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【実話の真相】はるな愛と和田耕治医師の人生が映画のモデル

園田 薫 園田 薫 • 更新: • 公開: • 読了約 21 分
目次

最初に押さえておきたいのは、『This is I』が架空の人物を中心にした創作映画ではないという点だ。主人公のモデルは実在するはるな愛、医師のモデルも実在した和田耕治である。

映画の企画が動き出したきっかけは、企画を担当した鈴木おさむが2021年11月に和田医師の存在を知ったことだった。和田医師と深町公美子の共著を読んだ鈴木は、以前から交流のあったはるな愛の人生と重ね合わせることで、二人の実話を一つの映画にする構想を抱いた。

2022年にはNetflixに企画を提出。そこから映画化が進み、2026年2月10日の世界独占配信に至った。つまり、作品ははるな愛の人生だけを映像化したものではなく、患者と医師という二つの実在人物の人生を交差させたヒューマンドラマなのだ。

はるな愛の本名は大西賢示。幼少期からアイドルを夢見た半生

はるな愛の本名は大西賢示。幼い頃から女性アイドルに憧れ、歌や踊りに親しんできた。映画では、その幼少期からの夢と、周囲の視線に苦しみながら自分らしい生き方を模索する姿が描かれている。

思春期には、自分の性別に関する悩みと周囲との違いに苦しんだ。やがてショーパブの世界に居場所を見いだし、ステージでアイドルのものまねを披露するようになる。華やかなパフォーマンスの裏には、社会の偏見や人間関係に悩みながらも表現者として生きようとした長い道のりがあった。

性別適合手術を受けたことも、本人の人生における大きな転機だ。2007~2008年にかけて「エアあやや」の口パクものまねで広く知られるようになり、2009年にはMiss International Queenで優勝。2010年には24時間テレビのチャリティーマラソンを完走するなど、タレントとしても活動の幅を広げた。

和田耕治医師はどのような人物だったのか

和田耕治は1953年生まれ、2007年に53歳で亡くなった形成外科・美容外科医だ。群馬大学医学部を卒業後、東京逓信病院や東京警察病院、大手美容クリニックなどを経て、1996年に大阪でわだ形成クリニックを開業した。

和田医師の特徴は、性別違和に悩む患者の希望に向き合い、性別適合手術に積極的に取り組んだことにある。国立国会図書館の書誌情報や関連書籍の紹介によれば、執刀した手術は国内で600人以上に及ぶ。

テレビ東京が2019年に放送した番組でも、和田医師の元妻であり著書の共著者でもある深町公美子が、その歩みを紹介している。和田医師は当時の医療環境の中で、性別適合手術を求める患者と向き合い続けた人物だった。

映画で斎藤工が演じる和田医師は、単に主人公の手術を担当する医師ではない。患者との出会いを通じて、それまで十分に理解していなかった性別違和の問題に向き合い、医療の役割を考えていく人物として描かれる。

【原案と参考書籍】『素晴らしき、この人生』と『ペニスカッター』の関係

ディスイズアイ実話

『This is I』を理解するうえで欠かせないのが、二冊の書籍だ。はるな愛の自伝と、和田医師の人生を記録したノンフィクションである。映画はこの二つの視点を組み合わせることで、患者と医師の双方から物語を構成している。

1. はるな愛の自伝『素晴らしき、この人生』


著者:はるな愛/講談社
単行本発売:2009年3月12日
文庫版発売:2012年3月15日
幼少期からの葛藤、いじめ、芸能界を目指した下積み、性別適合手術など、自身の半生を振り返った自伝。

この本の大きな特徴は、テレビで見せる明るいキャラクターだけでは伝わらない人生の苦労を、自身の経験を通して語っている点だ。

父親との関係、学校でのいじめ、性別に関する悩み、芸能活動の苦労など、はるな愛がどのような道を歩んできたのかを知る手がかりになる。

映画に登場する少年ケンジの夢や葛藤を理解するうえで、重要な背景資料となった一冊だ。講談社の書誌情報でも、著者がはるな愛であることと、自伝として刊行された経緯が確認できる。

2. 和田耕治・深町公美子の『ペニスカッター』


著者:和田耕治・深町公美子
出版社:方丈社
初版発売:2019年2月
和田医師の生い立ち、医師としての歩み、性別適合手術への取り組み、医療事故や家族の証言をまとめたノンフィクション。

こちらは、はるな愛の自伝とは異なる角度から物語を補う資料だ。和田医師自身の記録だけでなく、妻だった深町公美子の回想や関係者の証言を通じて、一人の医師がどのような信念で患者と向き合ったのかを追っている。

特に注目したいのは、手術の成功だけを並べた医師の功績集ではないという点だ。書籍の目次には、初めての性別適合手術、術式の変遷、医療事故、医療機関への問題提起なども含まれている。医療の成果とリスクを両面から扱っている。

また、2026年2月には映画の配信に合わせて、同書を改題・改訂した新版『性同一性障害を救った医師の物語』が刊行された。国立国会図書館の書誌情報では、旧版を改題した新版であることが確認できる。映画をきっかけに、和田医師の人生そのものに関心を持った読者にとっても重要な資料だ。

この二冊の関係を整理すると、はるな愛の自伝が主人公側の人生を、和田医師と深町公美子の著書が医療者側の人生を補完している。どちらか一方だけでは見えにくい、二人の出会いの意味が浮かび上がる構成になっている。

【医療史の真相】性別適合手術がタブー視されていた時代の実態

映画の背景にあるのは、単に個人の人生の葛藤だけではない。日本で性別適合手術がどのように扱われてきたのかという、医療と法律の歴史も大きく関係している。

現在では性別適合手術という言葉が一般的に使われているが、当時は「性転換手術」という表現が広く使われていた。医学的な診断名や社会的な理解も現在とは異なり、患者が治療を受けるまでのハードルは高かった。

ブルーボーイ事件が残した影響

日本の医療史を語るうえで外せないのが、いわゆるブルーボーイ事件だ。

1960年代に、性別を変えることを希望した男性3人に対して手術を行った産婦人科医が、当時の優生保護法違反に問われた。日本精神神経学会の診断・治療ガイドラインによれば、東京地裁は1969年2月15日に有罪判決を言い渡し、東京高裁も1970年11月11日に有罪判決を維持した。

この事件では、手術前の十分な検査や診察、専門家による適応判断などが不十分だったことが問題とされた。判決の内容は、性別適合手術そのものを一律に禁止するという単純なものではなかったが、社会では手術が違法であるという印象が広まり、医療現場にも大きな影響を残した。

日本精神神経学会の資料も、この事件の判決をめぐる誤解が長く医療の発展を妨げる一因になったと説明している。

1990年代から2000年代にかけての転換点

状況が変わり始めたのは1990年代だ。日本精神神経学会は1997年5月に性同一性障害に関する診断と治療のガイドラインを公表した。性別適合手術を医療の一つとして位置づけるための枠組みが整備され始めたのである。

加えて、1998年10月16日には埼玉医科大学で、日本国内で初めて公に性同一性障害の治療として性別適合手術が実施された。

2003年7月には性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律が成立し、翌2004年7月に施行された。一定の要件を満たす人について、家庭裁判所の審判による戸籍上の性別変更への道が開かれた。

こうした経緯を踏まえると、和田医師が活動していた時代の困難は、医療技術だけの問題ではなかったことが分かる。法律、医療機関の体制、社会の偏見、患者が安心して相談できる場所の不足など、複数の要因が重なっていた。

和田医師の「第一号患者」と日本初の手術は別の話

ここは誤解されやすいポイントだ。

映画や報道では、はるな愛が和田医師にとって最初の性別適合手術の患者だったという経緯が紹介されている。一方、日本国内で初めて公に性同一性障害の治療として手術が行われたのは1998年の埼玉医科大学の事例だ。

つまり、和田医師にとっての第一号患者と、日本の医療史における最初の公的な手術は同じ意味ではない。 この二つを混同すると、映画の背景にある医療史を正しく理解できなくなる。

和田医師がどのような状況で最初の患者を受け入れ、その後600人以上の手術に取り組んだのか。その歩みこそ、本作で注目すべき史実の一つだ。

【人物・関係相関表】実在モデルと映画の登場人物を整理

『This is I』には、実在人物をモデルにした主人公だけでなく、映画のストーリーを構成する複数の人物が登場する。誰が実在のモデルで、誰が映画内の役柄なのかを整理した。

人物・作品 映画での役割・実際の関係 はるな愛 主人公のモデル。自伝的な人生と経験が作品の中心にある。特別協力として参加。 大西賢示 はるな愛の本名。映画では少年時代の主人公として描かれる。 望月春希 主人公ケンジ/アイ役。オーディションで選ばれた主演俳優。 和田耕治 実在した医師。主人公の人生に大きな転機をもたらした人物。 斎藤工 和田耕治役。実在医師の人生と患者への向き合い方を演じる。 深町公美子 和田医師の元妻で、ノンフィクション書籍の共著者。医師の人生を伝える重要な資料提供者。 鈴木おさむ 企画担当。二人の人生を組み合わせる映画化を発案。 松本優作 監督。実話を音楽と映像表現を組み合わせた映画として再構成。 木村多江 主人公の母親・初恵役。 千原せいじ 主人公の父親・和孝役。 中村 中 ショーパブのママ・アキ役。 吉村界人 ショーパブの男性ダンサー・タクヤ役。 MEGUMI 和田医師のクリニックの看護師・裕子役。 中村獅童 和田医師の医療行為に目を光らせる刑事・鶴久役。

実在人物と映画の役柄を区別することが大切だ。特に、映画に登場する家族やショーパブ関係者などは、俳優が演じる登場人物として理解したい。出演者が実在の関係者本人を演じているという意味ではない。

上記の配役はNetflixの公式キャスト発表、作品紹介、報道資料に基づく。

【映画の脚色】ディスイズアイの実話とフィクションの違いは?

実話を基にした映画であることと、画面に映るすべてが史実であることは同じではない。『This is I』をより深く理解するには、実際の出来事と映画ならではの演出を区別する必要がある。

実話に基づいている部分

作品の根幹をなすのは、次のような実在の事実だ。

  • はるな愛が幼少期からアイドルに憧れ、自分らしい生き方を模索してきたこと。
  • 大西賢示という名前で生まれ、性別に関する葛藤を経験したこと。
  • 実在する和田耕治医師と出会い、性別適合手術を受けたこと。
  • 和田医師が性別適合手術に取り組み、多くの患者と向き合ったこと。
  • 二人の人生が、社会的な偏見や医療環境の課題と深く結びついていたこと。

これらは、はるな愛の自伝、和田医師のノンフィクション、関係者の証言、制作発表などで裏付けられる物語の土台だ。

映画独自の脚色・演出が入っている部分

一方で、映画では実話を一本のエンターテインメントとして成立させるため、演出上の再構成が行われている。

例えば、実際の人物の人生を一本の時間軸に整理すること、人物同士の関係を観客に伝わりやすい形で描くこと、会話や感情の表現を映像向けに組み立てることなどが挙げられる。

制作側も、はるな愛の経験をそのまま再現するのではなく、映画としてどのように伝えるかを重視したと説明している。はるな本人には脚本がある程度固まった段階で大枠が伝えられ、言葉のニュアンスやセリフ回しについて相談を重ねたという。また、和田医師の遺族も制作に協力し、実際に使われていた私物などの資料を提供した。

この制作過程から分かるのは、史実を尊重しながらも、映画としての表現を優先する場面があるということだ。

音楽とダンスはなぜ重要なのか

本作を一般的な伝記映画と異なるものにしているのが、音楽とダンスを積極的に取り入れた演出だ。

劇中では松田聖子、松浦亜弥、山下久美子、中森明菜、TRFなどの楽曲が使われている。Netflix公式発表では、作品を彩る楽曲は全12曲。1980年代から2000年代にかけての音楽が、主人公の夢や感情を表現する役割を担っている。

松田聖子の「夏の扉」や「SWEET MEMORIES」、松浦亜弥の「ね~え?」「Yeah! めっちゃホリディ」、山下久美子の「赤道小町ドキッ」などが登場する。

ダンスの振り付けを担当したのは、アバンギャルディのプロデューサーとしても知られるakaneだ。

松本監督はWIREDのインタビューで、LGBTQを扱う作品にありがちな暗いイメージを覆すため、口パクを取り入れたエアミュージカルという表現を考えたと説明している。はるな愛の「エアあやや」ともつながる演出であり、主人公が夢を追う力を視覚的に伝える仕掛けだ。

実話と映画を見分けるための判断基準

視聴後に史実をさらに調べたい場合は、次の三つを意識すると理解しやすい。

  • 人物の存在: はるな愛や和田耕治が実在したかどうかは、自伝や公的な書誌情報で確認する。
  • 出来事の記録: 手術の歴史や法律の変化は、日本精神神経学会などの資料と照合する。
  • 演出の表現: 会話、音楽、ダンス、場面の順番などは映画独自の表現として受け止める。

特に注意したいのは、映画の登場人物が発したセリフを、実在人物の記録された発言としてそのまま引用しないことだ。映画は史実を伝える入口にはなるが、医学史や個人の人生を完全に記録したドキュメンタリーではない。

【2026年最新】Netflix『This is I』配信日・キャスト・作品情報


Netflixで配信中
配信開始:2026年2月10日
製作:Netflix
監督:松本優作
脚本:山浦雅大
ジャンル:ヒューマンドラマ・音楽映画

『This is I』は、2026年2月10日にNetflixで世界独占配信が始まった。2026年11月現在は、配信開始を待つ作品ではなく、すでに視聴できる作品だ。

主要キャストとスタッフ
項目 内容
主演 望月春希
和田耕治役 斎藤工
母親・初恵役 木村多江
父親・和孝役 千原せいじ
アキ役 中村 中
タクヤ役 吉村界人
裕子役 MEGUMI
鶴久役 中村獅童
監督 松本優作
脚本 山浦雅大
企画 鈴木おさむ
特別協力 はるな愛
制作プロダクション TOHOスタジオ

望月春希は、オーディションで選ばれた主演俳優だ。選考にはトランスジェンダー当事者を含む幅広い応募者が参加し、繊細な感情表現と存在感が評価されたと報じられている。

斎藤工は、実在した和田医師を演じる。本人の風貌や医師としての信念をどう表現するかも、作品の見どころだ。松本優作監督は、実話を扱った映画『Winny』などでも知られる監督である。

どのような人におすすめできる作品か

本作は、はるな愛のファンだけに向けた映画ではない。以下のような関心を持つ人にも見応えがある。

  • はるな愛の知られざる半生や芸能活動の原点を知りたい人。
  • 実話をベースにした日本映画やヒューマンドラマが好きな人。
  • 昭和・平成の歌謡曲やアイドル文化が好きな人。
  • 日本における性別適合手術の歴史を知りたい人。
  • 医療者と患者の関係や、社会的偏見を扱った作品に関心がある人。

一方、医療史を正確に知ることだけが目的なら、映画だけで判断せず、日本精神神経学会の資料や和田医師の著書を併せて読むのがおすすめだ。音楽やダンスを交えた演出よりも、史実の詳細な記録を求める人には、ノンフィクション書籍の方が適している。

【ディスイズアイ実話】に関するよくある質問(FAQ)

Q1:Netflix映画『This is I』は完全な実話ですか?
A1:実在するはるな愛と和田耕治医師の人生をベースにした実話映画です。ただし、会話や場面の構成、音楽やダンスなどには映画独自の脚色・演出が含まれています。

Q2:主人公のモデルは誰ですか?
A2:タレントのはるな愛です。本名は大西賢示で、映画では望月春希が少年ケンジとアイを演じています。

Q3:和田耕治医師は実在した人物ですか?
A3:実在した医師です。1953年生まれで、2007年に53歳で亡くなりました。性別適合手術に取り組み、600人以上の患者を手術した人物として記録されています。

Q4:はるな愛の性別適合手術を担当したのは和田医師ですか?
A4:はい。はるな愛本人が和田医師を自身の手術を担当した医師として紹介しています。映画でも二人の出会いが重要な転機として描かれています。

Q5:原作となった本は何ですか?
A5:主な参考書籍は、はるな愛の自伝『素晴らしき、この人生』と、和田耕治・深町公美子の共著『ペニスカッター:性同一性障害を救った医師の物語』です。

Q6:和田医師の第一号患者は日本で最初の性別適合手術を受けた人ですか?
A6:同じ意味ではありません。映画で語られるのは和田医師自身の最初の手術患者という関係です。日本で初めて公に性同一性障害の治療として手術が実施されたのは、1998年の埼玉医科大学の事例です。

Q7:『This is I』のNetflix配信日はいつですか?
A7:2026年2月10日です。Netflixで世界独占配信が始まっており、2026年11月現在は配信済みです。

Netflix映画『This is I』は、はるな愛の半生と、実在した医師・和田耕治の人生をもとに制作された実話ベースのヒューマンドラマだ。

作品の原点には、はるな愛の自伝『素晴らしき、この人生』と、和田医師・深町公美子の共著『ペニスカッター』がある。二冊を読み比べることで、患者として自分らしい生き方を求めた人と、医師としてその願いに向き合った人、それぞれの人生が見えてくる。

また、1960年代のブルーボーイ事件、1997年の診断・治療ガイドライン、1998年の公的な性別適合手術、2003年の特例法成立という医療・社会制度の変化を知ると、映画の時代背景も理解しやすくなる。

本作の本質は、性別適合手術を受けたという出来事だけにあるのではない。自分らしく生きたいと願う人と、その願いに向き合う医師が出会い、互いの人生を変えていくところにある。

映画を見て心を動かされたなら、次は二冊の原案資料にも目を通してほしい。スクリーンでは描ききれない本人の言葉や医師の記録に触れることで、『This is I』という作品の意味はさらに深まるはずだ。

2026年現在、『This is I』は単なる芸能人の伝記映画ではなく、日本の性別適合手術の歴史と、一人ひとりが自分らしく生きることの意味を考える作品として位置づけられる。

主な参照資料:Netflix公式作品発表、WIRED JAPANによる制作陣インタビュー、講談社の書誌情報、国立国会図書館サーチ、日本精神神経学会の診断・治療ガイドライン、テレビ東京の和田耕治医師に関する報道、日刊スポーツの制作発表記事。

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