アルハラとは、「アルコール・ハラスメント」の略称で、飲酒の強要やイッキ飲ませ、意図的な酔いつぶしなど、お酒に関連する嫌がらせや人権侵害を指します。職場の上司や先輩から飲酒を迫られるケースだけでなく、大学のサークル、友人同士の飲み会、宴会などでも発生します。本人に悪意がなかったとしても、相手の体質や意思を無視して飲酒を迫ったり、飲めないことをからかったりする行為は、アルハラに該当する可能性があります。
2026年には、NPO法人ASK(アルコール薬物問題全国市民協会)が事務局を務めるイッキ飲み防止連絡協議会によって、第34回「イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン」が実施されています。厚生労働省の研修資料にも掲載されている5つの定義を軸に、具体例、アルハラに該当する境界線、急性アルコール中毒の危険性、刑事・民事上の責任、職場での対処法や相談窓口まで解説します。
【アルハラとは?】アルコールハラスメントの意味と2026年の現状

アルハラは、英語の「Alcohol Harassment」を略した言葉です。日本語ではアルコール・ハラスメントと呼ばれ、飲酒に関連する嫌がらせ、迷惑行為、人権侵害などを意味します。
重要なのは、アルハラが単にお酒を大量に飲ませる行為だけを指す言葉ではないことです。飲酒するかどうかを本人が決める権利を侵害する行為や、飲酒できない人を不当に扱う行為も対象になります。
アルハラが起きやすいのはどのような場面か典型的なのは、職場の歓送迎会や忘年会、新年会、大学の新入生歓迎会、部活動の打ち上げなどです。
こうした集まりでは、上司と部下、先輩と後輩、幹事と参加者などの上下関係が生まれやすくなります。本人が飲みたくないと思っていても、周囲から繰り返し勧められると、断ることで人間関係が悪くなるのではないかと不安になり、飲酒を受け入れてしまう場合があります。
特に問題なのは、次のような考え方です。
- 上司や先輩に勧められたお酒は断ってはいけない。
- 飲み会では全員が同じ量のお酒を飲むべきだ。
- お酒が飲めない人は場の雰囲気を壊している。
- 新人や後輩は、先輩の指示に従って飲むべきだ。
- 酔ってしたことなら、多少の迷惑行為は許される。
こうした飲酒に関する価値観の押しつけが、アルハラを生む背景になっています。
2026年も続くイッキ飲み・アルハラ防止活動2026年の「イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーン」は第34回を迎えました。この活動は、遺族、予防団体、大学生協、酒類業界などが協力し、1993年に始まったものです。
主催するイッキ飲み防止連絡協議会の事務局はNPO法人ASKが担当し、2026年のキャンペーンには文部科学省、厚生労働省、アル法ネットが後援しています。
同年はA2サイズの啓発ポスター1,650枚を印刷し、全国の大学に送付。飲酒をしないことを責めたり、からかったりする行為も問題として取り上げています。
キャンペーンが伝える中心的な考え方は、飲むか飲まないかを他人が決めるものではないということです。アルハラ対策は、イッキ飲みを禁止するだけでなく、飲酒しない選択も尊重する環境づくりへと広がっています。
【アルハラの5つの定義】NPO法人ASKが整理する具体例
アルハラを理解するうえで基準になるのが、NPO法人ASKとイッキ飲み防止連絡協議会が啓発してきた5つの定義です。
この5項目は、厚生労働省サイトに掲載された令和6年度事業報告書のハラスメント研修資料にも記載されています。飲酒を強制する行為だけでなく、飲めない人を傷つける言動や、酔った後の迷惑行為まで含まれている点が特徴です。
① 飲酒の強要飲酒の強要とは、上下関係や集団の圧力、伝統、罰ゲームなどを利用し、相手が飲まざるを得ない状況に追い込む行為です。
具体例には、次のようなものがあります。
- 上司が部下に対して「俺の酒が飲めないのか」と迫る。
- 先輩が後輩に、断っているにもかかわらず何度も酒を勧める。
- 飲酒を拒否した人に対して、昇進や評価に影響するとほのめかす。
- 飲まなければ仲間外れにすると脅す。
- 周囲が大声ではやしたて、断りにくい状況をつくる。
本人が最終的にグラスを手に取ったとしても、心理的な圧力によって断れなかったのであれば、飲酒の強要に該当する可能性があります。
② イッキ飲ませイッキ飲ませとは、短時間で酒を飲み干すイッキ飲みや、飲む速さを競う早飲み競争などを相手にさせる行為です。
例えば、次のような行為が該当します。
- 周囲が「イッキ、イッキ」と掛け声をかけて飲酒を迫る。
- 飲み干すまで席を立たせない。
- ゲームや罰ゲームの結果として大量飲酒をさせる。
- 新人歓迎会で新入社員や新入生にイッキ飲みを要求する。
イッキ飲みは、短時間で大量のアルコールを摂取するため、血中アルコール濃度が急激に上昇する危険があります。周囲が盛り上がっているかどうかは、安全性を判断する基準になりません。
③ 意図的な酔いつぶし意図的な酔いつぶしとは、相手を酔いつぶすことを目的として飲み会を行う行為です。
単に飲酒量が増えてしまったという状況とは異なり、最初から相手を泥酔させることを狙っている点に問題があります。
例えば、特定の参加者に繰り返し酒を勧めたり、酔いつぶれるまで飲ませることを宴会の目的にしたりする行為です。
本人の意思や健康状態を無視して意図的に酔いつぶす行為は、身体への危険を伴います。実際に健康被害が生じれば、刑事責任や損害賠償責任が問題になる可能性もあります。
④ 飲めない人への配慮を欠くことアルハラは、お酒を無理やり飲ませる場合だけに限りません。飲めない人の体質や意思を無視することも、5つの定義の一つです。
具体的には、次のような行為が挙げられます。
- アルコールを分解しにくい体質の人に飲酒を勧める。
- 薬の服用や健康上の理由で飲めない人に酒を勧め続ける。
- 飲酒しない人を「付き合いが悪い」とからかう。
- 飲めないことを理由に侮辱したり、人格を否定したりする。
- 宴会にソフトドリンクなど酒類以外の飲み物を用意しない。
お酒が飲めない理由は人それぞれです。体質、健康状態、服薬、妊娠などの事情がある場合もあれば、単純に飲酒を好まない人もいます。
本人が事情を説明していないからといって、飲酒を勧めてよい理由にはなりません。
⑤ 酔った上での迷惑行為酔った上での迷惑行為とは、飲酒によって酔った状態で、他人に不快感や身体的・精神的な被害を与える行為です。
具体例は次のとおりです。
- 酔って同僚や後輩にしつこく絡む。
- 酒席で大声を出して威圧する。
- 暴言や暴力を振るう。
- 相手が嫌がっているのに身体に触れる。
- 酔った勢いでセクハラや悪ふざけをする。
- 飲酒を理由に周囲の人へ繰り返し迷惑をかける。
酔っていること自体がアルハラなのではありません。酔ったことを理由に他人の尊厳や安全を侵害する行為が問題になります。
アルハラに関係する団体・制度の関係アルハラの定義や防止活動を理解するには、関連する団体と公的機関の役割を整理しておくと分かりやすくなります。
| 団体・機関 | 主な役割・関係 | 押さえておきたい情報 |
|---|---|---|
| NPO法人ASK | アルコール・薬物問題の予防啓発 | イッキ飲み防止連絡協議会の事務局を担当 |
| イッキ飲み防止連絡協議会 | イッキ飲み・アルハラ防止活動 | 1993年にキャンペーンを開始。2026年は第34回 |
| 厚生労働省 | 健康情報・ハラスメント研修資料の提供 | アルハラの5項目や急性アルコール中毒の情報を掲載 |
| 文部科学省 | 教育機関に関する施策 | 2026年の防止キャンペーンを後援 |
| 都道府県労働局 | 職場のハラスメントや労働問題への対応 | 総合労働相談コーナーなどを設置 |
このように、アルハラは個人間の飲酒トラブルにとどまらず、健康問題、教育環境、職場環境、人権保護に関係する問題として扱われています。
【アルハラはどこから?】該当する境界線とよくある誤解
実際に飲み会で嫌な思いをしたとき、最も判断に迷うのが「どこからアルハラになるのか」という点です。
判断の基本は、相手の飲酒に関する意思や体質を尊重しているかどうかです。特に、断っている人に対して圧力をかけたり、飲まないことを理由に不利益な扱いをしたりする場合は、アルハラの可能性が高くなります。
一度お酒を勧めただけでもアルハラになる?お酒を一度勧めたという事実だけで、直ちにすべてのケースがアルハラになるわけではありません。
例えば、本人が飲酒できるかを確認して一度勧め、断られたらすぐに引き下がる行為と、断られた後も執拗に飲酒を迫る行為では、状況が異なります。
判断するときは、言葉の内容だけでなく、繰り返しの有無、相手との関係性、周囲の人数、断りにくい雰囲気、実際に生じた被害などを総合的に考える必要があります。
冗談や場のノリなら許される?「冗談だった」「場を盛り上げたかった」という説明は、相手が受けた被害をなくすものではありません。
本人が嫌がっているにもかかわらず飲酒を迫ったり、飲めないことを笑いものにしたりすれば、行為の目的が冗談であっても問題になります。
特に集団で一人を取り囲んだり、全員で掛け声をかけたりする状況では、本人が拒否する心理的な負担が大きくなります。
お酒を飲まないだけで付き合いが悪いと評価するのは?飲酒しないことを理由に、職場での評価や人間関係に不利益を与える行為も問題です。
飲み会への参加と飲酒することは別の問題です。参加した人に飲酒の義務があるわけではありません。
飲酒を断ったことで仕事を任せてもらえなくなったり、昇進や人事評価で不利益を受けたりする場合には、職場のハラスメントとしての問題も検討する必要があります。
職場の飲み会は勤務時間外でもハラスメントになる?厚生労働省のパワーハラスメントに関する指針では、職場は通常の勤務場所だけに限定されていません。
勤務時間外の懇親会であっても、実質的に職務の延長と考えられる場合は、職場に該当する可能性があります。
判断では、仕事との関連性、参加者、参加や対応が強制的だったかどうかなどが考慮されます。
つまり、会社の歓送迎会だから必ず職場のパワハラになるわけでも、勤務時間外だから対象外になるわけでもありません。個別の状況によって判断されます。
また、職場のパワーハラスメントは、次の3要素をすべて満たすかどうかが判断の基準です。
- 優越的な関係を背景とした言動:上司から部下への行為や、集団による圧力など。
- 業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動:仕事に必要のない不適切な強制や嫌がらせなど。
- 就業環境が害されること:身体的・精神的な苦痛によって仕事に看過できない支障が生じること。
強い身体的・精神的苦痛を与える行為であれば、1回でも就業環境を害する場合があります。
なお、アルハラの5つの定義に該当することと、法律上のパワハラに該当することは同じではありません。両者を区別して判断することが大切です。
【急性アルコール中毒の危険性】イッキ飲みが命に関わる理由
アルハラが深刻な問題とされる理由の一つが、急性アルコール中毒です。
急性アルコール中毒は、アルコールを摂取したことで意識障害などの身体的影響が生じる状態です。短時間に大量のアルコールを摂取すると、血中アルコール濃度が急激に上昇し、生命に危険が及ぶことがあります。
急性アルコール中毒で起こる症状厚生労働省の健康情報サイト「e-ヘルスネット」によると、重度の酩酊状態では意識レベルの低下、嘔吐、血圧低下、呼吸数の低下などが起こる可能性があります。
特に危険なのは、アルコールによって呼吸や循環を調整する中枢の働きが抑制されることです。また、嘔吐物が気道に詰まって窒息する危険もあります。
急性アルコール中毒の危険性を高める要因には、次のようなものがあります。
- 短時間に大量のアルコールを摂取すること。
- アルコールの分解能力が低い体質であること。
- 若年者で飲酒経験が少ないこと。
- 体調不良や疲労がある状態で飲酒すること。
- 高齢者など、身体的なリスクが高い状態で飲酒すること。
急性アルコール中毒になる明確な飲酒量の基準はありません。本人がまだ大丈夫だと言っていても、安全とは限りません。
急性アルコール中毒が疑われる場合の危険サイン次のような症状がある場合は、急性アルコール中毒の可能性があります。
- 呼びかけたり身体を揺すったりしても反応しない。
- 大きないびきをかき、刺激を与えても反応しない。
- 呼吸が不規則になっている。
- 身体が冷たくなっている。
- 口から泡を吹いている。
- 意識が低下し、嘔吐を繰り返している。
意識がない、呼吸がおかしいなどの症状があれば、直ちに119番へ通報してください。酔いが覚めるまで様子を見るという対応は危険です。
酔いつぶれた人を発見したときの正しい対応厚生労働省のe-ヘルスネットが示す救護方法では、次の対応が推奨されています。
- 絶対に一人にしない:誰かが付き添い、意識や呼吸の状態を確認する。
- 衣服を緩める:身体を締めつけている衣服を緩める。
- 身体を温める:毛布などを使って体温低下を防ぐ。
- 横向きに寝かせる:吐いたものが気道に詰まらないようにする。
- 無理に吐かせない:嘔吐物による窒息を防ぐため、無理に吐かせようとしない。
特に注意したいのは、酔いつぶれた人を一人で帰宅させたり、そのまま寝かせたりすることです。意識障害が進行しても周囲が気づけず、救護が遅れる危険があります。
アルハラを防止することは、単に飲酒を断る権利を守るだけではありません。急性アルコール中毒による事故や死亡を防ぐことにも直結しています。
【アルハラの違法性・罰則】強要罪や傷害罪になる可能性は?
アルハラをした場合、どのような法律上の責任が生じるのでしょうか。
まず理解しておきたいのは、2026年11月時点で「アルハラ罪」という独立した犯罪が刑法に定められているわけではないということです。
しかし、具体的な行為や被害の程度によっては、刑法上の犯罪や民法上の損害賠償責任が成立する可能性があります。
① 強要罪に該当する可能性刑法第223条は強要罪について定めています。
生命、身体、自由、名誉、財産などに害を加えると告知して脅迫したり、暴行を用いたりして、相手に義務のないことをさせた場合などに成立し得る犯罪です。
例えば、飲酒を拒否した人に対して身体への危害をほのめかしたり、暴力を用いて飲ませたりした場合には、強要罪が問題になる可能性があります。
強要罪の法定刑は3年以下の拘禁刑です。
ただし、しつこくお酒を勧めたという事情だけで、必ず強要罪が成立するわけではありません。刑法の構成要件に該当するかどうかは、脅迫や暴行の有無、行為の内容などによって判断されます。
② 傷害罪・傷害致死罪に該当する可能性飲酒を強要した結果、相手が身体的な被害を受けた場合には、刑法第204条の傷害罪が問題になる可能性があります。
傷害罪の法定刑は15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金です。
加えて、傷害行為によって相手が死亡した場合には、刑法第205条の傷害致死罪が成立する可能性があります。法定刑は3年以上の有期拘禁刑です。
急性アルコール中毒による死亡事故では、飲酒を強要した人の行為と死亡との因果関係、行為者の認識や故意などが重要な判断材料になります。
また、故意ではなくても、注意義務違反によって事故を発生させた場合には、過失傷害罪や過失致死罪、業務上過失致死傷罪などが問題になるケースもあります。
③ 民法上の損害賠償責任刑事責任とは別に、アルハラによって被害者に損害が生じた場合には、民法上の不法行為責任が問われる可能性があります。
民法第709条では、故意または過失によって他人の権利や法律上保護される利益を侵害した場合、損害賠償責任を負うと定めています。
また、民法第710条により、身体や自由、名誉などを侵害した場合には、財産以外の損害についても賠償責任が生じ得ます。
例えば、飲酒強要による身体的被害、精神的苦痛、治療費などが損害賠償の対象として問題になる可能性があります。
④ 会社にも責任が及ぶ場合がある職場で発生したアルハラについては、行為者本人だけでなく、会社の責任が問題になる場合もあります。
民法第715条には使用者責任が定められており、従業員が事業の執行について第三者に損害を与えた場合、一定の条件のもとで使用者も賠償責任を負います。
ただし、会社が必ず責任を負うわけではありません。行為と業務との関連性、会社の管理状況、事案の具体的な経緯などを踏まえて判断されます。
アルハラに関係する法律と罰則の整理- 強要罪(刑法223条):3年以下の拘禁刑。
- 傷害罪(刑法204条):15年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金。
- 傷害致死罪(刑法205条):3年以上の有期拘禁刑。
- 過失傷害罪(刑法209条):30万円以下の罰金または科料。
- 過失致死罪(刑法210条):50万円以下の罰金。
- 業務上過失致死傷罪(刑法211条):5年以下の拘禁刑または100万円以下の罰金。
- 不法行為責任(民法709条・710条):被害に応じた損害賠償責任。
なお、これらは各犯罪や民事責任が成立した場合の法的な規定です。アルハラの5つの定義に該当したからといって、すべてのケースで同じ刑罰が科されるわけではありません。
【アルハラを受けたときの対処法】断り方・職場での対応・相談窓口
アルハラを受けたときは、無理に我慢する必要はありません。相手との関係性や状況によっては、その場で拒否することが難しい場合もあります。安全を確保しながら、段階的に対応することが大切です。
アルハラの上手な断り方・具体的な言い回し飲酒を迫られた場合は、曖昧な返事を繰り返すよりも、短く明確に意思を伝える方法が有効です。
例えば、次のような言い方があります。
- 体質を理由に断る:「体質的にお酒が飲めないので、ソフトドリンクにします」
- 健康上の理由で断る:「健康上の理由で今日は飲酒できません」
- 意思を明確に伝える:「今日は飲みません。これ以上勧めないでください」
- 別の飲み物を選ぶ:「お酒ではなく、ノンアルコールの飲み物をお願いします」
- 強要を止めてもらう:「飲酒を強制されるのは困ります。やめてください」
断るために、病気や服薬などの詳しい事情をすべて説明する必要はありません。飲酒しないという意思そのものを尊重してもらうことが大切です。
相手が上司や先輩で直接断ることが難しい場合には、信頼できる同僚や幹事に協力を求める方法もあります。危険を感じる場合は、その場から離れることを優先してください。
職場でアルハラを受けた場合の対処法職場でアルハラが繰り返される場合は、個人間の問題として抱え込最初に、会社の相談体制を利用が必要です。
具体的には、次の順番で対応を検討できます。
1. 事実関係を記録する
いつ、どこで、誰から、どのような言動を受けたのかを記録します。飲酒を迫られた発言、断ったときの相手の反応、同席者、身体的・精神的な被害などを整理しておくと、後から説明しやすくなります。
メール、チャット、社内連絡、飲み会の案内なども保存しておきましょう。医療機関を受診した場合は、診療記録や領収書も保管しておくと役立ちます。
2. 社内の相談窓口に相談する
人事部、労務担当、ハラスメント相談窓口、コンプライアンス窓口などに相談します。
直属の上司が加害者の場合は、その上司を経由せず、別の管理職や人事部門、内部通報窓口などを利用する方法があります。
3. 会社に具体的な対応を求める
単に相談した事実を伝えるだけでなく、加害者との接触を避けたい、飲酒を伴う行事への参加を強制しないでほしい、再発防止策を講じてほしいなど、希望する対応を具体的に伝えます。
4. 社外の相談機関を利用する
会社が適切に対応しない場合や、社内での相談が難しい場合には、都道府県労働局などの公的な相談窓口を利用できます。
アルハラの主な相談窓口相談先は、被害が発生した場所や内容によって異なります。
- 会社のハラスメント相談窓口:職場の上司や同僚による飲酒強要、嫌がらせ、人事上の不利益など。
- 都道府県労働局の総合労働相談コーナー:職場のいじめ、嫌がらせ、パワハラなどの労働問題。
- 大学のハラスメント相談窓口:サークル、部活動、ゼミ、学生同士や教職員との間で発生した問題。
- 警察:暴力、脅迫、強制的な飲酒など、犯罪の疑いがある場合。
- 医療機関・保健所・精神保健福祉センター:急性アルコール中毒などの健康被害や、アルコールに関連する健康問題。
厚生労働省の総合労働相談コーナーは、全国の労働局や労働基準監督署内などに設置されています。労働問題全般について、専門相談員が電話または面談で対応しており、予約不要・無料で利用できます。相談者のプライバシーにも配慮されています。
また、労働局では相談だけでなく、助言・指導やあっせんなど、職場のトラブル解決を支援する制度も案内しています。
アルコール問題の予防啓発に取り組むNPO法人ASKも、アルハラに関する情報を確認する際の重要な情報源です。大学生や新社会人など、若い世代が関係する飲酒事故の防止活動にも取り組んでいます。
アルハラを防ぐために会社や幹事ができることアルハラの防止には、被害を受けた人が断る努力をするだけでは不十分です。飲酒を強要しない仕組みを、飲み会を主催する側が整える必要があります。
会社や幹事が取り組みたい対策は次のとおりです。
- 飲酒の強制やイッキ飲みを明確に禁止する。
- 飲まない人や飲めない人をからかわないよう周知する。
- ソフトドリンクやノンアルコール飲料を十分に用意する。
- 飲酒を断った人に不利益を与えない。
- 飲み会への参加を業務上の義務のように扱わない。
- 急性アルコール中毒が疑われる人への救護体制を整える。
- ハラスメント相談窓口と対応手順を明確にする。
お酒を飲む人も飲まない人も安心して参加できる環境を整えることが、アルハラ防止の基本です。
【アルハラとは?】よくある質問(FAQ)
Q1:アルハラとは簡単にいうと何ですか?
A1:アルハラとはアルコール・ハラスメントの略で、飲酒の強要やイッキ飲ませ、意図的な酔いつぶし、飲めない人への配慮を欠く行為、酔った上での迷惑行為などを指します。お酒に関連する嫌がらせや人権侵害のことです。
Q2:アルハラの5つの定義は何ですか?
A2:NPO法人ASKなどが啓発している5つの定義は、①飲酒の強要、②イッキ飲ませ、③意図的な酔いつぶし、④飲めない人への配慮を欠くこと、⑤酔った上での迷惑行為です。
Q3:お酒を一度勧めただけでもアルハラになりますか?
A3:一度勧めただけで必ずアルハラになるわけではありません。ただし、相手が拒否しているのに繰り返し勧めたり、断りにくい状況をつくったりする場合は、アルハラに該当する可能性があります。
Q4:アルハラをしたら犯罪になりますか?
A4:アルハラという名称の独立した犯罪はありませんが、行為の内容によっては強要罪、傷害罪、傷害致死罪などが成立する可能性があります。また、民法上の損害賠償責任が生じる場合もあります。
Q5:上司から飲酒を強要された場合はパワハラですか?
A5:職場における優越的な関係を背景に、業務上必要かつ相当な範囲を超えた言動が行われ、就業環境が害された場合には、パワーハラスメントに該当する可能性があります。勤務時間外の飲み会でも、実質的に仕事の延長と考えられる場合は対象になることがあります。
Q6:アルハラを受けたときはどこに相談すればよいですか?
A6:職場なら会社のハラスメント相談窓口や都道府県労働局の総合労働相談コーナー、大学なら学内のハラスメント相談窓口が相談先になります。暴力や脅迫などの犯罪が疑われる場合は警察、急性アルコール中毒などの緊急事態では119番に連絡してください。
Q7:飲めない理由を説明しなければいけませんか?
A7:飲酒しない理由を詳しく説明する必要はありません。「飲みません」「体質的に飲めません」と伝えるだけでも構いません。本人の飲酒に関する意思は尊重されるべきものです。
Q8:酔いつぶれた人を寝かせておけば大丈夫ですか?
A8:安全とは限りません。急性アルコール中毒では意識障害や呼吸状態の悪化、嘔吐物による窒息などが起こる可能性があります。一人にせず横向きに寝かせ、意識や呼吸に異常がある場合は直ちに119番へ通報してください。
アルハラとは、飲酒の強要やイッキ飲ませだけでなく、飲めない人への配慮を欠く行為や、酔った上での迷惑行為まで含むアルコール・ハラスメントです。
NPO法人ASKなどが啓発している5つの定義は、飲酒に関する嫌がらせを理解するための重要な基準です。2026年も第34回イッキ飲み・アルハラ防止キャンペーンが実施されていることからも、飲酒強要や急性アルコール中毒の防止は、現在も継続して取り組むべき課題となっています。
また、アルハラの内容によっては、強要罪や傷害罪などの刑事責任、民法上の損害賠償責任、職場のパワーハラスメントとしての責任が問題になる可能性があります。
被害を受けた場合は、無理に飲酒する必要はありません。状況を記録し、会社や大学の相談窓口、労働局などの外部機関を利用することが大切です。急性アルコール中毒が疑われる場合には、ハラスメントの問題とは別に、救命を最優先してください。
お酒を飲むことも、飲まないことも、本人が選ぶものです。飲酒量や酒の強さで人を評価せず、一人ひとりの意思と健康を尊重すること。それがアルハラをなくし、誰もが安心して過ごせる職場や学校、飲み会をつくるための出発点です。