映画のクライマックスを飾るのは、架空の未来からやってきた高校生マーティが、1955年のダンスパーティーで突然ギターを手にする場面だ。
マーティが演奏するのは、ロックンロールの名曲「Johnny B. Goode」。演奏の途中から、チャック・ベリーの時代のロックンロールに、ジミ・ヘンドリックスやエディ・ヴァン・ヘイレンを思わせる1980年代のギタープレイが加わっていく。
この場面でマーティが構えているのが、GibsonのES-345 TDC(Cherry Red)である。
Gibson ES-345とはどんなギターなのか1959年に登場したセミアコースティックギター。ES-335をベースに、装飾や電子回路などを充実させた上位モデルとして設計された。
メーカー:Gibson/登場:1959年
ES-345の魅力は、セミアコースティックならではの豊かな響きと、ハムバッカーピックアップによる太く滑らかな音色の両立にある。
代表的な特徴は次のとおり。
- セミホロウボディ:内部にセンターブロックを持つ構造で、豊かな共鳴と音量を両立。
- ハムバッカーピックアップ:ノイズを抑え、厚みのあるサウンドを生み出す。
- Varitoneスイッチ:音色を切り替えるための回路。クラシックなES-345では6段階の設定を備える。
- スプリット・パラレログラム・インレイ:指板に配置された平行四辺形の装飾。
- ゴールドハードウェア:ブリッジや各種金属パーツに高級感のある仕上げを採用。
- Bigsbyトレモロ:アーム操作による音程変化を可能にする。
ES-345は、シンプルなES-335と高級仕様のES-355の中間に位置するモデルとして誕生した。Gibsonの製品史でも独自のポジションを持つギターだ。
マイケル・J・フォックスがギターを弾くシーンの秘密この場面が印象的なのは、単にギターを演奏しているからではない。
マイケル・J・フォックスは、劇中の演奏にジミ・ヘンドリックス、ピート・タウンゼント、エディ・ヴァン・ヘイレンの特徴的な動きを取り入れることを提案した。
具体的には、
- ジミ・ヘンドリックスを思わせる頭の後ろでの演奏
- ピート・タウンゼントのウインドミル奏法
- エディ・ヴァン・ヘイレンの両手タッピング
といった要素だ。
これらを映画の振り付けやカメラワークと組み合わせることで、マーティが未来の音楽を1955年に持ち込んだという設定に説得力を与えている。
Gibsonの公式発表で紹介されたフォックス本人の説明によれば、彼はこの場面を自分が好きなギタリストたちへのオマージュとして構想していた。
このシーンはジョン・メイヤーやコールドプレイのクリス・マーティンにも影響を与えたと、Gibsonは紹介している。
【1955年なのに1959年製?】ES-345と年代設定が矛盾する理由

『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のギターを調べると、必ず話題になるのが年代の矛盾だ。
映画のダンスパーティーは1955年に設定されている。しかし、Gibson ES-345が正式に登場したのは1959年。
つまり、劇中のマーティは、1955年にはまだ存在していなかったギターを演奏している。
これは単なるファンの推測ではない。Gibson自身も公式製品紹介で、1955年の舞台に1959年登場のES-345が使われたことを認めている。
なぜ制作スタッフはES-345を選んだのかこの謎を解く重要人物が、ロサンゼルスの老舗ギターショップ「Norm's Rare Guitars」の創業者、ノーマン・ハリスだ。
Reverbが2015年に掲載したハリスの証言によると、1984年、映画の小道具担当者から1955年を舞台にした作品で使用するギターの相談を受けた。
当初ハリスが提案したのは、時代考証にも合うGibson ES-5 Switchmasterだった。
ところが、制作側の希望が変わる。
求められたのは、赤いボディとビブラート機構を備えた、より派手なギターだった。
ハリスは1955年には存在しない仕様になると説明し、代わりに当時のStratocasterやGretschのギターなども提案したという。
最終的に制作側が選んだのが、店にあったチェリーレッドのES-345だった。
ハリスは当時、ES-345が1955年には存在しないことを制作側に伝えていた。これに対し、制作側は芸術的な自由を優先する判断をしたと証言している。
年代矛盾は映画の失敗だったのかここで押さえたいのは、映画におけるギターの役割だ。
もし制作側が1955年当時の正確なギターを選んでいたら、現代の観客が見て強い印象を受ける赤いギターのビジュアルは違ったものになっていたかもしれない。
実際、ES-345の大きなボディ、ゴールドパーツ、Bigsbyの存在感は、マーティの未来的な演奏と非常に相性がよかった。
時代考証の正確さよりも、画面上のインパクトとストーリー上の効果を優先した結果だ。
しかも、タイムトラベルを扱う映画であることを考えれば、1955年に未来のギターが登場するという事実そのものが、作品のユーモアにもつながっている。
年代の矛盾は事実だが、制作側が知らずに犯した単純なミスではない。 ここが要点だ。
【録音の秘密】ジョニー・B.グッドを実際に演奏したのはティム・メイ
もう一つ、ギターファンが驚く事実がある。
劇中ではマイケル・J・フォックスがGibson ES-345を演奏しているが、映画のサウンドトラックで実際のギター演奏を担当したのは別の人物だった。
その人物が、アメリカのセッションギタリスト、ティム・メイ(Tim May)である。
2023年10月、音楽専門メディアMusicRadarが、メイへのインタビューを紹介したことで、この舞台裏が改めて注目された。
録音に使われたのはValley Artsのストラトタイプ
Valley Arts S-style
ティム・メイが録音に使用したカスタムギター。ストラトキャスター系の形状を持ち、Floyd Roseを搭載していた。
メイが使用したのは、Valley Arts製のSスタイルギター。マイク・マクガイアが製作したカスタムモデルで、ローズウッドボディを採用していた。
このギターを選んだ理由は、演奏の内容にある。
「Johnny B. Goode」のシーンでは、チャック・ベリー風の1950年代ロックンロールから、ヴァン・ヘイレンを思わせる1980年代のテクニカルな演奏へと移行する。
その中にはハンマリングオンやタッピングなどの奏法が含まれていた。
メイはインタビューで、Floyd Roseが必要だったことを選択理由として説明している。
つまり、画面に映るギターと、実際の演奏音を録音したギターは別物だったのだ。
なぜES-345では録音しなかったのかここはギターの構造を理解すると分かりやすい。
ES-345はハムバッカーを搭載したセミアコースティックギターで、太く滑らかな音が得意だ。
一方、Valley ArtsのSスタイルは、ストラトキャスター系の操作性とFloyd Roseによる激しいアーミング、タッピングなどに対応できる。
映画の演奏は単なる1950年代のロックンロールではない。
後半に向けて1980年代のハードロック的な要素が強くなるため、メイが自分の使い慣れたギターを選んだことには合理性がある。
ここで整理しておきたいのが、3つの役割だ。
- マーティ・マクフライ:劇中の演奏者。
- マイケル・J・フォックス:マーティを演じ、ギター演奏の動きを表現した俳優。
- ティム・メイ:録音されたギター演奏を担当したセッションギタリスト。
この3者を混同すると、「フォックス本人がすべての音を録音した」「ES-345でジョニー・B.グッドを録音した」という誤解につながる。
画面上のES-345は映画の象徴であり、録音に使われたValley Artsは演奏を成立させた実用的な選択だった。
【行方不明事件】マーティのES-345はどこへ消えた?Lost to the Futureの捜索
映画の中であれほど印象的な存在だったギターは、現実の世界では長年行方不明になっている。
2025年、映画公開40周年を前にGibsonが世界規模の捜索キャンペーンを開始した。
キャンペーンの名称はLost to the Future。
映画の世界観と現実の未解決事件が結びついた、異例のプロジェクトだ。
オリジナルギターが消えた経緯オリジナルのチェリーレッドES-345は、Norm's Rare Guitarsから映画制作側に貸し出されたものだった。
映画の撮影終了後、続編の準備が進められた際、制作スタッフは再びこのギターを探した。
ところが、ギターは見つからなかった。
1989年公開の『バック・トゥ・ザ・フューチャー PART2』の制作時にも、オリジナルの所在は分からなくなっていたのである。
Gibsonが2025年6月3日に発表した捜索キャンペーンでは、マイケル・J・フォックス、クリストファー・ロイド、リー・トンプソン、ハリー・ウォーターズ・Jr.、ヒューイ・ルイスらが協力を呼びかけた。
Lost to the Futureの重要な経緯以下に、ギターの貸し出しから2026年の最新状況までを整理する。
出典:Gibson公式発表、Guitar World、Guitar Playerの報道をもとに整理。
2025年9月、Gibsonのマーク・アグネシは、続編で使用されたES-345が発見されたと報告した。
しかも、Norm's Rare Guitarsから現在の所有者に至るまでの所有履歴も確認できたという。
ただし、これは第1作の「Johnny B. Goode」のシーンで使われたオリジナルではない。
ここは非常に重要な違いだ。
映画シリーズには複数のES-345が登場しており、続編のギターが発見されたからといって、マーティが最初の映画で演奏したギターが見つかったわけではない。
Gibsonの捜索チームは、続編のギターの所有履歴を確認することで、寄せられた情報の中から誤った手掛かりを除外できるようになったと説明している。
2026年10月、マイケル・J・フォックスが語った独自の推測2026年10月21日付のGuitar Playerの報道では、フォックス自身がギターの行方について新たな見解を示した。
フォックスは回想録『Future Boy: Back to the Future and My Journey Through the Space-Time Continuum』の中で、自分がギターを所有していないことに触れている。
彼は、将来そのギターが映画史に残るほどの価値を持つと予想していなかったという趣旨の説明をしている。
加えて、誰かが価値を見越して持ち去り、現在も個人のコレクションや自宅の保管場所に置いているのではないかという推測を示した。
ただし、これはフォックスの個人的な見立てであり、盗難が証明されたわけではない。
同記事によれば、ギターの捜索は2026年10月時点でも続いており、ドキュメンタリー『Lost to the Future』の公開も、ギターが発見されることが前提になっているとフォックスは語っている。
オリジナルを見分ける重要な手掛かり捜索において注目されているのが、指板の12フレット部分にあるインレイだ。
一般的なES-345では、平行四辺形を2つ組み合わせたスプリット・パラレログラムの装飾が使われる。
ところが、映画で使われたギターは、12フレットに通常とは異なる単独の平行四辺形のインレイを持っていた。
この特徴は、同じチェリーレッドのES-345と区別するうえで有力な手掛かりとなっている。
Gibson Customの40周年記念モデルでも、この特別な12フレットの装飾が再現された。
【ES-345とストラトキャスターを比較】特徴・見分け方・価格
マーティのギターに興味を持った人が次に気になるのが、ES-345とストラトキャスターの違いだろう。
どちらもロックの歴史を代表するギターだが、構造も音色も大きく異なる。
ES-345とストラトキャスターの違い| 比較項目 | Gibson ES-345 | Fender Stratocaster |
|---|---|---|
| ボディ構造 | セミアコースティック | ソリッドボディ |
| 基本構造 | センターブロックあり | 中空構造なし |
| ピックアップ | ハムバッカー2基が基本 | シングルコイル3基が代表的 |
| 音色 | 太く、温かみがある | 明るく、輪郭が明瞭 |
| スケール | 24.75インチ | 25.5インチ |
| トレモロ | Bigsby仕様など | シンクロナイズド・トレモロ |
| 得意な音楽 | ブルース、ジャズ、ロック | ロック、ブルース、ポップス |
| 代表的な特徴 | Varitone、装飾的な指板 | ボディ輪郭、シングルコイル |
※年代や製品仕様によって例外がある。比較は代表的な仕様に基づく。
ES-345の魅力はセミアコならではの音ES-345は、ボディの内部にメイプル製のセンターブロックを持つ構造を採用している。
この構造によって、完全な空洞構造のギターとは違うサステインとフィードバック耐性を確保している。
また、ハムバッカーは厚みのある音を作りやすく、ブルースやロックのリードプレイにも向いている。
一方、ストラトキャスターはソリッドボディを採用し、シングルコイルによる明るく抜けのよいサウンドが特徴だ。
Floyd Roseを搭載したカスタムストラトタイプなら、激しいアーミングやタッピングを含む演奏にも対応しやすい。
ティム・メイが録音でストラトタイプを選んだ理由も、こうした演奏上の特徴と関係している。
ES-345の特徴と見分け方中古市場でES-345を探す場合、次のポイントを確認したい。
1. 指板のインレイ
ES-345の代表的な特徴は、スプリット・パラレログラムと呼ばれる平行四辺形のインレイ。ES-335の一般的なドットインレイとは見た目が異なる。
2. Varitoneスイッチ
クラシックなES-345の大きな特徴。音色を切り替えるための専用スイッチが搭載されている。
3. ゴールドハードウェア
ブリッジやピックアップカバーなどの金属パーツにゴールド仕上げを採用したモデルが代表的だ。
4. ステレオ出力
初期のES-345はステレオ出力を採用していた。ピックアップの信号を分けて出力できる点も、モデルの歴史を理解するうえで重要だ。
5. Bigsbyの有無
映画のギターはBigsbyを搭載している。中古のES-345にはテールピースの違う個体もあるため、Bigsbyの有無だけでES-345かどうかを判定することはできない。
なお、現行の通常モデルやEpiphone製品では、電子回路や出力仕様がヴィンテージの初期モデルと異なる場合がある。製造年代と型番を確認することが大切だ。
ES-345の価格はいくら?2026年時点の価格を考える際は、新品の通常モデル、限定モデル、ヴィンテージ品を分ける必要がある。
Gibson ES-345 Sixties Cherry$3,799
Gibson公式掲載価格・米国ドル
現行の通常モデル。メイプルのセンターブロック、ハムバッカー、ローズウッド指板などを備える。
Epiphone Back to the Future ES-345$999
2025年発売時の価格
1,985本限定。映画をイメージした仕様だが、現在はメーカー公式ページで販売終了扱い。
Gibson Custom Back to the Future 1955 ES-345$19,999
2025年発売時の価格
世界88本限定のコレクターズモデル。Gibson公式商品ページでは完売扱い。
価格は米国での掲載価格。日本国内の販売価格は為替、輸入費用、税金、販売店によって異なる。
ヴィンテージのES-345は、製造年、オリジナルパーツの残存状況、ピックアップ、改造歴、保存状態によって価格が大きく変動する。
特に1959〜1960年代初期の個体はコレクター需要も強く、数万ドル規模の販売例もある。
中古品を購入する際は、単に赤いES-345であることだけで判断せず、シリアルナンバー、電装系、ネックの状態、修復歴まで確認したい。
【40周年記念モデル】Gibson CustomとEpiphoneから特別なES-345が登場
2025年10月21日、映画の公開40周年を記念して、GibsonとEpiphoneから特別なES-345が登場した。
これは単なる映画グッズではない。
劇中のギターを忠実に再現した高級コレクターズモデルと、比較的手に取りやすい価格帯のEpiphoneモデルという、異なる2つの方向性を持つ企画だった。
Gibson Custom 1955 ES-345 Collector's EditionGibson Customが製作したのが、Back to the Future「1955」ES-345 Collector's Editionだ。
発売価格は19,999ドル。世界限定88本という特別な仕様になっている。
88という数字は、映画のタイムトラベルに必要な時速88マイルに由来する。
主な特徴は次のとおり。
- メイプル・ポプラ・メイプルの3層ボディ
- メイプル製センターブロック
- マホガニーネック
- ローズウッド指板
- Custombucker Alnico 3ピックアップ
- 6段階のモノラルVaritone
- 1959年仕様を再現したBigsby B7
- Murphy Labによるエイジド仕上げ
- 映画に登場する12フレットの単独インレイ
特に注目したいのが、12フレットの装飾だ。
一般的なES-345の指板とは異なる、映画で使用された個体特有のインレイを再現している。
付属品も豪華で、マービン・ベリー&ザ・スターライターズのグラフィックを施したハードケースをはじめ、映画に登場する小道具をモチーフにしたアイテムが含まれている。
このモデルの「1955」は製造年代を意味するものではない。映画の舞台となった年を冠した、2025年発売の記念モデルである。
Epiphone Back to the Future ES-345もう一つが、Epiphoneから発売されたBack to the Future ES-345だ。
発売価格は999ドル。映画が公開された1985年にちなんで、世界1,985本限定となった。
主な仕様は以下のとおり。
- 5層メイプルボディ
- メイプル製センターブロック
- マホガニーネック
- ローズウッド指板
- Alnico Classic PROハムバッカー
- ゴールドハードウェア
- Bigsby B70ビブラートテールピース
- モノラルVaritone
- Hill Valley Musicのヘッドストックデカール
- マービン・ベリー&ザ・スターライターズ仕様のケース
Gibson Customモデルと比べると、使用するピックアップやボディの積層構造、装飾の細部などが異なる。
ただし、映画のイメージを再現するチェリーレッドのボディ、Bigsby、ゴールドパーツなど、象徴的なデザインはしっかり押さえられている。
こちらは2026年時点でGibson公式ページに販売終了の表示があり、限定モデルとしての入手性は低くなっている。
2つの記念モデルはどちらを選ぶべきか| 選ぶ基準 | Gibson Custom | Epiphone |
|---|---|---|
| 発売時価格 | $19,999 | $999 |
| 生産数 | 88本 | 1,985本 |
| 主な目的 | 高級コレクション | 演奏・映画ファン向け |
| 製作 | Gibson Custom Shop | Epiphone |
| 12フレットの特別インレイ | 再現 | 通常のスプリット型 |
| ケース | 専用Liftonケース | 専用ハードケース |
コレクションとしての完成度や劇中仕様の細部にこだわるならGibson Custom、実際に演奏して映画の雰囲気を楽しみたいならEpiphoneという選び方が分かりやすい。
ただし、限定モデルは新品のメーカー在庫がなくなると中古市場での価格が変動する。購入時は定価だけでなく、販売店の保証、付属品、状態も確認したい。
【プロの結論】ES-345が映画史に残した価値とは
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』のES-345が特別なのは、単に有名な映画に登場したからではない。
このギターには、映画制作、音楽の歴史、楽器メーカーのブランド戦略、コレクター文化という4つの側面が重なっている。
1. 映画の小道具が楽器ブランドの象徴になった通常、映画に登場するギターは、俳優が持つ小道具の一つとして扱われる。
しかし、マーティのES-345は違った。
チェリーレッドのボディ、ゴールドのパーツ、Bigsbyの存在感、そして演奏シーンの印象が組み合わさり、映画を象徴するアイテムになった。
映画が公開された1985年以降、ギターを始めるきっかけになったというミュージシャンも現れた。
2. 映像と音源を分けて考えることで映画の裏側が見えるマイケル・J・フォックスが画面上で演じたパフォーマンスと、ティム・メイが録音したギター演奏は、別々の仕事だった。
映像ではES-345の存在感が重要であり、録音では演奏内容に適したValley Artsのストラトタイプが選ばれた。
この違いは、映画音楽が俳優の演技、音響、演奏家の技術によって作られることを示す好例だ。
3. 行方不明事件がブランドの歴史的価値を再認識させた2025年に始まったLost to the Futureは、失われたギターを探すだけの活動ではない。
Norm's Rare Guitarsのハリス、Gibsonのアグネシ、映画の関係者、そして世界中のファンが参加する、映画と音楽の歴史を掘り起こす取り組みでもある。
2026年10月時点でもオリジナルは見つかっていない。
しかし、続編のギターが発見されたことで、捜索の手掛かりは少しずつ整理されている。
4. 購入するなら何を基準に選ぶべきか読者が実際にES-345を購入する場合、次の判断基準を持っておきたい。
- 映画の雰囲気を重視する人:チェリーレッド、Bigsby、ゴールドパーツを備えたEpiphoneの記念モデルや現行ES-345が候補。
- 演奏性能を重視する人:ネックの状態、重量、ピックアップ、電装系、演奏スタイルとの相性を優先する。
- ヴィンテージコレクター:製造年、シリアルナンバー、オリジナルパーツ、修復歴を重視する。
- 映画の小道具そのものを求める人:記念モデルと撮影に使われたオリジナルを混同しないこと。
とりわけ重要なのは、映画に登場したオリジナルと、2025年の復刻モデルを区別することだ。
Gibson Customの限定モデルは劇中ギターの細部を再現しているが、実際にマイケル・J・フォックスが撮影で使用した個体ではない。
【バック・トゥ・ザ・フューチャーのギター】に関するよくある質問(FAQ)
Q1:バック・トゥ・ザ・フューチャーでマーティが弾いているギターは何ですか?
A1:Gibson ES-345 TDCのチェリーレッドモデルです。Bigsbyを搭載したセミアコースティックギターで、「Johnny B. Goode」の演奏シーンに登場します。
Q2:なぜ1955年の映画に1959年発売のギターが登場するのですか?
A2:制作時に赤いボディとビブラート機構を備えたギターが求められ、制作側が年代考証よりも映像表現を優先したためです。ギターを提供したノーマン・ハリスも年代の違いを事前に指摘していました。
Q3:「Johnny B. Goode」を実際に演奏したのは誰ですか?
A3:セッションギタリストのティム・メイです。劇中のES-345ではなく、Floyd Roseを搭載したValley Artsのストラトタイプで録音しました。
Q4:行方不明のES-345は2026年に発見されましたか?
A4:2026年10月21日時点では、第1作で使用されたオリジナルは発見されていません。2025年に発見されたのは『PART2』で使用された別のギターです。
Q5:Lost to the Futureとは何ですか?
A5:Gibsonが2025年6月に開始した、マーティが劇中で使用したオリジナルのES-345を探す世界規模のキャンペーンです。同名のドキュメンタリーも制作が進められています。
Q6:40周年記念モデルはいくらですか?
A6:発売時の米国価格は、Gibson Customが19,999ドル、Epiphoneが999ドルでした。生産数はそれぞれ88本と1,985本。2026年時点では、両モデルとも公式販売ページで通常の新品購入が難しい状況です。
Q7:ES-345とストラトキャスターはどちらがおすすめですか?
A7:太く温かみのある音色やセミアコ特有の響きを求めるならES-345、明るく歯切れのよいサウンドや多彩なトレモロ奏法を求めるならストラトキャスターが候補になります。
『バック・トゥ・ザ・フューチャー』でマーティ・マクフライが演奏するギターは、チェリーレッドのGibson ES-345。1955年の設定に対して1959年登場のモデルが使われたのは、制作側が映像上のインパクトを優先したためだった。
加えて、「Johnny B. Goode」の録音ではティム・メイがValley Artsのストラトタイプを使用しており、劇中のギターと実際の録音楽器は異なる。そして、撮影に使われたオリジナルは現在も行方不明で、GibsonによるLost to the Futureの捜索が続いている。
2025年の40周年にはGibson CustomとEpiphoneから記念モデルが登場し、2026年にはマイケル・J・フォックスもギターの行方について新たな推測を示した。
映画の名場面を象徴する小道具でありながら、楽器としての歴史的価値も持つES-345。オリジナルギターが再び姿を現す日は来るのか。マーティが1955年の観客を驚かせたあの赤いギターの物語は、まだ終わっていない。