暴走族の構成員数とグループ数の推移令和8年交通安全白書に掲載された過去5年間の統計は次のとおりだ。
| 年末時点 | 暴走族グループ数 | 暴走族構成員数 | 旧車會グループ数 | 旧車會人員 |
|---|---|---|---|---|
| 2021年(令和3年) | 124 | 5,838人 | 499 | 5,648人 |
| 2022年(令和4年) | 121 | 5,770人 | 491 | 5,888人 |
| 2023年(令和5年) | 137 | 5,850人 | 425 | 5,351人 |
| 2024年(令和6年) | 144 | 5,880人 | 391 | 5,194人 |
| 2025年(令和7年) | 153 | 5,485人 | 399 | 5,392人 |
※警察庁資料を基にした内閣府「令和8年交通安全白書」の数値。旧車會の人員は、違法行為を敢行する者として警察が把握した人数。
旧車會とは?暴走族OBとの関係旧車會とは、主として改造した旧型の自動車やオートバイ、原動機付自転車などを運転する人々のグループを指す。
暴走族との関係で注目されるのは、元暴走族構成員などが中心となって結成された集団も存在することだ。
ただし、旧車會に所属していることだけで、直ちに暴走族や違法行為者と判断されるわけではない。旧型車両を愛好し、交通ルールを守って活動する人々もいる。
千葉県警察は、旧車會員のうち、排気騒音や走行形態によって一般通行車両や周辺住民に多大な迷惑や不安を与える違法行為を行い、暴走族には該当しない者を「違法行為を敢行する旧車會」として説明している。
つまり、旧車會と暴走族の境界を決めるのは、単なる年齢や車両の古さではなく、集団の性質や具体的な行動である。
2025年の検挙人員は合計8,908人構成員数と並んで注目したいのが、実際の取締り状況だ。
令和8年交通安全白書によると、2025年中に道路交通法および道路運送車両法違反で検挙された人員は、暴走族が7,021人、旧車會が1,887人。合計8,908人となった。
2024年の合計7,371人と比較すると1,537人増加している。
特に旧車會の検挙人員は、2024年の1,273人から2025年には1,887人へ増加した。
ここで注意したいのは、検挙人員と年末時点の構成員数は別の統計だということだ。前者は1年間の取締り実績、後者は特定時点で警察が把握している勢力を示している。両者を同じ母数として扱うことはできない。
【現在の活動と問題点】暴走族の騒音・危険走行・不正改造の実態
暴走族の活動形態は大きく2種類警察が説明する暴走族の活動形態は、主に共同危険型と違法競走型に分けられる。
共同危険型は、複数のオートバイや自動車で道路を走行し、蛇行運転や信号無視、道路を塞ぐような走行などを繰り返す集団だ。爆音を伴うことも多く、一般車両や歩行者に危険を及ぼす。
違法競走型は、ドリフト族やゼロヨン族など、一定の場所で運転技術や走行タイムを競う集団を指す。
いずれも、道路交通の安全を損なう行為が問題となる。単にオートバイや自動車を趣味として楽しむこととは明確に区別される。
暴走族の騒音問題は現在も続いている暴走族問題のなかでも、地域住民への影響が大きいのが騒音だ。
夜間や早朝に大きなエンジン音や排気音を発生させる行為は、睡眠を妨げるだけでなく、乳幼児や高齢者、体調不良者などにも負担を与える。
国土交通省は、消音器の切断や取り外し、基準に適合しないマフラーの装着などを不正改造の具体例として挙げている。こうした改造は排気音を増大させ、周囲の生活環境を損なう原因となる。
また、騒音だけでなく、急加速や蛇行、信号無視などの走行行為は交通事故につながる危険性がある。
重要なのは、騒音問題を単なる迷惑行為として片付けず、道路利用者の安全と地域住民の生活環境に関わる交通秩序の問題として捉えることだ。
共同危険行為等禁止違反とは?暴走族の集団走行を取り締まる代表的な法律が、道路交通法第68条の「共同危険行為等の禁止」である。
この条文では、2人以上の自動車または原動機付自転車の運転者が、2台以上の車両を連ねて通行させたり並進させたりする場合に、共同して著しく交通の危険を生じさせる行為や、著しく他人に迷惑を及ぼす行為を禁止している。
違反した場合の刑事罰は、道路交通法第117条の3に基づき、2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。加えて、違反点数25点が付され、運転免許の取消しにつながる場合がある。
暴走族の取締りでは、現場での違反だけでなく、集団としての行動や個々の関与状況なども捜査の対象となる。
不正改造バイクの取り締まりと罰則不正改造車両については、道路交通法だけでなく、道路運送車両法による規制も適用される。
国土交通省によれば、保安基準に適合しなくなる改造を実施した場合、道路運送車両法第99条の2および第108条に基づき、6か月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金の対象となる。
不正改造車の使用者に対しては、必要な整備を命じる制度もある。整備命令に従わない場合には、車両の使用停止や罰金などの措置が適用される。
つまり、暴走行為に直接参加した運転者だけでなく、車両の改造や使用に関わる問題についても法的な責任が問われる仕組みになっている。
【警察庁の対策】2026年現在の暴走族取り締まりと減少した理由
警察は検挙だけでなく組織の解体を重視令和8年交通安全白書では、暴走族対策として複数の取り組みが紹介されている。
主な対策は、共同危険行為や騒音関係違反、不正改造車両の取締りである。加えて、暴走行為に使われた車両の押収などを通じて、集団と車両を切り離す取り組みも行われている。
警察庁が2026年に示した交通警察活動の方針でも、不正改造業者への取締り強化や、暴走族グループの解体、構成員の離脱促進、再組織化の防止が掲げられている。
また、旧車會についても、暴走族風に改造した旧型オートバイなどによる大規模な集団走行を把握し、関係機関と連携して対応する方針が示されている。
暴走族が減少した主な理由1982年に約4万2,000人だった構成員数が、2025年末には5,485人まで減少した背景には、複数の要因がある。
1. 警察による継続的な取締り
共同危険行為等の禁止をはじめとする法令の運用が進み、集団暴走への対応が強化された。不正改造車両の取締りや車両の押収も、暴走行為を続けにくくする要因となっている。
2. 社会的な評価の変化
かつては一部の若者文化の中で、暴走族のファッションや集団行動が格好いいものとして扱われた。しかし、騒音や交通妨害、暴力事件などへの批判が強まり、社会的な評価は変化した。
「珍走団」という呼び方が広まったことも、暴走族を英雄視しない風潮を象徴している。
3. 若者文化や娯楽の多様化
若者の趣味や仲間づくりの方法が多様化し、暴走族への加入が以前ほど魅力的な選択肢ではなくなったことも背景として考えられる。
ただし、構成員数の減少を一つの理由だけで説明することはできない。警察の取締り、社会意識、若者を取り巻く環境の変化などが重なった結果と捉えるのが適切だ。
人数が減っても問題がなくなったわけではない2025年末の暴走族構成員数は前年より395人減少したが、グループ数は9増えている。検挙人員も増加しており、活動が完全に消滅したとはいえない。
また、旧車會の検挙人員は2025年に1,887人となっており、集団走行や排気騒音をめぐる問題は引き続き警察の対応対象となっている。
暴走族対策は、構成員の総数だけで評価するのではなく、危険走行の発生状況、住民への迷惑、検挙状況、グループの再結成などを総合的に見る必要がある。
【プロの結論】珍走団・暴走族・旧車會を正しく見分ける判断基準
珍走団という言葉を理解するうえで、最も大切なのは、俗称と実際の社会問題を混同しないことだ。
珍走団は暴走族を揶揄する言葉であり、法律上の分類ではない。暴走族は道路交通の危険や迷惑行為を伴う集団を指す一般的な名称で、旧車會は旧型車両を愛好するグループを含む、より広い概念である。
特に、旧車會に所属する人すべてを違法行為者とみなすのは正確ではない。車両の外観や年式だけで判断するのではなく、実際の走行行為や法令違反の有無によって評価する必要がある。
また、2026年の最新統計からは、暴走族の構成員数が長期的に減少している一方で、グループ数や検挙人員には別の動きがあることが分かる。
この数字の違いは、暴走族問題を単純な人数の増減だけで評価できないことを示している。
今後注目すべきなのは、暴走族の勢力そのものだけでなく、旧車會を含む集団走行の実態、車両の不正改造、地域住民への騒音被害、そして若者が非行集団に加入する背景への対応だ。
警察による取締りと、家庭・学校・地域社会が連携した離脱支援の両方が機能することで、再組織化を防ぎ、交通安全と地域の生活環境を守ることにつながる。
【珍走団に関するよくある質問(FAQ)】
Q1:珍走団とはどういう意味ですか?
A1:暴走族を揶揄するネットスラングです。「暴走」という言葉を「珍走」に置き換え、集団の迷惑行為や格好悪さを皮肉る意味があります。正式な警察用語ではありません。
Q2:珍走団と暴走族は同じですか?
A2:基本的には同じ対象を指します。ただし、暴走族は警察や行政の資料でも使われる名称であり、珍走団は否定的なニュアンスを含む俗称です。
Q3:珍走団と旧車會の違いは何ですか?
A3:旧車會は旧型の自動車やオートバイを愛好するグループを指します。暴走族OBが中心となった集団もありますが、旧車會のすべてが違法行為を行うわけではありません。
Q4:2026年現在、暴走族は何人いますか?
A4:令和8年交通安全白書によると、2025年末時点で警察が把握している暴走族の構成員は5,485人、グループ数は153です。なお、これは2026年中の人数ではなく、2025年末時点の統計です。
Q5:暴走族は減少しているのですか?
A5:長期的には減少傾向です。1982年には約4万2,000人だった構成員数が、2025年末には5,485人となっています。ただし、グループ数や検挙人員は年によって変動しています。
Q6:暴走族の集団走行にはどのような罰則がありますか?
A6:道路交通法第68条の共同危険行為等禁止違反に該当した場合、2年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金が科されます。違反点数25点による免許取消しの対象にもなります。
Q7:旧車會に所属しているだけで違法になりますか?
A7:旧車會に所属していることだけで直ちに違法となるわけではありません。具体的な走行行為や車両の状態に応じて、道路交通法や道路運送車両法などが適用されます。
珍走団とは、暴走族を皮肉った俗称であり、正式な組織名や法律用語ではない。2000年代初頭にはインターネット上だけでなく、警察の暴走族追放運動でも使用されるようになった。
暴走族は1982年に約4万2,000人というピークを迎えた後、警察の取締り強化や社会的評価の変化などを背景に長期的な減少傾向をたどっている。
2026年に公表された令和8年交通安全白書では、2025年末の暴走族構成員数は5,485人。旧車會についても違法行為を行う者として5,392人が把握され、2025年の暴走族・旧車會の検挙人員は合計8,908人だった。
人数が減ったからといって、騒音や危険走行、不正改造の問題が解決したわけではない。今後も警察の取締りと地域社会による予防・離脱支援が重要になる。
珍走団、暴走族、旧車會という言葉を正しく使い分け、見た目やイメージではなく、実際の行為と公的統計に基づいて現状を理解することが大切だ。
主な根拠資料
- 内閣府「令和8年交通安全白書」
- 警察庁「令和8年交通警察運営方針」
- 千葉県警察「暴走族と旧車會」
- 大阪府警察「厳しい罰則」
- 国土交通省「不正改造に対する罰則等」
- TBS NEWS DIG「昭和暴走族盛衰記」
- Response「最近は珍走団って言うらしいよ」(2003年4月22日)